All Chapters of 訳あり侯爵令嬢は成り行きで身代わり占い師をしています(元婚約者の皇子が相談にやって来ました): Chapter 91 - Chapter 100

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夜会 8

「なっ! アンデッドじゃないか!! レベッカ! あんた、死者まで冒とくするつもりなのかい!!」 レダはここで初めて怒りを露わにして怒鳴った。 足元から湧いてきた真っ黒いヘドロのようなものは、変形を繰り返し、歪んだ人型のようになっていく。(気持ち悪い動きをしながら、変化していく……) アンデッドたちを見て、カレンは古代遺跡地区の倉庫を思い出した。 ニルが黄泉送りで浄化してくれた、あのミイラたちを……。(何よりも、この数……、五十体以上はありそうね。レダさんはレベッカから目を離せないし、後方にいる殿下は大公一家の相手をしているし……。もしかして、今、自由に動けるのは私だけ!? だけど……、アンデットたちの対処方法なんて知らないわ。う~ん、どうしようかな~。思い切って、ニルさまをここに呼ぶ? 呼んじゃう? でも、私、物じゃないものに移動したことなんて、一度もないのだけど……。 とはいえ、もう出来るとか出来ないとか言ってる場合じゃないよね? 使える力は、何でも使わないと!! 非常事態なのだから!) カレンは即、実行した。―――ニルを異空間へヒュッと引っ張り込んで、この場にポンと排出する。「かんぱ~い!!」 場違いな掛け声と一緒にジョッキを掲げたニルが夜会会場に現れた。「は???」 状況が呑み込めず、ニルは呆然としている。「ニルさま!」「あ、カレンさま」「お願いがあります! これ全部、黄泉送りにして下さい!!!!」 カレンはアンデットたちを指差した。「うえええっ、何、この数~!? ええっと、黄泉送りしたらいいんだよね? あ、じゃあ、取りあえず、これをお願い~!!」 ニルはエールがタップリと入ったジョッキをカレンに差し出す。 カレンは素早く受け取った。「では、ここで彷徨っているアンデッドの皆さ
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夜会 9

 カレンは視線を感じて、エマと騎士(元皇帝)たちのいる方へ目を向ける。「エマ……」 騎士たちはいつの間にかエマに猿轡を嚙ましていた。彼女はもう声も出せない状態だ。 なのに、鋭い視線でカレンを睨みつけている。―――敵意は削がれていないらしい。(エマはまだ私を蹴落とそうとしているのね。もう、手札もないくせに……) カレンはいくら睨まれても、もう怯まない。 背中に心地よいぬくもりを感じているから……。(ここには殿下もレダさんもニルさんもいる。私は一人じゃない) 自信を取り戻したカレンはエマを睨み返したりしない。凛としている姿を見せるだけだ。 ニルとの雑談を終えたレダは再び、レベッカと向き合う。「さあ、もう諦めな。あんたが勝つ見込みはないんだから……」「うるさい!! うるさい!! うるさいんだよー!!!」 レベッカは金切り声で叫んだ。 その際に一瞬だけ、レベッカはカレンに視線を向けた。当然、レダは見逃さない。―――即座にカレンの前へシールドを張る。 ズッ、ドォ~~~ン! レベッカの攻撃はカレンに届かなかった。レダのシールドが全て受け止めたからだ。 (何なの!! この期に及んでまた攻撃を仕掛けてくるなんて! あの人、全く罪を認める気がないのね! もう、許せない!!) カレンはレベッカに右手の人差し指を向けて、大声で啖呵を切った。「レベッカ!! もう、いい加減にしなさい!! いつまでも抵抗せず、嘘を吐いたこと、人を騙したこと、人のものを奪ったことを認めて、深く反省しなさい!!」―――ここで、想定外の事態が発生する。 ヒュン! 突如、カレンの指先から太い金色の光が真っ直ぐに伸び、レベッカの心臓を打ち抜いたのだ。―――その場にいた者たちは予想外の展開に目を見開いたまま固まる。
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夜会 10

 絶叫する、カレン。  なんと! 取り出したブローチから、双頭の蛇が飛び出して来たのである。  しかも、かなり大きいサイズで……。  流石にアルフレッドも驚いて、言葉が出て来ない。  双頭の蛇は、迷いなくニョロニョロと進んで……。  パクッ。 「食べた!? ええええ~、カエルを食べちゃった!! レ、レダさん、どうしたら……」 「ああ、大丈夫。この蛇はそういう蛇だ。このまま見ていてごらん!」  取り乱すカレンとは裏腹にレダはとても落ち着いていた。  レダの言葉を信じて、カレンたちは蛇の動きを見守る。  カエルを丸のみにした蛇はクルリと身を翻し、床に転がったブローチの方へニョロニョロと戻って行く。  徐々にからだが小さくなっていき、ブローチの赤い宝石の周りに絡みついた途端、一気に生気が失われ黄金の輝きを取り戻したのである。  ブローチは呆気なく元通りになった。 「これはどういう……」  カレンは床の上の得体の知れないブローチを凝視してしまう。 「このブローチには悪いものを取り込み浄化するという効果が付いてある。お祓い的なものだろうが……。これはやけに効果が強い」 「レダさん、このブローチ……。実はローラさんのお家の物なのですけど……。どうしましょう?」 「ブッ」  吹いたのはアルフレッドだ。 「―――持ち主と似て強い……」  彼はニヤニヤ笑っている。 「殿下、ローラさんに失礼ですよ!! でも、本当にどうしましょう。流石にこのまま返却したら危険ですよね?」 「大丈夫だろう。あの子なら、クックック」  他人事のようなことを言って、レダも笑い出す。 「ね~、僕もその子に会ってみたい!」  ニルも会話へ参加してきた。 (ニルさま、あ~、えっ! どのタイミングでエールを飲んだの!? 中身が半分以下になってる~~!!)  カレンはニルのジョッキに目がいってしまう。 ―――パンパン!  レダは手を叩いた。 「ともかく! 天罰が下り、レベッカはこの世から消えた。けが人も出ず、めでたし、めでたし!! あとは各国との調整か……。アルフレッド、よろしく頼んだよ」  レダはアルフレッドの肩にポンと手を乗せる。 「ああ、それは俺の仕事だからな。さあ、エドたちを呼び戻そう。話し合いを始める!」 ♢♢♢♢♢♢♢  アルフレッドの指示
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その日は突然やって来た 1

 ほんの少し前まで、マーガレットがランチメニューを占いに来ていた。 レダは相変わらず彼女と最低限の会話しかせず『今日のランチはイカのフリットとチーズリゾットがいいだろう』と、占いの結果を淡々と告げる。 それを聞いて、マーガレットは満足げに帰っていったのだが……。(ご主人の容体が気になって仕方がないのだけど! 今はレダさんの助手としてここにいるから、むやみに話し掛けられないのよね~) カレンはレダの流れ作業のような対応にモヤモヤしてしまう。マーガレットは常連なのだから、もう少し寄り添っても良いのではないかとついつい思ってしまうのだ。「レダさん、明日のマーガレットさんの占いは私が担当してもいいですか?」「ああ、構わないよ」 勇気を出して『お願い』を口にすると、レダはあっさりと許可を出した。「ありがとうございます!」「カレン、マーガレットの夫のことが気になっているんだろ? 占っている間も、背後から熱い視線を感じてたからね~、フフフフ」「分かっているなら、代わりに聞いて下さればいいのに!!」 カレンは頬をプウッと膨らませる。「いや、マーガレットはあたしじゃなくて、カレンに聞いて欲しいんだよ。だから、あたしは余計な口を挟まないことにしておく」(もう! レダさんの意地悪~!!)「―――――ワカリマシタ」 カレンは棒読みの返事をした。レダは楽しそうに笑い声をあげる。相変わらず、黒いフードを目深に被っているので、表情は窺い知れない。「あ~、本当にあんたは面白い顔をするね~。ふっ、ふふふっ……。あら、―――まだ、お昼までは少し時間があるね。冷たいお茶でも飲もうか?」 レダは時計を確認し、カレンをお茶に誘う。(冷たいお茶!! お茶を冷やす魔法を試す時が来たわ!!)「それ、私が淹れます!!」「ああ、よろしく!」 カレンは夜会前の特訓でレダから氷魔法を習ったのだが、あまりにも下手で使用を禁じられてしまったのである。今回の冷たいお茶を淹れるというミッション
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その日は突然やって来た 2

 カレンは人差し指をスッと上に引き上げて、魔力の放出を止めた。続けて、しっかりと冷えているかどうかを手で触って確かめる。「っ、冷たっ!!」 キンキンに冷えていた。ちなみに中に入っている紅茶は液体のままだ。(大成功だわ!) 上手く行ったことに酔いしれる間もなく、カレンはもう一つのグラスを手に取る。(ゆっくりしていたら、最初のグラスの中身がぬるくなってしまう。急ごう……) 同じ手順を繰り返し、無事に二つのアイスティーが完成した。 カレンはふたつのグラスをトレイに載せて廊下へ出る。 なみなみと入っているので、溢さないように気を付けて歩く。―――ふと、ドアをノックする音が耳に入った。(あ、えっ、お客様? ああ~、これ、どうしよう!?) カレンはトレイの上にあるアイスティーを見つめた。(二つしかない……。取り敢えず、お客様とレダさんに出したらいいよね? 少し様子を窺ってから、占い部屋に入ろう) カレンは廊下で聞き耳を立てる。お客様が着席したタイミングでお茶を持っていくために……。「―――レダ、アーロック王国の任務、お疲れ様」(あれ? この声は……)「カール、そのカゴはどうしたの? アルフレッドは?」(ん、この声はレダさんよね? でも、口調がいつもと違う……。えっ、誰?????)「ああ、殿下は忙しいから……。私が君たちのランチを持って来たよ」(やっぱり、お父様だわ!!) カレンは父(シュライダー侯爵)が来たと確信し、肘でドアを押し開けた。「ふぎゃ~~~~~~ぁ!?」 カレンは絶叫する。 シュライダー侯爵がレダを抱き寄せて、口づけをしていたのである。 しかも、いつも目深に被っているレダの黒いフードは首のうしろへ落とされていて、金色の
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その日は突然やって来た 3

 カレンは仲良く寄り添っているシュライダー侯爵とレダを指差す。「ああ、知っている」「どうして、教えてくれなかったんですか!!」「いや、口止めされていたから……」 アルフレッドは素直に答えた。シュライダー侯爵とレダの両方から口止めされていたのは事実だからだ。―――カレンはアルフレッドに近寄って、小さな声で話し掛ける。「(お父様は)独身なのだから、付き合っていることをわざわざ隠す必要なんてないと思うのだけど……。もしかして、娘に知られるのが恥ずかしかったのかしら?」「は?」 アルフレッドはビックリして目を見開く。 カレンの発想についていけなかったからである。(二人がいつ恋人になったのかは知らないけど、もっと早く公表していれば、レベッカに付け込まれることもなかったんじゃないの? もう、何でコソコソ隠したりするのよ!!) 別に二人の恋路を邪魔する気など微塵もないし、相手が占い師兼大魔女のレダなら大歓迎だ。 曇りなき眼で斜め上の方向にベクトルを伸ばしているカレンを見て『これは少し助け舟が必要だな』とアルフレッドはため息を吐く。「レダどの、侯爵、いい機会じゃないか。カレンに真実を洗いざらい話したらどうだ?」「あ~、その方が良いかも知れないね。どうやら、カレンはあたしたちのことを勘違いしているみたいだし」 レダはアルフレッドの提案に賛同する。ところが……。「勘違い? 何を? いや、見れば分かるでしょう。カレン、お前はお父様とレダを見てどう思う?」 シュライダー侯爵はカレンに問う。「二人は恋人同士なのでしょう? だけど、恋人がいるなら、いるって、どうして公表しないの? お父様が優柔不断だから、レベッカに狙われたんじゃないの? 最初から、二人が付き合っていると分かっていたら、レベッカは乗り込んで来なかったと思うわ」「え、ええええ~!」 カレンの見解にシュライダー侯爵は驚きを隠せない。―――愛娘は父の想像をはるかに超える答えを導き出していた。
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その日は突然やって来た 4

 大魔女レダとカール(シュライダー侯爵)の出会いは本当に偶然だった。 現皇帝ニコラスの婚約者を誘拐した大公妃を成敗するため、レダはヴェルマ公国の宮殿に乗り込んだ。 そして、ちょうど、その時、カールは外交官の仕事でヴェルマ公国の宮殿に滞在していたのである。 初めて会った時、レダは血塗れだった。 血塗れの血はボコボコにした大公妃の返り血である。レダは大公妃を再起不能にした。もう二度と悪事を働こうと思わないように……。 レダはそのままの姿で堂々と宮殿を歩いていた。 偶然通りかかったカールは血塗れのレダを見て、彼女が大けがをしていると勘違いしてしまう。 彼は問答無用でレダに駆け寄って、彼女を抱き上げると『大丈夫? 直ぐに医者のところに連れて行くから、もう少し頑張って……』と声をかけた。 レダはビックリしてしてしまう。この血は自分のものではないし、ケガなんて、ひとつもしていないからだ。 『どうするべき~』と思ったところで、レダは彼の襟にニルス帝国の紋章が付いていることに気付く。『ニルス帝国の人?』『そうだ。外交官の仕事でここに滞在している』―――レダは相手がニルス帝国の人間と分かったので、正直にここに来た理由を話すことにした。『いや、実はね~』 レダは正直に自分が大魔女であることを告白した。 そして、大公妃が娘のためにニルス帝国の皇太子の妃の座を狙って、皇太子の婚約者に悪事を働いていたことを簡潔に話し、自分はそのお返しに王太子妃へ鉄槌を下してきたのだと伝える。 無事に誤解は解け、レダは病院送りを免れた。 カールは『鉄槌』という言葉に顔を引きつらせていたが……。 少し行き違いはあったものの、レダはカールのやさしさと勇気ある行動に感動した。これをきっかけに、二人は友人として付き合うようになったのである。♢♢♢♢♢♢♢「そして、しばらくは私も仕事で各国に出向いていたからね。長年、
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その日は突然やって来た 5 (最終話)

貴族の家では社交に忙しい実母のために乳母を雇うのが一般的だ。そのため、産まれてくる子供を乳母に育ててもらっても何の問題も無い。 また、ニックも生まれてくる子は必ず守ると何度もレダに言ってくれた。 レダはカールとニックの心強い励ましに勇気づけられ、天から授かった子を産む決意をしたのである。 ♢♢♢♢♢♢♢ 「そこからは……、ご存じ通りの別居生活だよ。母親が死んだという話は当初、使用人たちの中でこっそりと噂されていたことなんだけどね。誰かが、幼いカレンに告げてしまって、そのままに事実のようになってしまったんだ。一日も娘のことを想わない日は無かったよ。それにアルフレッド、子供のころから変わらず、カレンを大切にしてくれてありがとう」 レダの感謝の言葉を、アルフレッドは胸に手を当てて丁寧に受け取った。 「レダさん、その見た目って本当に今のレダさんなのですか?」 「ああ、そうだよ」 「ということは、私も年を取らないってこと?」 「多分ね」 「どうしよう!! 殿下が先に死んじゃう~!!!」 カレンは頭を抱える。 「いや、いやいや、カレン。そこは『お父様が先に死んじゃうのは悲しいわ』って、いうのではないのかい?」 「お父様は……、どうでもいいです!」 カレンはクールに言い放つ。 「娘が冷たい……」 シュライダー侯爵は悲しそうな表情を浮かべて、レダに抱きつく。 (お父様、もう開き直っているわね。娘の前で堂々とレダさんに甘えるなんて!) 見た目だけは帝国一のハンサムと言われているシュライダー侯爵、そして、カレンと同じ顔をしているレダ。二人がイチャついている姿をみているとカレンは変な感じがしてしまう。 (私とレダさんの見た目が似過ぎているのが問題なのかしら……) 物思いに耽っていると肩をトントンと叩かれた。 「カレン、大切なことを忘れてないか?」 「えっ、何を?」 「俺はこの国の皇帝になる。―――ということは?」 (皇帝……、そうだった! 殿下は次期皇帝……。で、銀狐の皆さんみたいに退位後もニルス帝国のために働くのよね……って、あ!) 「寿命が長い?」 「そう、その通り。だから、俺たちがお別れすることはない」 カレンは「良かった~!!」と安堵の笑みを見せる。 シュライダー侯爵はカレンとアルフレッドの様子を眺めていた。彼の耳元へ、レダ
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番外編・差出人不明の手紙 1

 ある日の朝、カレンが目覚めると枕元に一通の手紙が置いてあった。 厚みのある赤い封筒に金の封蝋。カレンは破かないようにと指先で丁寧に開けていく。 カレンの部屋にはペーパーナイフがないのである。(これからもここで生活していくのなら、一度、シュライダー侯爵邸(実家)に戻って、必要なものを取って来た方がいいわね) カレンは何を取って来ようかなと考えた。幼少期にレダがカレンに贈ってくれたぬいぐるみのデュラは是非持って来たい。 封蝋を剥がし、中にある紙を取り出すと便箋ではなくカードだった。紙からフワリとローズの甘い香りが漂ってくる。(なんてオシャレな演出なの? 封筒には差出人の名前が記されていないわね。カードの方に書いてあるのかしら) カードにはお決まりの挨拶文もなく、短いメッセージだけが記されていた。『カレンへ。つぎの新月の夜、アデンの丘で』「えっ、これはどういう……」 あまりにも情報が無さ過ぎて、カレンは困惑してしまう。 結局、名前はどこにも記されてなかった。「誰からの手紙なの……?」 つぎの新月の夜の日付は確認すれば分かるだろう。―――しかし、夜というのは……?(一体、何時に行けばいいの? 陽が沈んだ後? それとも夜中???) カレンは他に何か書いていることがないか、カードをくまなく確認する。すると、右下に小さな文字で他言無用と書いてあった。「他言無用!? 怪しいわね……」 最初は両手で丁寧に持っていたカードを、カレンは右手の親指と人差し指で摘まんだ。(どうする? 怪し過ぎるから無視する?) フルフルとカードを揺らしながら、指定された場所へ行くか、行かないかを悩む。―――と、そこへコンコンとドアをノックする音が聞こえて来た。「カレン、起きているか?」 アルフレッドの声だ。カレンは手に持っていた
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番外編・差出人不明の手紙 2

 要するにアルフレッドは従来のルールを覆そうとしているのだ。カレンと一緒に居たいがために……。「殿下、今後もここから皇宮へ通い続けるというのは流石に……どうかと思いますよ。。皇子宮の方々も主が毎晩不在では困るでしょう? どう考えても、私がここから皇宮に出勤した方がスマートですよね?」「それは別居婚ということか!?」 アルフレッドはカレンの肩に乗せていた頭を上げて、カレンを見つめる。(近い、近い、近いわ!! しかも、目が怖い……。殿下、怒ってる?)「絶対に嫌だ!! 離れて暮らすくらいなら、俺はこのレダの家を破壊する!!」「な、何を言い出すの? そんなこと……」「俺なら出来る!!」(殿下がいうと本当に出来そうな気がして……怖いわ) カレンは悪寒がした。 なにより『レダの家』には多くの秘密が詰まっている。それに……。「ダメです!! このお家が無くなったら、レダさんはどこに住むのですか!!」「シュライダー侯爵邸でいいだろ!」 アルフレッドは即答する。「それは!」 カレンは反論するために勢い良く最初の言葉を口にしたものの、―――後が続かない。 シュライダー侯爵邸でレダが暮らすのも悪くないと思ってしまったからだ。(実はお父様とレダさんが屋敷で一緒に暮らすのは、何の問題もないのよね~。本当の夫婦だし)「―――そうかも」「だろう」「ただ、そうなってくると……。マーガレットさんが困りますよね~」「ああ、あのご婦人か!」 アルフレッドの脳裏にマーガレットの顔が浮かぶ。―――未だにアルフレッドはマーガレットのことをレダの仕込みではないかと疑っている。 留守番中のカレンへ世間の情報を届けるために用意された駒だったのではないかと……。「ランチメニューを考えるだけだろう。心配なら、皇宮のランチメニューを一か月分ずつ伝えておけばいいんじゃないか?」「それはダメですよ。いつもマーガレットさんが朝市場で仕入れたものを聞いて、メニューを一緒に考えているのですから」「案外、大変だな……」 アルフレッドは密かに『料理が出来なくても、メニューを考えることは出来るんだな』と思ったが、もちろん、口に出さない。「はい、大切な仕事です」「でも、毎日一緒に寝たいから、別居は嫌だ!」 話は結局、振り出しに戻ってしまう。「殿下、珍しく粘りますね」 カレン
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