「なんか卑怯だよ、その言い方。啓太郎はどう思っているのかわからない。面倒なことになりたくないから、おれの部屋に近づきたくないなら、そう言ってくれたほうが――」 「そうじゃないっ。ただ邪魔されたくないだけだ。誰か来るかもしれないと思いながら、お前と会うのは……落ち着かない。この部屋は、居心地がいいんだ。なのに、お前の兄さんとはいえ、その雰囲気が壊されるのは嫌だ。だけど、嫌な顔なんてできないだろ。もし博人さんと、ここで会ったときに。俺だってそれぐらいの分別はつく」 皿を置き直した裕貴が体ごと向きを変え、啓太郎の正面に立ったかと思うと、いきなり肩に額を押し当ててきた。「明日も兄さんが来たら、来ないでほしいって言う」 「おい、何もそこまで言わなくても――」 「本当は、二年前からわかってるんだ。……おれと兄さんは会わないほうがいいって。啓太郎が一緒にいたから、油断したのかもしれない」 甘えてくるというより、庇護を求められているような頼りなさを裕貴から感じ、啓太郎は薄い肩に手をかける。 漠然と感じたことを裕貴に問うてみた。「……なあ、もしかして博人さんと、本当は仲が悪いのか? それとも、ここで会っているうちにケンカしたとか……」 「どうしてそんなこと聞くんだよ」 「お前の言動は、博人さんとの間にわだかまりがあると言っているようなものだ。まだ――」 博人が結婚したことが許せないのか、と言いかけたが、言葉がきつすぎると感じ、やめておいた。 子供をあやすように裕貴の背を軽く叩いてやる。「お前の好きにすればいい。俺は、お前に面倒を見てもらっている身だからな。偉そうなことは言えない」 やっと顔を上げた裕貴が小さく噴き出す。啓太郎は顔をしかめた。「何かおかしいこと言ったか、俺?」 「真剣な顔して、面倒見てもらってる、なんて言うから、おかしくてさ」 「事実だろ」 大きく息を吐き出して裕貴は体を離し、啓太郎に背を向けて再び皿を手にする。「気が抜けたらお腹減った。啓太郎って、重い相談するには向かないよね」 「でも、言ってよかっただろ。まともな相談相手にはならなくても、誰かに話すだけで楽になることはあるし、気持ちも整理できることもある」 「――……うそだよ。相談できる相手が啓太郎でよかったよ」 「仕方なく言ってないか?」 「兄さんには、やっぱりも
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