美沙子も、慎一がすぐに話に乗ってくるとは思っていなかった。だが、まさかこんなふうに、全員の前で隠しもせず話を持ち出されるとは想像もしていなかった。 しかも慎一は、紗月に隠そうとすらしない。 ――おかしい。 金を払って手に入れた情報では、慎一の周囲には常に別の女がいて、若い女優やアイドルを何人も囲い、紗月とはとっくに冷え切った仮面夫婦のはずだった。 少なくとも、今目の前で見せつけられているような空気ではなかった。 紗月がいる手前、美沙子は引きつった笑みを浮かべることしかできない。だが、咄嗟にうまい言い逃れも思いつかなかった。 焦りで頭が真っ白になりかけた、そのときだった。 美月が突然、俯いたまま嗚咽を漏らした。「ご、ごめんなさい、お姉さま……。きっと、お母さんが勘違いしてしまったんです……。前に私、お姉さまがお義兄さまみたいな素敵な方と結婚できて羨ましいって、お話ししたことがあって……それで、お母さん、変に受け取ってしまったのかもしれません……。私、本当に、そんなつもりじゃないのに……っ」 涙を零しながら震えるその姿は、まるで悲劇のヒロインだった。 すると美沙子も、はっと何か思いついたように大げさに膝を叩き、取り繕うように笑った。「そ、そうなのよ、どうやら私の勘違いだったみたいで……。もし美月にそういう気持ちがあるなら、きちんと話しておかなきゃと思っただけよ。だって紗月と慎一は、こんなにもお似合いで、仲睦まじいご夫婦なんですもの……あはは……」 あまりにも無理のある言い訳だったが、今の彼女たちには、もうそれ以外に切り抜ける術がなかった。 もっとも、どんな言い訳を並べようと、慎一にとってはどうでもいいことだった。 今夜だけで十分だ。 美沙子と美月の狙いは、はっきり理解した。 まずは愛人の座。 そしていずれは紗月に取って代わり、自分が朝倉家の女主人になるつもりなのだろう。 その先には、当然のようにグループそのものまで見据えている。 おそらく、美沙子の再婚も同じようなやり方だったに違いない。 藤崎家の現当主については、慎一も以前から多少耳にしていた。 十数年前までは、それなりに名の通った人物だった。藤崎家の事業拠点を海外へ広げ、一流海外企業との提携を次々と成立させ、一時は株価も異様な高騰を見せていた。 なぜか数年続けて商品トラ
Terakhir Diperbarui : 2026-05-07 Baca selengkapnya