บททั้งหมดของ 社長、離婚した奥様が世界的トップモデルになっています!: บทที่ 171 - บทที่ 180

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第171話 初恋のように……

この日の撮影は、綾乃も他のモデルも誰もいない一人だけの撮影。別現場で私の撮影を見ていた関係者さんが、私が雑誌のイメージにピッタリだと言ってくれて声をかけてもらったお仕事だ。「杏華さん。今日はよろしくお願いします!」「こちらこそよろしくお願いします」スタジオに行くと、早速関係者さんが挨拶に来てくれる。「まだこんな新しく創刊されて人気も出ていない雑誌ですが、仕事引き受けてくださってありがとうございます」「いえ! とんでもないです! 私もまだ新人みたいなものですし、ここからいろんなお仕事していきたいんです」「うちの雑誌は『優しさと笑顔を届けたい』というコンセプトなんです。以前杏華さんが女の子と花畑で撮影していた雑誌の写真を拝見して、あの透明感や優しい雰囲気が、うちの求めてるイメージにピッタリだなと思って、ぜひ杏華さんにお願いしたかったんです」「嬉しいです。私もあの写真大好きで、通常では機会がなかったお仕事なので、あの撮影が出来て私もとてもいい経験になりました」たまたま撮影現場でスタッフさんから他のモデルさんの代わりに撮影に行ったお仕事。小さな子供との撮影だったから、他のモデルさんは誰も率先して手を挙げなかった。だけど、私はあの撮影を経験出来たおかげで、母親になるこれからの期待や楽しさを味わわせてもらえて、とても実りある撮影だった。それがまたこうして別のお仕事に繋がっているなんて、すごく嬉しい。頑張ったことや、自分が信じた道は、こうしてどこかに誰かに届いているんだと思うと、また胸がいっぱいになる。そしてそれからスタッフさんと打合せをしていると、スタジオに入ってきた人物に気づき、私は視線を移す。──あっ、一弥さんだ!キリッと引き締まった表情と出で立ちの一弥さんに、スタジオがざわめき一斉に視線が彼に集まる。入ってきた瞬間、彼から醸し出す圧倒的なオーラある存在感に、スタジオの空気が一瞬で引き締まったのがわかった。彼が颯爽とスタジオに入ってくる姿に、小さく胸が跳ねる。こんなふうに、彼の姿を見つけ、胸をときめかせることは、初恋だったあの頃以来かもしれない。結婚が決まってからは嬉しい気持ちはすぐに消え、不服そうな彼との時間を重ねていくことは、私にとって幸せより彼を苦しめている悲しみに変わっていった。けれど、初恋だったあの頃は、いつも人気でた
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第172話 不器用で大きすぎる愛

【夏希side】杏華の撮影が始まるナイスタイミングで、桐生さんがスタジオに到着した。二人の様子を見てたら、お互い目を合わせ、小さくはにかんでいる二人が初々しくて仕方ない。ホントにこの二人は離婚したのか?しかもこの桐生さんが杏華にまったく興味がなく冷酷な男?いやいや、どう見ても感情ダダ洩れで、甘々なんですけど?確かに言葉的にはそんなふうには感じないしクールに見えるけど、あれはただ本人が自覚なくて表現の仕方を知らないだけなんだよな。私にも『全力で杏華を守れ』って普通の条件じゃないんだよね。でも杏華は確かにこの人に傷つけられて自信なくしてるし、元々そういう要素は持ってるんだろうけど。でもなんか放っておけないんだよな。この二人。よし。ちょっと探ってみるか。「桐生社長。お疲れ様です」私はスタジオの後ろで立っている桐生さんの横にスッと並び声をかける。「あぁ。お疲れ様」私に言葉だけ返し、視線は杏華をずっと見つめ続けている。その視線は、完全に社長というより、愛しい恋人を見つめる視線なんだよな~。「あの。フルーツどうもありがとうございました!」「あぁ。無事届きましたか」「はい! 杏華もすごく喜んでました!」「そうですか。──よかった」そう私が伝えると、一瞬嬉しそうに安心したように小さく微笑む。「今日の杏華。どうですか。杏華が本来持っている優しいイメージを際立たせるように、柔らかくて透明感ある仕上がりにしました」「──あぁ。彼女が持ち備えてる優しい部分が、あなたの腕を加えてもらえたおかげで、より魅力的に出てると思います。さすがですね」「ありがとうございます」ちゃんとそういうふうに思ってるんだ。杏華にそういう言葉ちゃんと伝えてないのかな、この人。「なんとか撮影に間に合ってよかったです」「あっ、そういえば今日来られる予定じゃなかったんですよね?」「はい。元々の予定では昨日から韓国に出張に行ってたので、今日の夜に帰ってくる予定でした」「え? そうなんですか? お仕事急遽なくなったとかですか?」「──いえ。仕事のスケジュールは変わりなかったのですが、杏華の今日の撮影はどうしても自分が見たくて、徹夜で仕事を早めて、なんとか間に合わせました」「え!? 徹夜ですか!?  てか今、午前11時ですよ?」夜までの予定だった仕事を徹夜し
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第173話 彼女だけが知る彼の本音

 【夏希side】 「どうか杏華のすべてを受け止めてもらえませんでしょうか」いきなりそんなことを言い出した意味がわからず、私は聞き返した。「それはどういう意味でしょうか」「彼女は、ある理由があって、今まで一人でいくつもの苦労をして心が傷つく想いをしてきました──。もし彼女がその理由を自分から話すときがあれば、どうかあなたが友人として、その心を支えてやってほしいんです」「え……。杏華にそんな辛いことがあったってことですか……?」「理由は……、俺の口からは言えません。ですが、きっと彼女はあなたに頼るはずです。そのときは、俺が彼女と話せないようなことを、あなたは聞いてやってほしい」桐生さんの表情は、少し悲しそうで苦しそうな表情だった。何かの理由があると思いながらも、私は何も尋ねなかった。「──わかりました。何があったかわかりませんが、彼女がもし私を頼ってくれたとき、必ずすべてを受け止め私が支えます」「ありがとうございます」桐生さんは私に頭を下げる。そのときは、ただのビジネスパートナーだったから、そこまでするのかと思っていた。だけど、実際杏華から話を聞いたら、まさかの元夫婦で、結婚していたときは、今と想像出来ないほどの冷酷だったことを知った。そんな人が、あのとき何のためらいもなく、私にそんなお願いをするために、頭を下げていた。私は桐生さんと出会ったときから、杏華に嫉妬し、気にかけ、ただ不器用ながら杏華に想いを向けている人という印象だった。だからどうしても私は、今の桐生さんは私にはそんな人にしか見えないのだ。「ですが──。契約金は、いらないです」「え?」私はそのとき掲示された契約金の話を断った。「約束の金額をいただけるだけで十分です。私は、杏華がもし何かを打ち明けて来たときは、友人として、ただ支える。それだけです」桐生さんは私のその言葉が意外だったのかハッとした表情になる。
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第174話 気づけなかった優しさ

【一弥side】「一弥さん! 来てくれたのね!」撮影が終わると、杏華は真っ先に俺の元へと駆け寄ってきた。「あぁ。仕事が思ったより早く終わってな」正直この撮影に間に合わせるために、かなり無理をした。徹夜で終わらせた影響で、寝る時間もなかったが、プライベートジェットの時間、唯一仮眠程度に少し寝れただけだった。夏希さんには本当のことを伝えたが、なぜか杏華にはそういうことを素直には言えなかった。すると、杏華と逆に立っていた夏希さんが隣から小声で強めに俺に話しかける。「(どうして隠すんですか! 素直に杏華のために無理して帰って来たって言えばいいじゃないですか!)」「えっ? どうしたの夏希?」俺が答える前に杏華が気づき夏希さんに声をかける。「あっ、なんかー。桐生社長。ホントは、すっごい無理してこの現場に韓国から駆けつけたみたいだよ~」すると、わざとらしく夏希さんがそんな言葉を杏華に伝えた。「え!? 今日の出張って韓国だったの!? 無理して駆けつけたって!?」杏華は案の定その言葉に驚いている。「徹夜して杏華の撮影間に合わせてくれたんだって。プライベートジェットで飛んできてくれたらしいよ~?」「(ちょっと夏希さん──!)」全部話してしまう夏希さんに、俺は小声で思わず声をかける。「徹夜……? プライベートジェット……?」杏華は、目を丸くして静かに呟く。それもそのはず。俺はそこまでのことを杏華に一切話していない。俺がどんな仕事をして、どこまでの家柄なのか、結婚していたときは、俺の面倒な家の事情に巻き込みたくないのと特に話す必要もなかったから、適当にそれなりの金持ちくらいに思わせていた。──本気で愛し合っていなかったからこそ、俺は杏華を危険な目に遭わないように避けていた。だが、この業界に杏華が飛び込んできたということは、いつか杏華にも話さなきゃいけなくなるだろう。いや、逆に自分の今の気持ちに気づいた以上、これから杏華を本来の自分の力で守ってやるべきなのかもしれないと、そう思い始める。「──どうしてもお前の今日の単独の仕事を見届けたくて、俺が勝手に無理、したというか……まぁ、調整しただけの話だ。気にするな」これで杏華が負担に思ってなければいいが……。そう思っていると──。「嬉しい──。ありがとう」杏華が、嬉しそう
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第175話 あの頃のときめきみたいに

「杏華。着替え終わって帰る準備が出来たら連絡してくれ。表に車を回しておく」「うん。わかった」撮影が終わったあとスタッフさんたちに挨拶をし、一弥さんに言われたとおりスタジオを出て正面入口まで夏希と向かう。「夏希。今日も素敵なメイクありがとう」「どういたしまして」「夏希がいつも一緒だなんてホント嬉しいな。夏希がいると、安心も出来るし何よりホント自信持てるんだよね」「それは、すっごい嬉しいんだけどさ。そういう素直な気持ち、他にもちゃんと伝えたい人がいるんじゃない?」そう言いながら、夏希は意味ありげな言葉と共に微笑む。「え!?  な、なんのこと!?」「やだな~わかってるくせに~。ホント二人とも素直じゃないんだから~」「え……?  二人ともって……?」「あぁ~誰かさんがさ、全然素直じゃないな~って話。まぁ、杏華はとりあえず桐生さんに今日嬉しかったこと、ちゃんと伝えるんだよ?」「え──?  あっ、うん。わかってる──」もちろん今日のこの気持ちは、一弥さんにちゃんと伝えたいとは思ってる。けど……。うまく話切り出せるかな。お礼伝えただけで話終わっちゃわないかな。今までそんなことをわざわざ改まって、伝えるということを待つというか意気込むというか、そんなことしたことなかったから、ちゃんと伝えられるか少し緊張してしまう。昔は、それこそ胸に秘めていた想いは山ほどあったけど、実際彼に直接伝えられることなんてなかったからな──。「フフッ。なんだかちょっと緊張しちゃう」「もう~杏華はホント可愛いな~! 今の杏華そのままで桐生さんに伝えたら絶対大丈夫!」「ちゃんと話聞いてくれたらいいな」「──大丈夫! 絶対今の桐生さんなら聞いてくれるから! 私が保障する!」夏希が自信満々にそんな言葉を伝えてくれる。夏希は一弥さんのこと全然知らないはずなのに、どうしてだか夏希の、このはっきり宣言する感じが、私よりも彼のことを知ってるような、そんな雰囲気に感じてしまう。だけどそれがなんだか心強くて。そして今の彼ならホントに、ちゃんと聞いてくれるような、そんな淡い期待を実際私も感じてしまっているから──。「ありがとう夏希。頑張ってみるね」別にそれは、たいしたことない話で、ただお礼を伝えるだけなのに。私にとっては、そんなことを伝えるだけでも一大事みたいなもの
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第176話 夢見た未来

後部座席から、とてつもないオーラを身にまとい颯爽と一人の男性が姿を現す。「え……一弥さん!?」それは間違いなく一弥さんだった。え? 一弥さんがなんで!?結婚してたとき、うちに執事さんがいたから、それなりのお金持ちなんだとは思ってたけど。それでも、こんな運転手さん付きの、すごい車に乗ってるところなんて一度も見たことなんてなかった。「杏華。待たせた」キリッとした表情で車から降り立った瞬間、あまりのそのオーラとカッコよさに息を呑んだ。彼は車から降りると、そんな周りに一切目もくれず、私を見つけると優しい眼差しで見つめながら、そばまでやってきた。私はその光景に唖然とし、固まったまま、同じようにそんな一弥さんを見つめる。「撮影疲れただろ。ここから家まで結構時間がかかる。着くまでゆっくり車で休め」そう言いながら、スッと私の背中を優しく手で支え後部座席へと促す。「あり……がとう……」私はドラマのような光景が自分に起こっているのが信じられなくて、ただ呆然としながらそれ以上言葉も出ずに、そのまま彼に優しく促され、その座席へと座る。私が座ったのを確認すると、彼も反対側のドアに回り、隣の座席に座る。ふかふかのソファーに広すぎるその空間。乗ったこともないこの豪華な車に、私は少し緊張してしまう。だけど、その空間以上に、この密室で運転をしていない彼がこんな近い距離ですぐそばにいるということに、私は少し体が固まってしまい今まで感じたことない緊張感を覚える。私は無意識に自分の両腕をギュッと抱え、縮こまってしまう。「杏華」声をした方向を見ると、すぐ隣で私をじっと見つめている一弥さんに気づく。えっ──!?一弥さんが少しこちらに身体を乗りだし、更に私の方へと近づいて顔を覗く。何、何!?  なんでこんな近いの!?なんでこの人こんな近くで私をじっと見つめているの!?私は更に身体をすくめ、ほんの少しのけ反る。「寒いのか──?」「えっ!?」あっ、私がこんな仕草をしているから、彼は心配したってこと──?「あっ、えっと」私は一弥さんを意識しまくっている自分を悟られたくなくて、ごもってしまう。すると彼が運転手さんの後ろのパーテーションを少し開け──。「崎山。後ろの温度を少し上げてくれ。杏華が寒がっている」「承知いたしました」運転手さんに彼は温度を上げ
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第177話 密かな願い

 「あの……一弥さん」「ん?  なんだ」私が視線を落としながら名前を呼ぶと、彼は優しく答えた。私が名前を呼ぶだけで、彼はちゃんと答えてくれる。不機嫌そうに吐き捨てるように言われるのでもなく、私にちゃんと問いかけるように優しく聞き返してくれる。すぐそばで彼のそんな声を聞くだけで、私は胸がキューッとなる。「今日のフルーツの差し入れ、すごく嬉しかった。ありがとう」夏希と約束したように、ちゃんと素直に気持ちを伝える。「あぁ。喜んでもらえたならよかった」「撮影前にあれを差し入れしてもらえたおかげで、頑張るパワーがすごく出た」「──そうか。お前がお前の力で手にした初めての単独の仕事だ。少しでもそんなお前の力になれてたならよかった」「うん。すごく力になったよ。あと、あのこれも……嬉しかった……」私はそっとバッグに忍ばせていた彼が書いたメッセージカードを取り出して見せる。「は──?  お前、そんなもの持って帰って来たのか」私がそれを見せると、一弥さんは焦った様子を見せる。「うん。あなたが初めて書いてくれたメッセージだもの──」私はそのカードを見つめながら呟く。「え……?  それが嬉しかったのか……?」「うん……。これをくれたから更に頑張れた。あなたのこの字を見て、あなたが力を貸してくれたみたいな気持ちになれたの……」私にとっては、どんな小さなことでも嬉しいから。あなたが私に心を向けてくれているのだとわかる、すべてが……。「ずっと……憧れてたから……」あの頃、彼に憧れていた私が知ったら、心から喜んでいただろう。憧れていた彼が、私にこんなメッセージをくれる日が来るだなんて……。私はカードを見ながら、あの頃の自分を思い出す。「え……? 憧れてた、って……?」すると、彼が小さく呟いた私の言葉に、どうしてか聞き返す。
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第178話 言葉に出来ない望み

 【一弥side】杏華のその『たった一つのお願い』は、あまりにも俺の心を激しく乱す言葉だった──。それは決して俺に一緒に子供の面倒を見てほしいだとか、責任を取ってほしいだとか、そんなことを一切言わない、杏華らしい控えめで俺を気遣うありのままの健気さ。だけど、俺にそんな責任も取らせてもくれない、そんなことをまったく望んでいないのだと、言葉にしなくても伝わってくる強さ。どこまでもそんなふうに思ってしまう杏華にしてしまったのは、間違いなくこの俺だ──。控えめのお願いなのに、それは杏華の強い決意のように感じてしまう。それでいて、父親としてそれ以上でもそれ以下でもない、ただ名前を書く役目……、ただそれだけを望んでいるのだと……。どこか線を引かれてしまっているような、元からもう父親としての俺を望んでいないと言われている気がして……。そんな杏華の気持ちが伝わってくるようで、胸が痛い──。本当なら、父親として杏華と一緒に誰よりも大きな愛情を俺たちの子供に与えてやりたいのに……。俺のくだらなくて情けない過去の自分の過ちのせいで、俺はその本音も言うことを許されず、杏華もきっと口が裂けても言葉にしない──。今更どれほど後悔したところで、こんな孤独にさせてしまった俺の大きな罪は消えやしないのに……。だけど──。俺の字を、そんなふうに思ってくれていることも、すごく嬉しくて……。ただ家のためにやっていただけのこと。どれだけ綺麗な字を書いたところで、感動する人間も褒めてくれる人間もいるわけじゃない。桐生の人間なら、出来て当たり前の世界。それを杏華は子供のために、名前を書いてほしいと俺に望んでくれた。大切な子供の名前を……。唯一そんな俺を認めてくれて、求めてくれる。俺は初めて今そんな自分になれていることを嬉しく思った──。杏華は、俺が俺でいることの意味を、こうして気づかせてくれる。俺が気づかないそんな小さな忘れかけている
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第179話 重なる想い

 何かを伝えようと、彼は自分の中で何かを考えているように見えた。そしてそのまま憂いを帯びた目で、私を見つめる。私はそんな切ない雰囲気の彼から、目が逸らせなくなる。すると、私の腕をギュッと彼が掴み、ゆっくり口を開く──。「──これからは……、ただ、俺に守らせてほしい。お前も、そのお腹の子供も……」私を見つめながら、ゆっくりと私に静かに伝える。「え……。それは、どういう……意味……?」私たちを守る……?  一弥さんが……?彼のその目が、表情が、その言葉が、一体どういう意味を持つのか……。私に何を伝えようとしているのか……。今までの彼と私の時間を思い返すと、余計にわからなくなる。だけど、見たこともない彼のその切羽詰まったような苦しそうな表情を見ると、明らかに今までの彼とは違っていて。それでいて、今の彼といると、心のどこかで少しずつ期待してしまっている自分もいる。気づかないフリをしていた自分の彼への気持ちも、もう自分自身こんなにも自覚している中で、こんなことを言われたら、どうしたって私は期待したくなってしまう……。今だって、私の腕をギュッと握りながら私を見つめ続ける彼に、私のこの胸はこんなにも高鳴っている。彼が次に口にする言葉を、私はドキドキしながら待ち続ける。「杏華──」私を見つめながら、彼は掴んでいた手を、今度は膝に置いていた私の手の上に、自分の手のひらをそっと重ね、少しずつ強く握り締めていく。その手のひらの熱さや握る強さに、彼が今言葉にしようとしている想いが伝わってきそうで、私のドキドキはもう──。そう思った瞬間。「お疲れ様でした。マンションに到着いたしました」運転手の崎山さんの声がスピーカー越しに車内に響いた──。その瞬間、お互いハッと我に返り、重なり合った手を崩す。「──あぁ。車が、着いたようだ……」「そ、そうね──」私たちは少し気まずい雰
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第180話 今ならわかる切なさ

 そのあと、彼のこの手がどうなるのかとドキドキしていると──。彼のスマホから電話が鳴った。その瞬間、そのドキドキの空間から現実にまた引き戻される。「すまない」一弥さんもその電話に気づき、私の手をスッと放してしまった。あっ……。スルッと彼が握っていた手が離れた瞬間、私は物足りなさを感じてしまう。そのまま彼が手を引いて部屋まで歩いて行くなんてことはありえないけど。それでも今の彼がどんなふうにこのあと接してくれるのか、少し知りたかったような気もした。「もしもし。……え?  今から?  いや、もうこのあと仕事はないが」すると少し一弥さんは私から離れ電話の相手と話し始める。「……フッ。なんだよ、会いたいって」え……会いたい……?誰……なの……?彼がふわっと柔らかい表情で笑いながら口にしたその言葉に、私の胸はすぐに反応してズキズキと切なくなる。彼に『会いたい』だなんて平気で言える人……。そしてそんなふうに彼が戸惑いもなく受け入れる人。「俺の部屋?  まぁいいけど。あぁ。うん。わかった。じゃあ部屋で待ってるから、このあと来てくれ」え……一弥さんの部屋……に、来るんだ……。私以外にこのマンションの部屋を知ってる人がいるんだ……。そんな気兼ねなく話せて部屋に呼べるほどの仲。もしかして……綾乃……? それとも違う女の人……?そうよね……。彼にプライベートでどんな女性がいたとしても、おかしくないわよね……。私は所詮ビジネスパートナーだけで、プライベートの彼の生活には決して入り込むとは出来ない……。さっきまであんなに近づけた気がしたのに、電話をしながら前を歩いていく一弥さんの背中を見つめていると、さっきまでの心まで遠くなっていくようで胸が痛む。出来ることなら、あの広い背中に今すぐ手を伸ばしたい。『まだ一緒にいたい』と、彼
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