All Chapters of 訳あり侯爵令嬢は成り行きで身代わり占い師をしています(元婚約者の皇子が相談にやって来ました): Chapter 21 - Chapter 30

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菜の花色のテーブルクロス

 ニコラス陛下とシュライダー侯爵を見送って、しっかりとカギを掛けてから、ダイニングに移動した。 アルフレッドはテーブルの上にバスケットを下ろし、中から食事を取り出していく。 皇宮から持って来ただけあって、色とりどりの食材が使われていて、目で見ているだけで楽しい気分になって来る。 こんな食事はいつ以来だろう。カレンは感動のあまり、その場で立ち尽くしてしまった。「カレン、栄養のありそうなものを持って来た。無理せず、食べられるものだけ食べてくれ」「殿下……、ありがとうございます!!こんなに美味しそうなお食事は久しぶりで、とっても嬉しいです!!」「ああ、喜んでもらえたのなら良かった。さあ、席について食べよう」「はい!」 カレンが腰掛けようとすると、アルフレッドが椅子を引いてくれた。(こんな扱いを受けるなんて、いつ以来!? 私、ここの生活にすっかり馴染んでしまっていたのね) 薄れかけていた記憶を頼りにカレンは優雅な所作を心掛けて腰掛ける。 いつの間にかテーブルには菜の花色のテーブルクロスが掛けてあり、その上に大きな白い皿一枚とスープカップがひとつ、グラスとマグカップ、そして、ピカピカに磨かれた銀のカトラリー類がきれいに並べてあった。(えっ、これを全部抱えて来たの!?)「殿下、リネン類や食器までご持参されたのですか?」「ああ、テーブルクロス一枚でも、気分転換になるだろう? ここは外から遮断された空間のようだから、少し季節を感じるものを持って来たかったんだ」「お気遣いありがとうございます」「残念ながら、給仕する者までは連れて来られなかった。だから、食べたいものは自分で取ってくれ。右からシーフードのグリルが乘ったサラダ、子ヤギのロースト、白アスパラのスープ、スモークサーモンとクリームチーズのカナッペ、野菜のフリット、バケットとクロワッサンにはブルーベリージャムとバターを。デザートはプディングとボンボンショコラが二種類。フルーツはぶどうとりんごを持って来た。飲み物は冷やした紅茶と温かいコーヒーだ」
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パッチワークのカバー

「カレン、何か飲むか?」「いえ、今は大丈夫です。殿下、お先にお風呂へ入られます? シャワーしかありませんけど」「ああ、借りる。バスルームは何処にある?」「一階の廊下の突き当りの左側です。タオルなどは脱衣所に置いてあります。着替えはどうします?」「警護の指令を受けてるから、このままでいい。ありがとう」「いえ、昨日も拘束したまま寝ていたでしょう、疲れてませんか?」「大丈夫だ。寧ろ、昨夜はいつもより睡眠時間が長い」 アルフレッドは苦笑している。カレンはふと気付いた。昨夜、アルフレッドはカレンのベッドで眠っていたということを……。(どちらかというと、私の方が疲れていた……?)「カレンこそ、今夜はベッドでしっかりと眠った方がいい」「そうさせてもらいます。では、行ってらっしゃい」「ああ」 アルフレッドは浴室に向かった。 カレンが、ふとテーブルを見ると、きれいに片づけてある。(殿下があんなに沢山のお料理を持って来てくれるなんて思わなかった。人の作ったご飯を食べるのも久しぶりだったし、しかも美味しいし……、お腹がいっぱいになるまで食べちゃった!!) カレンは、アルフレッドのことを何でも知っていると思っていたのだが、彼がこれほど身の回りのことをテキパキとする人だとは知らなかった。(もしかして、殿下は普段から身の回りのことを自分でしているのかしら?) 実は鉄壁の皇宮がどういう体制なのか、婚約者だったカレンでも知らないことが沢山ある。―――同じ家門のみで引き継いでいくという使用人たちとはどういう感じなのだろう?(今まであまり考えたこともなかったけど、殿下に聞いたら教えてくれるかな。でも、機密だから言えないって、断られる可能性も十分あるわね) 幼少期に婚約者になってから、お妃教育を皇宮の一室で連日受けてきた。様々な分野の専門講師が皇宮に集められ、アルフレッドと共に多くのことを学んだ。しかし、改めて考えると皇宮の体制や歴史などを深く知る機会はなかったように思う。
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 カレンはローファーを脱いで、アルフレッドの横に座る。「後で必ず片付けるから、見ていて」 アルフレッドは指をパチンと鳴らす。 突然、部屋の明かりが消えた。月明りだけの室内はかなり暗い。(真っ暗。何をするつもりなのかしら) 次にアルフレッドは右手を上に伸ばして、呪文のようなものを唱え始めた。(これは……、もしかして、魔法!?) ブワンと風を切るような音がした次の瞬間、天井から桜の花びらがひらひらと舞い落ちて来る。「―――――す、凄い!!! 綺麗……」 カレンとアルフレッドを花びらが包み込む。その幻想的な風景にカレンは感動し、目の奥から溢れ出て来る涙を止めることが出来なかった。「ああ、綺麗だろう?」 カレンの顔を覗き込んだアルフレッドは、彼女の頬を伝う涙に気付く。そして、手の届くところにあった布で、カレンの涙を拭った。「殿下、これ……」「ああ、そこにあったから」「これは、布巾ですっ!」 カレンの指摘を受け、布巾を持った手をスッと引っ込めるアルフレッド。カレンは思わず笑いが込み上げてくる。「ウフフフフッ」「すまない」「いえ、大丈夫です。それよりも、この花びら……。とても素敵ですね。桜を見るのも久しぶりです」「この花びらは皇宮の正面にある桜並木から拝借した」 アルフレッド桜の花びらを手のひらに乗せて、カレンに見せる。(桜並木の花びら……)「あのう、これは魔法ですか?」「ああ、そうだ」「皇家の方々は強い魔力を持ち、様々な魔法を使えるという話は本当だったのですね!!」 カレンが前のめりで聞いて来るので、アルフレッドは少し戸惑う。ここから先の話は国家機密のラインを超えてしまうからだ。「そうとも言えるし、違うともいえる。機密の関係
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カレンの予感 1

「今日の空は少し雲が多いみたいね」(花曇り……、桜を愛でるには丁度いいかも) カレンは窓の外を眺めている。 先月末に突然現れたアルフレッドとの交流は、カレンの意識を『レダの家』から、外の世界へ向けさせるきっかけとなった。 嫌なことに目を背けて逃げ込んだ『レダの家』というサンクチュアリ。この家は居心地が良く、心を揺さぶられるようなこともない。 だが、昨夜、シュライダー侯爵家だけの揉め事と思っていたことが、この国の皇帝をも巻き込んだ、もっと大きくて深刻なものであるということをカレンは知ってしまった。 この状況で果たして自分だけが、ここでぬくぬくと呑気に過ごしていても良いのだろうかと、カレンの心に焦りのようなものが湧いてきた。―――だからといって、何の情報や確信も無いまま、どこかへ無鉄砲に飛び出していくわけにもいかない。結局のところ、カレンはいつも通りにやるべきことをして、粛々と過ごすしかないのだ。(さて、今日も私に出来ることをするしかないわね。ん~、殿下は今夜も来るのかしら? そろそろ、ベッドでゆっくり寝たいわ。三日連続で床はちょっと……)――――コンコン。ドアをノックする音が響く。 少し油断していたカレンは声色を変える呪文を唱えながら、慌ててドアに向かった。「おはよう、マーガレットさん」「おはようさん!!レダ(カレン)」 本日も威勢の良いビストロ経営者、マーガレットが一番乗りで店へやって来た。カレンはドアを閉じながら、マーガレットに話しかける。「今日は花曇りだから、桜が美しいでしょうね」「!」 店に数歩入ったばかりのマーガレットが突然、足を止めた。そして、フードを目深に被っているカレンをジーッと見つめてくる。(えっ? マーガレットさん!? ち、近い!!) いつもとは違うマーガレットの行動に、カレンは戸惑う。「あんた……。どうしたんだい!?」「何か気になるところでもありましたか?」 カレンは冷静かつ素直に聞き返した。マーガレットは首を
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カレンの予感 2

「だけど、十日後に商船に乗れたとしても、オルセント王国かその先の国に行った商人は再び商船で戻って来ないといけないだろう? そんなことをしていたら王都のパプリカパウダーは在庫が尽きてしまうよ」「なるほど」(仕入れ先に辿り着いても、帰るための船が来るまで待たないといけないから、時間が掛かるということね。陸路が絶たれるとこんなに大変なことになるのね)「あの色味は食欲をそそるからね。飲食店を経営してる奴らは困るだろうね」「それなら、今ではなく、この辺りの飲食店のパプリカパウダーの在庫が切れた頃に、マーガレットさんのビストロでパプリカパウダーを使ったメニューを出したら良さそうですね」「なっ!! レダ(カレン)、あんた賢いね~。あたしは今日のメニューにパプリカパウダーを使って、この話をお客さんにしようと思っていたんだよ。でも、他の店がパプリカパウダーを使ったメニューを出せなくなってから、バ~ンと出した方が目を惹くだろうね~」 マーガレットはテーブルから身を乗り出して、カレンの方に詰め寄って来る。カレンはフードの中を見られてしまいそうで、後ろに仰け反ってしまう。「それで今朝、市場ではどのような食材を(手に入れましたか)?」 カレンはマーガレットをこれ以上興奮させてしまわないよう、いつもの質問をして話を切り替えた。「ああ、今日は質の良い子ヤギの肉と、新鮮なたまごを手に入れたよ」「では、占いましょう」「ああ、頼むよ」 カレンは水晶に両手を翳す。(昨日、殿下が持って来てくれた子ヤギのロースト……。香ばしくて、柔らかくて、肉汁もジュワ~ッと出てきて、美味しかったなぁ。あ、食後のプディングも固めで、私好みだった!)「マーガレットさん、タイムはありますか?」「ああ、タイムはいつでも新鮮なのがあるよ。ん~、なるほど! いいお肉だから、シンプルにローストするだけでも、かなり美味しいだろうね」 マーガレットの話を聞いているだけで、カレンの口に昨日のお肉の記憶が戻ってくる。「うううっ、想像するだけで、よだれが……。あと、新鮮な
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白いストールを被ったお客様 1

―――午前十時半を少し過ぎた頃。 コンコンとドアをノックする音がした。どうやら、午前中二人目のお客様がやって来たようだ。 カレンはドアをそっと開く。 そこに立っていたのは白くて大きなストールを頭から被った女性だった。俯いているので、顔を晒したくないのかも知れない。 「あの、占いをお願いしたいの……」 見知らぬ女性は透き通った声でカレンにお願いする。 明らかに常連ではないお客様のため、カレンはじっくりと観察した。 女性の被っているストールの端を見ると繊細なデザインのレースが施されている。視線を下に落として足元を確認すると、柔らかそうな革で作られた編み上げブーツを履いていた。 ストールを押さえている手は家事などしたことがなさそうな美しい手で、爪も手入れが行き届いている。 (この女性、かなりお若いのでは? それにこの身なりは貴族のご令嬢でしょうね。物腰も柔らかいし……。ただ、こんな裏通りに、一人で来るなんて、普通の依頼じゃないかもしれないわ。何を占って欲しいのかを聞いてから、難しそうだったら上手く断らないといけないわね) 「こちらへ、どうぞ」 カレンは見知らぬ女性を室内に招き入れた。 女性はカレンに誘導され、水晶が置いてあるテーブルの前へ進む。 「レダ(カレン)さま、初めまして。私はローラと申します」 挨拶と共に優雅なカーテシーをするローラ。ローラは貴族で間違いないとカレン確信した。だが、表には出さず、堂々としておく。 (今の私はレダさん! マーガレットさんの時のようなミスをしないように気を付けないと!) 「ローラさん、初めまして。それで、本日はどのようなご用件でこちらへ」 「はい、一つ占って欲しいことがあり、お伺いいたしました。あの……、その…
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白いストールを被ったお客様 2

 カレンは魔法を使って、ローラの記憶に入り込んだ。―――――最初に見えてきた場所は、何処かのサロン。 かなり派手な装飾がされている。恐らく……、力を持った貴族の邸宅だろう。その一室で、ローラと一人の男性が楽しそうに談笑している。(この男性が、ローラさんのお相手かしら? ええっと、顔を確認、確認!!) カレンは、ローラに笑いかけている男の顔を見て、息が止まった。彼女の恋人がカレンの知っている人物だったからである。(サラサラの赤髪に金の瞳……、このインパクトのある見た目~!! 私は彼を知っているわ。海を挟んだ隣国、アーロック王国のエドリック王子じゃない!! アルフレッド殿下と私は子供の頃から、エドリック王子とよく遊んでいたわ。彼は祖国を抜け出して、この国の皇宮に入り浸っていたもの。その度に使者で来たと言い訳をして……。ここ数年は会ってないけど、流石に私の顔を忘れたりはしていないはず……。ということは、エドリック王子と幼馴染のローラさんって、高位貴族なのでは?) カレンは記憶の更に奥へと向かう。ローラらしき幼女が両親と一緒に食事をしているシーンが出て来た。「アウローラ、お肉はゆっくり噛みなさいね」 ローラは母親に優しく諭されている。口を閉じて必死にモグモグ咀嚼しながら、母親に頷いている姿がとても愛らしかった。父親も目を細めて、その様子を見ている。「レイモンド様、今夜は何時ごろお戻りになりますか?」「ルナ、今日は早く帰ってくる。夕食も三人で取ろう」 その言葉に二人が笑顔で頷く。何とも微笑ましい光景である。(ローラさんのご家族は仲が良さそうね~って、あの御方! アーロック王国のフリッツ公爵閣下じゃない!! うーん、私がレダさんの身代わりをしているって、絶対にバレてはダメな人たちが、いっぱい出て来る~っ!! この依頼、私が首を突っ込んでも、大丈夫なの? でも、ローラさんの力になりたいし~って、グダグダ言っている場合じゃないわね。邪念は禁物!! 今は記憶を確認しているのだから。 よし、次はエドリック王子の記憶を……。あっ!) ここでカレンは気付いた。エドリックの記憶を辿
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白いストールを被ったお客様 3

 占いの中盤から、カレンが険しい表情をして首を捻り続けていたので、ローラはきっと悪い結果が出たに違いないと、完全に誤解していた。「レダ(カレン)さま。差し出がましいかも知れませんが、厳しい結果を口に出し辛くて、お困りになられているのではありませんか? 大丈夫です。わたしはどんな結果でもしっかりと受け止めますので……。お気を遣わせてしまって、申し訳ございません」(えっ!!ローラさん!? そ、そんな、悪い方向に……。 違う、違うの!! 誤解よ!!!)「ローラさん、それは早とちりです。いいですか、よく聞いてください。エドリック王子は、あなたのことを忘れたりはしていません。ですが、彼は将来、国を背負っていく御方です。そのため、自分の気持ちよりも、民のことを優先しなければならないことも多くあるでしょう。今の時点で私がローラさんに言えることは、エドリック王子もあなたと同じように苦悩しています」「そ、そうなのですね。彼も苦悩……」 ローラはストールの中に手を入れ、涙を拭うような仕草をする。カレンの発した言葉は殆ど出まかせで、エドリック王子の心中など知る由もない。だが、ローラに“別れ”という最悪の決断を占い如きで決めて欲しくはなかったのである。「出来れば、機会を作って、とことんお二人でお話をしてみた方が良いと思います。後悔しないためにも」「―――はい」(別に会うことを禁じられていないのなら、絶対にエドリック王子と直接お話した方が良いわ。そこでこの恋が終わりなのか、それとも希望があるのかを見極めたらいいのよ。―――半年前、殿下と会わずに、ここへ駆け込んだことを今更ながら、私は後悔しているもの。あの時、どんな手を使ってでも、私は殿下と会って話しをするべきだった。そうしていたら、昏睡させられていた陛下やお父様を、もっと早く助けられたかもしれないし……)「ローラさん、私はこの占いの結果を敢えて出しません。それはあなた方の心がまだ固まっていないからです。くれぐれも焦って決めないで下さい。先ずはエドリック王子と会
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ポテトフライ派? 1

 いきなりドアが開いた。(うわっ! 誰!?)「昼ご飯を持って来たぞ」 バスケットを抱えたアルフレッドだった。「殿下~。急に入って来るから、ビックリしましたよ。お昼ご飯、ありがとうございます!! ちょうどお腹が空いたな~と思っていたので、最高のタイミングです!!」 カレンは満面の笑みで彼を迎える。こんなに喜んでもらえると思ってなかったアルフレッドは、つい照れ笑いをしてしまう。 それでも、彼はカギを締めるのを忘れない。(ああああっ! カギを……)「私、カギを掛け忘れてましたね」「ああ、不用心だ。気をつけろよ」 アルフレッドはカレンの鼻をギュッと摘まむ。(ぎゃっ! イタタタタ) カレンは彼の手を払いのけて、鼻筋を手で摩る。「で、カギを締め忘れていたってことは客が来たのか?」「はい、今日は朝からヘビーなお客様が続いたので疲れてしまって~。次から気を付けます」「本当に気をつけろよ。何かあってからじゃ遅いからな」 アルフレッドはカレンの頬を手で包んで、スーッと優しく撫でた。カレンはドキッとしてしまう。(あのう、まだ、殿下の婚約者はエマですよね? 気軽に触れないで欲しいのですけど……。ケジメが……) ここでカレンはエドリック王子のことを思い出す。彼の話はアルフレッドと共有していた方がいいだろう。「殿下、後でお話ししたいことがあるのですけど、聞いてくれます?」「ああ、もちろんだ」 アルフレッドはダイニングテーブルにバスケットを置いて、上に被せていた赤いギンガムチェックのクロスを取った。「お昼のメインはエビと玉子のサンドイッチ、ベーコンと紫キャベツのサンドイッチの二種類。付け合わせは皮付きのフライドポテトだ。オレンジジュースもあるぞ!」「ええっと、栄養面を気遣ったメニューみたいですけど、その指示は誰が出しているのですか?」「俺だが?」 アルフレッドは堂々と答える。「細く
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ポテトフライ派? 2

 モグモグとポテトフライを食べながら、カレンとアルフレッドは頷き合う。 ポテトフライはジャガイモだけだと思っていたら、半分はサツマイモを揚げたものだった。(うわっ~、サツマイモ美味しい!!) カレンはサツマイモフライを続けて三本食べてから、アルフレッドへ聞きたかったことを口にする。「ところで、陛下たちの様子は如何でしたか?」「ああ、父上達は今、真っ青な顔をして事実確認に追われている。偽物の皇帝はかなり好き勝手にしていたみたいだ。他国との間で父上の把握していない取引が行われていたらしい。ただ、詳細については確認中のものが多く、口には出せない。ハッキリしたら、必ずカレンにも話す。だから、少しだけ待っていてくれ」 アルフレッドはオレンジジュースを一口飲んで、話を続ける。「それから、昨夜、父上達が隣国の前大公妃が怪しいと話していたが、あれは見誤りの可能性が高そうだ。現在ヴェルマ公国の大公の子は十歳と八歳の男児二人のみ。息子二人しかいないなら、俺を狙うメリットなんてないだろう? それに今の大公は野心的な方ではないし、大公妃も穏やかな方だ。それより、その更に隣の……」「イシュタル共和国とオルセント王国の小競り合い!?」 カレンは思わず叫んだ。アルフレッドは、眉間に皺を寄せる。「カレン、どうして、それを知っている?」「ヤドリギ横丁でビストロの経営をしているマーガレットさんから聞きました。ええっと、マーガレットさんは、この『レダの家』の常連さんで、ビストロの営業日は毎朝お見えになります。マーガレットさんはこの小競り合いの話を今朝、市場で聞いたらしいです」「ビストロ経営者のマーガレットか。ほぼ毎日ここに来て、外の情報を教えてくれるというわけか」「いえ、情報というより、ほとんど食材の話ですけどね。今日は何を仕入れたとか……」「ふ~ん」 アルフレッドはフライドポテトを口に運びながら、何か考え事を始めたようだ。 カレンは、今のうちに~と食べかけのサンドイッチを頬張る。エビがプリプリしていて、とてもおいしい。(殿下はマ
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