飲むことになるのは確実なので、車はひとまず会社に置いて行くことにして、電車で最寄の駅に行き、そこから五分ほど歩く。 カウンターで社名を告げると、二階の座敷にいるということで上がってみる。 すでに飲み会は始まっている時間なので、さぞかし盛り上がっているだろうと思ったが、襖の向こうからは控えめなざわめきしか聞こえてこない。 靴を脱いでから襖を開けると、さほど広くない二間を繋げた座敷には、ぎっしりと社員たちが座っていた。見事に男女混合で席についてはいるのだが、その表情は飲み会という名の合コンを楽しむというより、まるで通夜だ。 一体何事かと不審に思った啓太郎だが、すぐにその理由がわかる。 若手が集まっての合コンだと頭から思い込んでいたが、そうではなかった。なぜか中年の女性社員に男性社員、そのうえシステム開発部の部長の姿まである。若い社員もいることはいるが、実に居心地悪そうな顔をしていた。 来たくて来たわけではないと、表情が語っている。「羽岡さん、こっち」 啓太郎を誘った男性社員に呼ばれ、狭い隙間を通って隣に行く。男性社員の反対隣には、見かけたことのない三十代後半の女性が座っており、澄ました顔でビールを飲んでいる。「……誰?」 近くのコート掛けにコートを引っ掛けてから座りながら小声で尋ねると、男性社員も声を潜めて教えてくれた。「商品部の係長」 目の前には鍋が用意されているが、肉は食われてしまったらしく、皿には野菜や豆腐しか残っていない。酒を飲みたいというより、とにかく腹が減っている啓太郎は、仕方なく野菜を次々に鍋に放り込む。「で、何がどうなってるんだ」 凄味を帯びた声で尋ねると、男性社員はとぼけた顔を見せる。「なんのことだ?」 「飲み会じゃなかったのか」 「飲み会でしょ。商品部とシステム開発部合同の」 「合コンじゃなかったのかっ」 ここで男性社員がニヤリと笑った。「俺は、合コンなんて一言も言わなかったと思うぜ、羽岡さん。どう解釈するかは、あんたの勝手だけど」 騙された――。ようやく気づいた啓太郎は、ガクリと肩を落とす。一気に一日の労働の疲労が押し寄せてきて、同時に嫌な虚脱感に襲われていた。「うちの部長が好きなんだよ。部下たち集めてイベントするの。前回なんて、ボーリングだぜ? 今日の飲み会に巻き込まれた商品部も哀れなもん
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