「……ジェイド」「そうだ、ラヴィ。聞いてくれ」 そう切り出したジェイドはバロー領で集めた証拠や、地下にいる人達を解放する算段などを話してくれる。 ジェイドが願っていた彼らの解放が、目の前まで迫っていた。 それを実現する為には、ジェイドの傍を離れると、自分で伝えなければならない。「それからこれを」 ジェイドが懐から布に巻かれた本のようなものを取り出す。「何……?」「日記の偽造品だ」「偽造品……?」 布を開こうとした手を握られ、ラヴェルはジェイドを見た。「夜会で必要になる。殿下に渡してくれ」「う、うん……」 ラヴェルがそれを受け取ると、今度はジェイドに抱きしめられる。「ラヴィ……」 痛いくらいに抱きしめられて、絞り出されるようにラヴェルの眦から贖罪の雫が流れ落ちた。 愛されている。 なのに、この人をこれから傷つける。 でもそれが、彼を守る唯一の方法だ。 生きていて欲しい。 例え、傍にいられなくても。 自分さえ傍にいなければ、彼は自分の領地で民と財と、そしてこれからの明るい未来が待っている。「ジェイド……聞いて……」「どうした?」「私……」 ジェイドの視線に狼狽えて、ラヴェルは息を飲んだ。 犯罪に手を染めてまで、ラヴェル・ローゼンを世界から消して、ベル・デルメールとして生かす為、彼は多くの時間を犠牲にして来た。 このままどこかに二人で逃げられたら―― そんな馬鹿げた事まで浮かんで、ラヴェルは涙を流したまま、震える唇を開く。「私……ファルマ様の婚約者になるわ」 時間が止まったような、長い沈黙が
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