All Chapters of 社長、離婚した奥様が世界的トップモデルになっています! : Chapter 11 - Chapter 20

35 Chapters

第11話 醜さと孤独

すぐそばまで綾乃が近づいていたことにも気付かなくて、綾乃を見た瞬間ハッとする。 あの家にいた頃に向けられた冷静な表情と視線。 この綾乃が次に何をするかを私は知っている……。 「私がお仕事している最中に二人で何してるのー?」 すると、さっきの態度からまた打って変わって、可愛らしくわざとらしく尋ねてくる綾乃。 「あっ、いや、なんでもない……」 その綾乃を見た一弥さんは、そう言いなが私の腕を掴んでいた手をスッと放す。 あぁ、やっぱりそういうことか……。 綾乃の前では、私と会話している姿も見られたくないんだ。 「なんでもないわ」 「えっ? 何、その言い方」 綾乃が急に不機嫌になる。 「“なんでもないです”でしょ? あなたは今は私のアシスタント。私はあなたの雇い主。そうよね?」 そう言ってニコッと笑う綾乃。 「あっ……。はい。そうです……」 「だよねー! フフッ。ビックリしちゃた~。いくら実際はお姉ちゃんでも、今は私はお姉ちゃんに高いお金払ってるんだから、そこはちゃんとしておかなきゃな~って。ほら、お姉ちゃんも他のモデル仲間さんに嫌な感じに思われちゃったら私が悲しいから~」 「はい。その通りです……」 私はそれ以上何も言えず、ただ俯いてそう答えるだけしか出来ない。 「あっ、ねぇ。一弥お兄ちゃん!」 綾乃が私の背後にいる一弥さんに声をかけようとした瞬間。 「キャー!」 「えっ……」 綾乃が私と正面からぶつかり、持っていたグラスに入ったドリンクが、私の白い服全面に飛び散る。 「え~やだ! ごめんなさい! 急にお姉ちゃんがぶつかってくるから、避けられなくて。お姉ちゃんの服こんなに真っ赤に染まっちゃってどうしよう~」 そう言われて自分の服を見ると、綾乃の持っていたブラッドオレンジジュースが、一面に真っ赤に染まっていた。 あまりのいきなりの出来事で私も何が起こったのかがわからなくて呆然と佇む。 だけど、確実に言えることは、私からぶつかったのではなく、綾乃から私にぶつかってきたということだ。 そんな醜い私の姿を見てそこにいる人々はざわつき始めクスクスと笑う声がまた聞こえる。 「大丈夫か!?」 「一弥お兄ちゃ~ん。私本当にわざとじゃなくて」 「綾乃は大丈夫か? 今から撮影だろ」 「うん。私は大丈夫」 「そうか。ここはもういいか
last updateLast Updated : 2026-04-08
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第12話 優しさの意味

そんな風に孤独を感じたところで、私の今の現状が変わるわけではなかった。 酷く広がったこの赤く飛び散った染みを見つめながら、なんとか染み抜きくらいは出来ないかと考えていたら……。 フワッと背中から何か服のようなモノをかけられたことに気付く。 「えっ……?」 その背後を振り向くと、一弥さんが立っていて、私に背後からジャケットをかけてくれていた。 「これでも着ていろ。そんな格好こんな場所でみっともない。それを着ていればまだその汚れも目立たないはずだ」 バカにされているのか、優しくされているのか、この人の言葉と表情ではどちらかわからない接し方。 なのに今の私は、少し弱っているのか、この人のこんな行動でさえも悔しいけれど嬉しいと思ってしまう。 「あ……りがとう……」 この人にこんな言葉を言ったのはどれくらいぶりだろう。 一緒にいる時は、そんなさりげない優しささえ見せてもらえなかった。 なのに今更、こんな時に限って……。 この人にとって、こんなことは大して意味のないことなのだろうか。 私以外の人には、こんなこと普通にしていたのだろうか。 離婚して他人になった途端、こんなことをするこの人はズルい……。 「勘違いするな。ただそのままのお前が醜くて目障りなだけだ」 ──なのに、やっぱり最後はいつもの彼に戻る。 あぁ、どうしてまた振り回されてしまうんだろう。 結婚してた時から、こんな小さな期待はいつも裏切られてきてたじゃない。 ダメだ。この人に振り回されるな。 私は彼に少し気持ちを乱されながらも貸してくれたジャケットに有難さは感じていた。 正直この染みだらけの自分の姿を自分で意識すると仕事に集中出来ないのも確かで。 だけど、このジャケットがあることで、仕事には集中出来たから。 そのあと、私の元へ来た綾乃がそのジャケットを着ている私をマジマジと見てくる。 「それ……。一弥お兄ちゃんのジャケットよね?」 「え……。えぇ……」 「たかだかそれくらいの気遣いで調子に乗らないでね。一弥お兄ちゃんは私という存在に、私がモデルであるという価値に、惜しみない投資をしてくれてるのよ。あんたごときが今更どうにか出来るとか思わないで」 綾乃は周りに誰もいないのを見計らって、直接私にストレートな言葉を投げつける。 あぁ、そっか。だから、一弥さんはこの場所
last updateLast Updated : 2026-04-09
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第13話 窮地

「えっ!?」 それってまさか代役に私をってこと!? 私はいきなりの展開に思わず驚いてしまう。 「彼女、私のお姉ちゃんなんです。今私のアシスタントについてくれてるんですけど、さっきお姉ちゃんにその話したら、”RURIが困ってるなら私が代わりにやってあげるよ”って言ってくれて。お姉ちゃん昔から水泳が得意で、昔からこんな感じで私が困ってる時いつも助けてくれて本当にいつも感謝してるんです」 えっ、ちょっと待って。なんの話? そんな話まったく聞いてないし、代わりにやるなんて一言も言ってない! そもそも水泳が得意でもないし、綾乃が助けを求めたことなんて今まで一度もないのに……。 言ってもないことや起こってもいない過去の話を、当たり前のように話す綾乃に、私は唖然とする。 「あぁ~彼女か。そうだな。特に顔は引きで映したらわからないから彼女でもいけるかな」 「あっ、でもお姉ちゃん当然だけどモデルの経験とかまったくない素人だから地味な感じになっちゃうかな~。私ほどの華やかな雰囲気出せなくても大丈夫ですかー?」 「あぁ、大丈夫。ただ水に落ちて指定したポーズをしてくれたら問題ないよ」 「あ~それならよかった~! 本当にありがとう、お姉ちゃん!」 私が何も発さないことをいいことに、どんどん話が進んでいき、断れない状況まで追いやられてしまう。 だけど今更私が否定をしたところで信じてもらえるはずもないし、断ったとしても綾乃はきっとやるつもりはない。 そうなれば現場に迷惑がかかるだけ……。 それなら……。 私は仕方なく、その代役を引き受けるしかなかった。 だけど、冷たい水に入って、お腹の子は大丈夫だろうか……。 妊娠のことを言えるわけもなく、まだ大きくお腹が目立っていないことを考えれば身体に影響がないと思いたい。 初めての妊娠で、今の状況でそんな無茶をしていいのかもわからなくて、すごく不安になる。 そんな不安を抱えていても、水中の撮影の準備はどんどん進んでいく。 衣装の服に着替えさせられ、綾乃と似たようなスタイリングにし直し、気が付けばプールの前で私はスタンバイをしていた。 そこにまた顔を出した綾乃は、私の前に立ち、私の両手を自分の両手で包み込んでギュッと握り締める。 「お姉ちゃん、本当にありがとう」 皆に聞こえるように、優しい声で大きめに話しかける
last updateLast Updated : 2026-04-10
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第14話 意識し始めた瞬間

【一弥side】 杏華が出て行った日、 いつものように、ちょっと怒って家を出てもすぐ戻ってくると思っていた。 でも、戻ってこなかった。 携帯も繋がらず、部屋は空っぽ――本当に去ってしまったのだ。 言葉にできない感覚だった。 怒りでも悲しみでもない、ただ胸の中にぽっかり穴が空いたような、 まだ心臓は動いているのに、どこか欠けたような感覚。 しかし、その後すぐに違和感が芽生え始めた。 会議中、ふと彼女が机を拭く下を向いた姿を思い出してぼんやりする。 深夜に目が覚めては天井を見つめ、今どこで何をしているのか、ちゃんと食べているか考えてしまう。 そのたびに、自分の心が彼女を意識していることに気づく。 でもすぐに、その気持ちを必死で押し殺す。 離婚した、もう関わりのない女性のはずだ。 ――だが、彼女は俺の子を宿している。 ……だから、これくらい気になるのは当然だ。 そう自分に言い聞かせ、何度も繰り返す。 そして、撮影現場で彼女を見たとき。 痩せていた。以前よりも明らかに痩せている。 妊娠しているのに、顎は尖って、人を突き刺せそうなほど。 低く頭を下げて綾乃の後ろに立ち、影のように静かだった。 その瞬間、長い間空っぽだった胸の穴が、ふと埋まった。 心臓が早鐘のように打つ――自分でも理由が分からないくらいに、速く。 そして、そのとき初めて知ったことがあった。 杏華がどんなところに行き、誰と知り合いだったか、まったく知らなかったということだ。結局見つからないままで、あんなにも探し回って見つからなかった杏華に、まさかこんな場所で再会するとは思ってもみなかった。 しかも綾乃のアシスタントとして現れたことで、家事代行という今までの杏華の生活を思えば妙に納得出来る仕事の選択で、杏華自身が変わらなかったことになぜか安心している自分がいた。 だが、ようやく再会出来たのに別れを決意した時のように、俺を拒否する姿勢も一向に変わっていなくて、その変化の無さになぜかイラついている自分がいた。 心配していたと言いたいはずなのに、口を開けば一緒にいた頃の口調や接し方につい戻ってしまう。 子供のことも気になり身体の様子を確認したが、杏華はわざとなのか、そのことには触れようとしない。 そのあと綾
last updateLast Updated : 2026-04-11
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第15話 美の覚醒

【一弥side】 妊娠している奴がする行動じゃなかったんだ! こんなに無理して期待に応えようとしていた杏華にも、ここまでさせていた周りの奴らにもなぜだか無性に腹が立つ。 杏華はいつも人のために役に立とうと思う奴なんだ。 それを自分が犠牲になっても構わないとさえ思う。 そんな杏華の性格がわかっていて妊娠も知っていたのに、止めなかった俺自身にもっと腹が立った。 あの日の病院で青ざめて血を流し倒れこんでいた杏華の姿は、今でも俺の頭にこびりついている。 あのとき何も出来なかった……、いや何もしなかった自分に腹を立てていたはずなのに。 俺はあのときの杏華が頭にフラッシュバックしながら、必死に杏華を水中で探す。 案の定プールの中に沈んでいく杏華を見つけ、俺は焦ってすぐに杏華を引き上げ、そのまま意識を失った杏華を抱き上げた。 水から抱き上げられた瞬間、 時間が一瞬、止まったかのようだった。 夕陽の残光が、水面の波間を透けて通り抜け、 濡れた髪の毛の先に、無数の金箔のように輝く。 水滴が頬を伝い落ちるたび、まるで光に点火されたかのように、 淡い肌の上に儚い痕跡を残す。 誰も、こんなに美しい人を見たことがなかった。 それは、無防備で、この世に属さないような美しさ。 計算された表情でも、意図的に作ったポーズでもない。 ただ、一人の人間が、最も脆い瞬間に無意識に見せた、ほとんど透明な純粋さだった。 本来は他の被写体を待っていたカメラマンたちも、 誰が先かもなく、レンズをこちらに向けた。 一人、二人、三人。 誰も声を発さない。 しかし、皆が自然と彼女に近づいていく。 カメラを構える人、焦点を合わせ直す人、表情はもはや職業的な冷静さではなく、 半生をかけて追い求めてきたミューズに出会ったかのような、真摯な集中がそこにあった。 シャッター音が次々に鳴り響く。 どの瞬間も、一瞬たりとも逃すまいと、必死で押されるように。 その瞬間、現場にいた全員が息を忘れた。 彼女が誰だからでも、身分がどうだからでもない。 ただ、この光景があまりにも美しい。 あまりに儚く、一瞬で消えてしまいそうだから、 人は本能的にその美しさを残したくなる――次の瞬間にはもう、消えてしまうかもしれな
last updateLast Updated : 2026-04-12
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第16話 夢と現実の狭間

夢の中、私はまたあの家にいた。 母がベッドに横たわり、顔は血の気がなく青白い。 私は手を握った。母の手は冷たく、あまりの冷たさに怖くなる。 「ママ……ママ、行かないで……お願い……私を一人にしないで……」 必死に叫ぶけれど、母はただ私を見つめ、笑う。 その笑顔はどんどん遠ざかり、ぼやけていく。 手を伸ばしても、どうしても届かない。 「ママ――!」 私はハッと目を開けた。 暗い天井、見知らぬ部屋、漂う消毒液の匂い。 背中には冷や汗がびっしょり。 心臓は激しく打ち、胸から飛び出しそうなほどだった。 そして、目の端に視線を感じる。 ベッドのそばに、一弥さんがいた。 まだ夢の続きを見ているのだろうか。 一弥さんが私の手を両手で握り、こちらを見つめていた。 そんなあり得もしない状況に、私は「一弥……さん……?」と思わず無意識に呟いていた。 「大丈夫か?」 一弥さんが心配そうに私を見つめる。 「え……、私……」 「プールで意識が無くなったんだ」 あぁ、そうだ……。私あの時意識が無くなって沈んでいったんだ……。 じゃあ、これは夢じゃなく、現実……? 「撮影場所の待機室にベッドがあったから、そこに運んだ」 「それで、どうして一弥さんがここに……」 「俺が助けたからに決まってるだろ」 「えっ……? 一弥さんが……、私を……?」 頭の
last updateLast Updated : 2026-04-13
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第17話 気にかける理由

 【一弥side】 杏華がプールに落ちたあの日から、辺りが騒がしくなった。あの日の杏華の姿を、あの場所にいたカメラマンが無意識にシャッターを押し、そのときの写真が世間に出回ったのだ。その写真があまりの美しさだと世間では評判になり、<女神のような美しい幻想的なモデル>だと一躍有名になった。意識を失って目を閉じていたことで、かろうじて杏華の顔まではハッキリとは写ってはいなかったことに、俺はホッとしていた。いや、なぜそんなことにホッとするのか。そしてなぜそんなふうに有名になって騒がれていることにこんなに苛立ってしまうのか。世間ではあのモデルは誰なのかと騒ぎ立て、モデル業界に革命を起こしたなどと話題になっている。あいつがそんな自分の性格と正反対の世界を望むことはないとは思ってはいても、なぜだか変に胸騒ぎがする。世間に杏華が見つかってしまうかもしれないと、どうして少し不安な気持ちになってしまうのか。あの日から俺はなんだかおかしい。医者から特に子供にも影響がないと伝えられ心からホッとした。そのあとは、俺は杏華のそばから離れられなかった。静かに眠っている杏華の姿を、俺はただずっと見つめていた。気付けばなぜか杏華の手を取り心配していた自分に気付いて驚く。俺は何をしてるんだ……。すると急に杏華が、うなされ始める。悪い夢でも見ているのか……?額には汗をかき、どんどん険しい表情になっていく。「ママ……ママ、行かないで……お願い……私を一人にしないで……」母親の夢……?こんなに杏華は脆い女だったのか……家では誰にも気にかけてもらえていなかったのか?そういえば今の母親は再婚だったんだったな。昔、杏華に一体何が……。「ママ――!」そう思ってたら杏華がハッと目を開け意識を取り戻す。俺は杏華の手を両手で握り締めながら、心配でそのまま
last updateLast Updated : 2026-04-14
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第18話 すべての始まりのきっかけ

【一弥side】俺の家は地方でも有名な財閥だった。外から見れば光り輝いているように見えるけれど、内情は全く別物だった。両親は長年海外にいて、俺を古い邸宅の執事やメイドに任せきり。正月やお盆の親戚の集まりは、表向きは親しげでも、裏では俺の家から少しでも取り分を奪おうと算段している。かつて一緒に遊んだ従兄弟や従姉妹も、成長するにつれ全員が競争相手になった。彼らは目的を持って俺に近づき、俺から何かを得ようとする――それが当たり前だった。だから、俺は人を信じなかった。真心も、善意も、この世に見返りなしで存在するものはないと思っていた。――そして、あの事故まで。あの年、俺は16歳だった。車のブレーキが故意に操作され、ガードレールに衝突する瞬間、死ぬと思った。後で聞いた話だと、家のビジネスの競争相手による報復だったという。手に入らないプロジェクトの腹いせに、こんな手段を使ったらしい。道端で倒れ意識を失ったとき、額から血が目に流れ、世界は赤くぼやけた。「まぁ、いいか。どうせ誰も気にしないだろう」と思った。目が覚めると、眩しい白い光の中に、ひとつの顔があった。綾乃。傷口に巻かれた、紫の小花が刺繍されたハンカチ。「無事でよかった……見つけたとき、本当に怖かった……」目は赤く、声は震えていた。俺が何と言ったか覚えていない。ただ、彼女の手がずっと俺の手を握っていて、暖かかった。初めて、この世に見返りを求めない善意があるかもしれないと思えた。あの日、彼女がいなければ、今の俺はいなかった。だから、あれからの年月、綾乃の望むものはすべて与えてきた。モデルになりたいと言えば投資をし、資源が欲しいと言えば提供した。杏華が陰険だとか、結婚はお金や地位のためだとか、綾乃が言えば信じた。今振り返ると、杏華が嫁いできてからも、綾乃は耳元でいろいろ囁いていた。あのとき、どうして杏華本人に確かめようとしなかったのか。考えなかったわけじゃない。ただ、面倒で、価値がないと思っただけだった。命を救ってくれたのは綾乃。杏華――綾乃の言う通り――ただの企む他人だった。俺は命の恩人に信頼を置き、枕元の人物には冷たく接した。結婚してからその本性を悟られたくないのか、杏華は俺の前では純情ぶり目立たず大人しく控えめな女を装う。俺はそんな杏華に心を開くこと
last updateLast Updated : 2026-04-15
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第19話 仕組まれた過去からの罠

 【綾乃side】 「このモデル美しすぎない?」「こんな絶世の美女見たことない」「名前なんていうの?」「あのモデルと是非仕事したい」あの日から世間でもモデルの界隈でもそんな噂が常に飛び交う。悔しい!  悔しい!なんであの女がこんなに注目されてんのよ!どうして私の邪魔ばっかりするのよ!この世で注目されていいのは私だけよ!私より美しいだなんて許せない!少し前まであんなに地味でただの主婦だったじゃない。あの女が私より幸せになることだけは絶対許さない。長い時間をかけてようやくあの二人を離婚にまで追い込んだのに。再会したあの女は変わらず家政婦みたいなことをしていて、やっぱり私の足元にも及ばないのだといい気味だった。あの女が私に仕えるという最高に楽しいゲームまで自ら用意してくれて私は勝ったも同然だった。ジュースを目の前で零したことも、妊娠してるのにわざと水中の撮影をさせたことも、すべては私の計画通り。一弥お兄ちゃんの前で、大勢の前で死にたいほどの辱めを受けて、とことん苦しめばいい。そう思ってたのに──!なんで一弥お兄ちゃんは、あの女に服なんか着せてるのよ!なんであの女があんな写真なんて撮られてるのよ!許せない!  許せない!あの仕事で大きなチャンスが巡ってくるのは私だったはずなのに、私の代わりにあの女がこんなに注目されるなんて……!どこまで私のモノを奪っていくのよ。一弥お兄ちゃんは絶対渡さないわ。あの事実がある以上、お兄ちゃんは絶対私を裏切れない。 あの女は最初から私の欲しいものをすべて手にしていた女だった。美貌も愛情も何もかも、私が手に出来なかったものを──。売れっ子ホステスだった母は元は父の愛人。母は自分が一番になれないことが何よりも悔
last updateLast Updated : 2026-04-16
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第20話 新たな世界へ

 「ねぇ、君。モデルに興味ない!?」綾乃の現場にまたアシスタントとして同行していると、モデル事務所の人から声をかけられた。「えっ!?  私ですか!?」「そう。君!  この前の撮影であまりにも君の綺麗な姿にビックリしたんだよね~。君、絶対モデルとして成功するよ」「この前の撮影って……なんのことですか? 誰か他の方の間違いでは……?」私は身に覚えがなくて聞き返す。「えっ、だってこれ君でしょ?」そう言って見せられた写真は……。もしかしてあのときの……?これ……私……?それを見て初めて、あの水中シーンの撮影のときのことを言っているのだと理解した。それがあんなに過酷な経験をしなければいけない場所だなんて思いもしなかった。だけど、そんな辛いイメージを持っていたあの撮影だったのに、その見せられた写真を見て、私の中で驚いたと同時に今まで感じなかった心の奥で自分に何かを訴えるような胸が高鳴る感覚を密かに感じる。その写真に写った私が、まるで別人のようで。それは確かに私なのに、不思議なくらい、素直に思えた。――綺麗だって。 幼い頃からずっと、綾乃と継母に否定され続けてきた。私はずっと、自分には輝く資格なんてないんだと思っていた。 けれど、写真の中の私は――眩しいほどに、美しかった。 私は、自分自身を誇れる人になりたい。 この写真たった一枚で、私の心が大きく揺さぶられ動いていく。「すっごい綺麗でしょ!?  もう本当にあそこにいた皆、君のあまりの美しさに言葉を失うほど魅了されてたよ」「世間でも君の噂で持ちきりなんだよ。女神のようなこの美しいモデルは誰かって、君のことを皆知りたがってる。皆君を必要
last updateLast Updated : 2026-04-17
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