拓海は海斗を見る。これについては海斗の方が詳しい。「神谷家の先代当主は茂さんの祖父で、今の当主は茂さんの叔父だ。もう80を過ぎた元官僚だが、今も一族のことには関わってる。実質的に取りまとめているのは茂さんの従兄だけど、もし茂さんが政界を離れていなければ、今その立場にいるのは茂さんだったはずだ。神谷家は5世代にわたる一族で、茂さんは3代目にあたる。その世代は男兄弟が5人いて、茂さんと秀明さんが同じ家系。4代目は利明や美雪たちで、全部で8人いる。そのうち女は美雪と真佑(まゆ)という子だけ。5代目はまだ子供で、一番上でも12歳だ」凛の目がわずかに動いた。「そんなにいるんだ」「ああ。実業界に進んだのは茂さんだけだ。茂さんの会社の神谷観光は、今ではB市の観光や文化事業の大半を担っている」神谷家の本家はJ県だが、本邸はB市にある。ただ、常時B市に住んでいるのは、茂さんと彼の一番上の従兄、そして秀明さんの3家族だけだ。一見ばらばらに見えても、一族を取りまとめる人間が声をかければ、全員が集まる」ずいぶん複雑な一族だ。それでも、凛の表情は変わらなかった。拓海が話を戻す。「私が調べた限り、茂さんと坂本先生の間に確執はありません。それどころか、坂本先生は神谷家とかなり親しい。ですから……申し訳ありません、社長。ここで手掛かりが途切れました」海斗は低い声で言った。「いや、そうとは限らない」凛と拓海が意外そうに海斗を見る。「坂本先生と神谷家が今も親しいなら、俺たちが疑ってる件の問題は、外じゃなくて……」そこで海斗の声が止まった。思わず、海斗は凛の顔を見る。凛は淡々と続きを口にした。「神谷家の中にあるってことね」「もう、ここまでにしよう」凛は海斗を見つめ、穏やかな眼差しを向けた。「茂さんにも彰菜さんにも会ったから……これ以上は調べなくていい」茂の曖昧な態度も、彰菜が逃げるように立ち去ったことも、二人なりの答えなのだろう。だからといって凛から神谷家へ出向き、「血がつながっているかもしれないので、親子鑑定をしてもらえませんか」と頼むわけにもいかない。頼んだところで、神谷家が応じるとも思えなかった。部屋の空気がひどく静まり返った。拓海は何も言わずに退室し、そっと扉を閉めた。凛は海斗の深い眼差しを受け止める。「もしかし
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