社長、離婚した奥様が世界的トップモデルになっています! のすべてのチャプター: チャプター 111 - チャプター 120

121 チャプター

第111話 憧れる愛

 離婚してからは彼への気持ちは消し去ったはずなのに、どうして私は彼に信じてもらえないことが、こんなにショックなのだろう。彼が信じてくれなくて辛かったから別れの道を選んだはずで、とうにその期待は捨てたはずなのに……。病院で偶然知ってしまった彼の内に秘めた想いが、そんな私の決意を鈍らせる。彼に期待なんてしちゃいけない。信じたら裏切られる。そんなことわかっているはずなのに──。そんな気持ちを抱えながらも、私はそのあと気持ちを切り替え撮影に挑む。撮影現場は、可愛らしい女の子と親子の撮影だった。撮影を始めようとすると、その女の子は初めての撮影らしくモジモジして、お母さんの後ろに隠れている。「すいません。この子大勢の人いるの見たら恥ずかしくなっちゃったみたいで」お母さんが申し訳なさそうに謝る。「いえ。確かにこんなにたくさんの人ビックリしちゃいますよね」お母さんに答えたあと、私はその女の子の前でしゃがみ込む。「こんにちは。お名前なんていうの?」そして、その女の子の目線に合わせて話しかける。「えっと……桜……」その女の子は恥ずかしそうに答える。「桜ちゃんか~。可愛いお名前だね。たくさんの人の前は恥ずかしいかな……?」コクリとその女の子は小さく頷く。「実はお姉ちゃんも、たくさんの人がいると恥ずかしくなっちゃうんだ」「お姉ちゃんも……?」「うん。桜ちゃんそのお洋服とっても似合ってて可愛いから、一緒にお姉ちゃんとお写真撮ってもらわない?」「一緒に……?」「そう。お姉ちゃんも素敵なお洋服着せてもらったから、桜ちゃんと一緒にお写真撮ってほしいなぁって。もし桜ちゃんが一緒にいてくれたら勇気が出て恥ずかしくなくなると思うんだ。もしよかったら、お姉ちゃん頑張れるように桜ちゃん一緒にいてくれないかな~?」私の言葉にその女の子は、ちょっと表情が明るくなる。「──いいよ」
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第112話 制御出来ない心

【一弥side】どうしていつもこうなってしまうんだ。あの日俺はあいつを大切にすると心に強く誓ったはずなのに──。自分で自分の心も言葉も行動も、すべて上手くコントロール出来ない。だけど、なんとなく自分の中で嫌な予感はしていた。スタジオであの神崎とかいう男が隣にいることを騒ぎ出したとき、杏華はその存在を知らないようでホッとした。なぜならその男は、どうやら世間では名を馳せている有名な俳優らしく、女に相当ウケがいいいビジュアルや才能があるみたいだったからだ。その男の情報を調べていくうち、どんどんと嫌悪感が増す。女はとっかえひっかえ、後腐れない付き合いを好み、共演した女は必ず落とす。今まで本気になった女もいなければ、結婚なども考える気などない自由奔放な男だ。同じ男として苛立ちしかなかった。もしそんな男が、杏華と出会ってしまったら……と思うと、変な焦りが生まれてしまう。だからどんな小さな可能性も火種も杏華に与えたくなかった。知らないのなら一生こんな男知らなくていい。頭の片隅に置くことも許したくない。そんなこと考えすぎだと思えばそれで済まされるが、俺は念のため杏華に一切関わるなと釘を刺した。だけど他人事だと思っている杏華は適当な反応で返してきた。その時点で俺はもっとあいつに強くその危機感を伝えておけばよかったのだろうか。いや、でもそれはただ俺がそう感じてしまっているだけで、あいつは何も知らないことだ。無駄にそいつの存在を強調させることで、杏華に意識させるのも嫌だった。だから、そのあと、あの男の撮影を見学したいと言い出した時、一瞬焦ってしまった。よく聞けばその男じゃなく、同じタイミングで撮影モデルを探していた話だった。他のモデル誰もが、何の得にもならないその面倒そうな撮影を引き受けようとしなかったのに、杏華は子供の撮影はこれから自分には必要なのだと、目をキラキラ輝かせて俺に伝えてきた。そんな杏華に俺は一瞬戸惑った。そんなにも杏華の中で、ちゃんと母親としての自覚を持ち、それでいてモデルとしてのこの先のことも考えていること。俺が気付かない間に、杏華はどんどんこの状況で、意欲やいろんな想いを大きくさせていた。俺がその仕事を了承すると、ぱぁっと顔を明るくし満面の笑顔になる。それほど杏華にとって子供のことが大きい存在で大切に思っているの
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第113話 独占欲

【一弥side】俺は駐車場に行くまでのほんの少しの時間も、あいつの行動が一分一秒気になって仕方なくて、気付けば杏華に電話をしていた。すると急にあいつが電話越しにおかしな反応になり始める。悲鳴のような声が聞こえたと思ったら、そのうち男の声まで聞こえてくる。どういうことだ! 杏華何があったんだ!俺は、必死に電話越しに杏華に呼びかける。そのうち杏華は俺の電話に応えなくなって、俺は急いで引き返し杏華がいるであろう場所まで駆けつけた。すると、そこでまさかの光景が飛び込んで来た。杏華が誰だかわからない男に抱き抱えられている。なんだその手は!  杏華に触るな!  今すぐ離れろ!俺の中でいくつもの怒りの感情が込み上げてきて、今にも声に出そうになった。俺は急いでそこに駆けつけ、杏華に触れているその汚い男の手を勢いよく引きはがし、自分の方へそのまま思いっきり引き寄せ抱き留める。杏華に何をやっているのかと尋ねるも、杏華は気の抜けた顔で状況がわからないような反応をする。知らない男にそんな抱き締められてて、どうしてこの状況がわからない!なんでこいつはこんなに無防備で危機感がないんだ!簡単に男に身体を触らせていることも、それを平然と何も感じていないことにも腹が立った。そしてその男を鋭く睨みつけると、そいつは平然とした顔で笑っている。その姿が俺を煽っているようで、更に怒りが増す。するとその男をよく見てみると……。あいつだ──。神崎龍我。杏華と一番関わってほしくない男だった。その男がまさかもう杏華とすでに出会い、あんなに密着させ触れ合い見つめ合っている。その状況に苛立ちが収まらなかったが、俺は必死に冷静を保ちその男に話しかける。だがその男はただ杏華が気になったから名前を聞いていただけだと、ほざきやがる。唯一安心したのは、杏華はこの男が誰だか気付いていないようだった。俺はこの男の名前を口に出すのも嫌で、杏華の名前も絶対教えたくなかった。一秒でも早くこの場を離れたかった。だけど、そこから立ち去るとき、あの男の余裕そうな笑みがどうも心に引っかかった。嫌な予感がしてならない。あんな男に目をつけられたら杏華が一体どうなってしまうのか──。あんなに危機感ない状態であの男に迫られたら、杏華は単純だからコロッといってしまう。そんな状況は絶対に避けたか
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第114話 奪われる視線と心

【一弥side】杏華を車に乗せてからも俺の苛立ちはしばらく収まることはなかった。だから俺は杏華の変化に気付くことが出来なかった──。ただ杏華に一ミリもあの男の存在を知ってほしくなかったし、一秒も考えさせたくはなかった。だから杏華が「気になる」という言葉を口にしたとき、俺は咄嗟にあの男のことだと思った。それで俺はまた余計な一言を口にしてしまったんだ……。ただあいつのことを考えてほしくなかった。ただそれだけなのに、今までと同じように俺はその言葉が杏華にどう伝わるかなんて考えもせずに、思ったままの言葉を投げつけてしまった。その瞬間、杏華の空気が一気に変わり、悲しそうな表情をしたと思ったら、すぐに強い眼差しで俺を見る。そしてそのあと杏華から出た言葉を聞いたことで、ようやく俺はその自分の間違いに気付いた。杏華はあの男じゃなく、俺が気になるのだと呟いた。それに気付いた瞬間、俺はハッとし取り繕うも、杏華の心はすでに俺から離れていた──。どうして俺は何も考えず口にしてしまうのか。結局は俺はその言葉で杏華を疑ってしまっていたのだと気付いた。確かに杏華はあの男に何も必要以上の反応をしていなかった。それどころか誰だかわからない状況で、きっと杏華にとってはただぶつかっただけの相手だったのだろう。そうだとわかっていたくせに、ただ俺が一方的に感情的になったことで、こんなにも怒らせてしまった……。今のは全部俺が悪い。そう思って言葉にしても当然杏華にその言葉は届かない。勢いよく車から飛び出していった杏華を俺は止められることが出来なかった。感情任せに言葉にしてしまったと自分で気付いていただけに、そのあとスタジオに行くのに、俺は少し躊躇してしまっていた。俺は杏華のそばにいると、いつもこんな状況にさせてしまう。ただ今はあいつの成長していく姿を、あいつが変わっていく姿を、誰よりもそばで見続けていきたい。そう思ってるだけなのに──。俺は少し冷静になり、そのことを改めてまた思い出す。今はあいつが決めて選んだ仕事を見届けるのが今の俺の役目だろ。そう思いながらスタジオに入り、すでに始まっている杏華の撮影している場所へと足を進めていく。そこに広がっている光景に俺は目を奪われた。小さな女の子と共に美しい花畑で笑顔で撮影している杏華のその姿に、俺は息を呑んだ。楽
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第115話 驚きの言葉

さっきまであんなに苛立っていた一弥さんが撮影している私を見つめて、見たことのない穏やかな優しい表情で見つめている。じゃあ、撮影中に一瞬目に入った彼が、私を見て笑顔になっていたのも、私の見間違いじゃなかったんだ──。彼の視線の先には撮影をしている私と子供しかいなかった。だとすれば、そんな姿を見て彼は微笑んでいた……?そのことがなんだか心強くて嬉しくなる。私のことを目を逸らさずにずっと見つめていることも、そしてそんな私を見て微笑むなんてことも、今までの彼にはあり得ないことで。ただそれだけで私はより一層嬉しくて撮影を楽しめていた。彼に見つめてもらえることが、私にこんなに力を与えてくれるなんて思わなかった。もしかしたら私は心のどこかでそんな自分にもなりたかったのかもしれない。彼に見つめてもらえるようなそんな女性にきっと本当はなりたかった。今の私はこのモデルの仕事をしていることで自分自身も輝けるということも大きいけれど、それと同時に彼に私を見つめてもらえることも、私がモデルとして頑張れる力を更に強くしてくれるような、そんな気がした。「杏華さん。今日は本当にありがとうございました! 急遽撮影していただけて本当に助かりました!」すると撮影スタッフさんが声をかけてくる。「いえ。とんでもないです。こちらこそこんな素敵なお仕事させていただきありがとうございました。私自身、今回の撮影は自分でぜひやってみたいと思った仕事なので嬉しかったです」「正直ここまでクオリティ高い撮影出来ると思ってませんでした。杏華さんはこちらの望む世界観を想像以上期待以上のものを作ってくださって本当に素敵な作品にしていただき感謝しています」「うわ~そんなこと言っていただけてすごく嬉しいです。私もこれからはこういうお仕事もたくさんやっていきたいと思いますので、どんな小さなことでも困った時でも、いつでも声かけてくださいね」「ありがとうございます! ぜひまたお願いします!」嬉しい言葉を聞いてホッとする。自分の行動が誰かの力になれることや、そんな自分が届けたことを喜んでもらえて満足してもらえる。そんな嬉しさまで感じられるなんて思ってなかった。この仕事は外見も美しくなれて輝くことが出来る。それと同時に中身も頑張る力や満たされる気持ちをもらえたりもする。ふとしたきっかけで飛び込んだ世
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第116話 見たことない姿

「いや、だって、まだあなたとは──」どう答えていいのかわからず、私はテンパってしまう。「また俺から逃げる気か──?」「そんな、つもりじゃ……」「心配するな。もうお前の気持ちを無視するようなことは言わない。ただもうこんな遅い時間にお前を一人で帰らせたくないだけだ。だから着替えたら、ちゃんとここに戻ってこい。一人で帰るなよ」「──え?」あ、あぁーそういうことかー!やだ! 戻ってきてほしいって、この場所にってことじゃない!恥ずかしい! 何私勘違いしちゃってるの!?彼にはこんな恥ずかしいことバレてはいないだろうけど、そんな風に考えた自分に赤面してしまう。「──どした。なんでそんな顔を抑えてる」「えっ!?」私はあまりの恥ずかしさにその赤面を隠したくて両手で顔を覆っていた。「なんでも、ないわ!」「そうか……」「ちゃんと戻ってくるから心配しないで!」私はその顔を見られないように、彼に背を向けて着替えに行った。あぁ~もうしっかりしないと!私は気合を入れ気持ちを切り替え、それから着替え終わった後、一弥さんの元へと戻る。すると、そこでは一弥さんが関係者らしき人に頭を下げていた。初めて見るその姿に私は少し戸惑いながら近づいていく。すると、「よろしくお願いします」と、その人に何かをお願いするために頭を下げていたのだとわかった。私が近づいていくと一弥さんが気付く。「すまない。あと一人声かけておきたい人がいるから、ここで待っててくれるか」「わかった」その人との話が終わり一弥さんはまた別の場所へと移動していく。私は言われた通りその場で彼を見送ると「杏華さん。お疲れ様です」と、さっき一弥さんが話していた関係者の人から声をかけられる。「あっ、お疲れ様です」「杏華さんって、桐生さんとはお知り合いになられて長いんですか?」「えっ!? ど、どうしてですか!?」いきなりそんな具体的な答えづらいことを聞かれて思わず動揺してしまう。「いや、以前の桐生さんとは別人のように変わったなぁと思って」「彼をそんな以前からご存知なんですか?」「はい。仕事で付き合いがあったんですけど、まさか自ら頭を下げてまで、あなたの仕事を回してほしいとお願いされるとは思いませんでしたよ」「え……。彼が……」「以前の彼は正直誰かのために頭を下げるなんてことをする人じゃなか
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第117話 信じていいの?

私を、信じてる……? まさか……。でも……。今までの彼を思うと、素直に受け入れられない。と、そう思うのに、そんな彼を”信じたい”と思ってしまう自分もいる。「いい関係ですね」その人はそう言って微笑んだ。私はその言葉に同じように微笑み返すものの、どんな言葉で返せばいいのかはわからなかった。それでも夫婦じゃなくなり、私たちは新しい関係になったことは事実で。それが私たちにとって、どんな距離を保ち、どんな関係になればベストなのか、そしてこの人が言うような”いい関係”になれるのかは今はまだわからないけど。だけど、一つ確かなことは、今の私たちの関係がそう見えるほどの関係になっていて、そして私自身もこの今の関係になれているという事実が嬉しいと、そう思っているということだ──。「すまない。待たせた」そのあとしばらくして一弥さんが戻ってくる。私はそのあとの車の中で一弥さんにあることをお願いした。「ねぇ。一弥さん。お願いがあるんだけど」「なんだ」「私。今日の仕事みたいな今までやったことない、いろんなジャンルの仕事これからたくさん挑戦してみたい」「ん……」「だから、これから私にも仕事を選ばせてほしいの」今までの仕事は、まだこの業界に私が慣れていないことで、一弥さんが私に合うもの・私に出来そうなものだけを選んで私に話を持ってきてくれていた。だから正直今日みたいな仕事は、彼自身も選んではいなかったと思う。「ん……」彼はハンドルを握りながら、まっすぐ前を向いたまま、どちらとも言えない返事をして答える。「今日の仕事で、私自身新しい扉が開いたっていうか、この先に可能性を感じられたというか……。私しか出来ない仕事を、自分でちゃんと見つけてみたいの」「ん……」「ねぇ。聞いてる──?」私は運転している彼を見ながら必死に伝えるも、同じ反応しかせず何も答えてくれない彼に問いかける。「聞いてるから反対してないんだろう──」「え──。その反応はそういうことなの……?」「ダメならダメとちゃんと言う。というか、俺も、もうお前の可能性を狭めるようなことはしたくないって思ったから──」「一弥さん……」「俺がこうだと思っていることでも、お前は俺の想像を超えていく。多分きっと、お前自身も、そして俺も、まだまだ知らないお前の眠っている可能性があるんだとそう思ってる」
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第118話 違和感

 今、私の仕事は少しずつ経験をつけてきてこれたことで、仕事をもらえることが増えてきた。今日いる現場は、ファッション誌の撮影。そこには専属のメインモデルとして”綾乃”もいた。今日の撮影は外でのロケ撮影。一弥さんは別の仕事があるということで、皆と同じロケバスに乗って新しい現場に行くことになった。その撮影は他にメインモデルはいるものの、今日の撮影に参加したメインモデルの中では綾乃が一番格上だった。私はまだ経験が浅いこともあり今日はレギュラーモデルとして参加している。今回の撮影では基本、中心は綾乃。そして私は後ろの方に映るようなカットがほとんどだった。私的には自信持ってメインを張るまでには、いろんな現場で勉強してから、いつかのそのときに備えようと日々勉強中だ。一応今は私自身いろんな経験がしたいということと、数か月後には出産し子育てに専念することを考え一弥さんと相談してレギュラーモデルとして活動しようと決めた。それでもどんな仕事でも出来ることがありがたかった。だが綾乃は違っていた。いつでも私をライバル視し、私より上に立たないと気が済まない性格。彼女は誰より自分が中心にならないと納得いかない。そんな性格の彼女は、メインで一番になれている今の状況に、ご機嫌のようだった。「お姉ちゃん。いつまでもそんな後ろで私を引き立てる役なんて可哀想。でも仕方ないわよね。これもお互い実力だし求められるリアルな現実の差、ということだものね」他のモデルが周りにいなく私一人になったタイミングで、綾乃はまた私に勝ち誇ったように話しかけてくる。あえて私はそれに対して何も答えないことで、”勝った”と認識する綾乃は、何度も私にそんないくつもの言葉をぶつけ続ける。これは彼女のストレス発散みたいなものだ。唯一すべてをさらけ出し何も言い返さない私は、うってつけのストレス発散の的。常に私と比べ続け自分が上に立ったと自覚し、こっちにも認識させることで彼女は満た
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第119話 遠くにいるはずなのに

「もう他に用意はないですよね?」 「すいません。ここにあるだけなんです」 「ですよね……」 今日朝早くからの撮影で正直朝食を食べたのも早かったから、夕方までの撮影を考えるとこのタイミングで食べておかないと、体力持たないかもなんだよな。 「RURIさん。さすが!」 すると綾乃がいる付近で、今度は何やら騒がしいのに気付く。 「RURIさん、差し入れありがとうございます!」 「皆さんにいつもお世話になっているので、こんなことだけで全然お返しにならないんですけど。これ私のお気に入りのお店のサンドイッチのお弁当なんです。ぜひ皆さんにも食べていただきたくて用意させてもらいました」 綾乃がスタッフさんやモデル仲間に答えている声が聞こえる。 その会話で、今日は綾乃がお弁当を用意したのだとわかった。 「うわ〜オシャレなサンドイッチ〜!」 「さすがRURIさん! 差し入れもオシャレ〜!」 そのサンドイッチのお弁当に周りも反応する。 すると、綾乃が私を見つけ近づいてくる。 「お姉ちゃん。お弁当なくなったのー?」 「あっ、うん。なんか足りなかったみたい」 「あっ、そっか~。もしかしたら私人数数え間違ったのかも〜。 ごめんね? お・姉・ちゃん♪」 私にそう伝える綾乃の言葉と表情ですぐにわかった。 申し訳なさそうにするどころか、私だけに見せるその上から見下すその表情は、いつものように悪魔のように微笑んでいたから──。 あぁ、これも結局綾乃が仕組んだことだったのか……。 だけど、ここで嘆いていても仕方ない。 「あの休憩時間ってまだありますよね?」 「はい。次の撮影は準備入れたらモデルの皆さんは一時間後くらいには始めようと思ってます」 「わかりました」 スタッフさんに確認して私は気分転換するために、少しこの辺りでどこか食べられるお店はないか散策し始めた。 そのタイミングで一弥さんからたまたま携帯にメッセージが入る。 仕事の連絡の確認で、私はすぐに返事をした。 すると、それを送ったと同時に既読になったかと思えば、今度はすぐに電話がかかってくる。 「もしもし?」 『もしもし。今、撮影中じゃないのか?』 「あっ、今昼休憩で。そういえば一弥さん、この辺りの撮影場所詳しいって言ってたわよね?」 『あぁ。その辺りは詳しいが、どうした』 「この辺り
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第120話 不器用な優しさ

「一弥さん。 今日仕事なんじゃ」「あぁ。早めに終わったから」「だからってどうして……」「ほら。食え」「え?」すると、彼がぶっきらぼうに袋に入った何かを手渡す。私は何かわからず、とりあえず受け取り中を見ると、そこにはコンビニで買ったであろうたくさんのおにぎりが入っていた。「何このたくさんのおにぎり!」「時間があまりないから簡単に食べられるものを買ってきた」「え……、これ一弥さんが買ってきてくれたの?」「何がいいかわからなかったから全種類買ってきた」「えっ!? 全種類!?」「好きなだけ食え」「フフッ。やだ、こんなにたくさん食べられないわよ」「残れば俺が食うから問題ない」「え……。あなたがおにぎり……? 食べたことあるの? コンビニのおにぎり」「いや。ないが──」「そうよね。あなたがコンビニに行くなんて驚いた」「この辺りはそれくらいしか店がなかったからな。何も食べないよりマシだろ。こっちがよければこれもあるぞ」そういってまた渡された袋にはサラダやらパンやらがまた大量に入っていた。「これ……全部、私のために……?」「これなら時間なくてもすぐ食えるだろ。本当は腹の子にも影響ないように栄養あるものをと思ったんだが、そういう店もこの辺りじゃ見当たらなかったし、あまり時間がなそさうだったからこれで悪いが我慢しろ」「えぇ。十分よ……。ありがとう……」彼が私のためにこんなことをしてくれるのも、普段行ったこともないコンビニで手当たり次第すぐに食べられる物を買ったりしてくれるのも、今までの彼にはあり得ないことで、私は少し感動してしまう。こんな短時間でこの場所まで駆けつけてくれて、差し入れまでしてくれるだなんて……。「ねぇ……。一緒に食べてくれない?」「一緒に……?」「もうお昼食べた?」「いや、まだだが」「コンビニのおにぎり。食べたことないでしょ?」「あぁ」「案外美味しいのよ。はい」私は袋からおにぎりを取り出して彼に手渡す。「これ。どうやって食べるんだ」彼はおにぎりの袋の開け方もわからなくて、少し戸惑っている様子。「貸して」私は彼からおにぎりを受け取り、食べやすい状態にしてまた彼に手渡した。「どうぞ」「あぁ。悪いな……」彼は静かに呟く。そして彼はおにぎりを口にすると「案外美味いな……」彼は初めて口にすると意外そ
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