All Chapters of 社長、離婚した奥様が世界的トップモデルになっています!: Chapter 161 - Chapter 170

173 Chapters

第161話 譲れない条件

「これはあなたにしか頼めないことです」一弥さんは、少し冷静な声で呟いた。「私にしか……?」夏希に向ける一弥さんの眼差しが少し鋭くなる。その雰囲気と、その条件という言葉に、私までなんだか少し緊張してしまい、不安になってくる。一弥さんは、一体夏希にどんな条件を……。「こちらの言う『専属』というのは、ただ現場で”ヘアメイク”をするという簡単なことだけではありません」「それは、どういう……」「どんな現場や仕事でも、常にあなたは杏華の相方としてそばにいて、彼女を守ってもらいたい」「杏華を守る…?」「そうです。杏華はこの業界で敵も多い。だが自分だけで立ち向かえるほどの力も強さもまだありません。なので、あなたには、どんなときも杏華を守りながら力を貸し続けてやってほしい。それは、あなたのすべての時間を、杏華のために『奪う』ということです──。……もし、その覚悟がなく、そこまで杏華の人生まで背負えないということでしたら。この話はすべて、なかったことにさせていただきます」それは思ってもみない条件で、私はただ呆然としてしまう。「あなたにそれだけの価値があるように、うちの杏華の価値も、俺と共に全力で守ってもらいたい。これがこちらの条件です」私を守ることが条件……?私にあなたは、そんなにすごい価値を感じてくれているの……?まさかそんなことを考えてくれてただなんて……。彼が夏希に伝えたすべての言葉は、彼がそれだけ私を大切してくれているように思えて、私は胸がいっぱいになる。「えっ? それが条件……? なんだー焦ったー! どんな条件かと思ったら、そんな嬉しいこと!  私でよければぜひ彼女の力にならせてください! っていうか、私も杏華といられたら、きっともっと自分自身もパワーアップ出来るので!」夏希はそれを聞いても戸惑うことも怯むこともなく、一弥さんに微笑みながら堂々とそう宣言してくれた。すると、その夏希を見て、フッと一弥さんの顔が緩み小さな笑みが零れる。「では、これからよろしくお願いします」一弥さんがそう言って、夏希に手を差し出す。「こちらこそ! よろしくお願いします!」夏希はその手を取り、二人は固い握手を交わす。まさかこんな展開になるなんて思ってなかった──。私の意見をちゃんと聞いてくれて、そしてこんなにスムーズにそれを受け入れてくれた。私
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第162話 抑えの効かない感情

それから夏希は帰っていき、一弥さんとの二人きりの時間が訪れる。私は夏希を見送ったあと、彼が座っているソファーへと戻ってくる。L字型のソファーに少し距離を開け、彼の斜め向かいに腰を降ろす。一弥さんは、隣で私が淹れたコーヒーを味わっている。二人だけの静かな空間。こんなふうに同じ部屋で、二人で過ごすのはどれくらいぶりだろう。しかもあの頃は、彼が醸し出す冷たい雰囲気に、私は話しかけられなくて、静かになってしまっていた空間。だけど、今はその頃のような冷たい感じではなく、ただ言葉にしなくても私たちの纏う空気が、なんだか柔らかいというか温かく感じるというか……。初めて感じるこの感覚に、なんだかちょっと安心する──。今なら、一弥さんとちゃんと落ち着いて話すことが出来るかも……。まだ、帰ってほしくないな……。一弥さんと、ちゃんとゆっくり話がしたい──。私は紅茶のカップを手にとり、一口飲んで心を落ち着かせる。これを飲んだら、彼に話しかけよう。そう思いながら、彼の方にこっそり目線をやる。「──杏華」すると、そのタイミングで、彼がこちらを見ないまま伏し目がちに私の名前を呼ぶ。「あっ、はい──!」私は話しかけようとしたタイミングが、あまりにも同じだったせいで、思わず勢いよく呼びかけられた声に返答する。私は、そのままティーカップをお皿に置き、彼を見つめる。だけど、彼はまだ伏し目がちなままで、私の方を見ようとしない。また部屋の中がしんと静まり返り、私はただまた黙ったまま彼の次の言葉を待った。すると、しばらくすると、彼がようやく口を開いた。「あの……。さっきは、すま……なかった……」すると一弥さんが口をごもらせながら、小さく呟いた。「え……?」謝っ……た……?まさか、あの一弥さんが……?私は初めて聞く彼のその言葉に、現実味を感じられなくて、そのまま固まってしまう。「ここに来るのが夏希さんだって知らずに……、あんな一方的に、責めたりして……」もしかして、さっきの自分の言動を謝ってるの……?「だけど……。決して、お前を信じてないわけじゃない──」一弥さんはそう言って、ようやく顔を上げ、私と視線を合わせ、まっすぐ見つめる。その視線は、今までのように威圧的でも力強くもなかった。その逆で、どこか少し悲しそうな、どちらかといえば自信が無さげ
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第163話 伝え合えた本音

 「杏華──」見つめ合ったまま動けないまま、何も言葉に出来ないままの私に、彼がそっと声をかける。「あ……。えっと……。うん……。わかっ……た」私は、ただそんな反応しか出来なかった。だけど、私がそう反応したことで、彼は切なそうな表情から、安心したかのような柔らかい表情に変わる。そして、静かに穏やかに、私にそっと優しく微笑む。そんな一弥さんを見たら、私の心もスッと穏やかになってくる。彼が……、あの一弥さんが、私にこんな素直な感情を吐き出してくれた……。山よりも高いプライドを持っている一弥さんが、こんな姿を見せている……。ここまでしてくれるなんて、彼はどれほど勇気がいっただろう──。どれだけ、大きな決心がいっただろう──。別人かと思えるほどで、今目の前にいるこの人は、本当に私の知ってる一弥さんなのか、信じられないくらいだ……。でも、ここまで私に本音を伝えてくれた彼に、私もちゃんと伝えたい。私の今の気持ちを──。「あの……一弥さん……」私も勇気を出して、彼に声をかけた。「ん──?」彼は優しく答えた。「私も……。ごめんなさい……。あなたに、つい拗ねたような態度取っちゃって……」私は伏し目がちに、自分のそのときの行動を謝った。「拗ねた……?」「撮影のとき……。綾乃の撮影だけ見に来てたでしょ……?  本当は、私の撮影も……。私だけを、見ていてほしかったの──」恥ずかしくて、どんどん俯きがちになっていく。だけど、本当は伝えたかった言葉。他の誰でもない、私だけを見ていてほしかった──。だけど、彼からまたしばらく何も言葉が返ってこなくて、私は顔を上げられず、言葉を求められないまま、またただ彼の反応を待ち続ける。ただ待つだけなのに私の心臓は緊張して、うるさく響く。この静けさの中で、その音が彼に聞こえてしまわないかと心配になるくらいに
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第164話 信じ合えた夜

 「私ね! 本当にあのとき夏希のおかげで、なりたい自分になれたの。”出来ない”と思っていた弱い心を引っ張り上げてくれて、まだ気づいていなかったこの仕事の楽しさや自分のこと気づかせてもらえた」私はつい嬉しくなって興奮気味に話してしまう。「あぁ──。あの撮影を見て、それもちゃんと気づいていた。夏希さんは、きっと杏華の魅力を誰より輝かせてくれると、そう確信出来た」一弥さんは、そんな私に驚くことも戸惑うこともなく、さっきから見つめる優しい眼差しのまま言葉を返してくれる。「本当に──? あなたもそのときから、そう思ってくれていたの?」「あぁ。あれは言葉に出来ない感覚のようなものかな。相性というか空気感というか。あの撮影を見ていただけで、杏華と夏希さんのその雰囲気は十分感じていたよ」「そうだったんだ……」「お互いがお互いを心から信頼し合っていて尊敬し合っている。それぞれが求めていること・伝えたいことや表現したいこと、すべてがきっと二人は共鳴し合っていたからだったんだな──」「うん、そうなの!  嬉しい! 一弥さんわかってくれて」私が喜んだ姿を見せると、一弥さんは優しく微笑みながら見つめる。「あと──。その撮影の日のこと、お前の誤解をちゃんと解いておきたい」一弥さんは真剣な表情に変わり、私を見つめ直す。「誤解?」「あのとき、俺は編集長に話があって会いに行ってただけだ。綾乃の撮影は一切見ていない」「──え?  そう……なの……?」「あぁ──」一弥さんが私をまっすぐ見つめながら返事をする。それはごまかしてる感じでも、動揺してる感じでもなかった。「じゃあ、たまたま私だけ見てもらえてよかった」そっか。じゃあ編集長さんに用事があったから、私はタイミング良く見てもらえたんだ。あの順番でよかった。「そうじゃ
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第165話 伝えておきたい大切なこと

 「ねぇねぇ。桐生さんとはあのあとどうなったの~?」次の現場の楽屋で、夏希はヘアセットをしながら興味津々に聞いてきた。「あっ、うん。おかげさまで、ちゃんと誤解も解けました」「よかった~!」鏡越しの夏希は自分のことのように喜んでくれている。「彼ね……。私を、ちゃんと信じてくれてた──」あのときの彼を想い浮かべながら言葉にすると、嬉しさと温かさでまたいっぱいになる。「ね! 言ったでしょー!  絶対大丈夫だって!」「うん──」夏希の力強い言葉に嬉しくて自然に笑みが零れる。「私が自信なくて、信じられていないだけだった」「そこまで自信なかったのは、やっぱり自分を信じてもらえてなかったから……?」「うん。それもあるけど……。それだけではない理由が彼とはいくつもあって──」私と一弥さんの関係は、そんな言葉だけで説明出来るほど決して簡単ではない。たとえば普通の恋人同士なら、誤解やすれ違いで信じてもらえないからって自信を失くしてしまうのは、よくある話なのかもしれない。だけど、私たちは……、政略結婚で私は綾乃の身代わりで、そこに最初から愛なんてものは元々存在していなかった──。最初から信じ合えるはずもないそのいびつな関係は、そもそも普通の関係を築けること自体不可能だったのだ──。「そもそも桐生さんとは実際どういう関係なのかも気になってたんだよね~。あの感じだと元カレとか、そういう感じ?」「元カレ……。フフッ。そんな素敵な関係ならよかったのに」「え? それ以外の関係って何?  なのに、あんな親しげな雰囲気、謎でしかないんだけど」夏希は、これからずっと私のそばに一緒にいてくれる人だから、ちゃんと話しておこう。彼との関係も、そしてこのお腹の子供のことも……。「そのことで、夏希に話しておきたい大切なことがあるの──」私は後ろに身体を向けて、夏希の目をしっかり見つめながら伝える。
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第166話 苦しみを救う心強い腕

 「え……。どうしたの夏希……。そんな怖い顔して……」私はいきなり変わった夏希の雰囲気に戸惑いながら答える。「ねぇ杏華。どうしてあなたたちは結婚していたのに、杏華からそんな言葉が出てくるの?  あなたたちは一体どういう関係だったの?」夏希は私の両腕をギュッと握り締めて、少し悲しそうな顔で必死に尋ねてきた。私はその夏希の様子に少し驚いてしまう。夏希がこれだけでそんな反応するなんて、やっぱり私たちの関係は少しおかしいということだよね……。私は、そのあと夏希に彼とのすべてを話した。義妹の綾乃の身代わりで政略結婚をしたこと。ずっと昔から片想いしていたこと。綾乃の嫌がらせ。離婚するときの経緯や離婚してから今までのこと。そして彼にずっと彼に愛されるということはなかったこと──。夏希は、ずっと泣きそうな表情をしながら、ずっと聞いてくれていた。そして、私は今まで口にしなかった悲しくて、だけど嬉しかった気持ちを夏希に告げた──。「彼は……、私を愛したことは一度もなかったの……。それどころか私には嫌悪感しか持っていなかった……。だけど……、あの夜、どうして彼がそんなことをしたのかは今でもわからないけど……。私はたとえ一人で育てていくことになっても、この子を私に授けてくれた彼には感謝してる……」私はまたお腹をゆっくり撫でながら、その幸せを噛み締める。「杏華……。グスッ……」「え?  夏希、なんで泣いてるの!?」隣の夏希を見ると、どうしてか涙を流している。「だって~! そんな切ない話ないじゃんか~!」夏希は号泣しそうな勢いで私に答える。「ありがとう。夏希。私のために夏希が泣いてくれるだなんて、すごく嬉しい」私は夏希を優しく見つめながら微笑みかける。「決めた!  私その子の第二のママになる!」すると、涙を拭いながら、力強く宣言する夏希に私は驚いて目を丸くする。「え! 夏
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第167話 コントロール出来ない愛

 それから夏希は本当に言葉通りに、いとも簡単にメイクを手早く直していく。「どう?  さっきよりも更に綺麗になったと思わない?」メイクを仕上げた私を鏡で見直すと、本当にさっき以上に綺麗になったように思える。「こんなアレンジ私にしたら朝飯前の余裕の余裕!  杏華は安心して私にすべてを任せてくれたら大丈夫だからね!」そしてまた親指を立て、カッコよく私に伝えてくれる。「フフッ。すごく頼もしい。私、ホントに夏希に出会えて幸せ」「私もだよ!  もうこんなに助けてあげたくて何でもしてあげたくなっちゃう人、他にいないから!」「ありがとう夏希」「どういたしまして」鏡越しにまた夏希と微笑み合う。「でも。私思うんだけどさぁ。絶対桐生さん、杏華のこと好きで仕方ないと思うよ」「えっ!?  まさか──」「多分、今も昔もその気持ちに自分で気づいていなかっただけじゃないかなぁ。桐生さんって、ただ恋愛に不器用なだけのような気がする」「そうなの……?  私も恋愛初心者だから、そういうの全然わからなくて……」「あ~。そういうことか~。恋愛初心者の不器用な二人だから、そんな絡みまくってややこしい関係になっちゃってるってことか」夏希は妙に納得して”うんうん”と一人頷く。「私はそうだけど、彼はそうじゃないんじゃないかな……。今まで綾乃や他の女性たちとも付き合っていたはずだし……」「それはただそうだっただけでしょ?」「どういうこと?」「ただ付き合ってただけってこと。それが決して相手を好きだったとは限らないじゃない」「え……。好きだから付き合うんじゃないの?」「フフッ。そうじゃないんだな~。どう見てもあの人恋愛下手だわ。普通の愛情表現の仕方も知らないし、まず自分のそういいう感情にまったく気づいてない!」「気づいてないって……?」「多分あの人、本気で誰かを好きになったことないと思う」
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第168話 本当の優しさに気づくとき

 「まったく問題ないよ」私の不安なんて気にも留めないような素振りで、夏希はそう口にした。「問題ないって……」「だって。すでにもうあの人、杏華に自分をコントロール出来ないくらい激しい恋愛してんじゃん」そう言って二ッと笑う。「え──!?   まさかそんなのあるはずないよ!」「ハハッ。やっぱり杏華も全然気づいてないよね~」そう言って夏希が笑っているのを見ながら、私はキョトンとしてしまう。「私が見ているだけでもあの人の行動普通じゃないよ?  っていうかヤバいからね。杏華に嫉妬と独占欲が丸出しで。あんなの誰が見ても杏華への愛情ダダ漏れだからね?」夏希は平然とそんな言葉を呟く。私はまさかと思いながらも、もし本当にそうだとしたらと思うと、少し恥ずかしくなってしまう。「思い返してみなよ?  全部それ当てはまるでしょ?  あの人自分でそれ気づいてないだけだよ」「確かにそう言われてみれば、思い当たらないこともないけど……。でも、やっぱり夫婦だったときのことを考えると、どうしても信じられなくて……」「あぁ~確かにそれはあるよね。それはあの人が反省すべきマジ大きすぎる罪だからね」「罪って……」「多分ね。子供が出来たそのときの夜の話も聞いてて思ったんだ。無意識に杏華に嫉妬して独占欲が大きくなって、止められない感情が爆発してそういうことしちゃったんだろうな~って」「え……」「そのときさ、無理やりだった?」「え!?  あっ、どうだっただろう!? 最初は強引だったけど、段々なんとなく優しさを感じていったというか……」決して怖さも辛さも感じなかった。私は確かにあのとき、どんなカタチでも彼に求められたことが、そのとき感じられた偽りの幻のような優しさでも、幸せを感じられたから──。「うん。そういうことだと思うよ」夏希はすべて見透かしたような表情で、優しく嬉しそうに微笑む。
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第169話 「好き」の贈り物

 「杏華さん。失礼します」そのときコンコンと楽屋のドアをノックする音が聞こえる。「はい。どうぞ」その声に返答すると、撮影現場のスタッフさんが顔を出す。「これ。差し入れです」「え?  差し入れ?」「はい。杏華さんところの桐生社長からです」「え?  うちの桐生から?」今日はまた別の仕事で現場に来れないとは言ってたけど、わざわざ差し入れなんかしてくれたんだ。「どうぞ」そう言ってスタッフさんが楽屋に届けてくれたのは、すごく豪華なカットフルーツの盛り合わせだった。「うわ~すごい……」そこにはイチゴやオレンジにキウイだけじゃなく、高級そうなメロンにマンゴーに巨峰にシャインマスカット──。色鮮やかに所々のフルーツでバラの花のように華やかに飾られている。だけどあまりの大きさと量。「あの、これ量が多すぎるんですけど、私の楽屋じゃなくスタジオへの差し入れじゃないですか」「あっ、スタジオにももちろん差し入れしていただいてます。それは間違いなく杏華さんに届けるようにと言われてるので」「え──私に?」「はい。あっ、これ一緒に預かったメッセージです」「え?  メッセージまで!?」そう言われて渡された小さな白い封筒を受け取る。「いや~ここまで高級フルーツの差し入れ初めて見ましたよ。こんな高級店のフルーツいただけて皆すげー喜んでます!  ありがとうございます!」そのスタッフさんは、勢いよく頭を下げ、嬉しそうにお礼を伝え戻っていった。「やっばー。この豪華さ、すごすぎるんだけど。高級店のここまですごいフルーツ盛り合わせ、いくらするんだろ」夏希はそのフルーツをマシマジと興味津々に見ている。「どうしたんだろ。これ。なんで私の楽屋にこんな豪華なフルーツを?」私は謎の行動に頭が疑問だらけになる。「その受け取った封筒
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第170話 初めての想いのやり取り

「杏華! それ! この前杏華がフルーツタルト食べてたときに言ってたやつ!」「フルーツタルト?」私はそのとき言ってたことを思い出そうとする。私、何て言ってたっけ。「フルーツがいっぱい乗ったケーキが好きだって言ってたじゃん!」「え? 嘘ッ! もしかして、それでこのフルーツ!?」確かにあのときそんなことは言ってたけど。まさかそれがこのフルーツに繋がったっていうの!?「だって今まで一言もそういうこと言ってないなら、『杏華が好きなフルーツ』ってなるのおかしいじゃん。もうそれしか考えられない!」「やっぱり、そう……だよね? え、あんな一瞬のたいしたことないやり取りに?」あまりにも普通の会話で、そこまで大きな意味を持たない言葉で、言った自分でさえ、ちゃんと覚えてないくらいなのに……。それを、彼は覚えてくれていて、今日これを用意してくれたってこと──?私は彼のその優しさと気配りに、ドキドキが止まらなくなる。ここにいないのに、一弥さんの存在が、このフルーツから、ひしひしと伝わってくる。これを一つ一つ彼が用意したわけじゃないけど、でもこの華やかで彩られている美しいフルーツを見ると、ぽかぽかと私の心まで明るく温かくなって満たされていく。「いや、この急な溺愛攻撃やばすぎん?」「え!? 溺愛!? 」私はあまりにも聞きなれないその言葉に、動揺しまくって顔まで熱くなる。「いや、こんなのあからさまでしょ。まぁ多分向こうは変わらず無意識に、その溺愛攻撃されてるだけでしょうけどね~フフッ」夏希がニヤっとからかうように笑う。「もう夏希からかわないで!」私は熱くなった顔を両手で必死に抑える。「フフッ。照れちゃって可愛いな~杏華ちゃん♪」そんな仕草をしながら、ホントは心では嬉しくて、つい零れてしまいそうになる笑みを、その両手でそのまま隠してごまかす。夏希は私のそんな想いを知っているはずなのに、あまりの恋愛初心者の私は、ついそんな小さなことも、恥ずかしくなってしまう。だけど、本当にあのときの言葉を覚えててくれて、こんな素敵なものを差し入れしてくれたんだと思うと、またときめきが止まらなかった。「ね、ね。まだ撮影まで時間あるし、影響ない程度に今食べちゃおうよ。リップは取れても直してあげるから!」「うん。食べちゃおう!」私たちは差し入れしてくれた豪華な
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