All Chapters of 訳あり侯爵令嬢は成り行きで身代わり占い師をしています(元婚約者の皇子が相談にやって来ました): Chapter 51 - Chapter 60

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となりの部屋 2

 大きな叫び声を上げ、カレンはへなへなと床に座り込んでしまった。 どうやら、腰が抜けたらしい。その上、魂が抜けてしまったように上半身までも床に突っ伏して、全く動かなくなってしまった。 アルフレッドは『やり過ぎた!』と我に返る。「カレン、大丈夫か?」 アルフレッドは床に跪いた。「ごめん、そんなに驚くとは思わなかったんだ」 彼はいつものようにカレンの頭を撫でようと手を伸ばしたら……。 パシッ。 カレンから、手をはたかれてしまった。―――まるで、拒絶するように。「本当にごめん、子供のようなことをしてしまって……。許してくれ」 アルフレッドは狼狽えながら、もう一度謝った。 カレンは、ただ単にビックリしただけなので、そこまで怒っているわけではなかったのだが、反射的に彼の手をはたいてしまい、引っ込みがつかなくなってしまう。(これ、いつ起き上がったらいい? 殿下、声を聞いただけで落ち込んでいると分かるのだけど……)「カレン、ビックリしてどこか痛くなったりしていないか。大丈夫か?」 今度は床から動かないカレンを心配し出す、アルフレッド。(殿下、やさしい……。どうしよう)―――次の瞬間。 ぐううう……。 最悪なタイミングでお腹の虫が盛大に鳴り響く。二人の間に微妙な空気が流れた。「―――すみません、私です」 カレンは手を挙げて、上半身を起こす。「グフッ」「あ~、もう!! 言いたいことは分かっています。ビックリして腰を抜かした挙句、お腹の虫まで鳴らした残念な女は私!!! ああああ~、滅茶苦茶、恥ずかしい~!!」「いや、笑ってごめん。元気ならいいんだ。そうか、お腹が空く時間だよな」(殿下、フォローする声が震えていますよ。もう!!)「殿下、色々と取り乱して
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愛情オムレツ 1

 カレンとアルフレッドがダイニングルームへ入ると、バターの良い香りが漂っていた。 「レダさん、おはようございます」 「おはよう、レダどの」 「ああ、おはよう。ふたりともいいタイミングで起きて来たね」  レダは黒いローブを目深に被り、左手にフライパン、右手にフライ返しを持っている。  カレンはレダが調理をしている姿を見て驚いた。魔女は魔法を使って料理をするというイメージを持っていたからだ。 「おやおや、何だか失礼な視線を感じるよ。どうせ、あたしが料理をするなんて思ってもみなかったんだろう? ハハハ……」  大声で笑いながら、レダは手慣れた様子で大きなプレートにきれいな形のオムレツをひょいっと載せた。 (レダさん、お料理上手だったのね~。あのオムレツ、とっても美味しそう!!) 「カレン、あんた、そんなに食べ物をジィ~と見つめて……。余程、お腹が空いているんだろうねぇ~」 「ブッ」 「失礼ですよ!! 殿下」  レダの言葉を聞いて噴き出したのはアルフレッドだった。カレンは頬を膨らませて怒る。イチャつく二人を見て、レダはアラララ~と思ったが、余計な口は出さず、ふたりに配膳の手伝いを頼んだ。 ―――食事の準備を整え、三人はテーブルにつく。 「さあ、食事を始めるとしよう」  レダの掛け声に続いて、カレンとアルフレッドは「いただきます」という。  今朝のメニューは、オムレツ、カリカリベーコンがトッピングされたグリーンサラダ、ミネストローネ、白くて丸いパン、そして、飲み物はレモネードが用意されていた。 「私とキュイは、シリアルばっかり食べていたのに…… 。こんなに豪華な朝ご飯が作れるなんて!!レダさん、凄い!!」  カレンは感動を口にしながら、早速、スープを口へ運ぶ。  アルフレッドは先日、初めて食べたポリポリ食感の朝ご飯を思い出した。 「―――あれはあれで、俺は好きだけど?」 「まあ、シリアルも美味しいですよね。だけど、こんなオムレツがここで作れるということに驚いたというか、スープも……」  カレンの話を聞いて、レダは察した。 「なるほど、あんたは料理が……。それで、痩せてしまって、アルフレッドが心配したんだね。盲点だったよ」 (言葉を濁されると傷つくわ……。確かにお茶を淹れること以外、ゆでるとか焼くとかの単純作業くらいしか出来なく
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愛情オムレツ 2

「いや~、あたしはあんたに頼みごとをして、すぐに出かけたから、準備らしい準備もしてあげられなかっただろう? で、どんな部屋にしたい?」(そんな軽いノリで……。レダさんの手に掛かったらお部屋の模様替えなんてたいしたことがないのかもね。う~ん、どんな風にしようかな……) カレンは、サラダをモグモグと咀嚼しながら考える。(窓から見えるヤドリギ横丁の路地には樹木が一本もないから、観葉植物のあるお部屋もいいわね。あとは可愛いパステルカラーのお部屋にも憧れるわ……)「レダさん、パステルカラーの可愛いお部屋に観葉植物を置いて、あとバスルームも欲しいです。家具は……」 カレンは思い浮かべたイメージを全て口に出した。レダはオムレツをパクッと食べて、相槌を打つ。「ああ、分かった。では、仰せのままに……」 そういうと、レダは、左手の人差し指をクルっと回した。「はい、完成!」「えっ!?」(今の一振りで終わりなの? レダさん、凄い!!)「殿下、昨夜、お部屋を作った時もこんな感じだったの?」 カレンは横に座っているアルフレッドに問う。アルフレッドは硬めのパンを咀嚼している途中だったので、取り敢えず首を左右に振って否定した。(あれ、違うの?) カレンの質問に答えるため、アルフレッドはレモネードを流し込んでパンを飲み込んだ。「俺は何のリクエストもしていない。あの部屋はレダどのが用意してくれた」「そうなのですね」「ああ、その通り。アルフレッドの意見なんか聞いていないよ」「レダさん、センスがいいですね。あのお部屋、とても機能的で使い易そうですし、調度品も素敵でした」「まあ~~~、随分と詳しく見て来たんだね、ハハハ」 レダはアルフレッドに向かっていう。「はい、隅から隅まで見て来ました~」 何も気付いていないカレンは
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筋は良いけど珍事を巻き起こすタイプ 1

 午前中のお客様はヤドリギ横丁でビストロを経営しているマーガレットだけだった。カレンは見習いとして後ろへ控え、レダの占いを見学していたのだが……。(レダさんがマーガレットさんを『マーガレット』と呼び捨てにした時点で、私の心臓は一度、止まったわ……) 本物の占い師のレダは淡々とした口調で必要なセリフしか口にしない。だから、水晶で本日のメニューを占って、結果が出たら『カニのクリームパスタ』と言うだけだし、マーガレットも結果を聞いたら、すぐに帰ってしまった。 カレンはマーガレットを『さん付け』で呼んでいたため、初っ端から血の気が引いてしまう。 加えて、毎日ここに来るマーガレットなら、昨日のレダと今日のレダが別人と気付くかもしれないと、ハラハラしていた。なのに、マーガレットは何も疑うことなくサッサと帰っていったのである。 肩透かしを食らったような気分だ。「カレン、満腹でボーッとしているところ悪いけど、そろそろ今日の課題をしようじゃないか」「まっ、満腹でボーッとなんてしていません!! 考え事をしていただけです」 レダは可愛いカレンを見て、つい微笑んでしまう。しかし、黒いフードを目深に被っているので、カレンは彼女の表情を見ることが出来ない。 正午ごろに皇宮から戻って来たアルフレッドはランチに、カニのスープパスタを三人分持ってきた。勿論、味も見た目も、最高の一品である。 食事を終えるとアルフレッドは午後の公務が立て込んでいるらしく、直ぐに皇宮へ戻って行った。「へぇ~、考え事ねぇ」「マーガレットさんのことです」「マーガレット?」 レダは首を傾げる。「はい、最近、ご主人の体調が悪いそうで、お医者様にも長くないと言われたそうです。それで、気になってしまって……」「へぇ~」 レダはカレンの話に興味が湧いてくる。「それと、マーガレットさんは六十年前から、ここに通っていると言われていたので、レダさんとかなり親しいのかな~
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筋は良いけど珍事も巻き起こすタイプ 2

「大正解だよ。いいね~、続けて、第二の課題に行こうか」 レダはリボンを取り出さずに、二つの箱の蓋を閉める。「さて、この箱に入っているリボンをこちらの箱に魔法で移動させるにはどうすればいいと思う? よ~く、考えてみるんだよ」(リボンを隣の箱に移動させる!? 急に難しい問題だわ) カレンは考え込む。 二つの箱の大きさは同じくらいだ。リボンの入っている箱と空っぽの箱の中身を魔法で重ね合わせてしまえば、リボンを動かさなくても移動することが出来る。(何回か空間を繋ぐ魔法には挑戦してみたけど、全然上手く出来なかったのよね……。う~ん、簡単には閃かないわ~) 首を捻ったり、腕を組んで、眉間に皺を寄せたり……、カレンは苦しそうに悩んでいる。―――しかし、ヒントをくれとは言わない。カレンの負けず嫌いなところを見て、レダはフードの奥でニヤニヤしてしまう。「レダさん、ここの食糧庫の食材はもしかして魔法で補充しているのですか?」 カレンは唐突に方向性の違う質問をレダに投げかけた。考え過ぎて煮詰まりそうだったので、一旦、他のことに目を向けてみようと思ったのである。「ああ、そうだよ。だから、ここの食料は尽きないのさ。良く気付いたね」「ええ、飲んでも、飲んでも、牛乳が減らなかったので、流石にこれはおかしいと気付きました。レダさんがお出かけしていても、勝手に補充されるなんて凄いですよね~。ということは……、レダさん、かなりお得意なのではないですか、空間系の魔法を」「そうかも知れないね、フフフ」 身近なところから、想像を広げていこうとするカレンの考え方にレダは感心した。この子なら手助けをしなくとも、いつか正解に辿り着けるのではないかと期待が膨らむ。「ええっと、何となくイメージが湧いて来たかも……知れません。―――『吸い込んで出す』みたいな感じかな? う~ん、ん~、まだ、モヤッとしていますけど……、一度チャレンジしてみます!」「ああ、やってみな!」 カレンは左手をリボンの入った箱、右手を空の箱へ翳した。それから、集中力を高めて、
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素敵なお部屋

 魔法の授業を受けて疲れ切っていたカレンは食事が終わったら、部屋で早めに休もうと決めていた。一方、アルフレッドは仕事が片付いていないのか、まだ『レダの家』へ戻って来ていない。「レダさん、おやすみなさい。殿下にもよろしく伝えておいてください……」「あらら~! カレン、すっかり疲れ切っているじゃないか。アルフレッドにはちゃんと伝えておいてやるから。安心して、おやすみ~」 挨拶を終えたカレンは、二階に上り、自室のドアを開く。「なっ、なな、なにコレ!!」 カレンはすっかり忘れていたのだ。レダに頼んで、部屋を改装して貰ったことを……。(全く違う部屋になってるじゃないの~!! ふわぁ~、とても可愛いわ~!! これを一瞬で完成させるなんて、レダさんは本当に凄い人!!) 今朝まで殺伐としていたカレンの部屋は、完全に姿を変えていた。 壁紙はダークブラウンからライトイエローへ、窓辺のダサい臙脂色のカーテンは消え去り、白い布地を張ったシェードが吊るしてあった。家具もアンティークとは名ばかりの古臭いものから、曲線の美しいホワイトカラーのもので統一され、とても上品な雰囲気になっている。 そして、ベッドのカバー類は麻素材の生成り色のザックリしたものから、光沢のあるピンクと白のストライプに代わっていた。(おおっ~! このカバー、スベスベしているわ~) ベッドカバーを撫でながら、カレンは感動する。とても肌触りが良かったからだ。「いい夢を見られそう……、ウフフフッ」 一人で微笑んでいると、壁際に置かれたオープンシェルフが目に入った。そこには沢山の可愛らしいぬいぐるみが飾ってある。(あれ? ぬいぐるみが欲しいというリクエストはしていないのだけど……。でも、まぁ~、可愛いから、ヨシとする!!) 壁面にはアルフレッドの部屋と同じく二つのドアがあり、その先はバスルームとクローゼットルームだった。 中の装飾もメインルームと同じように可愛いパス
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いつか真実を 1

 カレンが部屋に戻った十分後、アルフレッドが『レダの店』へ帰って来た。「お帰り」「ただいま、レダどの。カレンは?」「何だい、帰ってくるなり、昨日と同じことを聞いて~、アハハハ」「そうだな。―――で、カレンは?」 カレンのことを聞きたくて仕方ないアルフレッドは何と言われようと質問を変えない。レダは苦笑しながら答える。「カレンは、魔法の練習で疲れ果ててしまったんだよ。だから、早く休むそうだ。あんたにおやすみって伝えておいてくれって頼まれたよ」「―――大丈夫なのか?」「ああ、眠ったら回復するだろう。具合が悪くなったり、ケガをしたりはしてないからね」 レダは、今日取り組んだ課題のことをアルフレッドに伝えた。 カレンが自力で空間を繋げることに成功したと聞いたアルフレッドは驚きを隠せない。―――とても一日で習得出来るような内容ではないからだ。「で、あとは数が増えてしまうという点を改善するだけというのか……」 アルフレッドは、顎に手を添えて考える。 金や兵器が増えるだけなら、別に改善しなくても、今回の計画には何の問題もないのではないかと……。 思い切って、レダに話してみると「あたしもそう思うよ」とアッサリ同意されてしまった。「それで、次は何を教えるつもりだ?」「次は自分を移動させる魔法、いわゆる転移魔法だね。あの感じなら、数時間で習得するだろうよ」「数時間だと!?」 アルフレッドは目を見開く。「ああ、今日の空間移動の魔法も、二時間くらいでマスターしたからね」「それは、また恐ろしいスピードだな」「そうなんだよ。嫌でも血を感じてしまうだろう?」 レダは渋い顔をする。「まぁ、本当の親子だからな。仕方がないんじゃないか?」 コンコン。 アルフレッドがレダと気安く話していると、誰かが店の入口のドアをノックした。「こんな時
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いつか真実を 2

 アルフレッドは腹の奥から笑いが込み上げて来る。「ブッ、ハハハハハ」「殿下、そんなに面白いですか?」 シュライダー侯爵は冷静沈着な皇子アルフレッドの見たこともない笑いっぷりに引いてしまう。「いや、フッ、フフフッ、面白過ぎるだろ、アハハハ、器用だな、レダどの」 アルフレッドは笑いのツボにハマっていた。 そんな彼を放って、レダはシュライダー侯爵の方へと向き直り、本題を聞く。「で、何か用事かい?」「いや、単純にここの様子を見に来たんだ。あ~、ええっと、アルフレッド殿下! レダが戻ったので、もうカレンの夜間護衛をしていただかなくても、大丈夫です!!」 レダは、シュライダー侯爵の真意が分かった。 アルフレッドが、ここへ泊るのを、彼はいいと思っていないのだと。「侯爵、心配には及ばない。俺は夜間護衛のためにここに来ているわけじゃない。俺はカレンと一緒に居たいからここに居る。皇宮へは帰らない」 気合で笑いを引っ込めたアルフレッドは堂々と宣言した。 レダはカレンの気持ちを知っているので、少しアルフレッドの肩を持ってやろうと口を開く。「カール、あたし、この家に殿下のお部屋を作ったんだ~。使わないと勿体ないだろう」「えっ!? 殿下のお部屋!? 私の部屋は無いのに!???」 アルフレッドは『侯爵、そこじゃないだろう?』と突っ込みたかったが、余計なことを口にするのは止めた。 少し黙り込んだ後、シュライダー侯爵は口を尖らせてレダに言う。「ならば、私の部屋もここに作ってくれないか?」―――残念ながら、このお願いは即却下された。レダの告げた理由は簡単明快。シュライダー侯爵がここに部屋を作って貰える理由(夫婦だから)をカレンが知らないからである。「ああ、私だけが蚊帳の外なんて、酷すぎる!!」 嘆くシュライダー侯爵をレダとアルフレッドは全力で宥なだめて、今夜は、お引きとりいただいた。ーーー侯爵を見送った後、ドアにカギを
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夜明け前に 1

 目を開くと部屋の中は暗く、辺りは静寂に包まれていた。(疲れて、早く眠ってしまったけど、今、何時?) カレンは掛け布団を持ち上げて、上半身を起こす。 サイドテーブルの上に置かれた時計を確認すると時刻は四時を少し過ぎたところだった。(微妙に早い時間……。もう少し眠ろう……) 再び、横になってみる。しかし、眠れそうな気が全くしない。 カレンはすぐに諦めて、ベッドを降りた。部屋に明かりを灯し、身なりを整えるため、バスルームへ向かう。 鏡に映る自分の姿を見て、先ほどの夢を思い出した。―――――それは遠い記憶のような夢。 夢の中でうさぎのぬいぐるみ『デュラ』をかかえた幼子カレンが、“誰か”に抱かれていた。部屋はシュライダー侯爵邸の一室。 ゆらゆらと優しく揺られていると、春の女神さまの歌が聞こえてくる。 幼子カレンはその“誰か”を見ようとした。目の前で、サラサラの金髪が揺れているのは分かるが、その声の主の顔には靄が掛かっていて、どんな表情をしているのか分からない。 やがて、声も風景も薄れていって……、目が覚めた。(歌をうたっていたのは私のお母様だったのかしら? 今まで何の記憶もなかったのに、突然、夢に出て来るなんて……、不思議ね)「お母様の顔が見えなかったのは、恐らく私の記憶に残っていなかったからよね~」 鏡の中の自分を覗き込み、自身の髪を指で摘まむ。「この髪の色はお母様からの遺伝?」(夢の中にいた“誰か”は金髪だったわ。もしかすると私の金髪とコバルトブルーの瞳はお母様から受け継いだのかも。お父様はお母様の話を避けようとするし、屋敷にはお母様の絵姿が全く残されていないから、今まで想像したことも無かったけど……)「だって、この髪もこの瞳もお父様とは似ていないし」 シュライダー侯爵は帝国の貴族の中で特に端正な顔立ちをしている男性として有名だ。髪色は濃いブラウンで、瞳の色はブルーグリーン。 一方、カレンは柔らかな雰囲気の美しい顔をしていて髪色は金、瞳の色はコバルト
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夜明け前に 2

 ダイニングルームでカレンがお湯を沸かしていると、アルフレッドが二階から降りて来た。「殿下、おはようございます」「おはよう、カレン。疲れは取れたか?」 アルフレッドはカレンに近寄り、チュッと頬へキスをする。(わっ! 急に!?)「殿下、ダメです。ここはプライベートな場所ではないので……」 慌てるカレンをみて、アルフレッドは微笑む。「では、次はカレンの部屋に招いてくれないか?」「ええ、勿論!! 私のお部屋はと~っても可愛くなりました。レダさんのおかげで!!」 カレンはアルフレッドの下心を勘繰ることもなく、溌溂と答える。「俺、カッコ悪いな……」 カレンに聞き取られないくらいの声でアルフレッドはボヤく。「えっ? 何ですか?? やかんから出る音がうるさくて~。すみません、聞こえませんでした」「いや、その、可愛い部屋を見るのが楽しみだなと……」 アルフレッドは言葉尻を濁す。「ええ、お楽しみにしていて下さい!! 殿下も何か飲みます? あ、シナモン入りのミルクティーとか、いかがですか?」 カレンは以前、ニコラスが気に入って何回もお代わりをした一品を、アルフレッドへ勧めた。アルフレッドはコクリと頷く。(親子でシナモンが大好きなのね!) アルフレッドが大好きなのはシナモンではなく、頬を染めながら可愛く質問してくるカレンだ。しかし、本人(カレン)には全く伝わらないのである、残念なことに……。―――――ふたりでソファへ腰掛け、湯気の上がる飲み物を口へ運ぶ。「おっ! これは美味しいな。ありがとう、カレン」「どういたしまして~」 互いに微笑み、優しい空気に包まれる。 窓の外も明るくなってきた。そろそろ夜明けを迎える時間のようだ。「カレン、昨日、難しい課題に取り組んだのだろう? レダどのに聞いた」
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