絃葉は澤木家の別荘を出ると、そのまま車を走らせ、会員制の親子鑑定センターへ向かった。ガラス張りのドアをくぐると、ひんやりとした空気が肌を打つ。彼女はバッグから二つの密封袋を取り出し、受付へ差し出した。「親子鑑定をお願いします」受付係から申込書を受け取り、必要事項を手際よく記入すると、そのまま検体をスタッフへ渡す。スタッフは説明した。「結果が出るまで、通常は3~5営業日ほどいただきます」「至急で」絃葉はためらうことなく財布からブラックカードを取り出した。「できるだけ早く結果を。費用はいくらでも構いません」......鑑定センターを出ると、絃葉は駐車場で深く息をついた。夕日の光が頬を照らす。澤木家で起きた数々の出来事を思い返し、胸の内には何とも言えない複雑な思いが渦巻いていた。その後、ペコを連れて街でもっとも高級なペットレストランへ向かい、最高級ステーキのコースを注文する。お腹いっぱい食べさせたあと、今度は海城で最高峰と評判の動物病院へ連れて行き、精密検査を受けさせた。VIPルームで順番を待っていると、絃葉はガラス越しに、見覚えのある人物がアラスカン・マラミュートを連れて廊下を歩いていく姿を偶然目にする。景の秘書――本当の角南佳樹だった。佳樹は絃葉に気づくことなく、犬をスタッフへ預けると、そのまま立ち去っていった。絃葉は胸に小さな違和感を覚え、興味本位で受付の女性に犬の飼い主について尋ねてみた。受付は、ちょうど佳樹の後ろ姿をうっとり見送っていたところで、待ってましたと言わんばかりに話し始める。「あのアラスカン・マラミュートはポコっていう名前なんです。飼い主さんがお仕事や出張で忙しい時は、いつもここに預けに来るんですよ。さっきの男性、すごくイケメンでしたよね?飼い主さんは彼のオーナーで、オーナーさんも超イケメンなんです。二人で一緒に連れて来ることもあるんですよ。でも、あんなに格好いい二人なのにゲイらしいんです。ほんと意外ですよね」ポコ――それはペコと「兄妹」の名前ではないか。まさか、自分と景が犬につけた名前までこんなに息が合っているなんて。絃葉は思わず息をのんだ。同時に、景が「自分はゲイではない。佳樹は自分の従弟なんだ」と話していたことも思い出す。それなのに、動物病
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