まるで、手を離せばどこかへ消えてしまう幻を必死に捕まえるような、ひどく臆病で、繊細な力加減。「……離れるな」 黎の黄金の瞳が、月光の中で潤んだように揺れている。 焦点の合っていなかった瞳孔が、真っ直ぐに私だけを映し出していた。「俺に触れろ、ではないのですか」 少しだけ意地悪な質問が、口をついて出た。 黎は短く息を吸い込み、首を横に振った。「違う……。頼む、触れていてくれ……。お前の熱がないと、俺は……っ」 強引な命令ではなく、明確な哀願。 絶対的な強者が、そのプライドをかなぐり捨てて、私というちっぽけな存在に命を預けようとしている。 その事実が、私の胸の奥を甘く、そして苦しく締め付けた。「……はい」 私は小さく頷き、ソファの縁に寄りかかるようにして、さらに身体を黎へと密着させた。 右手は彼の左胸の鱗の上に置いたまま。 左手は彼の手首を優しく握り返す。 黎の荒々しかった呼吸が、少しずつ、少しずつ、落ち着きを取り戻していくのがわかった。 胸の動きが規則的になり、額に浮いていた冷や汗が引いていく。 部屋の空気を重くしていた淀んだ匂いも完全に消え去り、元の静寂なペントハウスの空気が戻ってきた。 ドクン、ドクン。 手のひらから伝わってくる彼の心音が、次第にゆっくりとした、力強いリズムへと変化していく。 私は彼を見下ろしたまま、その硬い鱗の感触を指の腹でそっとなぞった。 冷たくて、悍ましいと言った彼。 でも、私にはこの鱗が、彼が何千年も耐え抜いてきた孤独の鎧のように思えてならなかった。「……もう、苦しくないですか」 囁くような声で問うと、黎は目を閉じたまま、微かにこくりと頷いた。 彼の長いまつ毛が、目の下に濃い影を落としている。 張り詰めていた筋肉から力が抜け、彼の手のひらが、私の手首から滑り落ちて
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