大斧の女戦士ビアンカの結婚(特別任務で辺境伯を探るつもりだったのに気が付いたら円満な結婚生活を送っていました) のすべてのチャプター: チャプター 81 - チャプター 90

164 チャプター

囮になってみた!!結婚4日目・神だろうと何だろうと 5

 主神は悲しそうな顔をして、それ以上は言わないでくれと彼に懇願する。しかし、ユリウスの答えはノーだった。「ダイア、あなたは妻と子供たちに捨てられたと嘆いていますけど、嫁いで来てくれた妻の気持ちを考えたことがありますか? あなたがいつまでも昔の恋人との間に出来た子供の子孫に力を分け与える姿は、彼女にどう映っていたのでしょうか?」「そ、それは……」「いい機会です。『証』を持つ子を選んで、力を分け与えるというのは今回で終わりにしませんか。そして、ご家族に今までのことを謝られたらどうです?」「だが、それでは私の愛し子たちの世界が……」「私たちの世界はもう神の力を持つ指導者を必要とはしていません。不必要な力を持つ者の存在は逆に世界を狂わせます。時代は変わったのです」「むむむ……。―――そうか、時代が……」 主神ダイアは険しい表情を見せる。「そなた(ユリウス)のいうようにした方が良い時期に来ているのかも知れないな……」(主神にも色々と事情があったのだな。ユリウス、ありがとう! 胸がすっきりした!―――そして、今回でこういう揉め事になるような贈り物(神の力を分け与える)を止めた方がいいというユリウスの意見に私も賛成だ!)「主神、ユリウスが勝手にあなたのご家族の話を出したことをどう思いましたか?」「いい気はしなかった。そなたにこんな私的な話を聞かせるつもりは無かった……」「―――分かったら金輪際、無闇に人の記憶を覗いたりしないで下さい!」 ビアンカは両腕を組み、仁王立ちで告げた。「ああ、―――よく、分かった。私が悪かった。ビアンカ、許してくれ」「謝罪を受け取ります」(フッ、この顔で謝られると父上から謝られているみたいだ。これはこれで気持ちがいいな、フフフッ) 不謹慎なことを考えていることを見破られないよう、ビアンカは何げない素振りで主神ダイアから視線を遠ざける。「主神ダイア、そろそろ儀式をして下さい。もう一人の後継者の『証』を持つ者が、この大陸を狙っているので、早急に!!」 ここで透かさず、ユリウスが催促を入れた。 彼はターキッシュ帝国の第四皇子だけではなく、不審な言動をしているサルバントーレ王国の王子フォンデのことも一応、警戒している。「事情は知っている。儀式は私の力を分け与えるだけだ。直ぐに済む」「では、お願いします」 ―――もう、
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囮になってみた!!結婚4日目・星空のビアンカ 1

 儀式を終えて、辺境伯城に戻ると……。 絵筆を持った大勢の画家たちがビアンカを待っていた。彼らはサルバントーレ王国のフォンデ王子のお抱えの画家とのこと。フォンデがユリウスとビアンカが留守の間に、彼らを母国から呼び寄せていたのである。 画家たちはサルバントーレ王国の王都ソートから、この辺境伯城まで五台の馬車で駆けつけたのだという。 王都ソートはこの城から見えている国境の橋を渡り、馬車で一時間ほどの距離だ。言うまでもなく、ローマリア王国の王都サンタマリアへ行くより、隣国の王都の方が遥かに近い。―――ユリウスはフォンデが、期待を裏切らない芸術バカで良かったと心底思った。 彼が連れて来たのは刺客ではなく画家だったからだ。 とはいえ、アポなしで勝手なスケジュールを組んだフォンデをユリウスは許したりしない。冷ややかな声と表情で注意をし、次はないと告げた。 一方、ビアンカは画家たちの要望に応えて、夕食の時間まで屋外で軍服姿のまま大斧を担いでモデルを務め、画家たちの心を鷲づかみにしてしまったのである。♢♢♢♢♢♢♢「ほら、あの二つ並んだ星の右上のほうに見えている星です」「ああ、あの白い星ですか?」「そうです」 ビアンカとユリウスは星空を眺めながら、辺境伯城の浴室でお湯に浸かっている。 思い返せば、今日も様々な出来事があった……。 早朝の訓練ではリシュナ領軍の兵士たちと初顔合わせをしたあと、ビアンカ考案のトレーニングメニューを一緒に行った。 昼食はユリウスと二人で中庭の温室で。しかしながら、重い話で食欲が消え失せてしまったビアンカは飲み物しか口にしていない。 ちなみに成長期のユリウスはモリモリ食べていた。 午後は二人で神殿へ。主神ダリアと面会し、ビアンカはイリィ皇家の後継者の儀式を行った。 無事に儀式は終わり、ビアンカは主神ダイアから神の力を分け与えられたのである。(一番驚いたのは主神と父上が激似だったということだ!! もは
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囮になってみた!!結婚4日目・星空のビアンカ 2

「あの青白い星の名はルーナです」 ユリウスが教えてくれた。―――彼は天体にも詳しいらしい。 ビアンカ・ルーナ・ピサロ侯爵令嬢は四日前に結婚して、ビアンカ・ルーナ・コンストラーナ辺境伯爵夫人になった。ルーナはビアンカのミドルネームである。「ルーナという言葉には女神という意味があります」 ユリウスは夜空を見上げながら囁く。「女神……」 ビアンカも同じ様に空を見上げて、天に思いを馳せる。 空の上は未知の世界。そこに浮かぶ星も同じ軌道で少しずつ動いているということくらいしかまだ解明されていない。(あの先には何があるのだろう。天国? 神様? いや、神は辺境伯城の近くの神殿にいた……。フッ、本当にここに来てから、あり得ないことばかりだな)「ルーナは暗黒の中でも、一際、美しく輝いていますね。まるであなたのようです」(な、なにを突然!?) ビアンカがチラリとユリウスの方を盗み見ると……。―――運悪く、バチッと目が合ってしまった。(星を見上げているのかと思っていたら、こっちを見ていた! ビックリした~!)「神の力の影響でしょうか? ビアンカを縁取るように銀色のオーラが煌めいています」「えっ!?」「今の体調はどうですか?」「何ともないです。もしかして、神の力の影響で生活に支障が出たりする可能性があるのでしょうか?」 ビアンカは急に不安を覚える。 湯の中から手を出して、上に掲げてみると、確かに手のひらを縁取るようにキラキラと輝いている何かがあった。(これが、オーラ?)「あいにく、私は答えを持ち合わせていません。明日にでも、旧イリィ帝国の文献を紐解いてみます」「はい、私も一緒に手伝います」(自分のことなのにユリウス任せではダメだ! 明日は一緒に調べよう……って、あっ!? マズいかも……)「ユリウス、明日の朝の訓練……、兵士たちとの試合はどうしましょうか?」(まだ、自分の力がどう変化したのかも
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囮になってみた!!結婚4日目・星空のビアンカ 3

 突然、ユリウスが出した意地悪な課題にも彼女は必死に応えてくれた。後から、申し訳ないことをしたと彼が猛省するくらいに……。 本当は今すぐにでも、ビアンカをギュッと抱き締めて沢山のキスをして、それ以上のこともしたい。だが、それはユリウスの独り善がりな願い……。―――今朝の失敗でユリウスは気付いたのである。ビアンカに命令して服従させるようなやり方ではダメだと。 彼女と心を通わせたい。そして、互いに求める気持ちがある上で、触れ合いたい。これから、長い年月を共にするのだから……。――――癪だが、マクシムの助言は正しかった。あの時、止めてくれたことを今は心から感謝している。 無理やり押し倒していたら、状況はもっと悪くなっていただろう。「ビアンカ、もう恋人の練習は止めましょう」 これがユリウスの出した結論だ。(え!? どうして!! 今朝まではあんなにやる気満々だったのに!?)「まさか……、恋人は……、クビですか!?」 ビアンカは恐る恐る尋ねる。「いえ、そうではありません。このまま今朝のようなことを続けたら、あなたに酷く嫌われてしまいそうで……」「嫌われる?」「はい、今朝の課題はやり過ぎでした。嫌なことをさせて、すみませんでした」(キスの課題は確かにハードルが高かった。それに心臓が破れそうなくらいドキドキした。だけど、嫌だと思ったりはしていない) ビアンカはイマイチ彼の言いたいことが掴めない。 こういう時は素直に聞くのがビアンカ流。 彼女はユリウスの方へ少し移動して、顔がしっかり見える距離でこう言った。「正直、自分からキスするのは滅茶苦茶、緊張しましたけど、嫌だなんて思っていませんよ?」「いえ、―――課題でキスしろと命令したこと自体が卑怯でした。あなたなら、どうにかすると分かっていて…&helli
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囮になってみた!!結婚4日目・少しの油断 1

ユリウスが浴室から逃げてしまったので、ビアンカはアンナを呼んで、シャツとスラックスを用意してもらった。――――流石に寝室まで薄いネグリジェで歩いていくわけには行かない。 (ユリウスが部屋に連れて帰ってくれると思っていたから……。慣れって怖いな) ここ数日はネグリジェ姿のまま、ユリウスの魔法転移で寝室へ戻っていたため、ビアンカは油断していたのである。 「ビアンカ様、こちらをどうぞ」 「ああ、ありがとう!」 ビアンカは差し出されたグラスを受け取って、ゴクリと飲む。 今、ビアンカとアンナがいるのは、脱衣所から入れる小さなサロンだ。ここはコンパクトながら、ドレッサーと少し横になれるベッドも置かれていて、使い勝手がいい。小ぶりな観葉植物もいくつか並べられている。 (冷たくて美味しい~。今夜も長くお湯に浸かっていたから……、いつの間にか喉が渇いていたようだ。おっ、おおっ! このグラス! ユリウスが魔法で冷水を出す時に使用しているグラスじゃないか~!!) 「アンナ、このグラスはどこから持って来た?」 「グラスでございますか? 厨房から持ってまいりました」 ビアンカはあっという間に冷水を飲み干した。アンナは当たり前のようにピッチャーから、彼女のグラスへ水を注ぎ足す。 (ユリウスは厨房でどうやってこのグラスに水を入れているのだろう? とても気になる……) 魔法の原理が未だに理解出来ていないビアンカは首を捻る。 (―――分からないことは聞いてみるのが一番だな) 「アンナ、ユリウスは魔法を使って冷水を出す時、いつも、このグラスを使っている」 ビアンカは冷水の入ったグラスを指差す。 「左様でございますか」 「そこで、一つ質問したい。ユリウスが魔法を使った時に厨房でこのグラスに水を入れているのは誰だ?」 「グラスに水……。―――申し訳ございません。私も閣下の魔法のからくりまでは存じ上げておりません。厨房の者に聞いてみましょうか?」 「ああ、是非、聞いてみてくれないか。別に急いではいないから、ついでの時にでも」 「かしこまりました」 雑談をしている間に侍女頭アンナはビアンカの髪を乾かして櫛を通していく。 ユリウスの風魔法ほどではないが、十分ほどで終了した。 「ビアンカ様、明日の朝食は本日のように訓練後でよろしいですか?」 「あ~~
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囮になってみた!!結婚4日目・少しの油断 2

「こんばんは、フォンデ王子。夜のお散歩ですか?」 「うん! 今夜は月が綺麗だから~」 ビアンカは『こんなところで何をしているんだ?』という意味を込めて尋ねたのだが、フォンデに軽いノリで返されてしまう。 (そうだった。この人はこういう人だった。ハッキリ言わないと伝わらないタイプ……) ビアンカは視線をフォンデの隣にいる男性へ向けた。 「ああ、彼はね~、僕の友人のテオだよ。とある国から遊学で僕の国に来ているんだ」 「とある国?―――もしや、王族のお方ですか?」 「ごめんね。それは答えられないんだ」 フォンデがそういうと、隣に立つ青年も大きく頷く。 (いや、いまの素振り……。王族と認めたようなものじゃないか! しかし、この顔を私は知らない。一体、どこの国の王族なんだ?) 他国の王侯貴族の情報が頭に入っているビアンカは、心の中で首を傾げる。 「―――分かりました。初めまして、コンストラーナ辺境伯の妻、ビアンカです」 「初めまして、辺境伯夫人。私はテオと申します。画家たちと一緒にサルバントーレ王国の王都から参りました。この城はかなり歴史が深そうですね。散歩しているだけでワクワクしてしまいます」 「彼は建築の勉強で僕の国に来ているんだよ」 「そうなのですね」 (―――大斧を担いだ私(辺境伯夫人)を見ても驚かない。この男は最初から私のことを知っていたのだろう。しかし、どうして身分を隠す必要がある? 何かやましいことでも考えているのか?) ビアンカはテオを警戒する。 ユリウスからフォンデを信用してはいけないと、昼間に何度も言い聞かさせられたからだ。 「テオも画家たちと一緒にここへ数日滞在させてもらうつもりだよ。ユールやビアンカには迷惑を掛けないから許してね!」 (あ~、これは……、ユリウスの許可を取っていない……のだろうな。だから、代わりに私から許しを得ようとしているのだろう。―――というか、この男、中途半端に王族を匂わせる理由は何なんだ? 遊学中というのも本当かどうか怪しいな……。 あ~、この状況……、ユリウスが知ったら猛烈に怒りそうだな。―――よし、ここは勇気を出して……) ビアンカは大斧をドンと床に突き立てる。 「テオどの、この城に滞在したいのでしたら、正式に夫(辺境伯)へ申請して下さい。フォンデ王子、知り合いだからと勝手に客人を城へ
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囮になってみた!!結婚4日目・誰にも似てない 1

 ビアンカの無自覚な攻め(裸で抱きつく)に合い、理性を失ったユリウスは……。 彼女の首筋に歯を立ててしまう。 ビアンカはビクッと身体を震わせる。「(―――私は何を……)」 我に返ったユリウスはこれ以上、ビアンカと触れ合っていたら取り返しのつかないことをしてしまうかも知れないと判断し、浴室からクローゼットルームへ逃げた。「はぁ~っ、軍服で隠されていた豊かな胸を……、あんなに全力で押し付けられたら……、もう、狂ってしまいそうだ……」 濡れた前髪を荒々しくかき上げながら、ユリウスは不満タップリに呟く。 彼女の柔らかな胸を素肌に押し付けられ、欲情が爆発した。でも、ギリギリで耐え切った……。「褒めて欲しいくらいだ」 しかしながら、ユリウスは彼女に理由も告げず、姿を消した。「ダメだ……、カッコ悪すぎる……」 ユリウスは己の行動を後悔し、頭を左右に振る。―――髪についていた水滴が周りに飛んだ。「ああ、髪を乾かしてなかった……」 ユリウスは風魔法を発動した。 数秒でいつものサラサラな銀髪へと戻る。「―――動揺し過ぎだ……。情けない」 これまでユリウスは日常生活で若さを不利に感じることは殆どなかった。 それは何でも器用にこなせる能力と細かなことに動じない性格が、彼を同世代の者より大人に見せていたからである。 だが、無意識で攻めて来るビアンカに冷静な対応を取れるほど、彼は自分が大人ではないということを自覚した。周りの人々も本人も忘れていることが多いが、彼は十七歳の健全な男なのである。 ふと鏡に映る自分の顔を見て、ユリウスは唖然とした。―――まさか……、顔も耳もこんなに真っ赤になっているなんて……。「これでは女に慣れてないと一目で分かってしまう。―――ビアンカが恋愛に対して鈍感で助かった……」 彼は髭一つない滑らかな頬に手のひらを当てた。「兄さん(マクシム)のような男らしさが全くない」 ユリウスは落胆する。 色素の薄い肌、銀髪、ライトグレーの瞳。王家の誰とも似ていない容姿。―――鏡は正直だ。 ユリウスは自分の出自を疑い、父(国王)へ真相を尋ねたことが幾度もある。しかし、その答えはいつも同じ。『では、誰の子だと思っているのだ? ハッハッハ……』 真剣な彼の質問を国王は笑いばなしにしてしまうのだ。 分からないから聞いているのに……
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囮になってみた!!結婚4日目・誰にも似てない 2

 先日の緊急会議の際、マクシムはリリアージュとの不仲については口を割ったが、結局、別れるという話にまでは至らなかった。 ユリウスは知っている。マクシムが幼いころからビアンカを妃に迎えたいと国王に直訴していたということを。 途中から割り込んで彼女を奪っていったユリウスに対して、表面上は何も言わないが、彼は間違いなくユリウスを恨んでいる。 皆が揃ったあの場でリリアージュの件を追求したら、最悪の場合、ビアンカにまで飛び火してしまいそうだった。この結婚はユリウスが強引に進めたもので、彼女には何の非もないのに……。 だから、ユリウスはマクシムに引導を渡し、王太子の位を返上するという話にすり替えたのである。 ユリウスは視線を書類に落としたまま考え込む。 彼が王太子を辞めるのなら『別にリリアージュと離婚する必要などないのでは?』と、気付いてしまったからだ。 寧ろ、離婚しない方が妻の罪を一緒に被ったという愛の物語が出来上がる。 実際は全く違うとしても……。「明日にでも兄さんへ提案してみるか。―――激怒されるかも知れないが……」 ユリウスはポイッと処理済みの箱へ、目を通した書類を投げ込んだ。―――と、その時。「ユリウス~。急ぎの案件じゃ!」 前触れもなく、魔法使いモルテが現れた。 モルテは魔塔の一員で七年前にユリウスへ魔塔の招待状を送った張本人だ。今は魔塔主ユリウスの右腕(相談役)として働いている。「地下牢の取り調べで何かあったのか?」「いや、そうじゃない。高貴なネズミが入り込んだ」「ネズミに高貴も何も……」 ユリウスは彼の独特な言い回しにツッコミを入れつつ『―――で、話の続きは?』と、目で訴えた。 モルテは自身の背丈と同じくらいの杖をビシッと彼に向ける。「フォンデ坊やのお友達にネズミが紛れていたのじゃ!」 この知らせはユリウスの想定内だった。昼間にフォンデが怪しい動きをしていると庭師グラードから報告を受けていたからである。「ほう。で、身元は?」「まだ確認出来ておらん。ただ、わしらと同族(魔法使い)だ。警戒した方が良いぞ」 相手が魔法使いと聞いて、ユリウスはピリッとした殺気を放つ。「――――分かった。ネズミは今、何処だ」 ユリウスはスッと立ち上がって、部屋の隅においてあるポールハンガーの前に行き、ミッドナイトブルーのローブを取って羽
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囮になってみた!!結婚4日目・囮 1

 テオに強く腕を引かれた瞬間、ビアンカは身体が浮くような感じがして……、自分が連れ去られそうになっていると直感する。(なっ!? こいつ魔法を使うのか!? どうする? 抵抗するか? でも、ユリウスなら……) 例え、身元不明の魔法使いに連れ去られたとしても、ユリウスなら必ずビアンカを探し出すだろう。―――ビアンカはユリウスを信頼し、覚悟を決める。(このまま行こう。ユリウスが追って来てくれるまで、こいつの正体を探った方がいい) ビアンカは囮として、テオについて行くことにした……。♢♢♢♢♢♢♢ テオとビアンカが降り立ったのは小さなランプが一つだけ灯っている薄暗い部屋だった。夜目の効くビアンカは日頃の訓練で養われた観察能力を発揮し、部屋の中を素早くチェックしていく。(天蓋付きのベッド、応接セット、壁には風景画……。豪華な部屋だな。―――サイドボードの上の花瓶には花も生けてある。カーテンの柄はシンプルな縦のラインと鷲の紋章……。あれ、この紋章はものすごく見覚えがあるぞ!? たしか、私達の寝室のカーテンにも同じものが刺繍されていた。あとはリシュナ領軍の軍服の胸元にも……。―――もしかして、この部屋、辺境伯城の一室なのではないか?) ビアンカはギュ~ッと大斧の柄を握り込む。(ここがどこであろうと手元に武器がある限り、私は負けない)「ビアンカよ。英雄と呼ばれるだけあって、連れ去られたぐらいでは動じないか……」 先ほどとは一転し、テオの言動は高圧的なものとなった。「偉そうな奴だな? お前は誰だ!!」 彼女は目の前の男に戦士モードの低音ボイスで問う。 しかし、テオは顔色一つ変えない。 ビアンカは確信する。こいつ、只者ではないと……。「俺の名はテオドロスだ。ターキッシュ帝国の第四皇子といえば分か
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囮になってみた!!結婚4日目・囮 2

―――テオドロスが魔法でかけたロープは、ビアンカが本気で解こうと思えば、解けるくらいの状態だった。(ただ……、今すぐにロープを解いてこいつを制圧してしまうと、本心を探ることが難しくなってしまう。非常に不快ではあるが、あと少し我慢して、不利な状況に追い込まれているフリを続けるとするか……。はぁ~~~~ぁ、面倒なことになった。―――ところで、私は魔法の知識も魔力もないのに、どうしてこれを解くことが出来ると確信しているのだろう。もしかして、神の力のせい?) 自主的に拘束されているビアンカをテオドロスはベッドへ運んだ。 そして、自身の上着を手早く脱ぎ棄て、ビアンカの上に覆い被さる。(あ~~~~、もう! こいつ、マジで嫌いなタイプだ! 女を黙らせるには一発やればいいと思っている奴!!) ビアンカはどういう手順でテオドロスを倒そうかなと脳内で考え始めた。(身体の動きを封じる魔法を解いたら、力いっぱい股間を蹴り上げてやろう! そして、鼻フックで吊るして……、いや、それくらいでは甘い! どうせなら、二度と女を見ることが出来ないよう、目をつぶし……) 脳内のシミュレーションは加速していく。(―――いや、待て、倒す前に必要なことを確認し、言質を取っておかないとダメだ!) ビアンカは本来の目的を忘れてしまわないよう、一旦、心にブレーキをかけた。「テオドロス、なぜ、私を狙う」「紫の瞳の女を探していた」「たかが、瞳の色ごときで、わざわざここ(別の大陸)まで来たのか? バカバカしい」「お前は自分の価値を分かっていない」 ザクッ。 ザクッ。 ザク、ザク……。 テオドロスは小ぶりのナイフを取り出して、ビアンカのシャツと胸に巻いていた布を切り裂いた。彼女の豊満な胸が露わになる。「フッ、若い夫は欲に任せて、ダメだな……」 テオドロス
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