新年のお祭りだからと、パレード待ちする人でごったがえす街路にナディアは連れ出されていた。新年初日は古書店も休みであり、首都で新年を過ごすのは初めてだと言ったら、「新年名物銃騎士隊パレードを一緒に見に行こう!」と張り切るエリミナに連れ出された。 あたりは人、人、人。人間ばっかり。パレードに群がる人垣を見回しても、やっぱり首都に獣人なんてそうそういない。 もしもここでナディアが獣人であることが周囲の人間たちに知れ渡れば、きっと確実にボコボコにされるだろう。 最初に首都に飛ばされた時こそ、正体がバレたらどうしようと不安に苛まれたものだったが、今ではそんな不安もどこかへ飛んで行ってしまった。 獣人としての華やかな容姿を持たず、むしろ人間の中では中くらいの平凡な容姿に位置づけられ、どこにでもいそうな冴えない見た目のナディアが、実は獣人だなんて勘ぐるものはこれまで誰もいなかった。(それはそれで悲しいけど)「ああっ! ゼウス様が! ゼウス様が行ってしまわれた! このままじゃアテナ様のサインをゼウス様に頼めない!」 パレードの見物人でひしめく人々の中、隣で焦ったような声を出しているのは松葉杖姿のエリミナだった。この場にアテナ様本人がいないのに姉のサインを弟に頼んでどうするのだろうと思ったが、アテナ様の写真集をゼウス様に預けて自宅でサインをして来てはもらえないかと頼むつもりだったらしい。 お礼に父親経由で入手した超人気舞台のプレミアチケットを渡すつもりで。 沿道には警邏隊による規制線が引かれているが、時折その隙間から飛び出して銃騎士の元まで走り、握手やサインをしてもらったり、プレゼントを渡していたり、わざわざ写真機を持ち出して共に写真を撮っている者たちもいる。 エリミナは人垣の合間を縫ってパレードの先頭を追おうとするが、人が多すぎて進むどころか逆に押されよろけてしまう。 片脚を怪我しているせいで踏ん張れずに倒れそうになったエリミナを、ナディアが手を出すよりも先に黒髪の青年が支えた。 性別は男だが、どちらかといえば少動物のような可愛らしい顔つきをした彼こそが、エリミナの婚約者である『アーくん』ことアーヴァイン・サングスターだった。アーヴァインはナディアたちより一つ年上だが、小柄で華奢な体格をしていて、一見すると年下にも見える。 アーヴァインはエリミナの
Last Updated : 2026-03-21 Read more