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Penulis: 北川とも
last update Tanggal publikasi: 2026-03-21 18:00:35

 珍しく休日出勤のない日曜日、昼前に起き出した啓太郎は部屋の掃除をしてから、特にやることもなくパソコンに向き合っていた。

 これまでなら、面倒ながらも食料のまとめ買いに出かけるところだが、裕貴の部屋でメシを食うようになると、そこまでの切迫感もなくなった。

 わざわざインスタント食品の世話になったり、弁当を買ってきたり、仕事帰りにどこかの店に立ち寄らなくても、定食代程度の金さえ出せば、温かくて美味いメシが出てくる。

 それに、裕貴は生意気ではあるが、話し相手になってくれる。

 これまで考えたことなどなかったが、部屋で一人でメシを食っていると寂しいのだ。そのことを自覚したのは、裕貴がテーブルの正面に座り、他愛ないことを話すようになってからだった。

 誰かと――裕貴と向き合ってメシを食うのが、楽しかった。

「ヤバイだろ、この状況は」

 パソコンのモニターを見ているつもりが、いつの間にか裕貴のことを考えており、啓太郎は小さく呟く。

 ヤバイのは、短期間で裕貴と親しくなりすぎたことだ。隣人としてのつき合いをとっくに越えているだろう。

 なら友人かと言えば、それも微妙だ。裕貴に対
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  • SWEET×SWEET   -105-

    「啓太郎が真剣な顔して、怖い声出すから、ドキドキしてきた」 「……俺はいつも、そんなにヘラヘラしているか?」 思わず問いかけてから、啓太郎は顔をしかめる。話が逸れていることに気づいたからだ。「いや、そんなことはどうでもよくて――」 「啓太郎が欲しいものって何?」 啓太郎の言葉に被せるように裕貴が言い、きつい眼差しを向けてくる。  寸前まで猫みたいに甘えてきて、はにかんだ笑みも見せていたというのに、もう表情を一変させているのだ。そんな裕貴に、情けないほど啓太郎は翻弄され、魅了されている。「わかっているのに聞くのか」 「おれの勘違いかもしれないから、聞きたい」 裕貴の首から外したマフラーを傍らのデスクの上に置き、啓太郎は熱くなった滑らかな頬を両手で包み込む。「――お前に触れたい」 囁きながら裕貴の額に軽くキスして、唇にも触れようとする。すると裕貴が声を洩らして笑った。「いっつもおれに触りたい放題じゃん」 「違う。触らせてもらってるんだ。……お前に金を払って、俺はお前を買ってた」 「合意なんだから、そんな卑下た言い方しなくていいよ」 「お前に金を払っている限り、この感覚は抜けない。だからお前に、もう金を払いたくないんだ」 裕貴に片手を取られ、てのひらにそっと唇が押し当てられる。たったそれだけの行為に、啓太郎の体中に熱い疼きが駆け抜けた。「今から俺たちの関係は変えられるか?」 「啓太郎が望むなら」 「……だから、その言い方はずるいだろ」 このとき裕貴が痛みを感じたように唇を歪める。今にも泣き出すのかと、一瞬啓太郎は焦ったぐらいだ。  裕貴はもう片方のてのひらにも唇を押し当ててから、自分の頬をすり寄せてくる。「おれが引きこもっているのは、臆病だからだよ。これ以上何からも拒絶されたくないからだ。……おれからは望まない。求められて応えるほうが、ずっと幸せだし、つらくない」 裕貴が引きこもっている事情は、やはりそう単純なものではないのだ。何かしらの絶望を味わって、傷を癒すためにこの部屋に閉じこもる必要があったのだ。  それはもしかすると、裕貴に巧みなキスを教えた人物と関係あるのかもしれない。  邪推の域を出ない考えに囚われた途端、啓太郎の中に嫉妬の炎が燃え上がる。「だったらお前は、求めてくる人間だったら、誰でもいいのか?」 

  • SWEET×SWEET   -104-

    「なん、だ……」 マフラーの端を手で弄びながら裕貴が側に歩み寄ってくる。本当に酔っているのか、足元が少し覚束ない。  肩に額が押し当てられ、ごく自然な流れで啓太郎は裕貴の頭を片手で抱き寄せる。「ものすごく言いにくいんだけど」 そんな裕貴の切り出し方に、思わず啓太郎はドキリとする。何か不吉なことを言われるのではないかと身構えたのだ。だが、顔を上げた裕貴の悪戯っぽい笑みを見ると、どうやら違うらしい。「……お前にも言いにくいことなんて、あったのか」 「あるよ。こんないいプレゼントをもらったあとだからさ」 軽く受け流すことができなかった。心底照れた啓太郎は、顔を背けてしまう。そんな啓太郎の反応の意味を、聡い裕貴はわかっているはずなのに、からかいはしなかった。「言いにくいことってなんだ。もったいぶらずに早く言え」 「啓太郎に、クリスマスプレゼントを用意してないんだよ、おれ」 そんなことかと、拍子抜けした。  啓太郎は片手でガシガシと頭を掻きながら、短く息を吐き出す。「俺はいい……。別にお前から何かもらおうと思って、買ってきたわけじゃないしな」 「なら、欲しいものはないわけ?」 裕貴から挑発的な眼差しを向けられ、咄嗟に何も言えなかった。  啓太郎は心の中で、裕貴はやはり不揃いに伸びた髪のほうがいいと痛感する。そうでないと、いつもこの際どい眼差しを向けられ、うろたえなければならないのだ。 頭に血が上りすぎて、何も考えられない。おかげで本能のみが剥き出しになっていく。裕貴の前で取り繕っていた年上としての体面など、とっくにどこかに消えていた。「――……欲しいものがあると言ったら、くれるのか?」 「努力はするよ」 啓太郎はムッと唇をへの字に曲げる。すると裕貴がおもしろがるように頬をつついてきた。「お前、俺が何を言うかわかったうえで、そんなこと言ってるだろ」 「何、ヤバイことでも言う気なわけ?」 からかわれて怒りたいのに、そうできない。  ――惚れた弱みだ。 負け惜しみではないが、苦々しく啓太郎は呟いた。「……どっちがずるいんだ」 「さあね」 そう言いながら裕貴が体を寄せて、啓太郎の背に両腕を回してくる。トレーナーを通してじんわりと伝わってくる体温が、狂おしい想いに火をつけてしまった。ここが啓太郎の限界だ。  のろのろと裕貴の肩

  • SWEET×SWEET   -103-

    ** ホテルのレストランではあまり食べられなかったという裕貴は、ときおり啓太郎の前に置いた皿から、オードブルを指で摘まみ上げては口に運ぶ。意識しまいと思いつつも啓太郎の視線は、汚れた指先を舐める裕貴の口元へと吸い寄せられた。 豪華なオードブルやローストチキンといった料理の数々は、裕貴の小食を気にした博人が、レストランに頼んで作ってもらったものを持たせたらしい。「……お前、そんなに細いくせに、別に小食じゃないよな?」 啓太郎にはローストチキンを勧めておきながら、裕貴は和牛フィレ肉のパイ包み焼きが気に入ったのか、全部食べてしまった。スープも飲んでみたいというので、スプーンに掬ったコンソメスープを口元に運んでやる。美味しかったらしく、裕貴は満足そうに目を細めた。「緊張したんだよ。久しぶりに家族が揃ったから。三人でメシ食ったのなんて、五年以上ぶりだよ。兄さんの結婚式ですら、ビデオメッセージで済ませて出席しなかったんだから。……まあ、出席しなかったのはおれもなんだけど。とにかく、一家団欒なんて縁遠い家族なんだ、おれたち」「だから緊張したのか」「まあね。メシは基本的に一人で食べるか、一緒にいて楽しい相手と食べるべきだよね」 裕貴にちらりと上目遣いで見つめられ、眼差しと言葉に啓太郎の気持ちはくすぐられる。長い前髪に隠れがちだった裕貴の両目を、今は覆うものはない。おかげで、わずかな眼差しの動きにすら、啓太郎はさきほどから翻弄されている。「……俺とメシ食って、楽しいか?」 たった一つの答えしか求めていない卑怯な問いかけに、裕貴はさらりと問い返してきた。「啓太郎は楽しくない?」「お前が楽しいなら……楽しいかもな」「ずるいなあ。そういう答え方」 楽しげに言った裕貴が目を輝かせ、ケーキの箱を引き寄せる。箱を開け、啓太郎が買ったケーキの大きさに盛大に爆笑しながら、キッチンからナイフと皿を持ってくる。さっそく切り分け、啓太郎の前にも皿からはみ出しそうなケーキの塊が置かれた。 ビールでは顔色を変えない裕貴だが、今は頬が真っ赤になっている。ジュースのように飲んでいたワインで酔ってきたらしい。 上機嫌といった様子でケーキを食べる裕貴を、啓太郎も上機嫌で眺める。 料理も美味かったし、直感で選んだケーキの味も申し分なかった。目の前では、啓太郎がプレゼントしたマフラー

  • SWEET×SWEET   -102-

    「悪かったな。この間、お前との電話を一方的に切って」 「気にしてないよ。啓太郎にも大人の事情があることはわかってるから」 そんな立派なものはない。むしろ、子供じみた葛藤というべきなのだ。 料理を温めた裕貴が皿をテーブルに並べ、ついでにワインも開けて二つのグラスに注ぐ。グラスを受け取った啓太郎は、代わりに包みを押し出した。「やる。プレゼントだ。珍しいんだぞ。俺が、せがまれる前に自発的にクリスマスプレゼントを買うなんて」 「おれも、いつくれるのか待ってたんだ」 生意気なことを言いながらも、包みを受け取った裕貴は嬉しそうに口元を綻ばせている。開けていい? という問いかけに頷くと、さっそく裕貴が包みのリボンを解く。  自分が買ったプレゼントを目の前で開けられるのは、かなり気恥ずかしい。できるならベランダにでも逃げ出したい心境だ。 包みを開けた裕貴は、啓太郎が何を買ったのか知ると、小さく噴き出した。「もしかしてこれ、これからもおれを外に連れ出すって意味?」 「おっ、俺の気持ちが伝わったか」 「そのまんまじゃん。お出かけセット」 生意気なことを言いながらも、裕貴はマフラーを首に巻き、手袋もしてみせてくれた。思ったとおり、色合いが裕貴の雰囲気によく合っている。「……一応、お礼言っておくよ。ありがとう」 「可愛くねー」 啓太郎がぽつりと洩らすと、裕貴はニヤリと笑った。「ウソだよ。すごく嬉しい。おれの周りにいる人間の中じゃ、啓太郎が一番趣味がいいと思う」 その口ぶりに、あることに思い至った。「親父さんや博人さんから、プレゼントはもらったか?」 「兄さんからは時計。それこそ、引きこもりにはいらないものだと思うんだけどね」 兄心だと思うと、啓太郎は笑う気にはなれない。裕貴は話しながら、手袋をした手をしきりに動かし、ついでに感触を確かめるように自分の頬を撫でてみたりして、その仕種がなんとも小動物めいており、見ていた啓太郎は内心でドキリとしてしまう。口が裂けても本人には言えないが――可愛かったのだ。 微妙に視線を逸らし、グラスに注がれたワインを口に含む。博人と父親、どちらが持たせたのかわからないが、口当たりが軽くて飲みやすい、美味しいワインだ。「親父さんは?」 「あの人に、そんなもの期待するだけ無駄だよ。クリスマスプレゼントは、父親の元気な姿

  • SWEET×SWEET   -101-

    「……切ったのか。あのうっとうしい髪に、慣れてきたところだったのに」 「ひどいなあ」 そう言って裕貴はちらりと笑うが、どこかぎこちない。啓太郎の腕を取ってイスに座るよう促すと、ダッフルコートを片付けてからキッチンに向かった。「ちょっと待ってね。準備するから」 食器を手に戻ってきた裕貴が、オードブルのいくつかの料理を皿に取り分けてレンジで温め始め、その傍らでスープも鍋に入れて火にかける。キッチンでよく動くほっそりとした後ろ姿を眺めながら、沈黙で間がもたなくなった啓太郎は再び口を開く。「メシ、みんなで食ったのか?」 「みんなと言っても、おれと父さんと……兄さんの三人だよ」 まっさきに啓太郎が疑問に思ったのは、博人は千沙子を伴ってこなかったのかということだった。ただ、裕貴が千沙子を嫌っていることを思い出し、遠慮してもらったのだと勝手に解釈した。イブは肉親と過ごして、クリスマス当日を夫婦で過ごすのだと考えれば、不思議ではない。「そういえば、親父さんが帰ってくるって、博人さんがこの間言ってたな」 「あの人はいつも突然なんだ。事前に連絡してくるなんて、珍しいんだよ。そして息子二人を振り回して、当たり前みたいに父親として振る舞うんだ。こっちはいい迷惑だよ。この髪だって……」 最後はぼやきに近い言葉を洩らして、裕貴が軽く頭を振る。啓太郎はぶっきらぼうに言った。「それはそれで、似合ってるぞ。落ち着かないなら、また伸ばせばいいだろ」 振り返った裕貴が目を丸くして見つめてくるので、居心地が悪くなった啓太郎は意味なくイスに座り直し、目を逸らす。すると遠慮がちに裕貴が呼びかけてきた。「……啓太郎」 「なんだ」 「もしかして、おれがいないときに部屋に来た?」 「ああ……」 「おれが出ないから、気になった?」 俺の分は悪くなるばかりだと思いながら、啓太郎は正直に答えた。「――当たり前だ。今度から……外に出るときは電気ぐらい消していけ。何事かと思うだろ」 「父さんが急かすから、消す暇がなかったんだよ」 わざと不機嫌な表情を作った啓太郎とは対照的に、裕貴ははにかんだように笑いかけてくる。  目に滲むようなその笑顔を見て、ここまで胸を塞いでいた重い感情の塊がスウッと溶けていくのが啓太郎にはわかった。「もしかして啓太郎、おれがわざと無視しているとか思った?

  • SWEET×SWEET   -100-

    ** SEになってから、仕事で追われることが日常となっていた啓太郎には、クリスマスという行事を特別だと感じたことはない。せいぜいが、そのときどきにつき合っていた恋人が楽しみにしていた行事だった、という程度の認識だ。しかし今年は違う。 テーブルの上に置いたケーキの箱とプレゼントの包みをじっと見つめながら、啓太郎はテレビもつけずに耳を澄ましていた。少しでも、隣の部屋の気配を感じ取るためだ。だが、壁一枚を隔てて、裕貴の気配や物音が伝わってくることはない。  裕貴はいつでも、息を潜めるように静かに生活している。 いい加減、外にメシを食いに行こうかと考えていると、突然、スマホの着信音が鳴る。思わず辺りを見回してから、ハンガーにかけたスーツのポケットに入れたままなのを思い出し、慌てて隣の部屋に駆け込む。  裕貴のスマホからかかっていると確認して、勢い込んで電話に出る。「もしもしっ」 『……あっ、啓太郎……』 「お前――」 『ベランダに出たら、啓太郎の部屋の電気がついてるの見えたから、もしかして帰ってるのかなって。忙しそうだし、クリスマスとか関係ないのかと思ってたんだ』 裕貴の言葉を聞いて、啓太郎の頭は少し混乱する。まるで、いままで啓太郎が部屋に帰っていることを知らなかった口ぶりなのだ。しかし実際は、啓太郎は一時間ほど前に裕貴の部屋のインターホンを押したし、呼びかけた。『まだ何も食べてないなら、おいでよ。いろいろあるんだ。オードブルも何種類かあるし、ローストチキンもある。ワインだってあるよ。……ケーキだけは、おれが作るつもりだったけど、結局そういうわけにもいかなくて』 どこか啓太郎の反応をうかがうような、遠慮がちな裕貴の誘いに、啓太郎は数秒ほど置いてから応じた。「ケーキなら、心配するな。俺が買ってきている。でかいんだ。さすがにお前一人じゃ食い切れない」 『だったら、啓太郎も食べるの手伝ってよ』 その言葉に安堵して、すぐに行くと告げて電話を切る。次の瞬間には啓太郎は、急いでケーキの箱とプレゼントの包みを手にして部屋を飛び出していた。  インターホンを鳴らすまでもなく、裕貴の部屋の前まで行くと、慌ただしい気配を感じたように中からドアが開けられる。 いつものように裕貴が迎えてくれたのだが、啓太郎はその裕貴の姿を見た途端、咄嗟に声が出なかった。啓太郎

  • SWEET×SWEET   -47-

    「楽しくは、ない」 啓太郎はこう答えながら、ベッドに片手をついて裕貴の胸元に顔を伏せる。もちろんもう片方の手では、裕貴のものの愛撫を続けていた。「ドキドキしている、というほうがわかりやすいか? 男の体にこんなふうに触るのは初めてだけど、どうすればお前が気持ちいいか、そんなことを考えながらお前に触って、お前が反応してくれると、本当に心臓の鼓動が大きくなるんだ」 舌先で裕貴の胸の突起をくすぐると、裕貴の体が大きく震える。「もっと、お前が気持ちいいと感じることをしてやりたくなる。……俺が金を払うんだ。だからお前は、もっと感じてみせろ。そうやって俺を満足させるんだ」 たっぷり突起をくすぐ

  • SWEET×SWEET   -31-

    **** ただでさえ風変わりだった啓太郎と裕貴の関係は、さらに妙なことになりながらも、比較的穏やかに続いていた。 相変わらず啓太郎は、裕貴に昼メシ以外では食べること全般世話になっており、とうとう裕貴の部屋のテーブルの上には、貯金箱が置かれるまでになった。アクリル製のシンプルなデザインで、透明で中が見える貯金箱だ。  裕貴に頼まれて啓太郎が買ってきたものだが、この貯金箱に、食事代――だけでなく、その他で裕貴の世話になったときに相応の金を入れている。いわゆる、『時給制の恋人』に対する対価というやつだ。 透明な貯金箱に貯まっていく金を見るたびに、こんなにも裕貴に世話になっているのかと

  • SWEET×SWEET   -7-

    **** 仕様書の変更が少なかったことに気をよくして、啓太郎は久しぶりに定時に会社を出ることができた。システムのテストも順調に進み、会社を出る啓太郎の足取りは軽い。 もっとも、こんな幸せが長くは続かないことを知っている。明日にはまた仕様書の変更やバグの嵐、外注先のプログラマが逃げ出すかもしれないのだ。  それでも、今だけは――。 ささやかな幸福感を味わいながら啓太郎が向かったのは、電子商品を専門に扱う小売店が集まっている街だった。もちろん、一昨日、隣人である裕貴に頼まれたものを買いに行くためだ。大型量販店に行っても扱っていないのはわかりきっている。だったら最初から専門店に向かう

  • SWEET×SWEET   -6-

     スープに入っているすり身団子も塩加減がちょうどいい。スープ自体は薄味だが、牛肉の味噌炒めが味が濃いので、あまり気にならない。 一人暮らしの青年が作るにしては、あまりに見事というしかない食事だ。 きれいに平らげて満足の吐息を洩らした啓太郎は、ビールを飲みつつ裕貴をうかがう。マウスを動かし、キーボードを叩き、その合間に器用に左手で箸を動かし食事をしており、なんとも慌ただしいし、消化に悪そうだ。 すっかりゲームに没頭して、もしかすると啓太郎の存在など忘れているのかもしれない。  手を合わせてご馳走様をすると、啓太郎は遠慮しながら裕貴に声をかけた。「おい、食べ終わったんだけど」 「食器

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