「ねえ、ゼウス…… よかったの?」 声をかけてきたのは、ゼウスを挟んでアランとは反対を歩いていたハロルド・シュトラウス――通称ハルだ。 ハロルドはゼウスの同期だが年は下だ。父親が昔銃騎士隊員だったそうが、怪我で退役し今は都内で時計職人をしている。 姉が上に六人いて、父親の希望によりやっと生まれた末の男の子だ。父親の熱望で養成学校の入校試験が受けられる年になって即受験し、一発合格した才子だ。 ハロルドは訓練をする時などは胸のあたりまである髪の毛を後ろで一つにまとめているが、今は真っ直ぐな薄茶色の髪をそのまま下ろしていた。 ハロルドはかなり小柄なのと中性的で綺麗な顔立ちをしているために、銃騎士養成学校に入校してすぐの頃は女男と言われて嫌厭されて、はぶられている姿を良く見かけた。 一人きりで暗い顔をしているハロルドにゼウスが声をかけているうちに、最初は手負いの野生動物のように警戒心全開だったハロルドもゼウスに懐くようになり、以降ずっと友人関係が続いている。 ハロルドの見た目はしおらしい印象が強く、姉六人の影響なのか実際に女子力も高いのだが、これで模擬戦をすると結構強い。ゼウスはハロルドとの対決では負け越している。「結婚のこと、ジョージ隊長に言ったほうがよかったんじゃないの? まだ報告してないんでしょう?」「え?! ゼウスお前結婚すんの?」 ハロルドの言葉を聞いたアランが驚いたように声を荒げて話題に飛びついてくる。 三人は他の隊員とは別れ、共用で使っているロッカー室に入ったばかりだった。「はい。つい最近、彼女とそういう話になったばかりなんです」 アランとは同じ年だが先輩だし、養成学校時代のクセが抜けないのもあって、ゼウスはアランには敬語で話している。「えー、何だよそれー、何でハルが知ってて俺が知らないんだよー、水くさすぎるよゼウスー」 アランは唇を尖らせてぶーぶー文句を言い始めた。「隊の中で結婚のことを話してあるのはハルだけですよ。俺だってアラン先輩があの彼女さんと別れたって知りませんでしたよ」 この先輩は悪い先輩ではないのだが、メリッサとつき合うようになってから時としてウザい絡み方をしてくることがあって、「彼女と結婚します」なんて言ったら余計に絡み方が酷くなる気がして、黙っていた。 少し気の弱い所があるハロルドは、メリッサを紹介すると
Last Updated : 2026-04-04 Read more