All Chapters of 訳あり侯爵令嬢は成り行きで身代わり占い師をしています(元婚約者の皇子が相談にやって来ました): Chapter 31 - Chapter 40

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実力不足 1

 美味しいお昼ご飯を持って来てくれた麗しき皇子さまは、この後、海軍の司令塔へ向かうのだという。 楽しいランチタイムで、カレンの憂鬱な気分は一気に解消された。 これなら、午後も頑張れそうだ。 そんなカレンは今、“春の女神さま”という童謡を鼻歌で歌いながら、午後のお客様を迎える準備をしている。(こんな風にテーブルを拭いたり、床を軽く掃いたり……、今まではキュイが手伝ってくれていたのよね。いざ一人になると、そういう細々としたことも自分でしないといけないから大変だわ。―――だから、殿下が食事を持って来てくれるのはとても助か……、嬉しいわ) アルフレッドのしてくれることには一つ一つ意味があり、温かな愛情を感じさせてくれる。 そう、カレンが彼の婚約者だったころと同じように……。今も昔もアルフレッドは言葉だけではなく、態度でもカレンを大切だと証明してくれているのだ。 一方、カレンはアルフレッドに対して、まだ婚約者の座にいるエマの存在が気になり、上手く心を開くことが出来ない。(この殿下のやさしさに触れた後に、また引き離されるようなことがあったら、私は絶望の淵より、もっと深いところへ落ちてしまう) カレンはアルフレッドや陛下、シュレイダー侯爵と再会し、急に外の世界への関心が高くなっていく自分に驚きを隠せなかった。 目が覚めたかのような感覚、それはきっと無気力に過ごしてきたこの生活の終わりが近づいて来ているのだろう。 だからといって、レダの身代わりをするという約束をした以上、『レダの家』から勝手に出て行くわけにはいかない。(レダさんが戻ってくるまでは……) もどかしい気分で窓辺から、外を眺める。 いつの間にか空には厚い雲がかかっていた。風も吹き始めていて、窓枠がガタガタと揺れている。もうすぐ、雨粒も落ちて来るだろう。こんな日は海も荒れるに違いない。 (海……。商船……)――――アルフレッドは出掛ける前に、海軍の指令室に行く理由を話してくれた。外が荒れていく様子を見ていると頭の中に彼の言葉が浮かんでくる。 『イシュ
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実力不足 2

カレンは閃いた。 (例えば、オルセント王国の街道のポイントAと、ニルス帝国の街道のポイントBを魔法で繋げば、封鎖された区間を飛び越えることが出来る。そうすれば、海で待ち構える悪い輩に怯える必要もないわ) 「ただ、この“魔法倫理学”の本によると、空間を繋ぐ魔法を使う場合は細心の注意が必要だとしつこく書いてあるのよね~。あと、魔女が一つの国家に肩入れしてはならないとも……」 (それって……、例えば、私がこの空間を繋ぐ魔法で、ニルス帝国と各国を魔法で好き勝手に繋いでしまったら、この国がとてつもない力を持ってしまうと危惧しているのよね) 「言いたいことは分かるわ。悪用したらどこまでも危険だということも……。だけど、今は非常事態よ。 そんなことを言っていられないと思うのだけど……。何より、悪用するつもりなんて微塵もないし」 ただ、この方法には一つだけ問題がある。それはカレンが空間を繋ぐ魔法を習得していないということ。 そもそもカレンは魔法使いの修行をしたことがない。今、持っている魔法の知識は『レダの家』の書庫にある“魔法に関する本”で得たものだけだ。 (こんな状況になる前に魔法の使い方をもっと学んでおくべきだったわ。お父様もレダさんと知り合いなら、“娘に魔法を教えてくれないか?”とお願いしてくれたら良かったのに!!) 「でも、レダさんはキッパリと断りそうな気もする」 (う~ん、どうにかして、空間を繋ぐ魔法を習得出来ないかしら……) 再び窓に目を向けるとガラスに水滴がついている。考え事をしているうちに雨が降り出したようだ。 コン、コン、コンコンコン!!! 強めにドアをノックする音がした。油断していたカレンはビクッとしてしまう。 慌てて、フードを目深に被り直し、ドアの前へ。 (え!!!) 開錠して、ドアを開けるとカレンが、今一番会いたくない相手が立っていた。 豪華なフリルが幾重にも重なったアンブレラを手に持ち、胸元の豊かさを強調した濃い紫色のドレスを身に纏っている女。―――ヤドリギ横丁には不似合いのAラインのドレスは裾が大きく広がっていた。舞踏会にそのまま行けそうなくらいに……。 (毒々し過ぎるその恰好は何なの! それにどうして、ここを知っているのかしら) カレンは、フードの奥で眉を顰める。 「ちょっと! ドアを開けるのが遅
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論点のズレも可愛いから許す

――――――その日の夜半。 アルフレッドは『レダの家』で、カレンの夜間警護をするため、皇宮から魔法を使って、ヤドリギ横丁へ降り立った。 しかし、あるべき場所に店がない……。―――この状況はアルフレッドも流石に動揺してしまう。「これはどういうことだ……」 見覚えのない赤レンガの壁に手を当てて、彼は思考を巡らす。 しかし、答えは見つからない。アルフレッドは周囲に人影が無いことを確認して、銀狐の姿へ変化した。この姿なら魔法を存分に使うことが出来る。 再び赤いレンガに手を当てて、魔力を通し、ここで今日あったことを脳内で映像化した。「これは……! 何と言うことを!!」 エマがアンブレラでカレンを殴りつける場面を見て、アルフレッドは腸はらわたが煮えくり返る。しかし、次の場面で……。「店が!?」 アルフレッドはエマを外へ弾き出し、ドアが勝手にパタンと閉まるのをみて、『レダの家』がカレンを助けたように感じてしまった。 正しい状況が分かったのは良いが、アルフレッドの前にはまだ難問が立ちはだかる。それは、消え去った店に入る方法だ。 赤いレンガをさすりながら、彼はどうやってここを突破しようかと考える。「早くしないと、カレンが心配だ……」 思わず口から不安が出てしまう。 次の瞬間、僅かな振動を手に感じ、アルフレッドはパッと壁から手を放した。 ここで、赤いレンガの壁に変化が起きる。壁がグニャリと歪み始めたのだ。 アルフレッドが呆気に取られている間に元通りの『レダの家』が現れる。「いや、どうして、戻ったんだ?」 きっかけが分からない。魔法で結界を張っているようでもなかった。 アルフレッドは未知の力で動く『レダの家』に首を傾げる。「まあいい。カレンの安全を確認するのが先だ」 彼は銀狐の姿から、元の人間の姿へ戻った。 そして、店内にいるカレンの様子を確認しようとドアノブを握る。カギは掛かってなかった。 慎重にドアを開ける。先程の再現映像通り、カレンは床に倒れていた。 アルフレッドは屈みこんで、カレンの様子を確認する。脈は正常、呼吸も正常、熱は平熱。アンブレラで叩かれたこめかみのあたりに少し出血した跡があり、血が固まっている。 頭からローブを被っていたのが功を奏し、酷い傷は負っていないようだ。―――アルフレッドは彼女を抱え上げて、寝室のベッドに
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誰でも最後は死にます 1

 「それでね、皇帝陛下が早朝五時に市場へ現れてね。それはもう大騒ぎだったんだよ。だって、陛下の尊いお顔をあんなに近くで見られるなんてさ~」 本日も朝一で『レダの家』にやって来たビストロ経営者のマーガレット。彼女は部屋に入って来た時から、市場で陛下に会った~といって興奮している。  彼女はヤドリギ横丁の住民だが、昨日の午後にここでレダ(カレン)が、シュレイダー侯爵家のエマ嬢に襲われたことは知らないようだった。 (陛下が自ら帝国民の前に姿を現すだなんて、珍しいわね。どうしたのかしら?)「マーガレットさんは、陛下と何かお話をされましたか?」「いいや、私は遠巻きに見ていただけだよ。恐れ多くて話なんか出来ないよ」「恐れ多い!? マーガレットさんが?」「そうだよ、ハハハ」「ウフフフフ」 いつも豪快なマーガレットから、恐れ多いという言葉が出て来て、カレンはつい笑ってしまった。(市場がそんなに大騒ぎだったのなら、マーガレットさんは食材を手に入れられたのかしら)「仕入れは大丈夫でしたか?」「ああ、そこは抜け目なくやってるよ。今日は、いいクロマグロが入荷していたんだ。しっかりと手に入れて来たよ」「クロマグロですか、とっても美味しそうですね~! お野菜は?」「ああ、状態のいいアボカドが入って来たよ。玉ねぎやレモンなんかもね」 マーガレットの話によると港にお向かいのアーロック王国から大きな船が入り、食品も含め、多くの積み荷が運ばれて来たのだという。(―――アーロック王国って、まさかローラさん絡みではないわよね? エドリック王子が彼女を追って来たとか……。それは流石に出来すぎかしら?)「東方の街道が封鎖されている時に、食料品が入って来るなんて、タイミングがいいですね」「そうそう! そうなんだよ~。レダ(カレン)、あんた思ったより世間のことを考えていたんだね。今まで無関心なのだと思ってたよ」(あ、マズイ……。心を開き過ぎた?? だけど、マーガレットさんとは毎日会うのだもの、親しくならない方が、おかしいわ……)「ええっと、変なことを聞きますが……。マーガレットさんは、ここへ通い始めて何年くらいになりますか?」「あらま~、あんた、またそんな他人行儀な質問をしてくるのかい? そうだねぇ~、最初はおとうちゃんと一緒に来ていたからね。それも入れたら、六十年近いか
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誰でも最後は死にます 2

「そうかい。それじゃ、あんたもいつかは死ぬってことだね」 何となく、話が不穏な方向になって来て、カレンはハラハラしてしまう。 いつも朗らかなマーガレットの口から『死ぬ』という言葉が出て来たからである。「ええ、誰でも最後は死にますから……」 何となく言葉尻を濁してしまう、カレン。 想定外の重い話題など対処し切れない。(早く話題をかえよう。死について語れるほど、私は人生経験もないし) カレンは黒いフードを両手で引っ張って、目深に被り直した。「レダ、勝手にフードを引っ張って悪かったね。あんたに当たるのはお門違いだと分かってはいるんだ。―――実は旦那の調子が悪くてね。もう長くないと医者に言われているんだ。店は息子たちが手伝ってくれているから、大丈夫なんだけど……。やっぱり、お別れが近いと思うと悲しくてね。あんたに、つい恨み言をぶつけてしまった。ごめんよ」 マーガレットは深く頭を下げた。 カレンは言葉を失う。朗らかなマーガレットの中にそんな苦悩が隠れているなんて全く気付かなかったからである。(毎日、会って話していたのに……) 目の奥から湧き上がってこようとする涙。―――カレンは視線を上に向けて、必死に堪える。そして、声が震えてしまわないように呼吸を整えて、マーガレットへ語り掛けた。「マーガレットさん頭を上げて下さい。私こそ、何も知らなかったとはいえ『誰でも最後は死にます』なんて、無神経なことをいって、ごめんなさい」 マーガレットはゆっくりと頭を上げた。とても悲しそうな顔をして……。「マーガレットさん……」「ああ、気にしないでくれ。あんたは長生きが故、人と親しくなり過ぎないように気を付けていると分かっていたのに……。つい、話してしまったんだからさ」 マーガレットの表情が少し和らいだ。カレンは胸を撫でおろす。 何か上手い言葉を掛けてあげたいと考えてはみたが……。 カレンの紡ぐ薄っぺらな言葉では、マーガレットの心の支えにならないかも知れない。(これは偽占い師だからというよりも、私の人生経験が足りないという問題?―――うううん、違うわ。こういう時は綺麗な言葉を並べるよりも、無垢な言葉で良いじゃない。―――恰好をつけることばかり考えて、上手い言葉が見つからないからって、何も言わずに黙っておくのが一番ダメよ!)「―――マーガレットさん……」 カ
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エドリックの事情 1

 普段は使わない素敵なカップを食器棚から取り出しつつ、カレンはどうしてこんなに身代わりがバレてしまいそうなピンチが続くのかと、頭を悩ませる。(さっきはマーガレットさんに顔を見られてしまったし……) しかし、この家のおかげなのか、はたまた他の理由なのかは分からないが、何故かバレずに乗り切ることが出来た。 そして、マーガレットが帰った直後、アーロック王国の王子エドリックとローラが『レダの家』にやって来たのである。 目まぐるしい展開にカレンは息を呑んだ。だが、二人を追い返すわけにもいかない。 一先ず、二人をソファーに案内し、「ダイニングでお茶を用意してきます」と言って、カレンは部屋から逃げ出した。――――というわけで、今、カレンは二人に出すお茶を用意している。(お茶を淹れながら、気を付けないといけないことをおさらいしよう。このまま、何も考えずにあの人たちと話したら、絶対にボロを出してしまうわ……) やかんを火にかけ、ティーポットに茶葉を入れて、お湯が沸くのを待つ。 カレンはやかんから上る湯気を、ボーっと見つめているうちに、昔のことを思い出した。「あの日、皇宮のティーマナーの先生に三人揃って、紅茶の淹れ方を教えてもらったのよね~」―――五年ほど前、皇宮に有名なティールームのオーナーを先生として招き、ティーマナーについて講習を受けた時のことだ。 第一回目、午前中は紅茶の産地、銘柄、味わいや香りの特徴を一通り講義してもらい、午後はお茶の入れ方を実践していく。 そして、授業の最後に三人は先生に習った手順でお茶を淹れた。 先生から絶賛されたのはアルフレッドで、香りも味も温度もバッチリとのこと。次に上手だったのはエドリックだったが、彼はアルフレッドに負けたことで、何を褒められてもニコリともしなかった。 言わずもがな最下位はカレンである。茶葉の蒸らし方が悪く、カップを温めるのも忘れていたため、酷評を貰った。 第二回目は先生ご自慢の自宅ガーデンでお茶会の際のマナーを学んだ。 アルフレッドに勝てなくて悔しかったエドリ
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エドリックの事情 2

「王子殿下、一度、現状の確認をさせて下さい」 レダはそれらしく、エドリックの方向へ右手を掲げてみせる。エドリックは一度、首を捻ったものの、手の位置に合わせて頭を下げてくれた。(よし、素直に従ってくれて良かった! 魔法でエドリック王子の記憶を辿って、レダさんから手紙を受け取った時のことを見れば、この会話の謎が解けるはずよ。何か有力な情報が一緒に出て来てくれたら、もっと嬉しいけど) カレンは声に出さずに呪文を詠唱し、エドリックの記憶へと侵入していく……。――――見えて来たのは、大きな柱が立つ大広間だった。黒いローブを被った人が、玉座にいる人物たちと話をしている。(これはレダさん? アーロック王国で国王陛下やエドリック王子と謁見しているところみたいね) カレンは人物たちに近づいていく。すると、会話が聞こえて来た。「魔女殿、それはどういうことだ?」「国王、簡単に言おう。この国を潰そうとしている黒魔女がいる」「潰すとは、どういうことだ。魔女が人間社会に口を出すのは禁忌であろう?」「そうだ。ふつうの魔女は人が作った国になんか興味はない。だが、黒魔女は違う。奴らは権力を欲しがる強欲な者に近づき、力を貸して遊ぶのさ」「魔女殿、遊ぶとはどういうことですか!」 レダに食って掛かったのは、エドリックだった。「ああ、王子。分かりやすく教えてやろう……」「黒魔女という生き物はね、世界を自分のものにしたいというような強欲な王が現れるのを待っているんだ。そして、それに加担して、周辺の国をいたぶる手伝いを嬉々としてする。そして、最後はその強欲な王までをも滅ぼしてしまうんだよ」「どうして、そんなバカなことを!」 エドリックは憤る。しかし、レダは至って冷静だ。「遊びだよ。黒魔女はそれを楽しい遊びだと思っている。彼女に人間の常識は通用しない」「魔女殿、黒魔女は一人なのか?」 国王はレダに問う。「ああ、あたしが知っているのは一人だ。だが、他にいないとは言えない。何せ、魔女は魔女同士で連
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エドリックの事情 3

レダは、懐から手紙を取り出した。そして、それを目の前にいる国王ではなく、横に立っていたエドリックへ渡す。「僕に?」「そうだ。あんたが動くんだ。いいかい、驚いちゃだめだよ。今から、よーく国王を見ていてごらん」 エドリックはレダの言っている意味がさっぱり分からなかった。 すると、次の瞬間、レダはいきなり国王の手首を掴んだ。「え~っ!?」 エドリックは驚きの声を上げた。なぜなら、国王の姿が一気に縮んで小さな人形に変わってしまったからだ。(こ、これって、先日のお父様の人形と同じパターンじゃないの!! この国と同じことが、アーロック王国でも起こっていたってこと?)「ち、父上、いや、陛下は、陛下の命は……。これは今、いや、え~っと、貴殿が何かしたのか!?」 混乱気味で質問を投げかけるエドリック。レダは手に提げていた人形を腕に抱きなおしてから、こう告げた。「国王はこの人形がもとに戻った瞬間、呪いから解放される。だから、今、何処かで目覚めたはずだ」 レダは腕に抱えている人形の眉間に指を当てる。「あー、この人形は、一年ほど前に作られたようだね。――――ということは、一年もの間、偽物人形がこの国の国王だったというわけだ。王子、あんたはこれから忙しくなるよ。まず、ここ一年分の国王が関与した案件をすべて確認して、おかしなところは速やかに元へ戻すんだ。そして、この手紙の中には、あんたの大切な人を守る方法が書いてある。大切な人を失いたくなかったら、急いで取り掛かりな! すべて終わったら報告もかねて、ニルス帝国のヤドリギ横丁にある『レダの家』へ来ておくれ。その頃には、あたしも諸々の仕込みが終わって、家に戻っているだろうからね」「ちょっと待ってください。その父上の……、何処かって、何処ですか。分かるなら教えて下さい」「そんなに遠くには感じないから、この王宮の中だろう。わざわざ探しに行かなくても、自力で直ぐに出て来る」「それとこの手紙……。僕が実行出来なかったら、どうなりますか?」
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簡単に信用してはいけません 1

 この気まずい状況でアルフレッドを待つのは嫌だなぁ~と思ったカレンは、先ほどから静かにしているローラへ話しかけてみることにした。「ローラさん、昨日はどちらへお泊りに?」「―――遠縁の者がおりまして……」 言葉を濁し、気まずそうに答えるローラ。その様子を見て、カレンは聞かない方が良かったのかもと、早速、後悔してしまう。「ローラ、遠縁の者とはカミルのこと?」「ええ、そう。いまは、王都のシュライダー侯爵家の調理場で仕事をしているの」(ん?――――シュライダー侯爵家って、私の家じゃない!!)「ああ、カレンのところか! ローラ、カレンのことは前に話したことがあるだろう。この国の皇子アルフレッドの元婚約者で僕も幼いころから親しくしている。彼女はシュライダー侯爵家のご令嬢なんだ」「えええ、そうなの? 私、昨日、敷地内にある使用人の寮に泊めてもらったのよ」「使用人の寮!? 何故、宿に泊まらなかったの?」「だって、お父様に見つかってしまうから」「まさか公爵に黙って、ニルス帝国まで来たの!?」 エドリックの問いにローラが頷く。「どうしてそんなことを?」「それは……」 ローラは上目遣いでカレンを見上げる。『昨日のことは秘密にします』という意味を込めて、カレンは二回頷いた。(なっ!! もの凄く気まずいんですけど~!! ついでに、我が家の使用人とローラさんが知り合いだったことも驚いたし、その上、使用人専用寮に泊まったって言ってたわよね??? もっと詳しく聞きたい!! だけど……今の私は、魔法使いで占い師のレダさん……) カレンは口を挟みたくても挟めない状況に、もやもやとしてしまう。「―――まあいい、ともかく君が無事で良かった。今だから言えるけど、ローラは僕の婚約者だというだけで、悪い奴に狙われる可能性があったんだ。だから、僕はレダ殿の指示で……」「あ――――!!」 カレンは声を上げて立ち上がり、エドリックの口を左手で塞いだ。(ダメ~、レダさんの話をされたら
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簡単に信用してはいけません 2

 カレンはそう言うと、アルフレッドの腕を引っ張って、廊下へ連れて行った。アーロック王国二人を占い部屋に放置してしまったが、もうそんなことを言っている場合ではない。「カレン、どうしたんだ?」「殿下、お話しをする前に言っておきます。今の私はレダです。絶対にあの二人の前で言い間違えないで下さいね」「俺、レダどのと恋仲だなんて、思われるのはちょっと……」「そんなことを言っている場合ではないです!」 カレンはアルフレッドの目をキッと睨む。「そ、そう……か?」「プレイボーイのフリでもしておいてください」「プレイボーイ……」「では、今日の出来事をかいつまんで話しますね」 カレンはエドリックの記憶に入り込んで得た情報をアルフレッドに伝えた。「なっ! アーロック王国も国王が身代わり人形に……。 手口が全く同じじゃないか!」「そうです。それで、レダさんは今後の対応をエドリック王子に書面で渡して、早急に対処するようにと指示を出したのです。ただ、その書面というのが封筒へ入っていまして……。私には内容を確認する術がなく。指示内容が分からなくて」 カレンは両手で頭を抱える。「エドリック王子は指示されたことをすべて終わらせてここへ来たと言われてたのですけど、私はレダさんの指示した内容が分からないので、どう対応したらいいのかが分からず、行き詰まってしまって……。とどのつまり、殿下に何とかして貰おうと思って、あの二人を待たせていたんです」「―――なるほど、それは難問だな。というか、カレンが人の記憶を読めるという話を俺は初めて知ったのだが……」(あ……!!)「もしかして、今までその力を使って、占い師のフリをしていたのか!?」「そ、それは……。そうかもしれない……ですね」「その顔……。どうせ、俺の記憶も見たことがあるんだろう?」 アルフレッドの鋭い指摘を受け、カレンはス~ッと視線を逸らす。「まあ、それは置いておいて、今はエドたちをどうするのかが先決だな。―――カレン、俺にいい考えがある、任せておけ」「殿下、流石です!! お任せします」 アルフレッドの力強い言葉を聞いて、カレンはホッとする。 占い部屋へ戻る前に、アルフレッドは被っていたフードを後ろへ下した。もはや、皇子であることを隠す必要がなくなったからである。――――再び、占いの部屋へ。 ドアを開けて
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