「……いや……!」 慎一の声音に滲むあからさまな脅し。 滅多に見せることのない執着と、底意地の悪い悪戯めいた残酷さに、紗月はこの瞬間、本当に彼が口にした通りのことをやりかねないのだと信じてしまった。 咄嗟に「いや」と叫んだその先で、紗月は慎一の深い眼差しとぶつかった。 その瞳の奥には、一瞬だけ、かすかな温度を帯びた笑みのようなものが浮かんでいた。 けれど、それは見間違いだったかのように、次の瞬間には跡形もなく消えてしまう。 そんなものが善意であるはずもない。……きっと、また自分を嘲っているのだ。 長年慎一と向き合ってきたからこそ、紗月はどうしてもそんなふうに考えてしまう。 また、自分の思い上がりを笑われているのだと。 次に返ってくるのは、きっとこんな言葉だ。 ――「お前なんかを、どこの男が抱きたいと思う?」 そんなふうに、さらに踏みにじられる覚悟までしていたが、事態は紗月の予想した方向には進まなかった。「……は?」 紗月の叫びを聞いた悠臣が、しばらく間を置いてから戸惑ったような声を漏らす。 信じられないものを聞いたように。 これだけの条件と待遇を提示しているのに。しかも相手は自分――社長である悠臣だ。 常に自信に満ちている彼にとって、拒絶されるなど考えたこともなかったのだろう。 その声には、あからさまな驚きと困惑が滲んでいた。 それでも、彼はなおも食い下がる。「紗月ちゃん、もう一度ちゃんと考えてみないか? それとも……何か他に条件があるのか?欲しいものでも、望む立場でもいい。もし君が望むなら、君だけを特別に契約してもいい。会社全体で君ひとりのために動く。……こんな条件、どこの事務所だって出せるわけがないだろ?」 悠臣の声は次第に焦りを帯びていく。 慎一の前で断られることが、彼にとっては何より耐え難い屈辱なのだろう。 だが、悠臣が焦れば焦るほど、慎一の機嫌は目に見えて良くなっていった。「紗月。心が動かないのか?これだけの条件、俺でも用意してやれない。たかが男ひとりだろ。ちゃんと掴んでおくべきじゃないのか?……ちょうど、お前が昔、俺にしがみついてきたみたいに」「……っ、いや……!」「本当に?お前の夢は、芸能人になることだったんじゃないのか。身体を使って取引するくらい、別に悪いことでもないだろ」 もちろん、悠臣はそんな
Terakhir Diperbarui : 2026-04-16 Baca selengkapnya