馬なんて王都の貴族か、国軍くらいしか乗らないものだからだ。「逃げるか……」 オルタナは非常時に備えていつも用意してある荷袋を持って、カウンターの後ろに設えてある子供一人が通れるほどの隠し扉を開けて潜り込む。 その出口を知っているのは、祖母と自分だけだ。 なのに、出た瞬間覆い被さる様な人影に、オルタナは動きを止めた。「あ。出て来た」「は?」 四つん這いになって見上げたその先にあった影は、ローブを被った軍人の物だった。 逆光になって顔はよく見えないが、モリガン兵ではない。 見えなくても身形と佇まいから下級兵士ではない事くらい分かる。「はい、確保ぉ」 そう言ってオルタナは片腕を掴まれ、引き摺り上げられた。「な、何っ……?」 ヤバい。 咄嗟に左手に持った荷袋をその場に落としていこうか、躊躇う間もなくもう片方の手で取り上げられた。 その男はローブを被っているので顔はよく見えないが、ローブの下の制服は黒く、国王の右腕と称される“特務警護団”の物だ。 彼らは国王軍の中でも王に指名された少数精鋭。 王の為だけに動く王の私兵の様な部隊だ。「お前が魔女ドーラの孫か。まだ子供のようだが……いくつだ?」「……」「発言を許す。答えろ」「じゅ、十八……」「……嘘はいけない」「う、嘘ではありません」 信じられないと言う顔をしているのだろうか。 男は後に続く言葉が出ない様だった。 店の正面から回り込んできた部下らしき男の声が聞こえて来る。「団長! どちらにおいでですかっ?」「ノエル! 裏口だ!」「一人で勝手に行くなとあれほどっ……」
Huling Na-update : 2026-03-31 Magbasa pa