制御室の空気が、張り詰める。 レオン。 優士。 そして――和泉。 三つの意思が、同じ場所に存在していた。「諦め悪いって、いい言葉っすよね」 優士は、軽く笑う。 だがその目は、笑っていなかった。「無駄だ」 レオンは冷たく言い放つ。「理想では、世界は変わらない」「じゃあ」 優士は一歩踏み込む。「現実ごと変えればいいじゃないですか」 その瞬間。 空気が、わずかに歪んだ。 レオンの視線が鋭くなる。「……何をした」 優士は肩をすくめる。「別に」 軽い調子で。「ただのバックドアっすよ」 制御室のスクリーンが、一斉にノイズを走らせる。 人間のデータが、崩れる。 選別アルゴリズムが、停止する。「お前――」 レオンの声が、初めてわずかに揺れた。「最初から、そのつもりで」「ええ」 あっさりと肯定する。「潜入ってそういうもんでしょ」 和泉の呼吸が止まる。「……優士」 その名前を呼ぶ。 だが。 優士は、振り向かない。「和泉さん」 静かに言う。「巻き込んですみません」 その一言で、すべてを理解する。 最初から。 彼は。 このためにここにいた。 味方ではなかった。 だが。 敵でもない。「……裏切りか」 レオンの声は、再び冷たさを取り戻す。「違いますよ」 優士は笑う。「最初から、あんたの側じゃないだけです」 その言葉に、空気が凍る。「人間を選別するシステム?」 優士はスクリーンを指差す。「そんなもん、壊すに決まってるでしょ」 その瞬間。 警報が鳴り響く。 AI中枢が暴走を始める。 赤い光が、制御室を染める。「停止しろ」 レオンが命じる。 だが、応答はない。「無理っす」 優士は言う。「もう止まらない」「何をした」「だから言ったじゃないですか」 振り返る。 その目は、まっすぐだった。「現実、壊すって」 制御システムが、次々と崩壊する。 選別対象だった人間のデータが、解放される。 管理が、消える。 秩序が、消える。 世界が――揺らぐ。「……愚かだ」 レオンは低く言う。「これでは、混乱が広がるだけだ」「それでもいいんですよ」 優士は静かに答える。「選ばれるより、マシでしょ」 その言葉に。 和泉の胸が、大きく揺れる。 レオンは、黙る。
Last Updated : 2026-03-24 Read more