凛は日和の大げさな言い方を聞いているうちに、なんだか顔が熱くなってきた。海斗だって、妹に二人きりの邪魔をされたくはなかったが、凛が心に違和感を持っている今、凛といちゃついている場合ではない。茂が何も答えず、逃げるように帰ってしまったことが、凛の心に引っかかっているのだろう。はっきりした答えは得られなかったものの、茂の表情や態度を見れば、凛と神谷家に何らかの関係があることはほぼ間違いなかった。ただ、それがどんな関係なのかまでは分からないし、これ以上無理に踏み込むべきでもない。凛が口にした「偶然だと思う」という言葉からも、神谷家と関わりたくないという気持ちは伝わっていた。今の凛には恋人だけではなく、そばにいてくれる人生の先輩や友人も必要だ。人は恋愛だけで満たされるものではない。海斗は昔から、そういうところによく気が回る。感情を表に出さない凛は、何を考えているのか分かりにくいけれど、ずっと彼女を見つめ、大切に思ってきた海斗には分かっていた。一見すると海斗らしくない気遣いも、これまでさまざまな愛情に恵まれずに生きてきた凛には、その意図がきちんと伝わっている。凛は海斗の手をぎゅっと握り、日和に言った。「一緒にいこう」日和はくるくると目を動かしていたが、やがて二人の意図を察したらしい。背筋を伸ばし、得意げに顎を上げる。「そこまで言うなら、この私が二人のスティーブになってあげましょう!」カップルの行く先々についてきて、食事でも旅行でも記念写真でも必ず一緒にいる第三の友人――それが「スティーブ」。デートにいつも友人のスティーブがついてくるというSNSで流行った歌が元になっている。日和は二人の前を歩きながら、上機嫌に鼻歌まで歌い始めた。「スティーブ、トゥルトゥトゥトゥ、スティーブ」その姿を見ているうちに、凛の顔に残っていたかげりもいつの間にか消えていた。海斗に何か言おうと顔を向けると、彼はごく自然に身をかがめ、耳を寄せてくる。「日和さん、本当に可愛いね」「へぇ、そうか?」と、じっと横目で見てくる海斗。凛は、そんな海斗もかわいいと思った。とはいえ、大の男に向かって「かわいい」と言うのもどうかと思い、口にはしない。凛は杏に電話をかけ、これから夕食を食べに行くと伝えた。すると杏は凛に返事をするより先に、そばにい
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