和真の瞳に微かな落胆の色がよぎったが、彼はすぐに表情を取り繕うと、実花より先に車を降りた。実花が降りやすいようにドアを開け、頭をぶつけないよう車のルーフにそっと手を添える。その仕草は、まるで壊れ物を扱うかのように過保護で丁寧だった。すぐ後ろには、鈴木の運転する車がピタリとついてきていた。彼は前回の教訓から、もう二度と実花のそばから離れまいと必死だった。敷地の入り口で警備員が鈴木の車を止めようとしたが、和真が軽く手を挙げて通すよう指示を出した。和真は鈴木の警戒心を鼻で笑うように見つめていた。もし自分が実花をこのまま強引に引き留めようと思えば、ただの部下一人に何ができるというのか。かつて二人が暮らしていた豪邸を前にして、実花は複雑な面持ちで足を止めた。立ち尽くす実花に、和真が甘く優しい声で囁きかける。「どうして入らないの?」実花は微塵も心を動かされることなく、冷ややかな視線を向けた。「観海レジデンスには着いたわ。さあ、話して」「ここは君の家だ。中に入って座りなよ。ずっと帰ってこなかったから、佐藤さんたちも君に会いたがっていたんだ」本題をはぐらかす和真の態度に、実花は背筋が粟立つような底知れぬ恐怖を覚えた。今の和真は、恐ろしいほどに別人のようだ。彼の身体からは、微かに生々しい血の匂いが漂っている。それなのに、彼は痛みなど一切感じていないかのように平然としているのだ。昨夜、刃物で刺されたばかりだというのに。たとえ急所を外れていたとしても、今日退院してまで自分を探し出し、執拗に追いかけてくるなんて異常としか思えない。実花は少し離れた場所で待機している鈴木の姿を確認すると、小さく息を吐いて気を強く持ち、玄関の扉をくぐった。玄関ホールに入るなり、和真がスッと膝をついた。「靴を履き替えよう」彼の手には、実花が昔この家で使っていたルームシューズが握られていた。和真は自分の手で実花の足にそれを履かせようと手を伸ばしてくる。「結構よ。自分で履くから」実花は咄嗟に身をすくませ、足を後ろへ引いた。和真の瞳に深く暗い失望が広がったが、彼はそれ以上強要することはなく、黙って頷いた。そして、彼が自分用に下駄箱から取り出したスリッパを見て、実花の視線が僅かに揺れた。それは、実花のものと全く同じデザインの、色違いのルー
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