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All Chapters of SWEET×SWEET: Chapter 141 - Chapter 150

150 Chapters

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 車に戻ると、裕貴はぐったりしてシートに体を預け、目を閉じていた。運転席に乗り込んだ啓太郎は、裕貴の髪を掻き上げてやりながら声をかける。「おい、大丈夫か」 「……人に酔ったのかな。頭痛い……」 買ったパンを後部座席に置いてから、啓太郎はすぐに車を出す。青い顔をしている裕貴には申し訳ないが、小さくこう洩らしていた。「お前は本当に――」 「手がかかる、って言いたい?」 啓太郎の言葉を引き継ぐように、裕貴が力ない声で言う。頭が痛いというわりには、減らず口は健在だ。啓太郎は唇を綻ばせる。「繊細だな、と言おうとした」 横目でうかがうと、裕貴は照れたような表情となり、たまらず啓太郎は裕貴の片手をきつく握り締めてやった。「そんなふうに言うの、啓太郎ぐらいだよ」 「博人さんも言いそうじゃないか。可愛い弟に、欠点なんてないって顔して、お前のことを見ている。今日だって、お前と一緒に過ごせて嬉しそうだった」 再び裕貴の表情が曇り、反対に啓太郎の手を握り返してきた。「啓太郎がついてきてくれなかったら、行かないつもりだったんだ……」 どうして、と気軽に聞けない雰囲気だった。裕貴はすぐに手から力を抜き、シートを倒すと、目を閉じてしまう。  そんな裕貴が儚く見え、啓太郎はむしょうに抱き締めたい衝動に駆られる。別に今の裕貴の姿だけに刺激されたわけではなく、博人の存在も関係あった。 おそらく博人は、裕貴の側にいる啓太郎をよくは思ってないだろう。一方で啓太郎も、裕貴に過保護な博人に対して、どうしても身構えてしまう。  今の生活を脅かそうとしている侵入者、と捉えているのかもしれない。 ようやくマンションに着いた頃には、外は薄暗くなっていた。車のエンジンを切って裕貴に声をかけようとすると、実は目を閉じていただけだったのか、すでに裕貴は体を起こし、シートを戻そうとしているところだった。  さすがの啓太郎も多少の疲れを感じながら、マンションに入る。「……頭が痛いなら、もうお前の部屋に寄るのはやめておこうか? すぐに横になりたいだろ」 エレベーターの中で啓太郎が言うと、甘えてくるように裕貴が腕を掴んできた。まだ夕方なので、さすがに人目に気をつけるべきなのだろうが、絡みついてくる裕貴の腕を振り解くことなど、啓太郎にはできなかった。「お茶ぐらい飲んでいきなよ。……誰もいな
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 妙にあどけない表情を目にした途端、啓太郎の中で目もくらむような欲望が突き上げてきた。 裕貴を抱き締めようとすると、軽く身をよじりながら笑われた。「外で抱き合ってると、さすがにマズイよ」「平気で腕は組んでくるくせに」「おれの癖だよ。腕に引っ付くの」 鍵を取り出しながらの裕貴の言葉に、咄嗟に啓太郎はこう言っていた。「――博人さんなら、黙って腕を組ませてくれたか? 甘えたがりの弟を持つのも大変だな」 啓太郎としては冗談のつもりだったのだが、裕貴はそうは取らなかったようだ。サッと顔色を変えたあと、うろたえたように視線をさまよわせ、おぼつかない手つきで鍵を開ける。「裕貴……」 「やっぱり、今日は帰ってよ、啓太郎。おれの分のパンはいいから――」 裕貴が背を向けたまま玄関に入ろうとしたので、反射的に啓太郎もあとに続き、裕貴の腕を取る。「お前、本当に大丈夫か? なんかおかしいぞ」 軽く揉み合うようにして玄関に入ると、手探りで電気をつける。啓太郎は裕貴の顔を覗き込もうとしたが、嫌がって顔を背けようとするのでやや強引にあごを掴み上げた。驚いたことに裕貴は、今にも泣きそうな顔をしていた。「悪いっ、痛かったか?」 慌てて啓太郎はあごにかけた手を退けようとしたが、反対に裕貴に手を取られ、頬ずりされた。その様子を見て、また啓太郎の中で欲望が突き上げてくる。もう、限界だった。「……お前のその甘えっぷりが無意識だとしたら、大したもんだ」 啓太郎は低い声で呟きながら、裕貴の髪に唇を押し当てる。すると裕貴が挑発するように上目遣いで見上げてきながら、囁き返してきた。「何が、大したもの?」 裕貴が、答えをわかっていながら問いかけていると知りながら、啓太郎は乗ってしまう。片手を伸ばしてドアを施錠すると、しっかりと裕貴を抱き締めた。「俺はお前に、翻弄されっぱなしだ」 もう一度裕貴の顔を覗き込むと、もう泣きそうな顔はしていなかった。あどけないくせに、やたら蟲惑的な目にじっと見つめられ、啓太郎は心の中でも痛感する。  冗談ではなく、やはり自分は裕貴に翻弄されている、と。その状態が、このうえもなく心地いい。 啓太郎はシューズボックスの上にパンが入った袋を置くと、裕貴の首からマフラーを外し、ダッフルコートを脱がす。すぐに裕貴のほうからしがみついてきたので、その体を引き離
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 感じやすい括れをいきなり擦ってやると、腰が震える。それをきっかけに裕貴はそっと目を細め、啓太郎の舌を温かな粘膜で包み込むようにして吸い始めた。 快感に対して順応が速い裕貴に、今は狂おしい気持ちを掻き立てられる。忘れたつもりにはなっていたが、こんなときに思い出すのだ。  裕貴に対して、快感を教え込んだ相手がいると――。 玄関に微かに濡れた音を響かせながら、差し出し合った舌を絡める。そうしながら裕貴のものを手荒く扱き立て、もう片方の手では、すでに硬く尖った胸の突起を指先で弄る。「……濡れてきた」 熱くなった裕貴のものの先端をくすぐり、啓太郎は低く囁く。裕貴は艶やかな笑みを浮かべて首をすくめた。「恥ずかしいよ、バカ」 もう一度、今度はしっとりと唇を重ねていると、ふいに部屋のほうから電話の音が鳴り響いた。ピクリと体を震わせた裕貴が、硬い声で言う。「兄さんだ……」 「部屋に着いたか、確認したいんだろ。電話に出るか?」 啓太郎は手を引こうとしたが、それを許さないように反対に裕貴を手を掴まれて引き戻される。ぶつけるように唇が割り込まされ、あっという間に裕貴の激しさに煽られる。  再び手を動かして裕貴のものに愛撫を加えながら、指先に心地いい胸の突起の感触を楽しむ。その間も、互いの唇と舌を貪り合っていた。 気がついたときには電話の音は止み、互いの荒い息遣いだけが玄関に響く。ふいに、思い出したように裕貴に問われた。「ねえ、おれがこの部屋からいなくなるの嫌?」 なぜ急にこんなことを聞いてくるのか、啓太郎には意味がわからなかった。濡れた先端を強く擦り上げると、短く悲鳴を上げて裕貴が顔を背ける。露わになった首筋に唇を這わせながら啓太郎が今度は問いかけた。「なんでそんなことを聞くんだ。お前まさか――」 本当に実家に帰るつもりでは、と心配したが、そうではなかった。顔を背けたまま裕貴が口元にちらりと笑みを浮かべる。「だってさ、ショウルームにいる間の啓太郎って、ずっと不安そうな顔してるんだもん。もしかして、おれが実家に帰ると思って心配してるのかなあって」 自覚がなかっただけに、啓太郎は激しくうろたえる。だが、裕貴の前でムキになるわけにもいかない。裕貴の余裕を失わせるため、愛撫を続けているものの括れを指の輪できつく締めつけた。「あうっ」 裕貴の足元が大きく乱
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**** 上機嫌で車を降りた啓太郎の手には、ケーキ屋の箱があった。会社で話していた女性社員たちから、美味しいケーキ屋の情報を仕入れ、帰りに寄ってみたのだ。 買って帰ったケーキを見て、裕貴が嬉しそうな表情を浮かべるのを想像するだけで、啓太郎の足取りは軽くなる。たとえ、二日続けての徹夜明けだとしても。裕貴の顔を見て、裕貴が作ったメシを食う間ぐらいは、まだ目を開けていられる自信はあった。  しかし啓太郎の、睡眠不足による妙なテンションの高さと上機嫌は、長続きしなかった。 マンションのエントランスからこちらに向かって歩いてくる人物に気づいたからだ。見間違うはずもなく、それは博人だった。「あれは……」 思わず足を止め、無意識に啓太郎は眉をひそめていた。一方、マンションから出てきた博人は、啓太郎に向かってあくまで儀礼的に笑いかけてくる。ただなんとなくだが、いつもより機嫌がよさそうに感じた。対照的に、啓太郎の上機嫌は急速に萎んでいく。 マンション前で博人と向き合った啓太郎は頭を下げ、このとき、博人の手にある封筒に目を留めた。先日、ショウルームから裕貴が持ち帰っていたものと同じだ。「――リフォームの件で細かい部分を決めておきたかったんですよ」 啓太郎が何も言わないうちに、博人のほうからそう説明をしてくれる。そんなに物言いたげな顔をしていただろうかと、啓太郎は思わず自分の顔に触れていた。「そう、ですか……」 「本当は外に呼び出したかったんですが、手が離せないと裕貴に冷たく言われましたね。だからこうして出向いてきたわけです」 「株の取引で忙しいみたいですね。ここ何日か、パソコンの前から離れられないと言ってました」 啓太郎と博人は、示し合わせたようにマンションを見上げ、裕貴の部屋のほうに視線を向ける。  ふいに、博人が独りごちるように呟いた。「裕貴が学生の頃は、単なる小遣い稼ぎだと軽く考えて、注意しなかったんですが、今になって後悔してますよ」 「えっ?」 博人はこちらを見て、唇の端をわずかに上げた。「部屋から出なくても稼げる手段なんてものがあるから、裕貴は二年もの間、わたしと会おうとしなかったし、会わなくても困らなかった。……本当なら、裕貴がパソコンの前に座り続けるようなまねをしなくても、生活費なんてわたしが与えてやれるのに」 どこか口惜しげ
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 啓太郎はエレベーターの中で、手にしたケーキの箱を持ち上げて、ため息をつく。せっかく裕貴のためにケーキを買ってきたが、無駄になったかもしれない。あの、裕貴を猫可愛がりしている博人が、手土産も持たずに裕貴の部屋を訪れるとは思えないのだ。  だからといって自分の部屋に持って帰るわけにもいかず、啓太郎は裕貴の部屋の前に立つ。深呼吸してから、インターホンを鳴らした。 少し間を置いてから、インターホン越しにドキリとするほど気だるげな裕貴の声がした。『――……どうかしたの?』 啓太郎はすぐに、裕貴が、自分の兄が引き返してきたと思っているのだと察した。「裕貴、俺だ。博人さんとは、下で会ったぞ。俺は、よくよくあの人と縁があるらしいな」 笑いながら話したが、インターホンの向こうから返事はない。急に啓太郎は心配になった。さきほど下で博人から聞かされた、実家に戻ってきてもらいたいという話が脳裏を過ぎったのだ。「……裕貴、大丈夫か?」 博人とケンカでもしたのではないかと心配になり、思わず啓太郎は呼びかける。『あっ、うん……。ちょっと待ってね、部屋片付けるから』 「片付けるって、お前――」 啓太郎は、裕貴の部屋が散らかっているところなど見たことがない。不思議に感じながらも、ドアを開けてもらうまでおとなしく待つしかなかった。 数分ほど待ってようやくドアが開けられると、裕貴は長袖のTシャツの上からカーディガンを羽織り、カーゴパンツという、いつもと変わらない服装をしていた。ただなんとなく、微妙な違和感を覚える。それは服装ではなく、裕貴自身から感じるものだ。「ごめんね、寒い中待たせて」 そう言って笑いかけてきた裕貴に促され玄関に入ると、啓太郎は無意識に裕貴に手を伸ばすが、さりげなく躱された。「いや、別にいいけど……、片付いたか?」 「まあね」 ダイニングに足を踏み入れると、一見して変わったところはない。あまりに啓太郎がじろじろとダイニングや隣の部屋を見ていたせいか、裕貴が眉をひそめる。「何?」 「お前が部屋を片付けるなんて言うから、てっきり博人さんとケンカして、手当たり次第にものを投げつけたのかと思ったんだ」 裕貴は微妙な表情を見せたあと、まるで啓太郎の視線を避けるように背を向けた。ほっそりとした背がなんだか頼りなく見え、啓太郎の胸の奥が不安でざわつく。もし
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**** 今日のシステム開発部の空気は少し浮き立っていた。もうダメだという思いを何度も味わってきたので、それを乗り越えてシステムが実用化されるのだから無理もない。  ただ、本当に喜べるのは、無事にシステムが起動できれば、の話なのだが。 モニターを眺めながら啓太郎は、到底浮かれた気分にはなれなかった。普段の自分なら、確かに上機嫌になっているかもしれないが、今は仕事よりもむしろ、プライベートのほうに危険を孕んでいる気がする。  啓太郎にとってのプライベートとはもちろん、裕貴のことだった。啓太郎にはどうしても、年が明けてからの裕貴は、心が揺れ続けているようにしか思えない。 心が揺れる原因は、兄や父親から、実家に戻るよう説得されたからではないかと推測していた。問題なのは、そのことに関して裕貴が、啓太郎に気持ちを明かしてくれないことにある。 心の揺れを悟られたくなくて、裕貴は自分に話してくれないのだろうか――。 こう考えるたびに、啓太郎の心は大きな不安に襲われるのだ。裏を返せば、それだけ啓太郎にとって裕貴は、生活に欠かせない、大事な存在になったということだ。  デスクに頬杖をつき、ため息をつく。  実家に帰るな、と裕貴に言いたかった。だが、そう言う権利が啓太郎にはない。少なくとも今の関係では。 ここでモニターを見て、今日中に済ませる予定だったテストが、なんの問題もなく完了していることを知る。さすがに、ここまできて問題が起こると困るが、順調すぎるのも、逆に怖い。 啓太郎は眉をひそめてモニターを凝視していたが、腕時計で時間を確認してから、たまらずパソコンの電源を落とす。  さすがにもう、今日はこれで帰ることにした。また何か起こったとき、いつ地獄のような日々に追い込まれるかわかったものではないので、実行に移すなら今しかない。 慌ただしく帰り支度をした啓太郎は、誰かに呼び止められる前に会社を飛び出す。さすがに今日はもう、会社から電話がかかってきたとしても、出る気はなかった。 SE失格だと、念仏のように口中で唱えながらの啓太郎の願いは叶えられたのか、マンションに戻るまで携帯電話が鳴ることはなく、無事に、裕貴の部屋の前に立つ。 呼吸を整えてインターホンを鳴らしたが、応答はなかった。啓太郎は、漠然とこの事態を予測していた。  裕貴は出かけていないかも
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「寒い……」 そう洩らして裕貴がドアの隙間から身を滑り込ませてくる。啓太郎はドアを閉めながら、率直に疑問を口にした。「お前、先に自分の部屋に戻らなかったのか」 「だって、おれの部屋寒いもん。電気がついてるの見えたから、啓太郎が帰ってきてるってわかったし、だったら、まっすぐこっちに寄ったほうがいいだろ? 部屋が暖かいんだから」 「……もう少し、可愛げのある言葉はないのか、お前……」 現金な裕貴に呆れながら、部屋へと上げる。ダッフルコートを脱ぎ、マフラーと手袋を外した裕貴は、すぐにコタツへと潜り込み、幸せそうな表情を浮かべる。その様子に、思わず啓太郎の口元は綻びそうになるが、寸前で堪えた。 裕貴を待ちながら、ずっと啓太郎を苛んでいた感情は、こんなことでは消えない。「実家のリフォームのことで出かけてたのか?」 キッチンに立って湯を沸かしながら問いかけると、隣の部屋から気の抜けたような声が返ってきた。「そうだよ……」 「お前一人で――そんなわけないか」 啓太郎の呟きが聞こえたわけではないだろうが、裕貴が言葉を続ける。「リフォーム会社の人に実家を見てもらって、それでいろいろ相談しながら見積りしてもらってたんだ。といっても、話してたのは兄さんばかりだけど。おれなんて、立ち合う必要ないんじゃないかな」 裕貴はわかって言っているのだろうかと、啓太郎は苛立ちを覚える。博人は、ただ裕貴と一緒の時間を過ごしたいがために、実家に呼んだのだ。  実家のリフォームというのは、いい理由だ。工事の進捗状態を確認するため、と言っては、何度も裕貴を呼び出せる。裕貴にしても、博人がいるのならさほど身構えることなく出かけられるはずだ。何より、実家に顔を出し続けることで、里心がつくかもしれない。 そうなることを啓太郎は恐れているが、行くなとも言えない。 コーヒーを入れたカップを手に隣の部屋に行くと、裕貴は仰向けで寝転がっていた。どうやら疲れたらしい。「メシは食ったのか?」 カップを置いてから、啓太郎もコタツに入る。「うん……。兄さんと食べてきた。――……懐かしかった。子供の頃、よく兄さんと行ってたレストランなんだ」 ぼんやりとした表情で話す裕貴だが、視線はまっすぐ天井に向けられている。何かを考え込んでいるようだ。「楽しかったか?」 啓太郎の問いかけに、やっと裕貴
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 薄い肩をぎゅっと掴みながら、思わずこんなことを口にしていた。「俺は、お前が引きこもりをやめたら、反対に今度は、俺がお前を部屋に閉じ込めるようになるかもしれないな」 啓太郎の率直な言葉に裕貴は目を丸くしてから、次の瞬間には、からかうように頬を突いてきた。咄嗟に自分の発言を後悔したが、もう遅い。  裕貴が目を輝かせながら、伏せた啓太郎の顔を下から覗き込んできた。「――啓太郎ってもしかして、独占欲が強い?」 「お前、何聞いてくるんだ……」 「だって今の言葉、おれを外に出したくないってことだよね。お前を、俺だけのものにしたい、って告白じゃないの?」 「……どういう耳をしてるんだ。お前の耳は」 裕貴の両耳を引っ張りながら、機嫌が悪くなったふりをして誤魔化そうとしたが、じっと見つめてくる裕貴の眼差しには勝てなかった。「おれが可愛いから、外でふらふらされると、心配でたまらないんだろ」 冗談のつもりで裕貴は言ったのかもしれないが、否定できない。啓太郎は大きくため息をつくと、裕貴の両頬をてのひらで包んでから、髪に唇を押し当てる。「お前はなんだか、しっかりしてるようで、危なっかしい」 「少なくとも、啓太郎よりしっかりしてると思うけど」 「そういう意味じゃない。お前が本気になったら、お前を甘やかしたい奴はゴロゴロと出現するんだろうな。そしてお前は、甘え上手だから――」 「誰かれかまわず、ついていきそう?」 ひどい言い方だと自覚しつつも、啓太郎は肯定する。一方の裕貴は、怒るどころか、機嫌よさそうに声を洩らして笑った。「大丈夫だよ。おれの人見知りは筋金入りだから、引きこもりをやめたとしても、簡単に誰かと仲良くなったりしない。それに、浮気はしない性質なんだよ。こう見えてもおれ、けっこう一筋だよ」 その発言は反則だ。啓太郎はあっさり裕貴に翻弄されてしまう。  裕貴をしっかりと両手で抱き締めると、ぼやくようにこう洩らしていた。「……俺は、恋愛にはのめり込めないタイプだと思っていたんだけどなあ……」 「好きすぎて困る?」 「うん、と答えたら、俺たちは立派なバカップルだぞ」 「えー、いままでだって、その片鱗あったじゃん」 体を離した啓太郎は、裕貴の顔を真剣な表情で覗き込む。「そうか?」 「自覚なかったの」 顔をしかめた啓太郎に対して、裕貴は笑いな
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「ということで、おれは引きこもりに戻るよ」 「……戻るも何も、周囲の人間が、お前を強引に連れ回していたというか……」 「だったら、おれを連れ回していいのは啓太郎だけ、ということに決めた」 単純だが、裕貴の言葉が嬉しかった。つまらない啓太郎の独占欲は、あっという間に満たされていく。  裕貴の首の後ろに手をかけ、そっと引き寄せると、裕貴のほうから軽く唇を吸ってきた。「それで、いい?」 尋ねてきた裕貴の目には、不安の色がちらついていた。普段、挑発的なほど強い光を湛えているというのに、なんという目をしているんだと思いながら、啓太郎は強い口調で応じた。「いいに決まってるだろ」 裕貴が笑みをこぼしたのを確認してから、今度は啓太郎が裕貴の唇を吸い上げ、そのまま二人は吐息を洩らしながら唇を重ねる。 裕貴の手が、啓太郎の着ているトレーナーの下に入り込んできて、熱くなっている肌に、さらに熱い指先が這わされる。たったそれだけの感触に、ゾクゾクするような愉悦を覚え、啓太郎も裕貴が着ているTシャツをたくし上げるようにして肌に触れていく。「お前、外に行くのに、こんな薄着にコートを引っかけただけだったのか」 「だって、タクシーに乗って家に行くだけだし」 「それでも、また風邪ひくぞ」 「――そうしたら、啓太郎につきっきりで看病してもらう」 やっと裕貴が、いつもの挑発的な眼差しを向けてくる。その目に見入られたように、啓太郎は目許に唇を押し当て、次に白い耳にも触れる。  感情の高ぶりのまま、素直な気持ちを抵抗なく口にできた。「お前が好きだ……。生意気で、俺を振り回してばかりなのに、そんなお前のことを、たまらなく愛しく感じる」 ふいに裕貴の両手が頬にかかり、顔を覗き込まれる。照れたように笑いながら、裕貴がぽそぽそと囁くように言った。「そういう言葉、もっと言ってよね。優しいくせに、そういうところ鈍感だよね、啓太郎って。なんで彼女と長続きしなかったのか、わかる気がする」 「うるさい。それと、……努力する」 裕貴と少しでも長く、心地のいい関係を続けていきたいから――。 さすがにキザすぎて、この台詞は口には出せない。ただ、心の中で強く願うだけだ。その想いが通じたのかどうか、裕貴が首にしがみついてきたので、軽い体を受け止めながら啓太郎は厳かに提案した。「……ベッドに行
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 啓太郎は裕貴を伴ってベッドへと移動すると、すぐに細い体を押し倒そうとしたが、反対に裕貴に胸を押されて、啓太郎のほうがベッドに仰向けに転がる。「おい、裕貴……」 「最初の頃からおれ、言ってたよね。気持ちよくしてあげるって」 言いながら裕貴の手が、啓太郎が穿いているスウェットパンツの前に這わされる。意図を察した啓太郎は、慌てて裕貴の手を押し退けようとしたが、裕貴は小さく笑った。「本当に優しいね、啓太郎は」 そう言いながらも裕貴の手の止まることはなく、啓太郎のものは布越しに柔らかく刺激される。感じる心地よさが、なぜか啓太郎を不安にさせる。  裕貴はもう笑っておらず、強い光を放つ目でじっと見つめてくる。「だけど、知るべきだよ。とっくに気づいてるんだろ? おれが――男に慣れてるって」 「俺は別に、お前が前に誰とつき合ってようが気にしない。それを言うなら俺だって、お前の前でさんざん、過去につき合ってた女の話をしている」 一瞬、つらそうな顔をしてから裕貴が目を伏せる。「……啓太郎がしてきた恋愛とは、違うよ……」 このときの裕貴の言葉を、同性同士の恋愛だから、という意味で啓太郎は捉えた。 啓太郎は口を開きかけたが、次の瞬間には唇を引き結ぶ。裕貴が、引き出した啓太郎のものに顔を近づけ、唇で触れてきたからだ。「裕貴っ……」 痺れるような熱い感覚が背筋を駆け抜ける。動けなくなった啓太郎にかまわず、裕貴は舌を這わせてから、ゆっくりと口に含んでいく。すでに何回か、啓太郎が裕貴にしてやっていた行為だった。  あっという間に制止する気力を奪われた啓太郎は、黙って裕貴を見つめる。ときおり上目遣いに見上げてきながら、裕貴は熱心な愛撫を続け、それに伴い、啓太郎の中で快感も高まってくる。 素直には認めがたいが、目を背けるわけにもいかない。裕貴の愛撫は巧みで、情熱と興奮のみで施す啓太郎の愛撫とはあまりに違いすぎた。  狂おしい嫉妬と快感に呑まれながら、とうとう啓太郎は裕貴の頭に手をかける。髪を撫でてから、頬に触れると、濡れた目でこちらを見つめてきながら裕貴が微かに微笑んだように見えた。 裕貴の舌が、高ぶったものの先端に丹念に這わされる頃になると、啓太郎は天井を見上げて大きく息を吐き出す。  しっとりと湿った口腔の粘膜に包み込まれ、柔らかく締め付けられながら吸引され
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