夜。 李雨は先に寝た。 奏音も、自室で勉強している。 静かなリビング。 「……」 和泉は、ベランダへ出ていた。 夜風が少し冷たい。 でも。 嫌じゃなかった。 「……ここにいたんですね」 後ろから、優士の声。 和泉は、小さく振り返る。 「うん」 優士が隣へ立つ。 自然に。 もう、それが当たり前みたいに。 「……」 少しだけ沈黙が流れる。 でも、不思議と苦しくない。 「……優士」 和泉が、小さく呼ぶ。 「はい」 「もし」 少し迷う。 それから。 静かに続けた。 「百年前、優士が死ななかったら」 「……」 優士は、少しだけ目を伏せた。 和泉は、夜空を見る。 「私、多分」 小さく笑う。 「一緒にいたかったんだと思う」 震える声。 「ずっと」 「……」 優士の呼吸が、静かに止まる。 「でも、あの時代は無理だった」 和泉が続ける。 「人と妖なんて」 小さく息を吐く。 「だから、諦めた」 ずっと。 ずっと。 一人で。 「……」 夜風が吹く。 藤の花が、静かに揺れる。 優士は、ゆっくり和泉を見る。 今世の和泉。 泣きそうで。 でも、ちゃんと笑っている。 「……和泉」 低い声。 和泉が振り向く。 「今は違います」 静かな声だった。 でも。 迷いがない。 「……」 優士は、少しだけ間を置く。 それから。 ゆっくり言った。 「俺は、あなたと生きたい」 「……!」 和泉の呼吸が止まる。 「李雨とも」 「奏音とも」 優士が続ける。 「普通に」 少しだけ困ったように笑う。 「朝ご飯を作って」 「おかえりを言って」 「そんな毎日を、一緒に過ごしたい」 「……っ」 和泉の目に、涙が浮かぶ。 派手な言葉じゃない。 でも。 百年前、一番欲しかった未来だった。 「……優士」 声が震える。 優士は、静かに和泉を見る。 逃げない目。 ちゃんと隣に立つ目。 「……」 和泉は、ゆっくり優士の服を掴む。 あの日みたいに。 でも今度は。 離れないために。 「……私も
Dernière mise à jour : 2026-05-25 Read More