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All Chapters of 魔女ドーラの孫(仮): Chapter 11 - Chapter 20

60 Chapters

アウルム地方Ⅵ

 庭で話していた時とは違う、重く冷たい空気が足元を這っている様だ。「アウルム修道院の奥にある無縁墓地に新種の植物が蔓延っていると、シスターから相談があったのが二か月前。内密に調査を開始した所、どうやら根と思われる場所は墓石のない場所でした」「なのに、掘り返したら遺体が出たと言う事ですね?」「義姉上が仰った通り蔓状の植物でしたが、掘り起こした遺体は白骨化しており、根が蔓延って骨も砕けてしまっていた様です。なので、分かったのは遺体が子供であると言う事くらいです」「では、その遺体と植物の関係は、分からないと言う事ですね」「えぇ、おそらく死んだのは十年以上前ではないかと、医者が」 オルタナはただ黙って一番下座の席に座って話を聞いていた。 これ、何の話だろうか。聞いて良い話だろうか。 何の為に王妃陛下は此処へ来て、自分がここに呼ばれたのか。「ミレー中尉、あの植物をオルタナに見せてあげて」「はい、陛下」 そう言って席を立ったミレーは、瓶に入った枝の様な物をオルタナの前に差し出した。 そして王妃陛下はこう聞いた。「オルタナ、これから貴方は私の友人。ここにいる全ての者と対等に会話する事を私が許可します」「ゆ、友人……?」「あら、嫌ですか? レイモンド王にも許可は取ってあります」「王に……? こ、光栄ですっ」「では早速ですが、この植物が何か分かりますか?」「……いえ、これが何か?」「これはドーン王国にはない植物で、どうやら人の血肉を食らうのではないかと思われます」「え? 食人植物……と言う事でしょうか?」「まだ分かりません。ですが、人体を媒介にして育っていると言う仮説を、拭うだけの材料がないのです」「……蓋を開けてみても?」「えぇ、切断したその植物には再生能力は無いようですから、触っても大丈夫ですよ。でも、オルタナ以外は鼻を抓みなさい」 全員が鼻を手で抓んでオルタナを見ていた。 居た堪れない気になりながらも、見た事ない植物、しかも人肉を媒介に育つなんて聞いた事ない植物に、興味がないと言えば噓になる。 瓶の蓋を開けると、何か知っている様な芳しい匂いがした。 何か、芳醇な果実酒の様な、熟れ過ぎた果実の様な甘い匂いだ。「何だろう……ロビカ? いや、オエノセラかな?」「私もオルタナもまだですが、その匂い、発情したΩの匂いに酷似している
last updateLast Updated : 2026-04-11
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部下二人のつぶやき

 お忍びでアウルムへと来られている幼い王妃殿下を王都へお送りする為、談話室でノエルとミレーは明日のスケジュールと路順の確認をしていた。「まぁ……ウケイ殿がおられるから、俺達あんまり必要ないけどな」「そうね……この前の御前試合でも、圧倒的に強かったし。あの体術に加えて、剣捌きのスピードが尋常じゃない」「ミレーが言うほどなら、相当だな。俺はあの方の試合はあまり見れなかったから」「何者なんだろう……あの人。王妃陛下から聞いたんだけど、王妃陛下に博士号取らせたのも、ウケイ殿らしいよ」「うわぁ……頭も良いのか」「ヴィー様も時々チェスの相手をして貰うけど、ウケイ殿には勝てないって言ってた」「……俺、ヴィーに勝った事ないな」「ノエルは割と顔に出る」「……まぁ、自覚はある」 会話が途切れた所で、ノエルとミレーはお互い話題を振ろうか振るまいか、沈黙を探る。「何だよ? ミレー」「ノエルこそ……」 こういう時、ノエルは先陣を切る事はない。 大概、勢いでミレーが切り込んでくる。「今多分、同じ事考えてると思うから言うけどさ。ヴィー様、オルタナの事、絶対気に入ってるでしょ……」「気に入ってるな」「だよねだよね? 一緒に晩餐とか、部屋まで訪ねて行ったりする割に、ちゃんと距離取って見てたりしてさ。今までならこんな風に私達も巻き込んで時間作ったりしないでしょ?」「そもそも、あの距離にいて平気な小僧の方が稀少だがな」「あぁ……まぁ、一緒に居るだけでフェロモンに中てられて卒倒したり、滝汗かいて泣き出しちゃったり、過発情起こして襲われか
last updateLast Updated : 2026-04-12
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アウルム修道院 Ⅰ

 アウルム修道院は前サリバン公爵が多額の寄付をし、作られた修道院と孤児院が併設されている施設だ。 前サリバン公爵は元は教会が推進する“肉体は完全である”と言うドラコン教を崇拝していた。 前国王が自然治癒を最適解としたドラコン教を崇拝していた為、古くからある世襲貴族は殆どがこの信仰を受け入れている。 オルタナに言わせれば、そんなもの限界があるし、正しく薬を使う事は人体に何の影響も与えないはずなのに、体を毒するだとか、神が与えし体を冒涜しているだとか言う奴らの気が知れない。  大体、人間には個体差がある。  αは強くΩは弱い。  βは凡庸だと言うけれど、体力や病歴の違いは出る。 第二性の発情をコントロールするのも抑制剤で、だからこそ教会は抑制剤だけは信者にも許さざるを得ない。 その延長線上で、教会が国内の抑制剤の流通を管理検閲している為、彼らを敵に回すとその抑制剤さえ手に入らないと言う事態が起こり得ないのが今のドーン王国だ。  元は教会派だった前サリバン公爵は、公爵夫人が病に掛かり満足に薬を得られずに鬼籍に入られた事をキッカケに、薬学改革を進めるレイモンド王を支持する様になったのだとか。 だからこのアウルム修道院は教会の傘下でありながら、必要ならば医師の診断を受ける事が出来るし、病人には薬が与えられる。 勿論、秘密裏に。 と言う話を、オルタナは昨晩公爵から聞かされていた。 小高い丘の上に荘厳な教会が見える。 身支度にあれやこれやと構われ過ぎて、オルタナはもう既に疲れ切っていた。「機嫌が悪そうだな、オーリィ」「……別に」 いつもの恰好で良いと言ったのに、オブライアンに却下された挙句、メイドに寄って集って世話を焼かれた。 まるで貴族の御曹司の様な格好をさせられて、クラバットで締まった首元が気になって仕方ない。「まるで首輪を嫌がる猫の様だ」
last updateLast Updated : 2026-04-13
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アウルム修道院 Ⅱ

 モリガン伯爵は野心家でありながらも、思慮深い男だそうだ。 先代王の時代に自治権を得て、王国からの信頼を勝ち得たのも、彼のその思慮深さと手腕のお陰だろう、と公爵は言った。「モリガン区が自治権を得る条件の一つに、ドラコン教への崇拝が課せられた。だが、彼は分かっていたんだ」「何を……?」「あの過酷な環境下で、体躯に恵まれ屈強に鍛えられた兵士達でも立ち向かえない。それが怪我や病だと」「それは確かに……」「だから秘密裏に薬を手に入れる為、ドーラ殿の知識が必要だった。ドーラ殿はモリガン伯の要求を飲む条件として、お前の保護を求めたそうだ。もし、孫に何かあればモリガンを一夜にして灰にしてやる、と脅したそうだ」「ば、婆ちゃん……貴族相手に何てことを……」 でも言いそうだ。祖母は見た目も怖いし、口も悪い。 だけど、決して冷淡な人ではない。 人を助ければ、自分も助けて貰える。だから、人を助けなさい。 祖母はいつもそう言っていた。 いつか自分を助けてもらう為、助ける為の知恵を習得しなさい、と。 打算的な所は否めないけれど、それでも店に来る村の人達を助けようとしていた。「だからこの十年、モリガン兵の死亡率は格段に減っている」「じゃあ、何で大罪人なんて……。ちゃんと事情を話して貰えたらっ……」「教会の目を欺く必要があったからだ」「あぁ……」「犯罪者を逮捕したのなら、教会が口を出してくることは無いからな」 ドラコン教の配下に下ったのに、薬を作らせているなんて知られたら、せっかく手にした自治権を取り上げられてしまう。 自治権があれば王の許可を待たずに挙兵出来るし、領内の犯罪は伯爵の権限で解決出来る。 危ない薬物兵器を研究している大罪人魔女ドーラとして引っ立てる事で、ドラコン教への忠誠を示し、事実を覆い隠す一石二鳥のパフォーマンスだったという事だ。 今回、自分を殺人犯だと触れ回って逮
last updateLast Updated : 2026-04-14
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アウルム修道院 Ⅲ

「日光を避けているのか? 湿地の割には根腐れしてないな」 普通、植物と言うのは日光を欲しがる。 だから陽の当たる場所へと向かって延びるものが多い。 見た感じ“肝”の部分を掘り返されて、この蔓自体の生命活動は止まっている様だ。 オルタナは持って来た採取用の小瓶に切断した蔓を入れて、公爵の元へ戻った。「何か分かったか? オーリィ」「この蔓は多分ですが、湿地には強く、陽の光を嫌う性質がありそうです」「陽の光を嫌う? 植物なのに、か?」「えぇ……まだ憶測でしかありませんが」「いや、見ただけでそれだけの事が分かるのなら、今後も期待出来そうだ」 満足げにそう言った公爵は、オルタナの頭にポンと片手を乗せた。 温かく大きな掌に、オルタナはグッと唇を噛む。 別荘に来た初日以来、公爵が触れて来る事はなかったのに、不意打ちを食らって表情に困ったのだ。 尊くて遠い。  本来なら対等に言葉を交わす事すら許されない人の体温を感じるのは、何だか悪い事をしている様な気になる。 墓地を見に行った後、礼拝堂の地下に保管されていると言う掘り起こされた遺体を見に行った。 案内してくれたシスターも恐れて中までは入らない。「鍵はお渡ししておきます。終わられましたらお声を掛けて下さい」「ありがとう、シスター」 公爵は相変わらず人前ではローブを被っている。 ドーン王国ではヴィンス・サリバン公爵の容姿は知れ渡っているし、ここはサリバン領なのだから、隠す必要もないのに……。「遺体を見た事はあるか? オーリィ」「……まぁ、貧民街とかでなら」「なら、大丈夫だな」 簡易的に用意されたであろう木造りの棺の中に、揃わない絵合わせの様に砕けた人骨が並べてある。  その周りには骨から取り除けなかった蔓が絡ま
last updateLast Updated : 2026-04-15
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夜の国

 眠れない夜や体調を崩して寝台脇に付いてくれる夜、必ず祖母がしてくれる古い話があった。  何故、祖母がその話を好んでしていたのかは分からない。  ただ、オルタナにとって祖母がしてくれるその不思議な夜の国のお話は、祖母が傍にいてくれる時間の中でも特別だったから、よく覚えている。 それは夜の国と呼ばれた陽の昇らない国の話で、夜葡萄と呼ばれる不思議な葡萄の話だ。 熟す前の実は宝石のように固く、熟した実は多産の薬となる。 夜の国の女王は夜葡萄の耳飾りをしており、絶世の美女であると言う。 女王は多くの優れたαをこの世に産み落とし、現世のαの起源を辿れば、夜の国の女王に辿り着くらしい。 夜の国以外では育たない貴重な夜葡萄。  熟す前の蒼い夜葡萄は金を産み、熟した後の黒い夜葡萄は子を産むと言われていたそうだ。 だがその希少価値の高い葡萄は、盗もうとすると地には蛇が、空には鴉がいて葡萄を守っている。 しかし葡萄を欲した他国に攻められ、女王とその子供達は逃げる様に国を捨てる事になる。 そうして夜の国は一晩にして燃えて亡くなるのだ。 これが御伽噺ではなく、本当の歴史の話だとしたら――――? この耳飾りの様な物が、亡国の女王のものだったとしたなら、この遺体は亡国に何かしら関係する事になる。 そして、その遺体がサリバン領から出土されると言うのは、あらぬ疑いを掛けられる事になるのではないか――――? いやでもあの遺体は子供のように小さかった。 でも、Ωなら? 自分の様に年相応ではない可能性は? オルタナはグルグルと出口のないその仮説を、奥歯で噛み締める。「帰ろう、オーリィ。話は落ち着いてからだ」「……はい」 そしてオルタナは帰路の最中も、ずっと考えていた。 そもそもこの仮説が正しいのかすら確かめる術がない。 結果を出す、と言う事は何らかの根拠がなくて
last updateLast Updated : 2026-04-16
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サリバン公爵の秘密 Ⅰ

「旦那様! しっかりして下さい!」 オルタナは部屋から飛び出して、声のする方へと走った。「オブライアンさん⁉ どうっ……え?」 そこには息も絶え絶えになった公爵が、自室の扉の前で片膝をついて蹲っている。 固く握りしめた左手は、爪が食い込んで血が出ていた。「こ、公爵様⁉ 血がっ……」「な、何でもないっ……」「いや、何でもない事ないでしょう? 立てますか?」 差し伸べようとした手を、強く振り払われた。 片手で薙ぎ払われたオルタナは、後ろへと倒れこみ尻もちをつく。 まるで敵でも睨むかのような公爵の殺気立った視線が、オルタナに刺さる。 相手は国で随一の護衛騎士と名高い男だ。 視線だけで腰が抜けた様に動けなくなってしまう。「近寄るなっ! オブライアン! オルタナを部屋へ連れて行けっ!」「え……こうしゃ……?」「早くしろっ! オブライアン!」「かしこまりました」 そう言ったオブライアンに「失礼します」と強引に腕を引かれる。 こちらを見ようともしない公爵が気になりながらも、部屋へと押し込められた。「あの、ちょっ……オブラィ……」「私が来るまで部屋から出ないで下さいませ」 淡々と任務を遂行するかのようにそう言い放って、オブライアンは部屋に外から鍵まで掛けて行ってしまう。「何……今の……」 拒絶。 近寄
last updateLast Updated : 2026-04-17
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サリバン公爵の秘密 Ⅱ

 オルタナはもう一度夜着の袖の裾で顔を拭ってから、部屋の扉を開ける。「まだ起きておいででしたか?」 少し憔悴したようなオブライアンがそう言って、扉の前に立っていた。「う、うん……。公爵様は? 大丈夫ですか?」「今はお部屋でお休みになっております」「そう……僕が公爵様の癪に障るような事してしまったから、怒らせてしまって……すみません」「いいえ、いいえ、決してそのような事は」「でも……あんなに怒っ……て」「……オルタナ様、寝物語代わりに、少しこの老骨の話を聞いて下さいますか?」 そう言ったオブライアンは眉をハの字に下げて困ったように笑った。 部屋へと招き入れると「もう遅いので、ベッドへお入りください」と寝台の布団を捲って促す。「眠れそうにはないのですが……」「それでも、体が冷えてはいけませんから」 オブライアンの優しさを無碍にする事が出来ないオルタナは、捲られたベッドの中へと滑り込み、上半身だけを起こしてベッドに凭れかかる。 オブライアンは寝台の横に椅子を持って来て、静かに腰を下ろした。「怖い思いをさせてしまいました。申し訳ありません」「えっ……いえ、オブライアンさんのせいじゃ……」「夜も深い時間ですので、結論から申し上げますと」 そう切り出したオブライアンは、公爵はフェロモンに中てられて過発情を引き起こしている状態だと言った。「フェロモンって……誰の?」「分かりませんが……状態としては、誘発された過発情状態と思われます」「あ、でも抑制剤はあるんですよね? じゃあ、薬を飲めば……」「旦那様は特異体質であられまして、非常に強い特別な薬を飲まれておりますので、一日に二度は服用出来ないのです」 そう言われてオルタナは、昼間に修道院へ行った際に「今日は抑
last updateLast Updated : 2026-04-18
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サリバン公爵の秘密 Ⅲ

「ご自身を犠牲にしようと仰るのでしょう? そんな事をしても旦那様は喜ばれませんよ」「でも過発情は後遺症が残る場合があって、僕なら発情しないから妊娠したりもしないんです! 公爵家に責任を取って欲しいなんて絶対に言わな……」「オルタナ様、そう言う事ではないのです」「……やっぱり、平民の僕じゃダメなんですね」「違います。オルタナ様、聞いて下さい。公爵様は若い頃、強いフェロモン体質のせいで、度々他者を発情させる事がありました」 そう話し出したオブライアンは「大変でした」と苦笑した。 夜会に出る年頃になって、触れ合ってもない令嬢が卒倒して倒れたり、目が合ったご令嬢が大勢の前で発情して会場中が大混乱になったり、果ては言葉すら交わした事のないご令嬢が妄想で子を孕む始末。 公爵は段々と女性を避ける様になり、身の回りはαで固め、特にΩには近寄らない様になったそうだ。 それでも貴族として社交を放棄する事が出来ない故に、王族との繋がりが欲しい貴族の親父が娘を使って罠にかける様な事もあったと言う。 既成事実さえ作ってしまえば、責任を取らせる事が出来るからだ。「健国王の血などと尊ばれていても、Ωだとご令嬢にまともに触る事すら出来ない。でも上位貴族の婚姻は、優秀なαを産むΩが推奨される風潮にあります」「でも、運命の番がいるって……聞いた事あるような?」「余りにも仕掛けて来る輩が多かったものですから、王の御前で運命の番としか番わないと仰ったのです。王もそれをお許しになった。それが人から人へ伝わる内に改竄されてしまったのでしょう」 王がそれで良いと認めたのなら、その後下手に手を出して婚姻を含む問題が起きれば、国王自らが審議する可能性が出て来る。 貴族の婚姻とは、王の許可がなければ成立しないからだ。 それでも偶然や事故を装う事は出来ない訳
last updateLast Updated : 2026-04-19
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サリバン公爵の秘密 Ⅳ

「ホントに旦那様は、ちょっと執着が過ぎると言うか……あ、いや失礼。頭が回る分、徹底的にやってしまわれる」「あ、はは……(やりそう……)」「でも、元々は物静かで穏やかな方です。そんな旦那様があんなに声を荒げて私を呼ばれたのは、後にも先にも母上がお倒れになった時だけです」「そう……ですか」「それだけ、オルタナ様を大事に想っていらっしゃるのですよ。人は心配すると怒るものなんです」「だ、いじかどうかは……」「触われると言うのは旦那様にとって稀有で大事な事なのです。なのに今、理性も正気もないままに事が起こってしまったなら、私は旦那様にどうお詫びすれば良いか分かりません。ご自分がされて嫌だった事を、貴方にしてしまったと知ったら……」「……あ、浅はかでごめんなさい」「いえ、分かって頂けたならそれで良いのです。爺も旦那様のお怒りを買わずに済んで助かります」「はい……」「普段怒る事が無い方が怒ると、怖いでしょう? 爺は王様よりあの方を怒らせる方が怖いのです。何をするか分からないですから」 そう言ってオブライアンはニッコリと笑ってまた眉尻を下げる。 王様よりも? それは怖過ぎる。 夜の波が引いて空が青褪める頃、「長居し過ぎました」と椅子から立ち上がった。◇◇◇ 寝たのが朝方だった為、陽が高くなるまで眠ってしまった。 ふわっと花の様な匂いに目を覚ましたオルタナは、寝台脇に座る人影に呆然と視線を向けた。「オブ……ライア……ンさ……?」「一晩でそこまで老けたつもりはないのだが
last updateLast Updated : 2026-04-20
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