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All Chapters of SWEET×SWEET: Chapter 101 - Chapter 110

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「……切ったのか。あのうっとうしい髪に、慣れてきたところだったのに」 「ひどいなあ」 そう言って裕貴はちらりと笑うが、どこかぎこちない。啓太郎の腕を取ってイスに座るよう促すと、ダッフルコートを片付けてからキッチンに向かった。「ちょっと待ってね。準備するから」 食器を手に戻ってきた裕貴が、オードブルのいくつかの料理を皿に取り分けてレンジで温め始め、その傍らでスープも鍋に入れて火にかける。キッチンでよく動くほっそりとした後ろ姿を眺めながら、沈黙で間がもたなくなった啓太郎は再び口を開く。「メシ、みんなで食ったのか?」 「みんなと言っても、おれと父さんと……兄さんの三人だよ」 まっさきに啓太郎が疑問に思ったのは、博人は千沙子を伴ってこなかったのかということだった。ただ、裕貴が千沙子を嫌っていることを思い出し、遠慮してもらったのだと勝手に解釈した。イブは肉親と過ごして、クリスマス当日を夫婦で過ごすのだと考えれば、不思議ではない。「そういえば、親父さんが帰ってくるって、博人さんがこの間言ってたな」 「あの人はいつも突然なんだ。事前に連絡してくるなんて、珍しいんだよ。そして息子二人を振り回して、当たり前みたいに父親として振る舞うんだ。こっちはいい迷惑だよ。この髪だって……」 最後はぼやきに近い言葉を洩らして、裕貴が軽く頭を振る。啓太郎はぶっきらぼうに言った。「それはそれで、似合ってるぞ。落ち着かないなら、また伸ばせばいいだろ」 振り返った裕貴が目を丸くして見つめてくるので、居心地が悪くなった啓太郎は意味なくイスに座り直し、目を逸らす。すると遠慮がちに裕貴が呼びかけてきた。「……啓太郎」 「なんだ」 「もしかして、おれがいないときに部屋に来た?」 「ああ……」 「おれが出ないから、気になった?」 俺の分は悪くなるばかりだと思いながら、啓太郎は正直に答えた。「――当たり前だ。今度から……外に出るときは電気ぐらい消していけ。何事かと思うだろ」 「父さんが急かすから、消す暇がなかったんだよ」 わざと不機嫌な表情を作った啓太郎とは対照的に、裕貴ははにかんだように笑いかけてくる。  目に滲むようなその笑顔を見て、ここまで胸を塞いでいた重い感情の塊がスウッと溶けていくのが啓太郎にはわかった。「もしかして啓太郎、おれがわざと無視しているとか思った?
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「悪かったな。この間、お前との電話を一方的に切って」 「気にしてないよ。啓太郎にも大人の事情があることはわかってるから」 そんな立派なものはない。むしろ、子供じみた葛藤というべきなのだ。 料理を温めた裕貴が皿をテーブルに並べ、ついでにワインも開けて二つのグラスに注ぐ。グラスを受け取った啓太郎は、代わりに包みを押し出した。「やる。プレゼントだ。珍しいんだぞ。俺が、せがまれる前に自発的にクリスマスプレゼントを買うなんて」 「おれも、いつくれるのか待ってたんだ」 生意気なことを言いながらも、包みを受け取った裕貴は嬉しそうに口元を綻ばせている。開けていい? という問いかけに頷くと、さっそく裕貴が包みのリボンを解く。  自分が買ったプレゼントを目の前で開けられるのは、かなり気恥ずかしい。できるならベランダにでも逃げ出したい心境だ。 包みを開けた裕貴は、啓太郎が何を買ったのか知ると、小さく噴き出した。「もしかしてこれ、これからもおれを外に連れ出すって意味?」 「おっ、俺の気持ちが伝わったか」 「そのまんまじゃん。お出かけセット」 生意気なことを言いながらも、裕貴はマフラーを首に巻き、手袋もしてみせてくれた。思ったとおり、色合いが裕貴の雰囲気によく合っている。「……一応、お礼言っておくよ。ありがとう」 「可愛くねー」 啓太郎がぽつりと洩らすと、裕貴はニヤリと笑った。「ウソだよ。すごく嬉しい。おれの周りにいる人間の中じゃ、啓太郎が一番趣味がいいと思う」 その口ぶりに、あることに思い至った。「親父さんや博人さんから、プレゼントはもらったか?」 「兄さんからは時計。それこそ、引きこもりにはいらないものだと思うんだけどね」 兄心だと思うと、啓太郎は笑う気にはなれない。裕貴は話しながら、手袋をした手をしきりに動かし、ついでに感触を確かめるように自分の頬を撫でてみたりして、その仕種がなんとも小動物めいており、見ていた啓太郎は内心でドキリとしてしまう。口が裂けても本人には言えないが――可愛かったのだ。 微妙に視線を逸らし、グラスに注がれたワインを口に含む。博人と父親、どちらが持たせたのかわからないが、口当たりが軽くて飲みやすい、美味しいワインだ。「親父さんは?」 「あの人に、そんなもの期待するだけ無駄だよ。クリスマスプレゼントは、父親の元気な姿
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** ホテルのレストランではあまり食べられなかったという裕貴は、ときおり啓太郎の前に置いた皿から、オードブルを指で摘まみ上げては口に運ぶ。意識しまいと思いつつも啓太郎の視線は、汚れた指先を舐める裕貴の口元へと吸い寄せられた。 豪華なオードブルやローストチキンといった料理の数々は、裕貴の小食を気にした博人が、レストランに頼んで作ってもらったものを持たせたらしい。「……お前、そんなに細いくせに、別に小食じゃないよな?」 啓太郎にはローストチキンを勧めておきながら、裕貴は和牛フィレ肉のパイ包み焼きが気に入ったのか、全部食べてしまった。スープも飲んでみたいというので、スプーンに掬ったコンソメスープを口元に運んでやる。美味しかったらしく、裕貴は満足そうに目を細めた。「緊張したんだよ。久しぶりに家族が揃ったから。三人でメシ食ったのなんて、五年以上ぶりだよ。兄さんの結婚式ですら、ビデオメッセージで済ませて出席しなかったんだから。……まあ、出席しなかったのはおれもなんだけど。とにかく、一家団欒なんて縁遠い家族なんだ、おれたち」「だから緊張したのか」「まあね。メシは基本的に一人で食べるか、一緒にいて楽しい相手と食べるべきだよね」 裕貴にちらりと上目遣いで見つめられ、眼差しと言葉に啓太郎の気持ちはくすぐられる。長い前髪に隠れがちだった裕貴の両目を、今は覆うものはない。おかげで、わずかな眼差しの動きにすら、啓太郎はさきほどから翻弄されている。「……俺とメシ食って、楽しいか?」 たった一つの答えしか求めていない卑怯な問いかけに、裕貴はさらりと問い返してきた。「啓太郎は楽しくない?」「お前が楽しいなら……楽しいかもな」「ずるいなあ。そういう答え方」 楽しげに言った裕貴が目を輝かせ、ケーキの箱を引き寄せる。箱を開け、啓太郎が買ったケーキの大きさに盛大に爆笑しながら、キッチンからナイフと皿を持ってくる。さっそく切り分け、啓太郎の前にも皿からはみ出しそうなケーキの塊が置かれた。 ビールでは顔色を変えない裕貴だが、今は頬が真っ赤になっている。ジュースのように飲んでいたワインで酔ってきたらしい。 上機嫌といった様子でケーキを食べる裕貴を、啓太郎も上機嫌で眺める。 料理も美味かったし、直感で選んだケーキの味も申し分なかった。目の前では、啓太郎がプレゼントしたマフラー
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「なん、だ……」 マフラーの端を手で弄びながら裕貴が側に歩み寄ってくる。本当に酔っているのか、足元が少し覚束ない。  肩に額が押し当てられ、ごく自然な流れで啓太郎は裕貴の頭を片手で抱き寄せる。「ものすごく言いにくいんだけど」 そんな裕貴の切り出し方に、思わず啓太郎はドキリとする。何か不吉なことを言われるのではないかと身構えたのだ。だが、顔を上げた裕貴の悪戯っぽい笑みを見ると、どうやら違うらしい。「……お前にも言いにくいことなんて、あったのか」 「あるよ。こんないいプレゼントをもらったあとだからさ」 軽く受け流すことができなかった。心底照れた啓太郎は、顔を背けてしまう。そんな啓太郎の反応の意味を、聡い裕貴はわかっているはずなのに、からかいはしなかった。「言いにくいことってなんだ。もったいぶらずに早く言え」 「啓太郎に、クリスマスプレゼントを用意してないんだよ、おれ」 そんなことかと、拍子抜けした。  啓太郎は片手でガシガシと頭を掻きながら、短く息を吐き出す。「俺はいい……。別にお前から何かもらおうと思って、買ってきたわけじゃないしな」 「なら、欲しいものはないわけ?」 裕貴から挑発的な眼差しを向けられ、咄嗟に何も言えなかった。  啓太郎は心の中で、裕貴はやはり不揃いに伸びた髪のほうがいいと痛感する。そうでないと、いつもこの際どい眼差しを向けられ、うろたえなければならないのだ。 頭に血が上りすぎて、何も考えられない。おかげで本能のみが剥き出しになっていく。裕貴の前で取り繕っていた年上としての体面など、とっくにどこかに消えていた。「――……欲しいものがあると言ったら、くれるのか?」 「努力はするよ」 啓太郎はムッと唇をへの字に曲げる。すると裕貴がおもしろがるように頬をつついてきた。「お前、俺が何を言うかわかったうえで、そんなこと言ってるだろ」 「何、ヤバイことでも言う気なわけ?」 からかわれて怒りたいのに、そうできない。  ――惚れた弱みだ。 負け惜しみではないが、苦々しく啓太郎は呟いた。「……どっちがずるいんだ」 「さあね」 そう言いながら裕貴が体を寄せて、啓太郎の背に両腕を回してくる。トレーナーを通してじんわりと伝わってくる体温が、狂おしい想いに火をつけてしまった。ここが啓太郎の限界だ。  のろのろと裕貴の肩
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「啓太郎が真剣な顔して、怖い声出すから、ドキドキしてきた」 「……俺はいつも、そんなにヘラヘラしているか?」 思わず問いかけてから、啓太郎は顔をしかめる。話が逸れていることに気づいたからだ。「いや、そんなことはどうでもよくて――」 「啓太郎が欲しいものって何?」 啓太郎の言葉に被せるように裕貴が言い、きつい眼差しを向けてくる。  寸前まで猫みたいに甘えてきて、はにかんだ笑みも見せていたというのに、もう表情を一変させているのだ。そんな裕貴に、情けないほど啓太郎は翻弄され、魅了されている。「わかっているのに聞くのか」 「おれの勘違いかもしれないから、聞きたい」 裕貴の首から外したマフラーを傍らのデスクの上に置き、啓太郎は熱くなった滑らかな頬を両手で包み込む。「――お前に触れたい」 囁きながら裕貴の額に軽くキスして、唇にも触れようとする。すると裕貴が声を洩らして笑った。「いっつもおれに触りたい放題じゃん」 「違う。触らせてもらってるんだ。……お前に金を払って、俺はお前を買ってた」 「合意なんだから、そんな卑下た言い方しなくていいよ」 「お前に金を払っている限り、この感覚は抜けない。だからお前に、もう金を払いたくないんだ」 裕貴に片手を取られ、てのひらにそっと唇が押し当てられる。たったそれだけの行為に、啓太郎の体中に熱い疼きが駆け抜けた。「今から俺たちの関係は変えられるか?」 「啓太郎が望むなら」 「……だから、その言い方はずるいだろ」 このとき裕貴が痛みを感じたように唇を歪める。今にも泣き出すのかと、一瞬啓太郎は焦ったぐらいだ。  裕貴はもう片方のてのひらにも唇を押し当ててから、自分の頬をすり寄せてくる。「おれが引きこもっているのは、臆病だからだよ。これ以上何からも拒絶されたくないからだ。……おれからは望まない。求められて応えるほうが、ずっと幸せだし、つらくない」 裕貴が引きこもっている事情は、やはりそう単純なものではないのだ。何かしらの絶望を味わって、傷を癒すためにこの部屋に閉じこもる必要があったのだ。  それはもしかすると、裕貴に巧みなキスを教えた人物と関係あるのかもしれない。  邪推の域を出ない考えに囚われた途端、啓太郎の中に嫉妬の炎が燃え上がる。「だったらお前は、求めてくる人間だったら、誰でもいいのか?」 
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 舌を絡め合い、唾液を交わしながら、啓太郎はセーターをたくし上げて、いつもの手順で裕貴の脇腹を撫で上げ、胸元へとてのひらを這わせる。荒い息を吐き、今度は薄い腹部へと唇を押し当てた。  少しずつ顔を上げていきながら、もどかしい思いでセーターを脱がせ、コットンパンツの前に手を這わせる。このとき裕貴の息遣いがわずかに弾んだ。 ボタンを外してファスナーを下ろすと、下着ごとコットンパンツを脱がせ、裕貴を何も身につけていない姿にする。いつもはこれで、啓太郎が一方的に裕貴の体に触れて、快感を与えるだけだった。しかし、今日からは違う。 裕貴がゆっくりと視線を上げ、啓太郎の腕に手をかけながら言った。「――啓太郎も脱いでよ。これまでと、違うんだろ?」 挑発されていると感じ、ムキになった啓太郎はトレーナーを脱ぎ捨て、上半身裸になる。裕貴はそっと目を細め、啓太郎の腕や肩、胸元から腹部へとゆっくりとてのひらを這わせてきた。感触を確かめるように。 啓太郎は、自分が誰かと比べられているのだろうかと、いいようのない不安を覚える。一方で、肌に触れる感触がくすぐったくて心地いい。  これ以上裕貴に翻弄されてはいけないと我に返った啓太郎は、裕貴の両手首を掴んでベッドに押さえつけ、わざと威圧するようにのしかかる。驚いたように裕貴は今度は目を丸くして、じっと見上げてきた。「啓太郎……」 「黙ってろ」 傲慢に言い放って裕貴の首筋に顔を埋める。強い気持ちを刻みつけるように白い首筋をいきなり吸い上げてから、軽く歯を立てる。裕貴がビクリと体を震わせ身じろいだが、啓太郎は手首を掴んだ手に力を込め、動くなと態度で示した。「啓太郎、いつになく強引?」 クスクスと笑い声を洩らしながら裕貴に言われ、啓太郎はもう一度白い首筋に軽く噛み付く。まだ、裕貴は余裕だ。  こいつの手から主導権を奪い取ってやると思いながら、熱心な愛撫を啓太郎は続ける。 丹念に耳の形を舌先でなぞり、耳の裏にまで唇を這わせる。合間に裕貴の体にてのひらを這わせ、滑らかな肌が次第に熱を帯び始めているのを感じていた。  腰から腿へとてのひらを移動させ、膝に手をかけて足を開かせようとする。すると裕貴の足に力が入り、物言いたげに見つめられた。その表情の意味を、啓太郎は勝手に解釈する。 安心させるように裕貴に笑いかけた。「心配するな。
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「本当に、もう黙っていろ……」 優しく裕貴のものをてのひらに包み込むと、注意するまでもなく裕貴は唇を噛んで顔を背ける。何度触れようが、裕貴のこの反応は変わらない。  この反応が曲者なのだ。こんな行為に慣れているように見える一方で、ひどく初々しく見えたりもして、そのギャップに啓太郎は参ってしまう。 柔らかく互いの唇を吸い合いながら、てのひらに包み込んだものを丁寧に擦り上げているうちに、裕貴の息遣いが忙しくなり、啓太郎の下で切なげに身をしならせ始める。 赤く染まりつつある裕貴の目元に唇を押し当ててから、もう片方の手で胸元を撫でる。さきほどから硬く凝っていた胸の小さな突起に触れた途端、裕貴が喉の奥から声にならない声を上げた。「んあ……」 啓太郎はわずかに口元を綻ばせてから、もう一つの突起を舌先でくすぐる。ビクンと胸を震わせて、裕貴の両手が必死に啓太郎の肩を掴んでくる。「啓太郎っ、これ、いつもと変わらない。おればかりっ……」 かまわず啓太郎は、片方の突起は指で摘まみ上げ、もう片方の突起はきつく吸い上げた。てのひらの中で裕貴のものは、本人よりもずっと素直に反応し、ゆっくりと熱くなってしなり始めていた。 もっと濃厚な愛撫を求めるように裕貴の腰が揺れだす頃、顔を上げた啓太郎は、裕貴の欲望の高まりを裕貴自身に教えるため、反り返ったものの形を指でなぞる。このとき裕貴は、自分の欲望に羞恥したような表情を見せながら、啓太郎を睨んでくるのだ。  生意気だ、と口中で呟き、啓太郎は今度は柔らかな膨らみを慎重にまさぐる。「くうっ……ん」 指を蠢かすたびに裕貴の腰が震え、ここを攻めている間だけは裕貴は従順になる。膝に手をかけただけで啓太郎の意図がわかったように、自ら足を抱えるようにしておずおずと左右に開くのだ。「……ここ、気持ちいいか?」 「バカ」 尋ねてすぐに返ってきた答えに、思わず笑ってしまう。 白い両膝にキスしてから内腿にも唇を這わせると、裕貴は背を仰け反らせるようにして笑い声を上げた。「くすぐったいよ。そんなふうにされると」 「我慢しろ」 「啓太郎を蹴り飛ばすかもしれないよ?」 「なおさら我慢しろ」 「なんだよ、それ――」 最初は笑い声を上げていた裕貴だが、啓太郎が内腿に丹念に舌を這わせるようになると、首をすくめるようにして声を堪え、ぎゅっとシ
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 きつく吸い上げたあとに、甘やかすように舌を絡めると、裕貴は全身を震わせて悦んだ。そうしながら根元から指の輪で締めるように擦り上げる。堪えきれないように裕貴の両手が頭にかかり、嫌がるように求めるように、髪を掻き乱された。「け、太郎……。啓太郎っ――」 切なげな声に誘われ顔を上げた啓太郎は、薄い腹部に唇を押し当てる。次の瞬間、ぐいっと裕貴の片足を抱え上げて胸に押し付けると、唾液で濡らした指で裕貴の秘められた場所をまさぐった。「あっ」 声を上げた裕貴が顔を背ける。啓太郎はこめかみに唇を寄せながら、いつものように慎重に内奥をまさぐる。裕貴が必死に頭を抱き締めてきた。「くうん……」 内奥に指を付け根まで収めると、裕貴が小さく鳴く。啓太郎はできるだけ優しい声で問いかけた。「痛いか?」 「いつも同じこと聞く」 そう言って裕貴は笑ったが、内奥に挿入した指を蠢かした途端、唇を引き結んだ。  繊細で傷つきやすい場所を、啓太郎は丁寧に綻ばせていく。いつも以上に感じさせてやろうという気になるのは、きっとこのあとで、裕貴に苦痛を味わわせるとわかっているからだ。「あっ、あっ、あっ……」 襞や粘膜を撫でるように擦り上げ、ときおり指を出し入れする。内奥がひくつくようにして指を締め付けてくるが、ただやみくもに反応しているわけではない。啓太郎の指の動きに合わせているのだ。 啓太郎は裕貴の頬にキスしてから体を起こす。反り返ってトロトロと透明なしずくを滴らせ続けている裕貴のものを再びてのひらで包み込むと、上下に扱きながら、内奥で円を描くように指を動かしてやる。  裕貴の中は柔軟に啓太郎の指の動きを受け止めながら、それでも必死に締め付けてくる。「うぅ、くうん」 切なげな声を上げて裕貴が腰を揺らす。それを合図に、啓太郎はもう一本の指を内奥に含ませ、抉るように刺激した。「ふっ、ああっ……、ダメ、だよ、啓太郎、もうダメっ――」 「まだだ。いつもは、もう少しもつだろ?」 「……バカ。いつもと、全然違うじゃん」 裕貴の素直な反応に、啓太郎の中で加虐的なものが誘発される。ひどいことをしたいわけではなく、裕貴を快感で狂わせてしまいたいという気持ちだ。 指で触れる限り、裕貴が一番敏感に反応する内奥の浅い部分を探り当て、軽く擦り上げる。「んっ」 微かに声を洩らして裕貴が首をす
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「好き嫌いというより、鬱陶しいほうに見慣れてるからな」 「素直じゃないなあ」 そう言って裕貴はクスクスと笑い、啓太郎にしがみついてくる。息もできないほどの強烈な欲情に襲われた瞬間だった。  いつもは、ここで自分をコントロールすることができたのだ。どんなにつらくても、金で裕貴を自由にしているという意識が歯止めになり、暴走を止めていた。だが今、裕貴との間にあるのは『金』のやり取りではなく、『想い』のやり取りだ。そのうえで、自分たちの今の行為がある。 啓太郎は、裕貴の髪に唇を押し当て、耳から首筋へと愛撫しながら、スウェットパンツと下着を引き下ろし、同時に、余裕という言葉をかなぐり捨てていた。 裕貴の腰を引き寄せて、指で綻ばせた内奥の入り口へと高ぶった欲望を押し当てた。すると裕貴の唇から熱い吐息が洩れ、その響きに啓太郎はゾクリと疼きを感じる。「……最初はゆっくりしてね」 背に回した腕に力を込めながら裕貴が言い、柔らかな髪を手荒く撫でて啓太郎は頷く。「痛かったら言え」 「そんなこと言ってたら、啓太郎、何もできないよ」 啓太郎がちらりと苦笑を洩らすと、上目遣いに見上げてきた裕貴もにやりと笑う。だがすぐに厳かな気持ちで――大げさではなく、啓太郎はこれ以上なく真剣なのだ――動き始めた。 慎重に腰を進めて裕貴の内奥へと押し入る。きつい収縮感に怯みそうになりながらも、それでも裕貴の奥を暴きたいという誘惑には勝てない。「んあっ……」 逞しい部分を含ませた途端、裕貴が声を上げる。苦しみを和らげようと、啓太郎は顔中に唇を押し当て、何度も髪を撫でていたが、ふいに裕貴が言った。「なんで唇にはキスしてくれないの?」 予想外の質問に目を丸くした啓太郎は、指先で裕貴の唇を撫でる。「さっき口で、お前に、その――……。俺はいいけど、お前が唇にキスされるのは抵抗あるんじゃないかと思ってな」 言い終わると同時に頭を引き寄せられ、唇を塞がれた。口腔に裕貴の熱い舌が差し込まれ、舐め回される。キスの勢いに背を押されるように、啓太郎はさらに深く裕貴の中に押し入っ
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「はっ……、あうっ、うっ、いっ、ああっ」 啓太郎の見ている前で、裕貴は乱れていく。背をしならせ、首を左右に振りながら、両手を頭上に伸ばしてシーツを握り締める。全身で啓太郎を誘い、狂わせていた。 執拗に先端を攻めて、裕貴を二度目の絶頂に追い上げた啓太郎は、自分の欲望も限界が近いことを悟り、やや性急に内奥深くを突き上げる。  泣きそうな顔で裕貴が見上げてきており、その表情を見たことで、啓太郎は最後の瞬間を迎えていた。ダメだと思いつつも、思考すら甘く溶けてしまいそうな快感に逆らえず、熱い飛沫をすべて、裕貴の内奥に注ぎ込んでしまう。「んくうっ」 甲高い声を上げて裕貴がしがみついてきて、体を震わせた。啓太郎は荒い呼吸を繰り返しながら、裕貴の唇を塞ぐ。すぐに唇を離して、二人とも夢中で空気を貪っていた。 汗に濡れた体で抱き合いながら、とにかく呼吸を落ち着ける。体力がない裕貴のほうは本当に苦しそうで、啓太郎の罪悪感は疼いた。「……悪い。夢中になって、加減がわからなくなった」 一気に押し寄せた脱力感をやり過ごしてから、やっと裕貴の顔を覗き込む。ぐったりとしながらも裕貴は微笑んだ。「夢中になるぐらい、気持ちよかった?」 「なんでお前、そういうことが聞けるんだ……。心に秘める、ということを知らんのか」 「聞きたいんだ。啓太郎がどんなふうに感じたか。……本当は、こう聞きたいんだ。気持ち、悪くない? って」 ふっと裕貴の表情が曇る。その表情に、裕貴への愛しさがさらに増す。  啓太郎はできるだけ優しく笑いかけ、汗が伝っている裕貴の首筋やこめかみをてのひらで撫でる。それから裕貴の手を握り、しっかりと指を絡め合った。「――びっくりしてる」 啓太郎の言葉に、裕貴は大げさに目を丸くする。「びっくり?」 「自分がまったく抵抗を感じてないことに、びっくりしてる。少し前までの俺なら、こんなことをしようなんて考えもしなかった。なのに、現実の俺はお前とこうしていて、しかも、やたら幸せな気分になってる」 「幸せなんだ」 からかうように鼻先を突かれ、まじめに聞けとその手を払いのける。ついでに裕貴の唇にもう一度キスした。そのまま舌を絡め合う。  唇を離すと、はにかんだように裕貴が笑った。「……おれも、幸せ。こんな気分、久しぶりだよ」 「本当か?」 「やっと啓太郎を気持ち
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