麻里亜が顔を真っ赤に染め上げ、再び私に飛びかかろうと腰を浮かせた。 だが。「そこまでだ、麻里亜」 部屋の隅から響いた、低く、冷え切った声が、彼女の動きを縫い留めた。 理恩だった。 彼はゆっくりと壁から背中を離し、革靴の音を響かせながら、私たちの間へと歩み出てきた。「り、理恩……! 聞いたでしょ!? この女、私とお母様のことを侮辱して……!」「黙れと言っている」 理恩の視線が、刃のように鋭く麻里亜を射抜く。 その絶対的な冷酷さに、麻里亜はヒッと息を呑み、言葉を詰まらせた。 理恩は、床に座り込む麻里亜を一瞥しただけで、すぐに視線を私へと戻した。 その目を見た瞬間、私の背筋を、先ほどまでの怒りとは全く違う、ヌルリとした不快な悪寒が這い上がった。 理恩の瞳孔が、わずかに開いている。 彼の視線は、私の濡れて肌に張り付いたルームウェアや、泥で汚れた足元を、まるで値踏みするような、それでいてひどくねっとりとした熱を帯びてなぞっていた。 呼吸が、彼の中で少しだけ早くなっているのがわかる。 それは、「便利な道具」を見つけた時の打算的な目ではない。 初めて見る、「価値のある獲物」を見つけた時の、猟犬のような目だった。「……驚いたな」 理恩の口角が、ゆっくりと歪な弧を描いて吊り上がる。「お前が、そんな顔をして、そんな声で吠えることができるとは」 彼が一歩、私の方へ近づいてくる。 私は反射的に一歩後ずさった。「ずっと、他人の影に怯えて、地面ばかり見ているつまらない女だと思っていた。有栖川の体裁のために、黙ってすり減っていくのがお似合いの、ただの土台だと」 理恩の革靴が、絨毯を踏みしめる音がやけに大きく聞こえる。「だが……違うな。お前の中に、そんな気高い炎が隠れていたとは」「……近寄らないで」 私は両腕を体の前で交差し、強い拒絶を示した。
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