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All Chapters of 魔女ドーラの孫(仮): Chapter 181 - Chapter 184

184 Chapters

道

 そう話に割り込んだのは祖母のドーラだった。「彼本人に選ばせるのはいかがでしょう? もし、彼が種枯らしを飲んででも普通に生活したいと言うのであれば、私が育てましょう」「オピスッ……」「半分はエヴィ様の子なんだ。侍女の私が育てるのが筋と言うもの」「しかしっ……」「私が主人を一人で行かせなければ、こんな事にはならなかった。罪滅ぼしをさせてくれ」「お前は平気なのか……? あの子を認められるのか……」「相変わらず朴念仁だよ。エヴィ様があの子を孕んで産むまで、命を絶たなかったのは何故だと思う……そう考えると、あの子を無碍には出来んよ」 凌辱され望まない相手との子供を孕んだと知った時、母エヴレカは命を絶とうと思った事はなかっただろうか。 ただでさえ自分の身に置き換えれば、公爵以外の者と性交したという事実だけで死にたくなるだろう。 宿った命を殺せなかった。 きっと母――エヴレカと言う人は、そう言う優しい人だったのだ。「ウケイ……ごめんなさい。私はいつでも貴方を困らせる」「ラティ様……」「でも、私はウケイがいたからここにいる。あの子にも道を用意してあげて」「父さん、婆ちゃんが面倒見てくれるなら安心じゃない……?」「オルタナ……お前まで」 何が正しいのかは未だに分からない。 後に殺しておけば良かったなんて結果に、ならないとは言えない。 それでも、可能性があるのならそちらに賭ける方が良い。「せっかくの祝いの席を湿っぽくして申し訳ない。レンスター少佐」「いえ、お気になさらず……ウケイ殿」「陛下、ラティ様、この件に関しては両陛下の判断にお任せします。今後、私に何か意見を求める必要はありません。求められても判断しかねます故……」「あい、分かった」「ありがとう、ウケイ」 背の高いウケイの腰に纏わりつく
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マヴェロの森

「そう怪訝そうな顔をするな、オーリィ」「だって、いっつも僕だけ知らないんだもん。今日だって王陛下や婆ちゃん達まで来るって知らなかった……」「お前のその拗ねた顔が見たくて、止められんのだ」 公爵は馬車の中で向かい合って悪びれもなくそう言って笑う。  オルタナは更に口をへの字に曲げて顔を逸らした。 楽しそうにこちらを見て月夜の青白い光を内包したその眸に、心臓が跳ねる。 いちいち甘い言葉で誤魔化して! 滴る様な色香をもう十分に知っている。  なのに、いつまで経ってもオルタナの若い心臓は跳ねる事を止められない。 もっと歳を重ねたら、こんな風に忙しなく緊張する事も無くなるのだろうか?  なんて、自分の未熟な心臓を恨めしく思う。 ◇◇◇ そう遠くない距離を走って来たかのように思えたが、車窓の外は暗く民家も見当たらない。 緩く上り坂を上っているし、そこが街中ではない事くらい分かる。 この雪の降る中、森へと馬車を走らせている様に見えてオルタナは不安になって公爵を問い正した。「ヴィー様、もしかしてマヴェロの森に行こうとしてる?」「あぁ」「こんな天気のこんな時間に?」 マヴェロの森は来春に夜葡萄の再生地となる森で、特に深い森だ。 酷く吹雪いているわけでは無いが、雪は降り続けている。  森の天気は変わりやすい。  こんな時間に夜会帰りの様な軽装備で行けば、危険極まりなく野宿するにも場所が限られてくる。「大丈夫だ。お前を連れて危ない所に行くわけがないだろう?」「それは分かってるけど……」 雪山の恐ろしさを知らない公爵が、この天気を舐めているとしたら話は別だ。 そんな不安を余所に、馬車は深い森の少し開けた所でガタンと大きな音を立てて停まる。 馬車を牽いて来たスーランが扉を開け降り
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黒髪の子

「ま、またそんな呼び方してっ……オルガノ小隊長は仕事で……」「本当なら屋敷に閉じ込めてやりたいくらいだ」「ちょっ……閉じ込めるって……」 やはり、ウケイと公爵は少し似ている。「……そんな事をすればお前に嫌われる。だからしない」 そう言った公爵が抱きしめる腕にグッと力を入れる。 肩越しに顔を埋めた公爵の声が、少し疲れているように聞こえた。「ごめんね、ヴィー様……」「何を謝っている?」「さ、寂しかった……のかなって……」 自惚れているかもしれないけれど、そう感じてしまう。「親子の時間を邪魔するつもりはないが……そうだな、寂しかったのかもしれん」「かもって……」「オブライアンから母上の今わの際にあった出来事を聞いた」 公爵はそう言ってポツリポツリと前王妃である母上の最期について、新たに知った事を話し出した。 アルバの存在が明らかになってから、オブライアンから公爵に打ち明けられた事があったらしい。 前王妃が鬼籍に入る少し前、ケルメスが見舞いと称して王妃を訪ねて来た事があったそうだ。 その際、人払いを命じられてオブライアンは部屋の外で待つしかなかった。「ケルメスが去った後、母上は父上に裏切られたと泣き喚いたらしい」 だがオブライアンは、ケルメスとの会話の内容を聞いていない。 その上、情緒不安定な前王妃は譫言の様に妄想に基づく発言が増えて
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夜葡萄の誓い

「それは楽しみだな」「それでも寂しくなったら、ヴィー様もここに来て良いよ」「うん?」「そしたら僕が必ず迎えに来てあげる」 オルタナは甘く揺れる暖炉の火に照らされて火照った頬を、公爵の頬に摺り寄せる。 公爵はそれに応え、強請る様な視線をこちらへ向けた。 見つめられるなんて今更なのに、いつまで経ってもその黒い熱を持った視線に酔いそうになる。「ヴィー様、大好きだよ」 抱きかかえられたオルタナは、伺うようにして公爵に唇を寄せる。 触れる様な優しい口付けの後、濡らす様にして下唇を食み、舌で味わう。 公爵の舌が肉片の隙間を伺うようにして歯列を舐めると、オルタナはゆっくりと口を開き公爵の舌を迎え入れる。 吐息が漏れる程の甘い口付けの後、公爵は思い出したかのように傍にある荷袋に手を伸ばした。「義父上から預かったものがある」「父さんから……?」 そう言って公爵が荷袋から出したのは、件の“母のショール”だ。「これ……母さんの……?」「お前に持っていて欲しいそうだ」「父さんが持っていれば良いのに……」「オーリィ、立って貰えるか?」 そう言って両腕を鷲掴みにした公爵に、半ば強引に立たされたオルタナは、その意味を察する事が出来ずに小首を傾げる。「何……?」 公爵はその持って来た“母のショール”を肩から掛けてくれて、跪いた。「ちゃんと言ってなかったと思ってな」「んんっ?」 公爵はそう言ってポケットから小さな箱を取り出す。「これも義父上から譲り受けた。加工して使えと」 その小さな箱を開いて見せた公爵は、仰ぎ見る様にしてこちらを伺っている。  箱の中には黒いカボションカ
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