All Chapters of 社長、離婚した奥様が世界的トップモデルになっています!: Chapter 151 - Chapter 160

173 Chapters

第151話 今、俺が望むこと

 【一弥side】 どうして、またこんなこと繰り返してしまうんだ……。俺に勢いよく背中を向け、部屋に入ってしまった杏華に、俺は手を伸ばすも、虚しくその手は無意味な空間を彷徨う。俺は、そのままその手をギュッと握り締め、悔しさで勢いよく下に振りかざす。またやってしまった……。俺のただ一方的な嫉妬で、また杏華を傷つけた……。だけど、どうしても俺以外の奴に、聞いたことのないあいつの心許す言葉や、そいつを思い浮かべ嬉しそうな表情をしたとき、俺の心は激しく乱れた。聞き耳を立てるつもりじゃなかった。だけど、あいつが所々話す声が、どうやったって耳に入ってしまった。今の俺は、どんな現場でも、たくさんの人間の中から、あいつの声を聞き分けられるほどになっている──。それに気づいたのは、ごく最近のことだ。そんな俺が、今こんな状況で、聞かないようにするだなんて、無理な話だった。『これから一緒にいたい』だなんて、そんな言葉どんな状況なら口にするんだ?“初めて”だとそう言ったということは、俺にはそんなことを一度も感じたことなかったということだと、その言葉と同時にその現実に気づく。『私には、あなたが必要なの。これからも私に力に貸してほしい──』俺じゃない誰かに、その言葉を伝えてるのに、無性に腹がた立った。俺は杏華にとって、そんな存在にまだなれていなかったということか……。いや、確かにそれは仕方がないのかもしれない。今でこそ、杏華を全力で守りたいと思っていても、つい少し前までは、それが出来ていなかったのだから……。それでもどこの奴かわからない奴に、そんな簡単にそれを言ってしまっている杏華にショックを受けている自分がいた。俺はあいつの力になりたい。役に立ちたい。そう思って、自分の気持ちに気づいてからは、ずっとその気持ちで動いてきたし、杏華にも接してきた。せめて、その言葉を言ってもらえる男になりたかっ
Read more

第152話 もっと俺だけを……

 【一弥side】すると、今度は、そいつを今から家に呼ぶだなんて、言葉が聞こえてくる。何考えてる。俺とお前のこの居場所に、どんな奴かもわからない他人を入れるというのか。俺自身、綾乃にも誰にも教えてない。教えたのは、家の人間と、詠司たち夫婦だけだ。それは杏華がその場にいたから教えただけの話だ。なのに、こいつは勝手にそれを教えようとしている。どうしてだ。どうして俺たちのこの場所に、他の奴なんか入れようと思うんだ──。それは俺の勝手な想いだとわかっている。それでも、杏華をここに引っ越させ、俺が隣に住んだのは、多分そういうことだ。その時は気づいていなかったその理由。今思えば、それはこいつを誰にも近づけたくないと、そう思っていた俺の想いが、きっと暴走しただけのことだった──。今になって気づき、そんな自分に少し呆れた。俺はそこまでして、杏華をここに……、俺のテリトリーに閉じ込めておきたかっただけだったのか……。俺にそんな感情が渦巻いていただなんて、俺は初めて気づいた。自分が自分で怖くなった。どんどん杏華に普通以上の感情が生まれだしているということを──。その狂気めいた想いが、確かなものになってしまうとき、俺は自分でどうなってしまうのか、そして杏華をどうしてしまうのか……。少し、怖くなった──。『私も。会いたい』囁くように嬉しそうに、その言葉を杏華が告げたとき。俺の胸はキリキリと痛んだ。俺がここにいるのに、お前は誰を想って、そんな言葉を口にしているんだ──。俺じゃない誰かに『会いたい』だなんて……。その時点で、杏華の心が俺から離れてしまったのかもしれないと、また怖くなる。俺といた頃も、一度もそんな言葉を告げたこともない。そんな必要もなく、そんな状況にもなっていないから当たり前かもしれないが、それでも俺たちは、
Read more

第153話 信じてくれるなら

しばらくすると、さっき会っていたときと同じように、明るいテンションで夏希が訪ねてきた。正直ついさっきまで言い合っていた一弥さんへの感情は、自分の中でまだずっとくすぶっているままだった。だけど、夏希が来てくれたことで、一気にさっきまでとは違う正反対の明るい雰囲気に包まれる。「はい! ケーキ。一緒に食べよ」部屋の中に迎え入れると、夏希が持ってきた大きなケーキの箱を、笑顔で私に渡してくれた。「ありがとう。 飲み物は、紅茶かコーヒーか何がいいかな」「これ。フルーツタルトなの。このタルトに合う飲み物なら紅茶かな?」「ダージリンティーとかはどう?  華やかな香りを楽しめる紅茶だから、フルーツタルトと相性いいと思う」「じゃあそれで!」私はティーポットにダージリンティーを用意し、持ってきてもらった大きなフルーツタルトを二人分お皿に取り分ける。「お待たせしました」リビングのソファーで座っている夏希の元へそれらを運び、早速二人でタルトを堪能し始める。「ん~!  このフルーツタルトすごくおいしい!」「これ結構人気あるお店のタルトらしくてさ~。せっかくなら今日いい仕事出来た杏華と、頑張ったご褒美として二人で食べたいと思ったんだ~」「……嬉しい」夏希の中で、私にそんな気持ちになってくれたことも、今二人でこんな素敵な時間を過ごせているのも、すごく嬉しかった。「──何か、あった?」すると急に夏希がそんなことを聞いてきた。「……え? どうして……?」「なんか浮かない表情してる」「私……、そんな顔……してる……?」「うん。うまく笑えてない」夏希がはっきり言い放った。夏希が来てくれて、普通に笑えてると思ってた。だけど、そう言われて、本当の心の奥底の部分は隠せていないのだと思った。「私。職業柄、顔を見ただけで、そういうのすぐわかっちゃうんだよね~」「顔を見ただけで……?」「そう。さっき、杏華、あんなにいい顔してたのにさ~。こんな短時間で、そんな顔になっちゃうなんて……、よっぽどのことがあったのかなぁって」夏希は優しくそう言って微笑む。一弥さんとは、全然わかり合えないもどかしさがずっと変わらないのに、夏希はさっき知り合って間もないのに、私の顔を見ただけで、そんなところまで気づいてくれる。そんな言葉にしなくても、気持ちをわかってくれる夏希に、ただ
Read more

第154話 伝えたい

「そんなの簡単! ひたすら、わかってもらえるまで伝え続ける!」夏希は笑顔で、悩みもせず、即答した。「わかってもらえるまで……?」「そう。だって、それが相手がいることならさ。伝え続けなきゃわからなくない?」「それは確かにそうだけど……」「だってもしかしたら、その人は何か勘違いしていたり、自分が気づいてないことで信じてもらえてないだけかもしれないじゃん」「だから伝え続けるってこと……?」「私なら、ちゃんと自分で納得したいんだよね。自分が思ってることと一致して信じてもらえないなら、それはそれで仕方ないけどさぁ。全然違う理由で信じてもらえなかったり、すれ違うことがあるとしたら、それこそ悲しすぎない?」私と一弥さんのことを言われているのかと思った。まさにそうだった。身に覚えのないことで誤解され責められ、いくら違うと言っても聞く耳も持たない。本当はあのときも、今だって、彼には本当のことを知っていてほしかった……。本当は誰より彼に信じてほしかった……。「私……、一番信じてほしい人が、ずっとそうだったの……」「え。それって誤解されたり勘違いされて信じてもらえなかったってこと?」「うん……」彼がどうして、さっきあんなにも苛立っていたのか実際はよく分からない。だけど、きっとそれはすべて、彼がずっと私を信じてくれないことで起きていることなのだと思う。「それは辛いね……。それで、杏華は諦めちゃったの?」「一度は、諦めたはずだったの……。だけど……、まだ諦めたくない自分がいるの……」あんなふうに一弥さんとは言い合いにはなったけど、ずっとそんな状態でいたい訳じゃない。夏希に伝えることで、その気持ちをより一層自覚する。「じゃあ今杏華がそんな顔している原因は、もしかして……それが原因……?」「え、あっ、うん……」「よし! なら電話しちゃおう!」「えっ!?」「だって気になってるんでしょ?  一番信じてほしい人なんでしょ!?」「それはそうだけど──」私はずっとこうやってグズグズしているのに、夏希はそんなふうにスパッと口にする。「ちなみに杏華は、その人が信じてくれなかったとき、『結局は信じてもらえないから』って自分でも諦めちゃってたところない──?」夏希に言われて、一弥さんのやり取りを思い出す。そう言われると、確かに私はすぐそう判断していた
Read more

第155話 甘い誘い

 私はその一弥さんの姿を見て、すぐに玄関のドアを開けた。「一弥さん──! どうして……」真剣な顔をして、ドアの前に立っていた一弥さんに、思わず呟く。その一弥さんは、さっきの一方的な感じではなく、また少し切なさそうな表情に感じる。「杏華──。さっきは、お前の話を俺は──」一弥さんはそう言いながら、持っていたスマホをゆっくり降ろし、俯きがちに呟き始める。かと思ったら、なぜか話している言葉も動きもピタッと止まる。「……さっきの奴……。本当に、来たのか……?」「え……」視線の先に目に入った夏希のスニーカーを見て彼が呟く。「あっ、うん。さっき……」私がそう答えた瞬間、また彼の様子が変化し始める。「……女一人の部屋に、平気で男を上がらせるなんて……」また彼はさっきのように、険しい表情へと切り替わっていく。「お前はホントに一体何考え──」「一弥さん!」またさっきと同じ雰囲気になるような気がした私は、彼の言葉を途中で遮り、彼の名前を強く呼ぶ。「お願い! ちゃんと聞いて!」私は彼に強い眼差しを向けながら伝える。また同じ繰り返しはもう嫌だ。──ちゃんと伝えなきゃ。「──え。あっ、あぁ……」私のその声に、一弥さんは戸惑っている様子を見せつつも、すぐに反応する。「どうしてまた決めつけようとするの!?  男って何の話!? そんな人誰もいない」「え……。だって、お前……」ハッキリ告げた私の言葉に、明らかに動揺している彼。彼が思い込む前に、ちゃんと私が伝えるんだ。「こんばんは!」すると、リビングの方から、ひょこっと顔を出して元気よく夏希が一弥さんに挨拶をする。「──え」「おじゃましてます!」夏希を見て想像もしていなかった光景なのか唖然としている一弥さんに、夏希は笑顔で気にせず声
Read more

第156話 過去が報われた瞬間

 なんともいえない光景だった。今日初めて出会った夏希と、離婚した元夫の一弥さん。そんな二人が、私の家のソファーに一緒に座っている。私はキッチンで彼のためのコーヒーを淹れながら、改めてこの状況とその光景を不思議に感じながら、見つめてしまう。「これ。すっごいおいしいですよ!」夏希は持ってきたタルトを、一弥さんに無邪気に勧めながら、夏希のペースで一弥さんにずっと話しかけている。そんな夏希に、一弥さんは愛想笑いをしながら応えはしてるものの、決して無愛想にしているわけではなかった。私はそれに少し驚いてしまう。正直明るいノリの夏希と、クールな一弥さんでは明らか雰囲気も違いすぎるし、何より一弥さんがそんな夏希を無視しないことが意外すぎて……。たとえそれが愛想笑いだとしても、ちゃんと夏希に応えている今の彼の姿を見て、私はホッとするのと同時に少し嬉しく感じてしまう。「お待たせしました」私はそんな一弥さんに、淹れたてのコーヒーを差し出した。「あぁ。わざわざ俺の分まで悪いな」そう言いながら、彼は私の淹れたコーヒーのカップを手に取り、ゆっくり顔を近づけ、コーヒーの香りをじっくり楽しんでいる。そのあと、一口飲んだあと、彼はふっと笑う。「やっぱり、ウマいな……」「え……?」「どうしてお前の淹れてくれたコーヒーは、こんなに香りも味わいで豊かなんだ──。他で飲んでもここまでウマいと感じられるものが滅多にない──」私の淹れたコーヒーを飲みながら、しんみりと呟く。「──ずっと、これが飲みたかったんだ」そして、そのコーヒーに視線をやりながら嬉しそうに微笑む。そんな彼に、私は驚いてしまい、思わず彼を見つめる。彼が、そんなふうに思っていたなんて……。彼の言葉を聞いて、私は胸がギュッと締め付けられる。一緒にいた頃、彼はただ黙って、私が出したコーヒーを飲んでいただけだった。それを”おいし
Read more

第157話 ビジネスパートナーの"使命"

「あー! ごめん夏希! そういうつもりじゃ!」「いや! すまない!」私と一弥さんは、すぐに焦りながら答える。「いやいや全然いいんですけどね~。フフッ」そう言いながら、なぜか夏希がニヤニヤしている。「ところで~お二人は、すっごく親密な感じしますけど~。一体どういうご関係なのか聞いちゃったりしても大丈夫ですか?」夏希はニヤニヤしながらも、一応私たちに気を遣いながら声をかける。「えっと……」そう呟きながら、一弥さんの方を見る。「俺が話す」すると、私の様子を察して一弥さんが、私を見ながらそう答えた。「あっ、じゃあ……」私は一弥さんに、とりあえず任せることにした。「はじめまして。桐生一弥と言います。杏華の──、ビジネスパートナーです」“ビジネスパートナー”今の一弥さんとの関係は、その言葉でしかないのだけれど。さらっと、そう答えた言葉に、どこか寂しさを感じる。そんなふうに寂しく思ってしまうのは、きっと……。夏希がついさっき言った。その言葉のように、今の私たちが夏希にはそう見えてたということに、心のどこかで少し嬉しくなってしまっていたから……。だけど、私たちは”ビジネスパートナー”という関係なだけで”夫婦”じゃない──。今更、そんな当たり前のことに、悲しくなってしまう。私がこんな感情でモヤモヤしている中で、彼はそんなこと気にも留めてないのだろうと思うと、更に気持ちが落ちそうになる。「ビジネス……パートナーですか?」夏希は不思議そうに一弥さんに聞き返す。だけど、そのあと一弥さんが夏希にまさかの言葉で返したのだ──。「はい。彼女がトップモデルとして、彼女自身に誇りと自信を持ち、彼女が持つ魅力を誰より輝かせる人生を歩んで行けるように──。俺のすべての力でサポートしていくのが、ビジネスパートナーとしての自分の”使命”だと思っています──」一弥さんは、ブレることのない視線で、そんなまっすぐ力強い言葉と想いを、夏希に伝えた──。そんな想いを持っていたこと、そして夏希にそんな言葉を伝えてくれたことに、私は嬉しくて感動しすぎて言葉が出ない……。実際私がモデルを始めるとき、彼はそんなことは思っていなかったはず。それがいつの間に、そんなふうに思ってくれていたの……?ただ勢いで、彼の何かのプライドのようなものを逆なでして、仕方なく
Read more

第158話 人生を変える出会い

「素敵……」すると、夏希が静かに呟く。「なんて素敵な関係なの!」そして、なんだか興奮しながら夏希が叫ぶ。「えっ……」あまりの夏希の反応に、私はそのまま振り向く。すると、なぜか夏希まで目をうるうるさせて感動している様子が見える。「えっ、なんで夏希、そんな反応してるの──!?」その夏希の様子に、私は驚いて溢れている涙が収まり始める。「だって、まさか杏華に、こんなに心強くて頼もしい最強のパートナーの味方がいてくれるなんて!」「夏希……」夏希は私と一弥さんとの関係を、心から喜んでくれている。「どうして、あなたがそんな……」一弥さんも思わず夏希に声をかける。「いや、えっと、今日、私、杏華と運命的な出会いをして、彼女が自信のない自分から強くなった瞬間に立ち会わせてもらったんです」「運命的な出会い──?」一弥さんが夏希のその言葉に、眉をひそめ不思議そうに聞き返す。「今日の撮影で、私のヘアメイクさんだけ来れなくなっちゃって。たまたま現場にいた夏希にそのヘアメイクさんとして助けてもらって、私をピンチから救ってくれたの」私はすぐに横からそのときの状況を一弥さんに説明する。「私、そのとき、偶然彼女のヘアメイクとして協力させてもらったんですけど、正直私も救われたんです」「え……」夏希の言葉に私は思わず反応する。「杏華が、あなたを、救ったんですか──?」「はい。私、ヘアメイクとして、ここ最近ちょっと悩んでたんです」「悩んでた?」「はい。私、ずっと下積み時代が長くて、先輩とかにもボロクソ言われて、自信を失くしてたことがあったんです。でも、あるコンテストで、たまたま優勝しちゃって、そこから私の人生は少しずつ変わっていきました。周りの私の扱いや態度は当然変わっていって、今までとは仕事の環境も人生も正反対になりました。──だけど、それはどんどん自分がわからなくなるというか……、何をしたいのかわからなくなっちゃったんです……。自分がヘアメイクとしてやりたい仕事、やりたい相手との仕事が、どんどん出来なくなってしまいました──」一弥さんの問いかけに、打ち明けてくれた夏希の過去と気持ちを、私は一弥さんと共に初めて聞いて驚く。あの明るくて元気な夏希が、視線を落とし、どんどん声も沈んできて、夏希のそのときの感情が伝わってくるようだった。「今まで私に見向き
Read more

第159話  強い決意と本気の誓い

 「夏希……。私全然そんなこと知らなくて……。でも、素直に嬉しい……。夏希のそんな存在になれているなんて……」私という存在が、私がモデルとして届けているものが、誰かにとってこんなに大きな影響を与えている。夏希の人生を変えるほどのものを、私は届けることが出来ていたんだ……。「そうだよ杏華! だからあなたは私にとっても、私の人生を救ってくれた、とても大きな存在なの」「夏希……」私の目をしっかり見つめ、私と向き合いながら笑顔で力強く伝えてくれる夏希に、私はまた感動してしまう。お互いいろんな障害に耐えながら、乗り越えてきた今がある。だからこそ、お互い共鳴し合えて分かり合えるのかもしれない。「だから、そんな杏華が自信を失くして強くなりたいって言ってたことに、少し悲しくもあり、その力を貸すことが出来たことも、すごく嬉しかったの」「うん……。ホントに夏希がいてくれたおかげで、私はあんな強い自分になれた!」「嬉しい! 私が今度は杏華のそんな存在になれているなんて!」お互いそんな気持ちで繋がれていることが、”運命”のように感じる。彼女とのこの”運命”と”出会い”を、私はこの先も絶対失いたくない。この先に繋げたい。夏希と言葉を交わしていくたび、そんな気持ちがどんどん強くなっていく。もっと夏希に私を輝かせてもらいたい!  もっと一緒にお互いを高めていきたい!その溢れてくる気持ちは、いつの間にか強い決意へと変わっていく──。「あの……一弥さん!  お願いが、あるんだけど……!」私は一弥さんの方へ振り向き、声をかけた。「お願い──?」「夏希を、私の専属ヘアメイクにしてもらえることって出来ないかな──?」私は夏希からのその提案を、一弥さんに意を決して伝えた。「え! 杏華!」夏希は私が直接それをお願いしたことに驚く。もしかしたら夏希は、そこまで本気で考えていなかったかもしれない。
Read more

第160話 信頼出来る二人へ

 すると、ずっと厳しい表情をしていた一弥さんが、夏希の言葉を聞いた瞬間、ふとその表情が緩み柔らかい雰囲気に変わる。「──わかりました。あなたに杏華をお任せします」そう言って一弥さんは満足そうな表情を見せる。「え!  ホントに!?  一弥さん!」「わー!   ありがとうございます! やったね杏華!」「うん!  嬉しい!」私と夏希は喜びを分かち合う。「きっとあなたなら、杏華の隠れていた魅力も、元々持っている魅力も、最大限に輝かせてくれると期待しています。どうやら、あなたと杏華はよっぽど強い相性と絆で結ばれているみたいですからね」「はい! 任せてください!  必ず期待にお答えします!」「そこまで出会ったすぐに信頼を寄せ合える関係なんて、なかなかないと思います。杏華がここまでその意志を貫こうとするほどとは……。ある意味、あなたが羨ましいです──」そう呟いたかと思ったら、一弥さんはどこかしら少し切なげな目で、私を見つめる。その視線とその言葉に、思わず私も何も言えないまま、彼を見つめ返す。きっとこの瞬間、お互い感じてることや、思ってることは同じのような気がした。私と一弥さんとは、何年かかっても成し遂げられなかったことだから──。でも、今の一弥さんとなら、私たちは、ほんの少しずつでも信頼出来る関係になっていけるだろうか。たとえ、それは夫婦や家族ではない、ビジネスパートナーという関係だとしても──。そう思うと、やっぱり寂しくてチクリと胸が痛む。だけど、今の関係になっていなければ、今の彼を知ることも出来なかった。今は、それだけでも嬉しく思えるから──。「ありがとう。一弥さん」私は彼に穏やかに微笑みながら伝えた。「あぁ──。これからお前は、お前が信じるものを貫けばいい。俺も、お前を信じるから──」私の目をまっすぐ見つめ、伝えてくれた彼の力強いその言葉
Read more
PREV
1
...
131415161718
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status