** 暴走した啓太郎の欲望を受け止めた裕貴は、毛布に包まって深い眠りに陥っていた。 裕貴が苦しげな寝顔でもしていれば、啓太郎の心は痛んだかもしれないが、当人はいたって幸せそうな――決して自惚れではなく――寝顔をしている。 行為のあと、ぐったりしている裕貴を抱えてバスルームにつれていき、汚れた体を洗ってやった。おかげで、今は啓太郎のほうがぐったりしている。 湯を張ったバスタブに二人で浸かってゆっくりと体を温める、という甘い光景からはほど遠かった。とにかく裕貴が自分で動かないので、啓太郎が頭から湯をかけてやり、髪から体まで、全部洗ってやったのだ。上半身裸にスラックスという格好で。 裕貴一人をバスタブに放り込んだところで、啓太郎は力尽き、脱衣場に座り込んだ。そして憎たらしいことに、裕貴はバスタブの縁に腕をかけながら、笑ってこう言ったのだ。『あれだけ体力使ったら、そりゃヘロヘロにもなるよね』 生意気な奴だ、と思いながらも、裕貴の額にかかる髪を掻き上げる啓太郎の手つきは、これ以上なく優しい。 啓太郎の無茶をすべて受け止めてくれたのは、裕貴なのだ。 湯冷めして、また風邪を引かせてはまずいと思い、毛布に包まる体の上からそっと布団をかけてやる。 できることなら、朝までずっと一緒にいたいが、そういうわけにもいかなくなった。 ため息をついた啓太郎が立ち上がろうとしたとき、きゅっと指先を握られる。軽く驚きながら見ると、裕貴がわずかに目を開けていた。いかにも、眠くてたまらないといった感じだ。「裕貴……」 「どこ、行くの?」 囁くような声で問われ、啓太郎は腰を屈めて裕貴の耳元に顔を寄せる。「自分の部屋に戻る」 「ここに泊まれば、いいだろ」 「ここにか?」 思わず苦笑が洩れる。裕貴の部屋には横になれるようなソファはないし、そもそもどの部屋もフローリングなのだ。もちろん、引きこもり青年の部屋に予備の布団などない。 啓太郎が何を考えたのかわかったらしく、裕貴はモゾリと身じろいだ。「ちょっと狭いけど、一緒に寝ようよ」 こんなことを裕貴が言ってくれたのは初めてだった。隣に潜り込みたいのはやまやまだが、実は切実な問題があった。「やろうと思えばできるだろうが、そうもいかない」 啓太郎が優しく髪を撫でると、裕貴はまた目を閉じる。まるで、まどろむ猫だ
続きを読む