All Chapters of 社長、離婚した奥様が世界的トップモデルになっています!: Chapter 171 - Chapter 173

173 Chapters

第171話 初恋のように……

この日の撮影は、綾乃も他のモデルも誰もいない一人だけの撮影。別現場で私の撮影を見ていた関係者さんが、私が雑誌のイメージにピッタリだと言ってくれて声をかけてもらったお仕事だ。「杏華さん。今日はよろしくお願いします!」「こちらこそよろしくお願いします」スタジオに行くと、早速関係者さんが挨拶に来てくれる。「まだこんな新しく創刊されて人気も出ていない雑誌ですが、仕事引き受けてくださってありがとうございます」「いえ! とんでもないです! 私もまだ新人みたいなものですし、ここからいろんなお仕事していきたいんです」「うちの雑誌は『優しさと笑顔を届けたい』というコンセプトなんです。以前杏華さんが女の子と花畑で撮影していた雑誌の写真を拝見して、あの透明感や優しい雰囲気が、うちの求めてるイメージにピッタリだなと思って、ぜひ杏華さんにお願いしたかったんです」「嬉しいです。私もあの写真大好きで、通常では機会がなかったお仕事なので、あの撮影が出来て私もとてもいい経験になりました」たまたま撮影現場でスタッフさんから他のモデルさんの代わりに撮影に行ったお仕事。小さな子供との撮影だったから、他のモデルさんは誰も率先して手を挙げなかった。だけど、私はあの撮影を経験出来たおかげで、母親になるこれからの期待や楽しさを味わわせてもらえて、とても実りある撮影だった。それがまたこうして別のお仕事に繋がっているなんて、すごく嬉しい。頑張ったことや、自分が信じた道は、こうしてどこかに誰かに届いているんだと思うと、また胸がいっぱいになる。そしてそれからスタッフさんと打合せをしていると、スタジオに入ってきた人物に気づき、私は視線を移す。──あっ、一弥さんだ!キリッと引き締まった表情と出で立ちの一弥さんに、スタジオがざわめき一斉に視線が彼に集まる。入ってきた瞬間、彼から醸し出す圧倒的なオーラある存在感に、スタジオの空気が一瞬で引き締まったのがわかった。彼が颯爽とスタジオに入ってくる姿に、小さく胸が跳ねる。こんなふうに、彼の姿を見つけ、胸をときめかせることは、初恋だったあの頃以来かもしれない。結婚が決まってからは嬉しい気持ちはすぐに消え、不服そうな彼との時間を重ねていくことは、私にとって幸せより彼を苦しめている悲しみに変わっていった。けれど、初恋だったあの頃は、いつも人気でた
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第172話 不器用で大きすぎる愛

【夏希side】杏華の撮影が始まるナイスタイミングで、桐生さんがスタジオに到着した。二人の様子を見てたら、お互い目を合わせ、小さくはにかんでいる二人が初々しくて仕方ない。ホントにこの二人は離婚したのか?しかもこの桐生さんが杏華にまったく興味がなく冷酷な男?いやいや、どう見ても感情ダダ洩れで、甘々なんですけど?確かに言葉的にはそんなふうには感じないしクールに見えるけど、あれはただ本人が自覚なくて表現の仕方を知らないだけなんだよな。私にも『全力で杏華を守れ』って普通の条件じゃないんだよね。でも杏華は確かにこの人に傷つけられて自信なくしてるし、元々そういう要素は持ってるんだろうけど。でもなんか放っておけないんだよな。この二人。よし。ちょっと探ってみるか。「桐生社長。お疲れ様です」私はスタジオの後ろで立っている桐生さんの横にスッと並び声をかける。「あぁ。お疲れ様」私に言葉だけ返し、視線は杏華をずっと見つめ続けている。その視線は、完全に社長というより、愛しい恋人を見つめる視線なんだよな~。「あの。フルーツどうもありがとうございました!」「あぁ。無事届きましたか」「はい! 杏華もすごく喜んでました!」「そうですか。──よかった」そう私が伝えると、一瞬嬉しそうに安心したように小さく微笑む。「今日の杏華。どうですか。杏華が本来持っている優しいイメージを際立たせるように、柔らかくて透明感ある仕上がりにしました」「──あぁ。彼女が持ち備えてる優しい部分が、あなたの腕を加えてもらえたおかげで、より魅力的に出てると思います。さすがですね」「ありがとうございます」ちゃんとそういうふうに思ってるんだ。杏華にそういう言葉ちゃんと伝えてないのかな、この人。「なんとか撮影に間に合ってよかったです」「あっ、そういえば今日来られる予定じゃなかったんですよね?」「はい。元々の予定では昨日から韓国に出張に行ってたので、今日の夜に帰ってくる予定でした」「え? そうなんですか? お仕事急遽なくなったとかですか?」「──いえ。仕事のスケジュールは変わりなかったのですが、杏華の今日の撮影はどうしても自分が見たくて、徹夜で仕事を早めて、なんとか間に合わせました」「え!? 徹夜ですか!?  てか今、午前11時ですよ?」夜までの予定だった仕事を徹夜し
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第173話 彼女だけが知る彼の本音

 【夏希side】 「どうか杏華のすべてを受け止めてもらえませんでしょうか」いきなりそんなことを言い出した意味がわからず、私は聞き返した。「それはどういう意味でしょうか」「彼女は、ある理由があって、今まで一人でいくつもの苦労をして心が傷つく想いをしてきました──。もし彼女がその理由を自分から話すときがあれば、どうかあなたが友人として、その心を支えてやってほしいんです」「え……。杏華にそんな辛いことがあったってことですか……?」「理由は……、俺の口からは言えません。ですが、きっと彼女はあなたに頼るはずです。そのときは、俺が彼女と話せないようなことを、あなたは聞いてやってほしい」桐生さんの表情は、少し悲しそうで苦しそうな表情だった。何かの理由があると思いながらも、私は何も尋ねなかった。「──わかりました。何があったかわかりませんが、彼女がもし私を頼ってくれたとき、必ずすべてを受け止め私が支えます」「ありがとうございます」桐生さんは私に頭を下げる。そのときは、ただのビジネスパートナーだったから、そこまでするのかと思っていた。だけど、実際杏華から話を聞いたら、まさかの元夫婦で、結婚していたときは、今と想像出来ないほどの冷酷だったことを知った。そんな人が、あのとき何のためらいもなく、私にそんなお願いをするために、頭を下げていた。私は桐生さんと出会ったときから、杏華に嫉妬し、気にかけ、ただ不器用ながら杏華に想いを向けている人という印象だった。だからどうしても私は、今の桐生さんは私にはそんな人にしか見えないのだ。「ですが──。契約金は、いらないです」「え?」私はそのとき掲示された契約金の話を断った。「約束の金額をいただけるだけで十分です。私は、杏華がもし何かを打ち明けて来たときは、友人として、ただ支える。それだけです」桐生さんは私のその言葉が意外だったのかハッとした表情になる。
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