バンケットルームに足を踏み入れた瞬間、駿大はまたしても奇妙な既視感に襲われた。先に視線が引き寄せられたのは実花だった。息を呑むほど凛とした高貴なオーラから目が離せないと同時に、その目鼻立ちにどこか見覚えがあるような気がしたのだ。だが、隣にいる和真の衝撃はそんなものではなかった。完全に呆けたように実花を凝視している。これが本当に、自分の知っている実花なのか?和真の記憶にあるのは、いつも控えめで、大人しく、自己主張のない姿だった。しかし目の前に立つ実花は、圧倒的な気品と計算し尽くされたオートクチュールを身に纏い、一瞬、手が届かないほど高次元の存在に思えた。一方、駿大は自然な流れで実花の隣に立つ葵に視線を移し――信じられないというようにゴシゴシと自分の目を擦った。俺はあの女と会ったことなんて絶対にないはずだ。なのに、どうしてこんなに見覚えがあるんだ?思わず「どうかしてるぞ、俺は」と心の中で毒づく。脳神経外科か眼科にでも行った方がいいのかもしれない。そうでなければ、初めて見る人間たちに次々と既視感を覚える理由が説明できない。そんな男たちの反応など露知らず、実花は和真の姿を認めても、顔色一つ変えなかった。実花にとって、離婚した男などただの赤の他人に過ぎない。和真は足早に実花に近づき、その瞳に明らかな歓喜の色を浮かべた。「実花、どうして君がここにいるんだ?」自分をこの場に連れ出してくれた駿大に、内心で深く感謝する。だが、実花は氷のように冷たい目で見据え、静かな声で問い返した。「私がなぜここにいるのか、本気でわからないの?」実花は心の底から呆れ果てていた。実花の亡き母の名前は、黒田由紀子。世間の人間が知らないのは無理もない。だが、かつて夫だった和真すらその事実を知らないとは。当主である征二郎が送った招待状には、長年行方不明になっていた外孫を披露すること、そしてその孫は由紀子の娘であること、とはっきりと書かれているはずだ。それなのに、和真はかつての義母の名前すら、脳裏の片隅にも残っていなかったのだ。和真という男の底の浅さはとうに見限っていたつもりだったが、この男はいつも実花の予想を軽々と超え、最悪の形で新しい驚きを与えてくれる。和真は一瞬言葉に詰まった。実花の冷ややかな物言いの裏に、何か別の意味が隠されているのを感じ取り、
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