ワインが美味しすぎたので、ゼウスは一杯でやめるとのことだったが、ナディアはもう一杯おかわりをしてしまった。 ゼウスは話し相手になってほしいと言っていたが、彼自身は口数が少なくなり、またあの物言いたげな視線をしている。ナディアはそわそわとしてしまって、とりあえず場を繋がねばと自分から先程の劇の感想などの話題を振っていた。 ゼウスを見ていると、なぜだか胸が高鳴ってしまい、全身の血が熱く駆け巡っているのを感じる。(いえ、これはきっとお酒のせいよ) 銃騎士を好きになるわけにはいかないのだから、そういうことにしておきたい。「お待たせいたしました」 ウェイターが頼んでいた料理を見たナディアはぎょっとする。 ステーキはいい。音を立てながらまだ熱い鉄板の上で焼かれていて、とても食欲をそそる美味しそうな匂いがあたりに漂っている。 問題なのは、別皿で盛られた新鮮そうなサラダがウェイターの手によりステーキ料理の横に置かれたことだ。(パンは別注文なくせになぜサラダは込みなのか!) ゼウスはパンも頼んでいたから彼の前にはステーキ以外にもパンとスープと、やはりサラダが置かれている。 ステーキを頼むとサラダがおまけでついてきて、パンを頼むとスープがおまけでつくようだ。『ちょっとサービスが多すぎじゃない?』とナディアは思った。(人間には嬉しいのかもしれないけど、獣人には酷だわ!) ステーキ料理には添え物として人参とブロッコリーが乗っているのだから、サラダはいらないんじゃないかとナディアはウェイターに強く抗議したくなった。「メリッサ? 食べないの?」 ゼウスに声をかけられてハッとする。目の前の憎き野菜たちを睨んでいた所で不思議に思われるだけだ。ナディアは野菜が全く受けつけないわけではないのだから、少しだけ食べてあとは残してしまおう。「あ、なんかすごく美味しそうだなと思って! い、いただきます!」 ナディアは誤魔化すような笑みを浮かべてナイフとフォークを手に取った。 シリウスとの食事でナイフとフォークの使い方は習得済みだ。ナディアは常々変態だと軽蔑していた男に、彼女としては珍しく感謝の気持ちを持った。(これで里にいた時のように手掴みで食べ出していたら、一瞬で獣人ってばれてたわよね……) ナイフでステーキに切り込みを入れて、フォークで口元まで運ぶ。(ああ、い
Last Updated : 2026-03-27 Read more