……外へ出た海斗は、少し先で立っている凛を見つけた。「待っていてくれたのか?」「うん。待ってた」海斗は前を向いたまま歩き出す。「行こう。すぐ人が集まってくるだろうけど、気にしなくていい」その予想は見事に当たり、今日の主役である凛が姿を見せると、若い招待客たちが次々と近づいてきた。ただ、凛の隣に海斗がいるせいか、必要以上に距離を詰める者はいない。皆、自分から名乗っていく。企業経営者の家の者なら、家がどんな事業をしているのかを簡単に話してから自分の名前を告げるし、政治や行政に関わる家の者なら、親がどこで何をしているのか、自分自身も仕事をしていればその職業まで添えていった。話を聞いているうちに、凛は気づいた。今日ここへ招かれている若者は、ほとんどがすでに何かしらの実績を持っている。それが、この場へ入るための暗黙の条件なのだろう。まあ、正人は別として、陸でさえ今は家の関連会社で経験を積んでいるところだ。対して、凛の自己紹介はひどく簡単だった。「凛です」たったそれだけ。すると誰かが不思議そうに尋ねた。「神谷凛さん、ではないんですか?」「違います」きっぱりと否定すると、何人かが驚いた顔をした。神谷家の実の娘だと判明したのに、なぜ神谷姓を名乗らないのか理解できないのだろう。さらに、別の一人がおそるおそる口を開く。「じゃあ……美雪さんは?これからも神谷姓のままで、神谷家にいるんですか?」「なんでそんなこと聞くの?」日和が即座に割って入った。「わざわざ凛さんを困らせたいの?美雪がどうするかと凛さんの名前は別の話でしょ。それぞれ自分のことを考えればいいじゃない。ほんと、余計なお世話」竹内家と草壁家の両方から可愛がられている日和を、わざわざ敵に回したい者はいない。質問した相手はすぐに口を閉ざした。その時、一人の女性が前に出てきた。軽やかで透明感のある声が響く。「はじめまして、凛さん。折原早紀です」早紀。利明との縁談が進んでいる女性だ。折原家の次女で、26歳にしてバレエ団のプリンシパルを務めている。すっきりと整った輪郭に、長く美しい首。すらりと伸びた腕と脚は均整が取れていて、歩いているときは軽やかなのに、立ち止まれば軸がまったくぶれない。本当に白鳥を思わせる、端正で優雅な佇まいだった。そのうえ、瞳まで驚くほど澄んでいる
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