美味しいお昼ご飯を持って来てくれた麗しき皇子さまは、この後、海軍の司令塔へ向かうのだという。 楽しいランチタイムで、カレンの憂鬱な気分は一気に解消された。 これなら、午後も頑張れそうだ。 そんなカレンは今、“春の女神さま”という童謡を鼻歌で歌いながら、午後のお客様を迎える準備をしている。(こんな風にテーブルを拭いたり、床を軽く掃いたり……、今まではキュイが手伝ってくれていたのよね。いざ一人になると、そういう細々としたことも自分でしないといけないから大変だわ。―――だから、殿下が食事を持って来てくれるのはとても助か……、嬉しいわ) アルフレッドのしてくれることには一つ一つ意味があり、温かな愛情を感じさせてくれる。 そう、カレンが彼の婚約者だったころと同じように……。今も昔もアルフレッドは言葉だけではなく、態度でもカレンを大切だと証明してくれているのだ。 一方、カレンはアルフレッドに対して、まだ婚約者の座にいるエマの存在が気になり、上手く心を開くことが出来ない。(この殿下のやさしさに触れた後に、また引き離されるようなことがあったら、私は絶望の淵より、もっと深いところへ落ちてしまう) カレンはアルフレッドや陛下、シュレイダー侯爵と再会し、急に外の世界への関心が高くなっていく自分に驚きを隠せなかった。 目が覚めたかのような感覚、それはきっと無気力に過ごしてきたこの生活の終わりが近づいて来ているのだろう。 だからといって、レダの身代わりをするという約束をした以上、『レダの家』から勝手に出て行くわけにはいかない。(レダさんが戻ってくるまでは……) もどかしい気分で窓辺から、外を眺める。 いつの間にか空には厚い雲がかかっていた。風も吹き始めていて、窓枠がガタガタと揺れている。もうすぐ、雨粒も落ちて来るだろう。こんな日は海も荒れるに違いない。 (海……。商船……)――――アルフレッドは出掛ける前に、海軍の指令室に行く理由を話してくれた。外が荒れていく様子を見ていると頭の中に彼の言葉が浮かんでくる。 『イシュ
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