بيت / BL / 魔女ドーラの孫(仮) / Chapter 111 -الفصل 115

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115 فصول

悪魔の正体 Ⅱ

 それに妄想で孕むなんて事が三年も続くだろうか――? そのこと自体が不思議に思えた。 ただ黙って話を聞いていた向かいに座る王妃と目が合う。 その刺さる様な視線が同じ疑念を持っているように見えた。「昔からモリガン伯爵家の家督相続で候補に囁かれているのは、実弟と義弟のどちらかだ。ルアドは体躯の割に承認欲求と劣等感の塊。彼は正直モリガン伯爵の足元にも及ばない。姉を人知れず埋葬し、自分に家督を譲らない父親への反抗があり、そこをケルメスに付け込まれてた可能性がある」 公爵はケルメスは自分の駒になりそうな者を巧みに見分ける才に長けており、真綿で首を絞める様な男だと付け加えた。「ケルメス……悪魔みたいな男だ」「目下一番の敵は、そのケルメス・ドヴァンニ。あの男はこの国の毒だ。その解毒の為にも、ルアドの証言が必要だ。お前の力を貸して欲しい」 公爵はそう言って、しっかりとこちらを見た。「うん。って言うか、今の話を聞いてちょっと気になってる事がある」「何だ?」「僕、ずっと不思議だったんだよね。モリガン軍の上位軍人にまでなった人が、あんな稚拙なやり方で人を殺すかな……」 こちらに罪を着せるつもりであったとしても、ダリスの存在を知らなかったが故に簡単に捕まってしまった。 審議所で見た時は裏切られた事のショックが大きくて、よくよく考える事もしなかったけれど、やはりあの大佐は自分が知っている大佐ではない気がした。 甘いと言われても子供の頃からモリガン大佐を見て来て、裏切られたのは揺るぎない事実だけれど、あんなに短慮で間抜けでは無かったはず。 大佐が姉を助けたい一心で、父親に認められたい一心で、教会から種芥子を手に入れようとし、逆にケルメスに騙される事になったのかもしれない。 昔、祖母が言っていた。 純粋な人ほど、心が染まりやすいのだと。 もし長年の薬の服用が何らかの影響があるとすれ
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それぞれの場所

 茶器の乗ったシルバーのトレイを持って、呆れた様な顔をしている。「お茶に誘っておいてお茶を出さないとは、ラティ様はバカですか?」「なっ、バ、バカって……」「じゃあ、アホですか?」「そっ……そんな風に言わなくても……」「ウケイ、不敬罪だ」「これは失礼致しました、王陛下。この様に気の利かぬ王妃に育てたつもりは無かった故、つい本音が……」「相変わらずウケイ殿は義姉上に手厳しいのだな」「あ、先生……お茶は僕が……」「いいえ、オルタナ。誘ったのはこちらなのですから、座ってなさい」「はぁ……」 さっきまでにこやかだった王妃がむくれている。 それすら意に介さないウケイはその場にいた全員にお茶を給仕すると、その場を去ろうと身を翻す。「ウケイも一緒に……」「いいえ、私は仕事があります故、研究室に戻ります」「……そう」 ウケイはいつもより気が立っている様に見えた。「あぁ、そう言えばウケイがアウルム修道院から鴉を飛ばして知らせてくれた件だが」 そう前置きした王陛下は、ファージ侯爵家は爵位剥奪の元、国外追放となる事を教えてくれた。「証拠は揃ったのですか? 陛下」「お前の腹の虫はこれで収まるか? ウケイ」「陛下、答えになってません」「ウケイ殿、ファージ侯爵家の諸々の悪事に関する証拠は、既に私の手元に」 公爵はそう言って眩しい物でも見る様にウケイを見る。「どうやって手に入れたのです? 夜会での一件はラティ様から伺いましたが、仕事が早すぎやしませんか? 公爵様」「その夜会の間に、駄犬に取りに帰らせました。証言した褒美を与える約束でしたから、杖を作ってやりましてね」「取りに帰らせた……ははっ、なるほど」 何が、
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威厳

「いいえ……それじゃあ、王妃の威厳がなくなるわ」 秒でフラれた……。 震えている小さな手をギュッと握りしめた王妃は、親の仇の様に鉄扉を睨む。 どんな時も王妃である事を求められるこの小さな少女が、鋼の心臓を持っているわけでも、折れない心を持っているわけでもない事を思い知らされる。「帰りは……手、繋いで……」「ん。分かった」「オルティは怖くないの……?」「そうだね……怖くないと言えば嘘になるけど、少し慣れてるかな……」 戦争を経験した軍人が自我を失い、その面倒を看る家族が良く店に来ていた。 人間性を保てなくなった家族を殺す事も出来ず、記憶の中の真面な家族を取り戻す事も出来ず、祖母の香辛料に一縷の望みをかけて訪れるのだ。 モリガンの寒くて薄暗い環境下では閉鎖的な生活を余儀なくされる事も多く、家の中で制御の利かない獣を飼っている様な状況に家族ですら病んでしまう事もある。 時には暴れて手を付けられない等の理由で、こちらから家を訪ねて行く事もあって、オルタナはそう言う光景を何度か見ていた。 些細な破裂音に発狂したり、血を見るだけで泣き喚いて暴れたり、何もない空を見つめて延々と叫んでいたり。 彼らの目前にはそこにない戦時下の惨状がいつまでも広がっている。「モリガンには退役軍人も多いからね……」「そう……」「お二人共、お心の準備は宜しいですか?」「行ける? ラティ」 覚悟を決めた王妃がグッと顔を上げてふぅ――――っと長い息を吐く。「良いわ、開けてちょうだい。ミレー中尉」
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墓前の鳥薬

 大佐に言葉の意味が伝わっているのかは定かじゃないが、今だけは気圧されている場合ではない。「この度、薬学博士号を持った王妃様の協力を経てこの薬を再現するに至った。古の屈強な兵士達が、小鳥の様に囀る様になると言う“墓前の鳥薬”と呼ばれたものだ。お前も軍人なら耳にした事くらいはあるだろう?」 “墓前の鳥薬” 古文書の中で最も古い記録のある自白剤の一つで、生きている時は滅多に鳴かぬのに、死ぬ前になると美しい声で謳う夜鳴鳥に準えてそう呼ばれたと言われている。 その薬によって自白した兵士はその後、殺されると言う意味も含めて。「人を陥れ国を侵し、仲間を殺した挙句、このような有様になったお前をモリガン伯爵は見限ると仰せだ」 そう言ったオルタナの言葉に、大佐はピタリと動きを止め押し黙る。 隣で黙って見下していた王妃が、静かに口を開いた。「お前が謳わないのならば、モリガン家の為に布かれた箝口令を解こうか」「……だめっ、だめっ……おゆるし……だめっ……」「罪人のお前に指図される覚えはない。箝口令が解かれればモリガン家の威厳は失墜し、お前の父親も家督を譲る事になるだろう。カラザ・エスメラルが飛んで喜びそうな話だ」「カ……ラザ……カラザ……カラザカラザカラザカラザ」 到底正気とは思えないが、会話の単語には反応出来ている。 血走った眼球から湧いて出る涙で石床に染みが出来ていた。 オルタナは冷静に状況を見ながら、次の言葉を選んだ。 この薬を飲ませる事が出来なければ、ここに来た意味はない。「大好きな父上に見捨てられて良いのか? モリガン大国の王族の末裔がとんだ恥晒しだな」「ちち、うえ……ち、ち……ははっ……あーはっはっは……あはっ、ははっ」 顔を上げた大佐の額から、赤黒い狂気の雫が鼻骨を避ける様に二股に分かれ流れ落ちる。  
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効かない薬

「名を名乗れ」「……る、あど」 拙くそう答えた大佐を見てその男は、目を見開いて驚いたような顔でこちらを振り返る。「感謝致します、王妃陛下と……オルタナ様。初めまして、特警のエルダーと申します。会話が出来るなんて、驚きです」「後は俺達に任せろ」「じゃあ頼んだわよ、ノエル。お二人共、行きましょう」 ミレーに促され、ノエルとエルダーを残して鉄扉の外へと出る。 二人の姿が鉄扉に阻まれ見えなくなった後、ガゴンと大きな音を立ててミレーが外から鍵をかけた。 オルタナは何も言わず王妃と顔を見合わせ、無言のまま手を握り合う。 足早に石造りの地下の廊下を出口まで急ぐ。 ミレーが「ちょっ……」と慌てて付いて来て、何か言いたげだったが構わずに早歩きで外へと逃げる。「ちょっと⁉ お二人共、どうしたんですっ?」 外へと通じる階段を息を切らして駆け上がり、晴れた空の下へと飛び出した。「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」「やったわねっ……オル、ティ……」「大、せいこ……だね、ラッ……ティ……」 正直、怖過ぎた。 心臓が早鐘を打っている。 それは王妃も同じだったらしく、二人で手を繋いだまま見合って息を整えた。 訳が分からないまま着いて来たミレーが、首を傾げてこちらを伺う。「大丈夫ですか? お二人共……」「うん、平気。ありがとね、ミレー。付き合ってく
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