【一弥side】 どうして、またこんなこと繰り返してしまうんだ……。俺に勢いよく背中を向け、部屋に入ってしまった杏華に、俺は手を伸ばすも、虚しくその手は無意味な空間を彷徨う。俺は、そのままその手をギュッと握り締め、悔しさで勢いよく下に振りかざす。またやってしまった……。俺のただ一方的な嫉妬で、また杏華を傷つけた……。だけど、どうしても俺以外の奴に、聞いたことのないあいつの心許す言葉や、そいつを思い浮かべ嬉しそうな表情をしたとき、俺の心は激しく乱れた。聞き耳を立てるつもりじゃなかった。だけど、あいつが所々話す声が、どうやったって耳に入ってしまった。今の俺は、どんな現場でも、たくさんの人間の中から、あいつの声を聞き分けられるほどになっている──。それに気づいたのは、ごく最近のことだ。そんな俺が、今こんな状況で、聞かないようにするだなんて、無理な話だった。『これから一緒にいたい』だなんて、そんな言葉どんな状況なら口にするんだ?“初めて”だとそう言ったということは、俺にはそんなことを一度も感じたことなかったということだと、その言葉と同時にその現実に気づく。『私には、あなたが必要なの。これからも私に力に貸してほしい──』俺じゃない誰かに、その言葉を伝えてるのに、無性に腹がた立った。俺は杏華にとって、そんな存在にまだなれていなかったということか……。いや、確かにそれは仕方がないのかもしれない。今でこそ、杏華を全力で守りたいと思っていても、つい少し前までは、それが出来ていなかったのだから……。それでもどこの奴かわからない奴に、そんな簡単にそれを言ってしまっている杏華にショックを受けている自分がいた。俺はあいつの力になりたい。役に立ちたい。そう思って、自分の気持ちに気づいてからは、ずっとその気持ちで動いてきたし、杏華にも接してきた。せめて、その言葉を言ってもらえる男になりたかっ
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