正面玄関から二階へ上がる階段の上から一部始終を見ていたナタリスでさえ、反論する様子はない。 一番混乱しているのはオルタナ自身だった。「あのっ……ヴィー様?」「オーリィ、お前に頼んだ事を覚えているな?」「覚えてる……けど、運命の番って……」 運命の番だと公表してしまえばそれは婚姻を意味する。 それはダメだ。 公爵の血筋を残せない自分では、本物にはなれない。「契約って言った……」「お前が唯一の番だと言ったはずだ」「でもっ……」「嫌なのか?」「ちがっ……嫌とかじゃなくて……」 ダメなんだよ。 こんな不完全な体で、それを望むのは烏滸がまし過ぎる。「未発情の事なら気にするな。ウケイ殿に切り札を貰った」「……切り札?」「お前は約束通り、このヴィンス・サリバンの番として夜会で完璧に振舞え」「……完璧に」「分かった、と言っていただろう?」 そう言われて、何故か階段の上からジッと見ているナタリスの視線が刺さる様に感じた。 覚悟があるなら役目を果たせ――――。 そう言われて悔しくて覚悟したはずだったのに、すぐに揺らいでしまう。 でもナタリスの視線を感じる程に、あの時の悔しさが蘇って来る。 家畜と罵られ自分の無能さを言い当てられて歯噛みしたあの時の感情が、オルタナを奮い立たせる。「謹んでお受けします。ヴィンス・サリバン公爵閣下」 オルタナはそう言って公爵の方へと向き直り、恭しく頭を垂れた。 やってやる。先の事なんかもう知るもんか。 いつだって公爵は勝手に決めて、勝手に話を持って来る。 それにいちいち右往左往しているのは、自分の覚悟が足りないからだ。 そ
Read more