―――――次のお客様は、貿易商のシューマンだった。 シューマンは買い付けの旅の前に必ずこの占いの館へやって来る。今回は南方航路の船に乗るらしい。「レダ(カレン)、南方には色とりどりのフルーツや香辛料、そして薬草があるらしくてね。どれに注目すべきだと思う?」 こげ茶のスリーピースに縦縞の入った白ワイシャツ、黄金色の蝶ネクタイ。いかにも羽振りの良さそうな出で立ちのシューマンは身を乗り出してカレンに尋ねる。「運びやすいのはどれですか?」「そうだね、フルーツは傷みやすいかもしれないね。香辛料は粒のままか、粉末にしてある物が多いかもしれない。薬草は乾燥させて束ねているだけから、かさばる可能性があるだろうね」「では、占います」 カレンは机下から恭しく水晶を取り出し、シューマンの顔を映した。 勿論、占いのフリをしているだけなので何も見えては来ない。先ほどの会話をヒントにして答えを導くのである。「香辛料ですね」「分かった。今回は香辛料を多く買い付けて来るよ」「どうぞ、お気をつけて」「いつも、ありがとう」 シューマンはテーブルの上にコインを置いた。「戻って来たらお土産を持ってくるよ。レダ(カレン)も元気でね」 シューマンはひらひらと手を振りながら、ドアを出て行く。カレンは置かれた百ピールコインをジィ~と見つめる。(貿易商って儲かるのね。こんな簡単な占いで百ピールもくれるのだもの) そして、そのコインを引き出しに入れた。(一体、この引き出しにはいくら入っているのかしら。キュイが居た時は、何となく数えづらかったけど……。今は誰も居ないし……。うん、数えてみよう!) 早速、地下の倉庫から大きめの四角い缶を五つ持って来た。引き出しの中のコインを金額別に百枚単位で分け、缶に移し替えながらメモを取っていく。 時刻は正午を過ぎた。いつもなら昼食の時間である。しかし、それを知らせる者はもういない。カレンはお金を数えることに没頭している……。 数え続けること四時間。とうとう合計金額が出た。(百四十五万七千六百三十三ピール!!―――これだけあったら、当分というか、庶民の生活では一生使い切れない金額なのだけど……) ニルス帝国の庶民の平均月給は千四百ピールくらいだ。この引き出しにはその約千倍の金額が入っていた。―――カレンは急に怖くなって来る……。 彼女は
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