車に戻ると、裕貴はぐったりしてシートに体を預け、目を閉じていた。運転席に乗り込んだ啓太郎は、裕貴の髪を掻き上げてやりながら声をかける。「おい、大丈夫か」 「……人に酔ったのかな。頭痛い……」 買ったパンを後部座席に置いてから、啓太郎はすぐに車を出す。青い顔をしている裕貴には申し訳ないが、小さくこう洩らしていた。「お前は本当に――」 「手がかかる、って言いたい?」 啓太郎の言葉を引き継ぐように、裕貴が力ない声で言う。頭が痛いというわりには、減らず口は健在だ。啓太郎は唇を綻ばせる。「繊細だな、と言おうとした」 横目でうかがうと、裕貴は照れたような表情となり、たまらず啓太郎は裕貴の片手をきつく握り締めてやった。「そんなふうに言うの、啓太郎ぐらいだよ」 「博人さんも言いそうじゃないか。可愛い弟に、欠点なんてないって顔して、お前のことを見ている。今日だって、お前と一緒に過ごせて嬉しそうだった」 再び裕貴の表情が曇り、反対に啓太郎の手を握り返してきた。「啓太郎がついてきてくれなかったら、行かないつもりだったんだ……」 どうして、と気軽に聞けない雰囲気だった。裕貴はすぐに手から力を抜き、シートを倒すと、目を閉じてしまう。 そんな裕貴が儚く見え、啓太郎はむしょうに抱き締めたい衝動に駆られる。別に今の裕貴の姿だけに刺激されたわけではなく、博人の存在も関係あった。 おそらく博人は、裕貴の側にいる啓太郎をよくは思ってないだろう。一方で啓太郎も、裕貴に過保護な博人に対して、どうしても身構えてしまう。 今の生活を脅かそうとしている侵入者、と捉えているのかもしれない。 ようやくマンションに着いた頃には、外は薄暗くなっていた。車のエンジンを切って裕貴に声をかけようとすると、実は目を閉じていただけだったのか、すでに裕貴は体を起こし、シートを戻そうとしているところだった。 さすがの啓太郎も多少の疲れを感じながら、マンションに入る。「……頭が痛いなら、もうお前の部屋に寄るのはやめておこうか? すぐに横になりたいだろ」 エレベーターの中で啓太郎が言うと、甘えてくるように裕貴が腕を掴んできた。まだ夕方なので、さすがに人目に気をつけるべきなのだろうが、絡みついてくる裕貴の腕を振り解くことなど、啓太郎にはできなかった。「お茶ぐらい飲んでいきなよ。……誰もいな
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