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第110話 選んだ未来

夜。 李雨は先に寝た。 奏音も、自室で勉強している。 静かなリビング。 「……」 和泉は、ベランダへ出ていた。 夜風が少し冷たい。 でも。 嫌じゃなかった。 「……ここにいたんですね」 後ろから、優士の声。 和泉は、小さく振り返る。 「うん」 優士が隣へ立つ。 自然に。 もう、それが当たり前みたいに。 「……」 少しだけ沈黙が流れる。 でも、不思議と苦しくない。 「……優士」 和泉が、小さく呼ぶ。 「はい」 「もし」 少し迷う。 それから。 静かに続けた。 「百年前、優士が死ななかったら」 「……」 優士は、少しだけ目を伏せた。 和泉は、夜空を見る。 「私、多分」 小さく笑う。 「一緒にいたかったんだと思う」 震える声。 「ずっと」 「……」 優士の呼吸が、静かに止まる。 「でも、あの時代は無理だった」 和泉が続ける。 「人と妖なんて」 小さく息を吐く。 「だから、諦めた」 ずっと。 ずっと。 一人で。 「……」 夜風が吹く。 藤の花が、静かに揺れる。 優士は、ゆっくり和泉を見る。 今世の和泉。 泣きそうで。 でも、ちゃんと笑っている。 「……和泉」 低い声。 和泉が振り向く。 「今は違います」 静かな声だった。 でも。 迷いがない。 「……」 優士は、少しだけ間を置く。 それから。 ゆっくり言った。 「俺は、あなたと生きたい」 「……!」 和泉の呼吸が止まる。 「李雨とも」 「奏音とも」 優士が続ける。 「普通に」 少しだけ困ったように笑う。 「朝ご飯を作って」 「おかえりを言って」 「そんな毎日を、一緒に過ごしたい」 「……っ」 和泉の目に、涙が浮かぶ。 派手な言葉じゃない。 でも。 百年前、一番欲しかった未来だった。 「……優士」 声が震える。 優士は、静かに和泉を見る。 逃げない目。 ちゃんと隣に立つ目。 「……」 和泉は、ゆっくり優士の服を掴む。 あの日みたいに。 でも今度は。 離れないために。 「……私も
last updateDernière mise à jour : 2026-05-25
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