鈴木から最初の報告を受けた直後、彼は一切の迷いなく、最も早い深夜便のチケットを手配させた。プライベートジェットの飛行許可が下りるまで一週間も待つなど、到底我慢できるはずがなかった。再び鈴木から連絡が入り、「実花さんは無事です」という報告を受けた時、ようやく彼の張り詰めていた心臓が正常な拍動を取り戻した。「……電話を、彼女に代われ」湊の声は氷のように冷たく、張り詰めていた。「……もしもし」すぐに、スマートフォン越しに実花の声が聞こえてくる。「……怪我はないか?」湊の声は、先ほどまでの冷酷さが嘘のように低く、甘く、そして優しかった。だが、その底には嵐の前の静けさのような、凄まじい怒りと緊張が隠されている。鈴木からの報告で、事の顛末はすでに把握していた。裏の人間を使って、湊の逆鱗である実花に手を出そうとした愚か者がいる。一度失敗したからといって、奴らがこれで諦めるはずがない。この禍根を完全に根絶やしにしなければ、次に実花が今日のように無事で済む保証はどこにもないのだ。「あれほど、護衛の数を増やせと言ったはずだが?」湊が静かに問いかけると、電話の向こうの実花は、少しバツが悪そうに声を小さくした。「その……私が、鬱陶しいからついてこないでって言ったの。ごめんなさい」実花はこれまで、湊の過保護な警備体制を「大袈裟すぎる」と疎ましく思っていたのだ。 自分はただ絵を描いているだけの一般人なのに、ボディガードが四六時中ついて回るなんて大層な身分ではない、と。深くため息をつきたくなるような実花の謝罪を聞いても、電話越しの湊の声はどこまでも優しかった。心の中でどれほど猛烈な怒りの炎が渦巻いていようと、彼はそれを決して実花に向けることはできないのだ。「……怪我は?」「してないわ。本当に、ほんの少し擦りむいただけ」「全身の精密検査を受けなさい」湊の声は相変わらず静かで穏やかだった。しかし、彼をよく知る人間が聞けば、それが爆発寸前の活火山のような状態だとすぐに気づくだろう。その絶対的な響きには、有無を言わせぬ強引さが孕んでいた。「いい子だから、言うことを聞きなさい」その甘く低い声に、実花は思わずゾクッと背筋を震わせた。自分が完全に悪いと自覚している以上、大人しく引き下がるしかない。「……分か
Read More