Semua Bab 社長、離婚した奥様が世界的トップモデルになっています!: Bab 51 - Bab 60

82 Bab

第51話 溢れ出る想い

【一弥side】そういえばあの夜も、確かこんなどうしようもなくなった日だった。同じようにあいつが俺以外の男に淫らなことをしていると初めて知ったときだ……。ずっと手を出さず、あいつとは距離を取っていたのに、それを知った瞬間、俺は爆発したんだ……。ただあの夜は酷く酔っていた。あいつにはそう誤魔化していたけど、いくら飲んでも酔いきれなくて、ただあいつへの止まらない感情が溢れて暴走しただけだった。あれは酒を飲んだ悪い影響だと、自分自身理解出来ない行動に、そう何度も自分で言い聞かせていた……つもりだったのに。ずっとあいつとのあの夜のことも、あのときの俺の抑えられない感情も、そしてあいつとの肌の感覚やどこまでものめりこみ溺れたあの満足感と快感も、俺の中で今でも鮮明に憶えている……。思えばあのときからか……、俺が杏華に今までと違う感情を少しずつ感じ始めていたのは……。なのに、どこですれ違った……。どこで何を間違ったんだ……。俺はあのときも今も、いや、ずっと杏華に対して、どう接すればいいのか、どう向き合えばいいのかがわからない……。この持て余すほどの自分でも厄介なこの感情の意味も理由も、俺はずっとわからずにいる……。昔なら、あいつの口から聞く男の名前は、俺一人だけだったのに、今はあのカメラマンの名前が審判に杏華の口から出てくる。それも嫌でたまらない。あの男の名前を口にするだけで、こんなにも苛立つ。それどころかあいつのことをあんなにも嬉しそうに褒めたり、必死にかばったり……。くそっ!  なんでなんだ!……どうして、俺はあいつには素直な言葉が言えないんだ……。あいつに感じた感情が、確かにこの心にも存在していて、本当はすぐそこまでその感情が口から零れそうだったのに……。あいつを前にすると、なぜだかそれが言えないんだ。本当は、言葉を失うほど、その変わった姿が綺麗で目が離せなかったことも、その姿を誰にも見せたくないほど独占欲が渦巻いていたことも、確かにあのとき俺は自分でも気付いていたのに……。俺といたときは、あんなにも弱くて頼りなくて、俺がいないと何も出来ない女だったのに。今のあいつはあんなにも堂々と自分の意志を持ち、プライドを持って、その仕事に誠実に向き合っている。そんなことも本当はちゃんとわかっている。あいつは何でもいい加減に考えるよう
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-05-18
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第52話 怪しい誘惑

彼へのイラつきが収まらないまま、私はちゃんと前を向かずに歩いていると──。「キャッ!」「おっと、危ない!」目の前で誰かにぶつかり、思わずお互い声を上げる。するとそこにいたのはAKIさんだった。「あれ? まだ着替えてなかったの?」「あっ、えっと、はい。ちょっと迷っちゃって……」すぐにバレそうな言い訳をして咄嗟に誤魔化す。「そう……。まぁ、今の格好も十分魅力的で俺は好きだけど……」「えっ?」「いや……。あっ、そういえば今日の夜の話聞いた?」「えっ?  夜って何の話ですか?」「あっ、まだ聞いてないんだ。今日泊まってるホテルの会場で、主催者側が皆を招待してパーティー開いてくれるらしい」「そうなんですね」「最後に全部終わったら打ち上げみたいなものもあるとは思うんだけど、まずは決起会みたいな最初にこのイベントを盛り上げるためのパーティーをするみたい」「へ~すごいですね」「場所と時間はこれ」AKIさんがその情報を教えてくれる。「わかりました。ありがとうございます」「ところで……。さっき、撮影終わったあと、君をどこか連れて行った男性って……?」「えっ!?」嘘っ!?  さっきの一弥さんとのAKIさんに見られてたの!?もう! あんなわかりやすく激しく連れて行くから!「えっと~あの~」「なんだかすごく親しげというか、切羽詰まってたっていうか……、なんかちょっと二人の雰囲気が妙に気になっちゃって……」AKIさんがストレートに伝えてくる。それがどういう意味なのかまでは決して聞けないけど……。でも少なからずそんな姿を誰かに見られていたことは、あまりいいことではないということはわかる。「もしかして……君の、恋人……?」「はっ……!?」まさかの言葉が飛び出して、思わず私は驚く。「いえ! まさか!!」そう言って私はブンブンと横に首を振って全力で否定する。恋人……では、ない。元、旦那ではあるけれど……。なんて、口が裂けても言えない……。「よかった……」ん……? よかったって、聞こえたような……。「あの……。彼は、私の仕事を管理している人で……」「あぁ。マネージャー?」マネージャー……。あぁ、そんな感じ……なのか?「彼は、ビジネスパートナーなんです」「ビジネスパートナー……?」彼が不思議そうに聞き返す。「はい……。
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-05-19
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第53話 知れ渡る噂

夜のパーティーで、私はAKIさんに言われた言葉を思い出しては、妙にソワソワしている時間をさっきから過ごしてしまう。そんなAKIさんを、つい探してしまう自分がいる。そして、ようやく見つけたAKIさんは当然ながらたくさんのモデルたちに囲まれている。だけど、どうも私が接するAKIさんと皆の前でのAKIさんの雰囲気がまったく違うように思える。女性たちから囲まれてはいるものの、AKIさん自身の雰囲気はクールで無口なままで。特に誰にも微笑みかけたりもしない。黙って黙々とお酒を飲み続けているだけ。それでも負けじと女性たちは彼にアピールし、気に入られようとしてるのが目に見えてわかる。あーいうあからさまな態度、とてもじゃないけど私には出来ない手段だ……。だけど、彼は、こうやって本来黙っている姿は少し近寄りがたいくらいの雰囲気なのに、私と二人の時は、なぜだかフランクに話しかけてくれる。微笑みかけてもくれるもんな……。どうして私にはそんな姿見せてくれるんだろう。っていうか、話したいことって何!?本当にこのあと抜け出そうと思ってるのかな!?そんなこと出来る!?私は彼を遠目に見つめながら同じく悶々としながら、手にしたお酒を口に運ぶ。「何を見てる」すると、急に隣からスッと声をかけられる。「うわっ! ビックリした……」「なんだ。何をビックリすることがある」声をかけてきた一弥さんは不服そうに答える。「いえ。別に……」危ない。彼を見てるのに気付かれちゃうとこだったわ。いや、別にそれでも問題なんてないのだけど。彼と私はもう何の関係もないし、AKIさんとだって別にやましいことは何一つない。なのに、なぜ私は浮気しているようなそんな妙な気分になるのかしら……。だけど一弥さんは、私のすぐ隣には立たず、少しだけ間を開けて、その場で同じようにお酒を飲んでいる。そんな彼は、手足も長く、AKIさんに負けず劣らずモデルのようなスタイルで、一人佇みお酒を呑む姿は、妙に男らしく色気が漂う。普段と違い気を遣う相手もいない、くだけた場だからだろうか。気取らないこのラフな感じは、まだ私が見たことのない彼の姿だった。こういう晴れやかなパーティーみたいな場所で、彼に同行しているときは、必ず私は彼のそばに寄り添っていた。外では良き妻であるために。そんなときは、いつもかし
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-05-20
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第54話 思いもしない言葉

私はまたあの日のことを思い出して、少しずつ落ち着かなくなってくる。「こんな素敵な男性がそばにいたら裏切るだなんて絶対出来ないわよね」「私なら絶対彼に尽くしまくるわ。こんなカッコよくて素敵な旦那様の奥さんだなんて、そんな幸せで贅沢なことないもの」その女性たちは言いたい放題言い始める。私だって、別れたくなんてなかったわよ……。彼に私のすべてを捧げて尽くしたし、彼と結婚出来てそばにいられるだけで、誰より幸せだと、そう思ってたわ……。私は心の中で、そんなふうに言い返しながら、悔しくてギュッとお酒のグラスを持つ手が強くなる。「でもそんないい加減な人なら別れて正解ですよね。桐生さんにはそんな最低な女、相応しくないわ。桐生さんほど素敵な男性なら、いくらでももっと素敵な女性がいるはずです。たとえば、私なんか……」フッ。やっぱりこの人もそうなのか。あからさまに私をけなして、自分をアピールする魂胆。そうね……。そんな噂を信じて離婚を決めた彼ですもの。さぞかし共感して、そんな素敵な誘いに乗るんでしょうね。どうして私がこんなことを聞かないといけないのかしら……。私はグっとその悔しさを静かに堪える。確かにここにいる女性はモデルになれるほどの美しい女性ばかりだし、彼の妻として私以上にもっとお似合いで相応しい相手はたくさんいるものね……。「そうですね。ここにはあなたたちみたいに、とても華やかで素敵な女性がたくさんいらっしゃいますしね」……ほら、やっぱり。いつもあなたの隣にいた私は地味で冴えない女だったもの……。「確かに、元妻は、あなたたちみたいに美しく華やかなタイプではなかったですから」「そうなんですね。フフッ。お気の毒」自分でそう思っていたとしても、彼が同じようにそう言葉にすると、やっぱり結構堪えるな……。「ですが……。彼女は、俺の妻らしくどんなときも清楚で慎ましく、どんな場でも恥ずかしくない装いと態度で、誰よりも品がある、俺に相応しい妻でいてくれました」……え?一弥さんのその言葉に、急に鼓動が早くなる。まさか彼が私のことを、そんなふうに思っててくれていただなんて……。そして、それを他の女性に言ってくれるなんて……。嬉しくて胸の奥がギュッと切なくなる。さっきまであんなに私のことをけなしていたのに……。こんな気遣える優しい部分も、この人は
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-05-21
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第55話 その言葉の意味

「彼女は、俺といて幸せだったと想ってくれていたはずです」え……。どうして……?私の気持ちなんて、あの頃一ミリもわかろうとしなかったのに……。「そ、そうなんですね……」「えぇ。彼女は、俺がいないと生きていけないほどの女性でしたから。……今でも俺はそうであってほしいと思ってます」「それは一体、どういう意味で……」「──さぁ。どういう意味でしょうね」彼は……誰……?そんなことを言うなんて、一弥さんじゃない……。それに、どうしてそんな意味ありげな言葉を言うの?どうしてそれを私に聞かせるように話すの……?どういうつもりなんだろう。大事なことも、聞きたいことも、何一つ私に伝えてなんてくれないくせに。力任せであんな態度でしか私に伝えてこない彼が……。あなたが何考えるのか全然わからない……。それは一体どういう意味なの……?どうして、こんなに彼に翻弄されなきゃいけないの。終わった恋のはずなのに、どこかでその火種がチリチリと静かに小さくひっそりと燃え続けている。それをこの人はそんな私をからかうかのように、こうやって大きな火になって今にも燃えさせようとする。ずるい。ずるい。もう私を振り回さないで。私を自由にさせて。私はあなたなしでも生きていける人間になりたいの。私自身の力で誰にも頼らず私はこのお腹の子と新しい人生を歩んで行くの。きっとあなたと元の関係に戻っても、同じことの繰り返しだから。きっとこの想いは、どんなことがあっても一生一方通行だから。お願い。私を惑わせないで……。「素敵すぎます」えっ……?すると彼の話を聞いていた女性が、なぜだかいきなりそんな言葉を告げる。「それでも、今はお一人、なんですよね? 元奥様は、そんな桐生さんの気持ちも知らず、好き勝手に別の男性の元に行っただなんて、切なすぎます……」「そうです。そこまでされてても、そんなふうに思えるだなんて素敵です。そんな女性は早く忘れて、別の新しい恋愛に気持ちを向けるのが一番です」なんかこの女性たちとの会話を聞いてると、彼の方が私を好きだったように聞こえるじゃない……。なんかそれは悔しい……。一ミリも私のことなんて愛してなかったくせに……。こんなところもこの人はずるい……。もしかして、それもこの人の作戦なの……?自分を正当化しようとして?  私を結局悪者扱い
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-05-22
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第56話 秘密の約束

「やっと、つかまえた」会場の隅の方に移動すると、後ろの方から声をかけられ振り向くと、そこにはAKIさんの姿があった。「AKIさん」「約束どおり、ちょっと抜け出さないか?」「え……?」するとAKIさんは誰にも気づかれないように、そっと私の手を引いて会場から連れ出した。本当にAKIさんと抜け出してる……。最初の方にはそれを考えてドキドキしていたのに、さっきの一弥さんのせいで、そんなこともすっかり落ち着いてしまっていた。そして、急にこんな展開になって、私の胸はまたドキドキし始める。「あの……。一体どこへ……?」「うん。いいからついてきて」彼はそれだけ言って、私の手をずっと握り締めたまま、会場の外へ出て、どこかへ向かい始める。手、ずっと繋いでるんだよな……。こんなふうに男性にずっと手を握り締められるのなんて初めてで、私の胸はまた大きく高鳴る。こんなドキドキする展開、私には縁がないと思ってた……。そしてある場所へと到着する。「上。見上げてみて」「えっ?」そう言われて上を見上げると、そこには夜空一面に星が光り輝いていた。「うわぁ~綺麗……」私は思わずその美しい星空を見て呟く。「君にこれを見せたかったんだ」「え……?」星空を見上げながら、呟く彼に、私は思わず顔を向ける。「嬉しいです……」私はそんな彼を見ながら静かに伝える。どうして、私に……?そう聞いてみたかったけど、まだなんだか彼との間には、そういう明確な言葉は出さない方がいい気がして、私はその言葉を飲み込んで、彼と同じようにまた星空を見上げる。本当に綺麗……。こんなに綺麗な星空を見たのはいつぶりだろう。空一面にまたたく綺麗な星空を見ていると、少しずつ気持ちが浄化されて落ち着いてくる。私もいつかこの世界で、たくさんのモデルの中で輝ける存在になれるかな……。最初は目立たない存在だとしても、いつか誰かにとって輝いていられる存在でありたい。うん、そうね。きっとこのお腹の子にとっては、たった一人そんな存在になれるはずよね。私は彼に気づかれないように、まだ大きくなっていないお腹にそっと密かに手を当て、まだ見ぬ子供に想いを馳せる。「そこ、座らない?」「はい」ちょうど近くにあるベンチを指してAKIさんが声をかける。すると、ふわっと肩に何かを感じる。「冷えるといけない
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-05-23
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第57話 衝撃の告白

「じゃあ、俺と同じだ」そう言って、ふわっと微笑んだ。ドキッ……。なんて素敵に微笑む人なんだろう。そして、さりげなく伝えるこんな言葉も、決して嫌な気がしなくて。いえ、それどころか、すごく自然とこの人の言葉は優しく響く。やっぱりこういう気持ち、なんだかずっと前に感じたことがあるような気がする。いつだろう。どういうときだったっけ……。彼に会ったときから、時折感じるその既視感をまた密かに心の中で感じる。「ずっと君とこの星空見れるかなって、ずっとソワソワしてた」「フフッ。じゃあ同じですね」「あぁ」「私、こういう美しい世界、すごく好きなんです。なんか心が洗われる気がするんですよね」「うん。俺も同じ……。現実でどんなことがあったとしてもさ。美しい物や綺麗な情景を見ると、救われた気持ちになって、そこに希望を感じられたりするんだよな……」「わかります! まさに私も同じです!」自分の思っていることや感じていることとあまりにもリンクして、私は嬉しくなって、つい興奮して隣の彼に伝える。「うん。君とは、こういう美しい情景を同じ気持ちで感じられるって思ってた」すると、そんな私をバカにすることもなく、穏やかに優しく微笑んで、彼は私にそう伝えてくれた。同じ物を見て美しいと感じられたり、共感し合えることが、私にとって、こんなにも心が温かくなって嬉しくなることを、この瞬間初めて知った。「美しいからこそ儚くて、だからこそその美しさに魅了される」「はい……」そう静かに語るAKIさんが、とても美しかった。AKIさんから溢れ出るその儚い美しさに、私は目を離せなくなった──。彼は、そんな不思議な魅力を持っている……。そしてAKIさんのその感性というかその感覚。すごく共感出来てしまうのが、とても不思議な感覚になる。美しいモノを共に美しいと言える。自分の価値感を同じように感じてもらえて、受け入れてもらえる。なぜだか彼とは言葉にしなくても、そういう心で通じ合えるような感覚を感じられる……。彼と一緒にいるだけで、こんなに穏やかになれることが嬉しくて、心地がいい……。「なんかAKIさんとは、不思議とそういう同じ気持ちを感じられて嬉しいです……」「えっ……?」AKIさんが不思議そうな顔をして反応する。「あっ……! すいません! なんか変なこと言って!」思
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-05-23
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第58話 過去の光

「思い出せない?」「えっ……、あっ、はい。すいません……」「謝らなくても大丈夫。君にとっては俺はきっとそれくらいの印象だっただろうから」なぜか彼は寂しそうに呟く。「あの……。私たちは一体いつ……」「さっき。君が言った言葉。俺もそう思ってた」「えっ……? 私の言った言葉ですか?」「あぁ。俺と同じ気持ちを感じられて嬉しいって言葉」「あぁ……。えっ? じゃあ、私たちが前に会ったとき、そう思ってたってことですか?」「そう。君は俺を救ってくれたんだ」「私が……? AKIさんを……?」「うん……。今の俺がいるのは、君のおかげだから」そう言って、AKIさんが優しく笑う。「えっ……、私がAKIさんにそんな大きな影響与えた存在だなんて信じられない……」「そうだろうね。そんな君だから、俺はきっと君から勇気をもらえたんだ」そんな彼にとって大事なこと、どうして私は憶えてないんだろう。「あの……。その話。教えてもらってもいいですか?  あなたのこと、ちゃんと思い出したいです」私は彼の方にまっすぐ向き、彼に伝える。「ん。俺も思い出してほしい。君に、あのときのことを」そして彼も私を見つめ返して、そう伝えてくれた。「その頃の俺には、自分の人生っていうものは、何の光も希望もなく、真っ暗闇の世界だったんだ」「え……?」「そんなとき、俺が唯一逃げられた世界が、このカメラで写す美しい世界だった」「美しい世界……」「そう。レンズを覗けば、見たくないことを見なくて済む。現実で目を塞ぎたくなる見たことない世界から、レンズを通すこの世界は、俺が美しいと思える世界だけが広がるんだ」彼が語っていく言葉は、決して微笑ましいものではなかった。何かを思いながら、彼はゆっくりとそのときの気持ちを、自分の言葉で紡いでいく。「美しい形で、消える前に……、その姿を、その瞬間、美しい写真として残しておきたいって思った」「素敵……」「ある時、学校の校舎の窓の外から見えた虹がすげぇ綺麗でさ。消える前に、思わず携帯のカメラでシャッターを切った。すると、それをたまたま目にした誰かさんが、その写真を見て”綺麗だ”って感動してくれたんだ」「あっ……」「それから目にした美しい世界を、カメラに写すたび、その世界をその人と共有してたんだ。”俺の写す写真が好き”だって。”俺の写す美しい世界
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-05-24
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第59話 居場所

「まさか、あのときの明人くんだったなんて……」「俺はすぐに君に気付いたよ」「え……? もしかして最初に会ったあの日から……?」「そう。あの日、君の名前を知って、あの”杏華ちゃん”だって気付いた」「名前が同じなだけで……?」「あぁ。だって、君が元から持つ美しさは全然変わってなかったから」「え? 美しい……? まさか──!」「どうして? その美しさが同じだから、俺は気付けたんだ」「そんな──!」私はブンブンと手を振って、慣れないその言葉を否定する。「俺。昔から、美しいモノには直感的に反応するんだ。美しいモノには常にインスピレーションを受けてる」「それはお仕事柄そうだろうけど……」「もしかして、君はその言葉、自分で実感ないの……?」「もちろんです! そんなこと今まで言われたこともないですから!」「マジで……? はぁ……。俺がもし、君のそばにずっといたら、そんなのいくらでも伝えてあげてたのに」「えっ!?  AKIさん、もうからかわないでください!」私は急に恥ずかしくなって、顔が熱くなり、パタパタと手で顔を仰ぐ。「それ……。寂しいんだけど」「えっ? 何がですか?」「その話し方」「話し方?」「敬語。なしにしよ」「えっ、でも!」「それに名前も。”明人”でいい」「いや、でも、AKIさんはお仕事で……」「今、俺は仕事相手として話してない」「え……」「“杏華ちゃん”に、”明人”として話してるんだ」「それは……」「ちゃんと呼んで。”明人”って。あの頃みたいに」「でも……」「呼ばなきゃここから君とは一切仕事しないから」「えっ! そんな!」なんてずるい駆け引き!さすがにそれは困る!「わかりました……!」「わかりました……?」「あっ……。わかった、から……」「うん」私がそう言うと、微笑みながら、彼は私の言葉を待つ。「明人……くん」「ん。それでいい」満足そうにする彼。彼と話していると、あの頃の記憶が戻ってくる。確かにあの頃、彼と私はこんなふうに過ごしていた。「でも、まさか今になって、明人くんに会えるなんて思わなかった」「俺は、君にずっと会いたいって、思ってたよ」「明人くん……」ストレートにそう伝える彼の言葉も視線も、今の私にはこんなにも切なく優しく響く。「この写真を続けていたら、きっと、いつか、君
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-05-24
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第60話 救いの存在

「ねぇ明人くん。あのとき、どうしていなくなったの……?」「え……? あぁ……うん……あのときね……」明人くんは、気まずそうに言葉を濁す。「あっ、言いたくないなら別に……!」「なんてことない。ただの親の都合での、転校だよ……」「だったら、一言くらい何か言ってくれても──!」「──ごめん。あのときの俺は何も出来ないガキで……、どうしようもなかったんだ……」彼はそれ以上、そのことについて何も言わなかった。彼はきっと何かを抱えている。あの頃からきっと……。「だけど。今君に出会えた」「それはそうだけど……」「本当はさ、この撮影の前に俺、君を見つけてたんだ」「えっ? どういうこと?」「少し前。君が無名で、水に濡れた写真、雑誌に載っただろ?」「……あぁ!」あのプールに落ちて一弥さんに助けてもらったときの写真だ……。「あれ、見たの?」「あぁ。仕事柄、いろんな写真チェックはしてるから」「そっか。でも、それで私だって気付いたってこと?」「いや、正確にいえば、気付いたのはこの撮影の初日」「そうなの?」「でも。あの写真を見て、素直に美しいって思った」「え……?」「この美しい女性を、俺も撮影したいって、そう思ったんだ」「明人くん……」「そしたら、あの日君に会えた」「うん……」「君と接していくうちに、その女性が君で、そして君があの杏華ちゃんだって、全部一致したんだ」「そうだったんだ……」「だから君が本名で今の仕事をしてくれてたから俺は気付くことが出来たんだ」「そっか……。そういうことだったんだ……」「あぁ。だから今、君のまま、ここにいることに大きな意味があるんだって、そう思ってる」「そうだね……。そうかもしれない……」「でもまさか、本当に君にこの話を出来るとは思わなかったけど」「そうだよね……」「でも。話せてよかった」「うん。知れてよかった」彼の話したいことが、こんなにも重要なことだったなんて思いもしなかった。そして彼が、あの明人くんだとも……。慣れないモデルの世界に飛び込んで、綾乃の嫌がらせを今もずっと受け続けて、そして一弥さんとの今のこの複雑な関係。私にとれば今の私はここが正念場というか、どうしても踏ん張って頑張らないといけない分岐点のようなもので。またこの世界でも、私一人いろんなことに耐えていくしかない
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-05-25
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