凛は日和たちを見送ってから、携帯を手にとった。そこには十数分前に美穂子から届いたメッセージがあり、最後の一通には、こう書かれている。【海斗様から電報でも打ってるのかと言われてしまいましたので、もう報告できません。今後は海斗様自身が直接報告するそうです】凛は海斗からのメッセージを開いた。【美穂子さんから聞いたけど、夕飯、君が届けるように言ってくれたんだって?】蓋を開けた弁当の写真。【食べてる】続いて、きれいに食べ終えた写真。【完食】【ご確認ください、上司殿】凛は口元を引き締めたものの、結局こらえきれず、ふっと笑ってしまった。【上司じゃないけど】すぐに返事が来る。【父さんたち、もう帰った?】【うん】【今一人か?】【ええ】と凛は返し、続けてこう送った。【タクシーを呼ぶところ】【もう呼んだ】そのメッセージを送ると、海斗は携帯を持ったまま立ち上がり、引き出しから車のキーを取り出した。美穂子がわざとらしく尋ねる。「海斗様、もう残業は終わりですか?」「終わりだ。凛を迎えに行く」美穂子はにこにこしながら弁当箱を片づけ、ついでにゴミ箱の中身も持って部屋を出た。1階へ下りると、ちょうど見覚えのあるナンバーの車が目の前を勢いよく走り去っていく。海斗の車だった。車を走らせながら、海斗は指先で軽くハンドルを叩いていた。前方を見つめては、時折ナビへ視線を落とす。川端庵がこんなに遠いと思ったのは初めてだ。一方の凛は道端に立ち、髪を耳にかけながら行き交う車を眺めていた。海斗が「呼んだ」と言った車が、タクシーではないことくらい分かっている。……智也が病院を出ると、正人から電話がかかってきた。「どうした?」智也は電話に出ながら、路肩に停めてある車へ向かう。その車は正人のだった。いくら一社員とはいえ、部長職の智也が毎日電車やタクシーで通勤するわけにもいかないだろうと、正人が自分の車の中から比較的目立たない1台を貸してくれたのだ。だが、貸すとは言っても、実質くれたようなものだった。遊び歩いてばかりの御曹司で会社では大した権限を持っていなくても、車や不動産ならいくらでも持っている。「知り合いが柚葉さんを見かけたらしい。南水茶寮の近くだって。あそこ、川端庵があるだろ?そこから竹内社長
Baca selengkapnya