美羽はスマホを置いてため息をついた。心境は複雑だった。百合の目的など分かりきっている。自分を調べ上げ、仕事の邪魔をしようという魂胆だ。栄和での仕事に支障が出ることはない。ただ、テレビ局に関しては危ないかもしれない。仕事を奪うことくらい、百合にとっては造作もないことだ。その予想通りだった。その日の夜。局長から電話があった。出演予定の仕事を一時停止せざるを得ないと言う。局長は、何か怒らせるようなことをしたのかと、申し訳なさそうに気遣ってくれた。局長自身、苦渋の決断だった。毎週土曜に美羽がキャスターを務める番組は視聴率が非常に良く、局としても美羽を高く買っていたからだ。だが、今回ばかりは局長にもどうにもできなかった。美羽は気丈に返した。「分かりました。しばらく休みましょう。手元の仕事が落ち着くまで様子を見ます」「すまない。何とか、こちらからもうまく取りなしてみるから」「ありがとうございます」翌日の金曜日、朝7時。柚葉からの連絡はなかった。心底がっかりしたが、昨日言った言葉に後悔はない。百合が自分と美羽が同一人物だと知れば、さらに強く拒むだろうから。怨んでいないと言えば嘘になるが。美羽は気持ちを切り替え、身支度をして家を出た。今日はA市への出張だ。澪が朝早くに準備をしてくれた。朝食の席で、正人が出張期間を尋ねてきた。「状況によるわ。順調にいけば、5日というところかしら」正人は頷き、気をつけるように声をかけた。朝食を終え、美羽は悠斗の車で出社した。時を同じくして、もう一方では。柚葉は朝から美羽に連絡をしようとして、キッズ携帯が壊れていることに気づいた。百合は朝食で気を引いてから修理に連れて行くと言い繕った。だが柚葉が百合のスマホを借りて美羽に連絡しようとする。キッズ携帯は壊れていたが、柚葉はすでに美羽の電話番号を覚えていた。そのことに気づいた百合は、とっさに自分のスマホも故障したと嘘をついた。柚葉が使用人に電話をねだっても、やはり故障したと一蹴されるだけだった。見え透いた嘘など、5歳の子供であっても騙せない。柚葉は瞳を潤ませながら、百合を睨んだ。「おばあちゃん、私がイヴリンさんに電話するのが嫌なんでしょ」今にも泣き出しそうな柚葉の姿に、百合は思わずうろたえた。柚
Read more