それから丸一週間、絃葉はずっと夢の中にいるような気分だった。日野と法務担当の指導を受けながら、数え切れないほどの書類に署名し、無数の口座を紐づけ、ようやく長い相続手続きがひと段落した。幸い、グループ全体の舵取りは当面の間、祐一郎が担うため、彼女がすぐに重責を背負う必要はない。それだけが唯一の救いだった。それでも、引き継ぐべき資産の移転がすべて終わると、絃葉はそのあまりにも大きな重みに押し潰されそうな息苦しさを覚えた。一刻も早くこの場を離れ、海城へ戻ってひと息つきたかった。そんな時、まさに恵みの雨のようなメッセージが届く。【出張で多磨城を通るんだけど、一緒に海城へ帰る?】絃葉はほとんど即座に返信した。【ありがとう、助かるよ!!!】画面いっぱいに並ぶ感嘆符を見て、男は静かに口元を緩めた。ほどなくして――絃葉は「海城へ戻って蒼生のもとでフロント業務を学ぶ」という名目で手際よく荷物をまとめ、出発した。男は自ら彼女の家まで迎えに来た。白いベントレーは滑るように道路を走る。二人は隣同士に座り、彼の纏うほのかなシダーウッドの香りが鼻先をくすぐる。絃葉はシートにもたれ、大きく息を吐くと、ようやく肩の荷が下りたような気持ちでスマホを取り出し、悠と青波との三人グループにメッセージを送った。【やっと海城に帰ってきた......】悠からは秒で返信が来る。【どうだった?西尾社長。ちゃんと相続するものは全部相続した?】絃葉はすぐさま恐怖顔のスタンプを送った。【聞いてよ!この一週間、人間らしい生活じゃなかったの】青波【おじいさんに何かされたのか】【山みたいな書類にサインさせられて、数え切れない工場を視察して、終わりの見えない会議に出て、呪文みたいな決算報告を聞かされて、知らない人とも何人会ったか、もうわからない......笑顔を作りすぎて顔が固まったくらいだよ】悠【よしよし。やっぱり絃葉、社長タイプじゃないわ。いっそ早く社長の旦那でも見つけて会社を任せて、自分は気楽に暮らすのはどう?】絃葉【......仕事しか愛さない仕事人間って、本当にこの世に存在しているの?いたら今すぐ紹介して。】悠【それ、築山景じゃん。彼、有名なワーカホリックだよ】絃葉の表情が曇る。静代に遠回しに嫌味を言われたことを
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