美羽は、部屋に入ってきた翔平を見た。翔平は柚葉を抱いて歩み寄ると、美羽の隣にそっと寝かせた。美羽は顔を向け、柚葉に慈しむような優しい笑みを浮かべた。その拍子に、柚葉も声を立てて笑った。抱きしめたいと強く願ったが、今の美羽は体を動かすことすらままならない。澪も柚葉を見つめながら目尻を下げた。自分も抱っこしたくてたまらなかったが、結局ぐっとこらえた。母親である美羽の傍らで、柚葉はすぐにまた目を閉じて眠りについてしまった。美羽は力のない瞳で翔平を見上げ、「名前は?」と尋ねた。翔平は「柚葉だ」と答えた。美羽は口の中で「柚葉……」と繰り返した。とても素敵な名前だ。美羽は澪に頼んで、自分と柚葉とのツーショットを撮ってもらった。翔平は再び柚葉を抱き上げると、「ゆっくり休め」と美羽に言った。そう告げると、柚葉を抱いたまま、病室を後にした。それから3日が過ぎた。美羽の容体は徐々に良くなり、自力で起き上がれるほどにはなったが、念のためもう少し入院することになった。柚葉はすでに中山家へと連れ帰られている。隆と直美がお見舞いに来てくれたが、柚葉には会えず、美羽は写真を見せることしかできなかった。「体調を第一に考えて、ゆっくり休め」と隆が声をかける。それ以上、何を言ってもしょうがないことだった。美羽は小さく頷き「分かっています」と返した。入院中、直美は毎日顔を出して話し相手になってくれた。悠斗も時折姿を見せては、月見ヶ丘で専属のスタッフが柚葉を世話し、中山家の人たちも次々と対面に来ていることを報告してくれた。今、中山家は喜びの雰囲気に包まれているという。美羽はここ数日、翔平とも連絡をとっておらず、柚葉が今どうしているのかも分からない。ただ「すべて順調だ」と聞き、胸を撫で下ろした。悠斗自身、思うところは多々あったはずだが、それを美羽の前で表に出すことはなかった。かつての中山家は、身内びいきで強引なところがあるのが当たり前だと信じ切っていたからだ。しかし今は、美羽の立場に立ってその傲慢さと冷たさをまざまざと感じている。中山家にとって利益にならなければ、たとえ迎え入れた嫁であろうとこれほど無慈悲に扱えるのか、と。悠斗は美羽の耐え難い辛さと、娘と離れた寂しさを痛いほど感じ取っていた。それでもお互い
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