だからこそ茂は、息子に自分がどれほど愚かなことをしたのか分かっているのかと問いかけた。利明は俯いたまま、何も答えようとしない。茂は目を閉じた。先祖を祀る部屋に灯された蝋燭の炎が揺れ、その横顔を淡く照らしている。「柚葉さんのせいで、お前の妹である凛の4年間の結婚生活が台無しになったことは分かっているのか?お前はその柚葉さんを庇って、凛を傷つけた。その結果が、こんなことになると考えたことはあったか?利明。今こうして自分からここに座っているんだ。自分がどれだけ愚かだったか、もう分かっているんだろ?」茂の口調は淡々としていた。「凛は俺を父親とは認めていないし、彰菜のことも母親とは思っていない。まして、お前を兄と呼ぶこともないだろう」利明はますます深く俯いた。しばらくして、茂がぽつりと呟く。「俺にも罪がある」ゆっくりと膝をつき、利明と同じように先祖の前に座った茂。「俺はあのとき、間違った選択をするべきじゃなかった。周りの人間のことばかり考えて、たった一人の自分の娘がどうなるのかを考えなかった……凛には、本当に申し訳ないことをしたと思ってる」利明がようやく顔を上げた。父親の横顔に浮かぶ後悔を見つめながら、怪訝そうに尋ねる。「父さん、それ……どういう意味?看護師が取り違えたことが、父さんや母さんに何の関係があるんだよ」茂は目を伏せた。「違うんだ……」「茂!」ちょうどその瞬間駆けつけた彰菜の鋭い声が響く。まるで尾を踏まれた猫のように声を張り上げ、そのまま部屋へ飛び込んできた。茂の前まで来たところで彼女の足からは力が抜け、その場に崩れるように膝をつく。両手で茂の腕を強くつかむ。大きく見開かれた目には恐怖が浮かび、唇がかすかに震えていた。「子供の前で、どうしてその話をするの?」茂は苦しげな彰菜を見つめた。その目にも、同じような痛みが滲んでいる。「母さん、どうしてここに?」利明が手を伸ばすと、彰菜は逆に息子の腕をつかみ、立たせようとした。「もういいから。こんな寒いところでいつまでも座っていたら膝を悪くするわ。さあ、早く立って一緒に家へ帰ろう」だが利明は動かなかった。「母さん、僕はまだ帰らない。少し一人で頭を冷やしたいんだ」「何かあったの?」彰菜の顔がたちまち強張った。利明の腕をつかむ指に力が入り、少し伸びた爪が食い込
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