ざあざあと、車のルーフを叩く雨音が不規則にリズムを変える。 タイヤが砂利を噛む重い音が響き、ゆっくりと車のスピードが落ちていった。 窓ガラスを流れる水滴の向こう側に、ぼんやりと浮かび上がってきたのは、黒々とそびえ立つ重厚な鉄格子の門だった。 有栖川の屋敷。 一ヶ月前、私が全てを奪われ、雨の中に放り出された場所。 胃の奥がギュッと収縮し、口の中に嫌な酸味が広がる。 車がポーチに横付けされると、運転席の理恩がエンジンを切り、無言のままドアを開けて外へ出た。冷たい雨の匂いと、生ぬるい風が一瞬だけ車内に流れ込んでくる。 すぐに助手席側のドアが外から乱暴に引き開けられた。「降りろ」 理恩の低く冷たい声が、頭上から降ってくる。 私がシートベルトの金具を握りしめたまま身を固くしていると、彼は舌打ちをし、力任せに私の腕を掴んで車外へと引きずり出した。「痛っ……」 裸足同然の足元が、水たまりのできた石畳に叩きつけられる。 冷たい雨水が薄いルームウェアを瞬く間に濡らし、肌にべったりと張り付いた。「大人しく歩け。それとも、このまま玄関まで引きずって行ってほしいのか」 理恩の手のひらが、私の二の腕にギリギリと食い込む。 抵抗する間もなく、私は彼に引きずられるようにして、広大なエントランスの階段を上らされた。 重厚な木製のダブルドアが、理恩の指紋認証で音もなく開く。 一歩足を踏み入れた瞬間、むせ返るような百合の香水と、古い木材の匂いが鼻腔を突いた。 磨き上げられた大理石の床。天井から吊り下げられた巨大なクリスタルシャンデリア。 何も変わっていない。私が這いつくばって床を磨かされていた、あの息の詰まる空間のままだ。「リビングにいるだろう」 理恩は私の腕を掴んだまま、長い廊下を大股で歩き始める。 引きずられないよう、私は必死に小走りで彼についていくしかなかった。濡れた足の裏が、大理石の床をペタペタと情けない音を立てて叩く。 重厚な両開きのドアの前で理恩が立ち止まり、ノックもせず
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