ここ数日、逃げるように仕事へ没頭し続けたせいで、身体はとっくに限界を迎えていた。 それなのに、紗月は目を閉じても眠れなかった。 終わりの見えない、ひどい不眠だった。 眠れないだけではない。 食欲もほとんど失われていた。数日間、まともに口にできたのはほんの少しだけ。顔色も明らかに悪く、普段そこまで親しくない同僚ですら「大丈夫ですか」と声を掛けてくるほどだった。 けれど紗月自身は、自分が壊れているとは思っていなかった。 まだ働ける。 数字や資料で頭を埋め尽くしている間だけは、余計なことを考えずに済む。それがここ最近、唯一息をつける時間だった。 幸い、プロジェクト自体は順調に進んでいた。 第二フェーズの定例報告会も目前に迫っている。 徹夜で仕上げた資料とプレゼン用のPPTを蒼空へ渡した瞬間、彼は大げさなほど目を輝かせ、五分近くずっと紗月を褒め続けた。「紗月さん、すごすぎます! これ、めちゃくちゃ時間かけましたよね? ……というか、顔色かなり悪くないですか? 報告会、本当に大丈夫です?」 紗月は小さく笑って首を振った。 疲労のせいで、その笑みはどこか弱々しい。「大丈夫。ちゃんとできると思う」 この報告会を、彼女はずっと楽しみにしていた。ほとんど、自分のすべてを注ぎ込んできたと言ってもいい。 ようやく自力で掴み取った案件だった。 だからこそ、何より大切だった。 前回は慎一のせいで、報告の場を逃した。だから今回は、絶対に失いたくなかった。 欲しいものは、いつだって手に入らない。 せめて仕事だけでも。 自分が努力した分だけ返ってくる成果くらいは、ちゃんと掴みたかった。 紗月の言葉を聞いた蒼空は、一瞬だけ複雑そうな顔をした。 同情にも似ているのに、それだけではない何かが混ざったような表情。 けれど、それもほんの一瞬だった。 今の紗月には、そんな違和感に気づく余裕すらなかった。 蒼空によれば、報告会は来週月曜。 そんな重要な日程ですら、紗月は最後になって知らされた。正式な通知メールも来ていない。 関連書類やデータを一通り引き継ぎ終える頃には、蒼空が本社へ戻る時間になっていた。 エレベーターへ向かう途中、紗月はめくれ上がっていた廊下のカーペットに足を取られた。「っ……」 身体が大きく傾く。 その瞬間、蒼空が咄嗟に紗月の
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