庭で話していた時とは違う、重く冷たい空気が足元を這っている様だ。「アウルム修道院の奥にある無縁墓地に新種の植物が蔓延っていると、シスターから相談があったのが二か月前。内密に調査を開始した所、どうやら根と思われる場所は墓石のない場所でした」「なのに、掘り返したら遺体が出たと言う事ですね?」「義姉上が仰った通り蔓状の植物でしたが、掘り起こした遺体は白骨化しており、根が蔓延って骨も砕けてしまっていた様です。なので、分かったのは遺体が子供であると言う事くらいです」「では、その遺体と植物の関係は、分からないと言う事ですね」「えぇ、おそらく死んだのは十年以上前ではないかと、医者が」 オルタナはただ黙って一番下座の席に座って話を聞いていた。 これ、何の話だろうか。聞いて良い話だろうか。 何の為に王妃陛下は此処へ来て、自分がここに呼ばれたのか。「ミレー中尉、あの植物をオルタナに見せてあげて」「はい、陛下」 そう言って席を立ったミレーは、瓶に入った枝の様な物をオルタナの前に差し出した。 そして王妃陛下はこう聞いた。「オルタナ、これから貴方は私の友人。ここにいる全ての者と対等に会話する事を私が許可します」「ゆ、友人……?」「あら、嫌ですか? レイモンド王にも許可は取ってあります」「王に……? こ、光栄ですっ」「では早速ですが、この植物が何か分かりますか?」「……いえ、これが何か?」「これはドーン王国にはない植物で、どうやら人の血肉を食らうのではないかと思われます」「え? 食人植物……と言う事でしょうか?」「まだ分かりません。ですが、人体を媒介にして育っていると言う仮説を、拭うだけの材料がないのです」「……蓋を開けてみても?」「えぇ、切断したその植物には再生能力は無いようですから、触っても大丈夫ですよ。でも、オルタナ以外は鼻を抓みなさい」 全員が鼻を手で抓んでオルタナを見ていた。 居た堪れない気になりながらも、見た事ない植物、しかも人肉を媒介に育つなんて聞いた事ない植物に、興味がないと言えば噓になる。 瓶の蓋を開けると、何か知っている様な芳しい匂いがした。 何か、芳醇な果実酒の様な、熟れ過ぎた果実の様な甘い匂いだ。「何だろう……ロビカ? いや、オエノセラかな?」「私もオルタナもまだですが、その匂い、発情したΩの匂いに酷似している
Last Updated : 2026-04-11 Read more