二人の想いは通じ合っている。だから、これ以上の説明はかえって野暮に思えた。前の恋愛で味わった疲労や憔悴、どれだけ尽くしても報われない虚しさ――今の彼との関係には、そのどれもが存在しない。景は、どこまでも揺るぎなく、ひたむきに彼女を選び続けてくれる。まっすぐに愛し、いつも心にかけ、何もかも信じてくれていた。かつてあらゆる信頼が崩れ去る経験をした彼女だからこそ、その信頼がどれほど尊いものなのか、誰よりもよく分かっている。絃葉はそっと彼の首元に顔を埋め、思わず小さくつぶやいた。「私、前世で世界でも救ったのかな。じゃなきゃ、景みたいに素敵な人と出会えるはずないもの」景は唇に笑みを浮かべた。「これだけで満足したのか?」絃葉は驚いて顔を上げた。「え?だってこれでもう十分すぎるほど......景にとって本当に素敵って、どんなもの?」景は彼女の手を優しく握り、微笑んだ。「まだまだ足りない。俺は言葉にするのが得意じゃないが、これから先の人生で、俺にとっての『本当に大切にする』がどういうものなのか、君に分からせてみせるよ」絃葉の胸に、温かなものがじんわりと広がった。その瞬間、心に張りついていた氷が、景によってまた少し溶かされたような気がした。――同じ頃。優奈が玄関のドアを開けると、父親の楠原栄一(くすはら えいいち)が険しい顔でソファに座っていた。リビングを満たす重苦しい空気に、彼女は思わず身をすくめた。おそるおそる歩み寄り、軽く頭を下げる。「お父様、こんな遅くまでどうなさったのですか?」栄一は顔を上げ、氷のように冷たい視線を浴びせた。「そこに正座しろ!」優奈は反射的にその場に正座した。「え......何があったのですか?」「よくもそんなことが聞けるな!」栄一は怒りに任せて彼女を指さした。「築山景と結婚できると豪語していたくせに、向こうからはまるで相手にされていない!バッテリーを必ず開発してみせると大見得を切っておきながら、20億円をつぎ込んでも何の成果も出せなかった。それに比べてあの西尾祐一郎の孫娘はどうだ。東地域の統括社長に就任して早々、一度の充電で1200キロ走行できる画期的な技術を発表した!優奈、お前は高校時代から何一つ彼女に勝てなかった。成績だって、いつも彼女の下だった。今
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