「鹿笛って人間には聞こえないらしいんだけど、俺、聞こえちゃうんだよね」「スーラン、耳良いもんね」「まぁ普通じゃないらしいけど、他人に聞こえないなら都合が良いからさ。親父から大聖堂へ行けって連絡があって……」 向かっている途中に王妃を乗せた馬車と遭遇したスーランは、護衛を全員気絶させ、王妃特製の睡眠薬で眠らせる事にした。 その護衛達を見つからない様に叢へと隠して、王妃からある程度の事情を聞いて護衛の衣服と祈りの間の鍵を追剝し、大聖堂の裏山へと来たらしい。 そこでオルタナが落とした公爵家の家紋の入ったハンカチを見付けたのだと、ハンカチを抓んで振って見せる。「ラティとダリスは?」「見つからない様に隠れて貰ってる」「オーリィ、どっか痛い? 何か動きが変」「……大丈夫」 本当はさっきから背中が疼いて痛い。 でもそれより、とオルタナはスーランの顔色を診て、確かめる。 僅かな間でもあの蒸気の中にいたスーランの状態も気になっていたからだ。「スーランは体、変じゃない? 大丈夫?」「うん。俺、親父と一緒で鼻がバカだからさ。フェロモンとか効かねぇの」「そうだったんだ……」 スーランは戦争孤児で幼い頃親父さんに拾われた子供だ。 血が繋がっていないのに、似ているなんて不思議だ。「凭れかかってて良いよ」「あ、ありがと……」 スーランが乗って来た馬の前側に座らされて腰を抱かれるのが、少し居心地悪い気がした。 兄弟の様に育って来た隣の肉屋の息子は、いつの間にこんなに手が大きくなったんだろうか。 二つ年上だし、αだから昔から体格差はあった。 けれど、
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