プロジェクトの件を引き続き確認すると言っていたものの、実際に紗月が車へ乗り込んでから、慎一はその話題に一切触れなかった。 隣に座る紗月を気にする様子もなく、ただ手元の資料へ目を落としている。 その資料は、先ほど秘書から受け取ったものだった。 渡す際、新人らしいその秘書は、気になって仕方ないというように何度も紗月を見ていた。視線には隠しきれない好奇心が滲んでいる。 対して久我だけは、慎一が紗月を連れて車へ乗り込んだ時から、ずっと口元へ薄い笑みを浮かべていた。 慎一は仕事モードへ入ると、驚くほど集中する。 車内には音楽も流れていない。 そのせいで空気は静まり返り、少し大きく息をするだけでも妙にはっきり聞こえてしまう。 そんな空気の中、紗月はひどく緊張していた。 それでも、先ほどエレベーター前で慎一に「夕食くらいなら付き合ってやる」と言われたことが、嬉しくて仕方なかった。 何度もこっそり横目で慎一を盗み見る。 だが視線が合いそうになるたび慌てて目を逸らし、何事もないふりをして俯いた。 少し伏せた目で資料へ視線を落としている慎一は、やはり格好いい。 真剣に仕事へ集中している姿も、見惚れてしまうほど綺麗だった。 紗月は、自分が久しぶりに片想いをしていた頃へ戻ったような気分になっていた。 ただ彼をこっそり見ているだけで、胸が落ち着かないほど高鳴ってしまう。 そんなことを何度も繰り返していれば、さすがに慎一も気づかないはずがなかった。 彼はわざわざそれを指摘したりはしなかった。 次にまた紗月の視線がそっと向けられてくるのを視界の端で捉えながら、慎一の口元がほんのわずかに緩む。 朝から胸の奥に燻っていたあの焦燥感も、いつの間にかほとんど感じなくなっていた。* 午後の慎一には、業界向けの発表会へ顔を出す予定が入っていた。 会場は、高層オフィスビルが立ち並ぶ繁華街の一角だった。 空へ伸びるような高層ビル群の間を、高級なスーツ姿の人々が慌ただしく行き交っている。 慎一はあるビルの前で久我に車を止めさせた。 降車前、少し考えるような間を置いてから、紗月にも一緒に降りるよう促す。「下にカフェがある。そこで待ってろ」 それだけ言い残し、慎一は秘書を連れて別の入口から上階へ向かっていった。 紗月はノートパソコンを抱えたまま、その場でしば
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