「これはあなたにしか頼めないことです」一弥さんは、少し冷静な声で呟いた。「私にしか……?」夏希に向ける一弥さんの眼差しが少し鋭くなる。その雰囲気と、その条件という言葉に、私までなんだか少し緊張してしまい、不安になってくる。一弥さんは、一体夏希にどんな条件を……。「こちらの言う『専属』というのは、ただ現場で”ヘアメイク”をするという簡単なことだけではありません」「それは、どういう……」「どんな現場や仕事でも、常にあなたは杏華の相方としてそばにいて、彼女を守ってもらいたい」「杏華を守る…?」「そうです。杏華はこの業界で敵も多い。だが自分だけで立ち向かえるほどの力も強さもまだありません。なので、あなたには、どんなときも杏華を守りながら力を貸し続けてやってほしい。それは、あなたのすべての時間を、杏華のために『奪う』ということです──。……もし、その覚悟がなく、そこまで杏華の人生まで背負えないということでしたら。この話はすべて、なかったことにさせていただきます」それは思ってもみない条件で、私はただ呆然としてしまう。「あなたにそれだけの価値があるように、うちの杏華の価値も、俺と共に全力で守ってもらいたい。これがこちらの条件です」私を守ることが条件……?私にあなたは、そんなにすごい価値を感じてくれているの……?まさかそんなことを考えてくれてただなんて……。彼が夏希に伝えたすべての言葉は、彼がそれだけ私を大切してくれているように思えて、私は胸がいっぱいになる。「えっ? それが条件……? なんだー焦ったー! どんな条件かと思ったら、そんな嬉しいこと! 私でよければぜひ彼女の力にならせてください! っていうか、私も杏華といられたら、きっともっと自分自身もパワーアップ出来るので!」夏希はそれを聞いても戸惑うことも怯むこともなく、一弥さんに微笑みながら堂々とそう宣言してくれた。すると、その夏希を見て、フッと一弥さんの顔が緩み小さな笑みが零れる。「では、これからよろしくお願いします」一弥さんがそう言って、夏希に手を差し出す。「こちらこそ! よろしくお願いします!」夏希はその手を取り、二人は固い握手を交わす。まさかこんな展開になるなんて思ってなかった──。私の意見をちゃんと聞いてくれて、そしてこんなにスムーズにそれを受け入れてくれた。私
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